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翻訳センター Research Memo(1):2025年3月期はコンベンション事業縮小が影響し売上微減
配信日時:2025/06/27 13:01
配信元:FISCO
*13:01JST 翻訳センター Research Memo(1):2025年3月期はコンベンション事業縮小が影響し売上微減
■要約
翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、特許、工業・ローカライゼーション、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、人材派遣、コンベンション(イベントの企画・運営)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応している。機械翻訳技術の取り込みにも積極的であり、同技術を持つ(株)みらい翻訳に資本参加するとともに、社内の翻訳業務にも機械翻訳を活用し、生産性を向上させている。国内翻訳業界をけん引する存在であり世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。
1. 事業内容
主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野に分けて専門化し、ノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる翻訳登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは2,911名(2025年3月末時点)の登録者である。7年前から本格的に機械翻訳を導入し、品質の向上や作業時間の短縮、さらには売上総利益率の向上を達成している。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。顧客数3,300社、年間受注件数は49,200件に上る。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、派遣事業、通訳事業、その他事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連しており、翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。
2. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比0.8%減の11,210百万円、営業利益が同1.3%減の890百万円、経常利益が同3.5%減の905百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.7%増の723百万円と前期並みの売上・各利益を確保した。売上高に関しては、コアビジネスである翻訳事業及び通訳事業で過去最高売上を更新し、派遣事業も堅調だったものの、コンベンション事業を含むその他事業の減収をカバーできず、全社では微減となった。翻訳事業では、特許分野が堅調、医薬分野が復調、工業・ローカライゼーション分野が減少、金融・法務分野が好調である。売上総利益額は前期とほぼ同等、売上総利益率では高い水準を維持している。翻訳事業のセグメント利益は低下したものの、コンベンション事業を含むその他事業の収益性の改善が粗利率上昇の要因となった。販管費は人件費増を主因として微増、結果として営業利益及び経常利益はわずかに減益となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が増益となったのは、子会社株式売却益と第4四半期の東京本社移転に伴う移転補償金の計上が要因である。
3. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.6%増の11,400百万円、営業利益が同1.0%増の900百万円、経常利益が同1.5%増の920百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同12.9%減の630百万円と、増収及び営業増益を予想する。翻訳事業の売上高は堅調な増収を見込む。新たな中期経営計画の下、AIやデータの活用により事業競争力の強化を推し進め、顧客シェアの拡大を図るとともに、新しいサービスの開発・提供により顧客との関係構築を深める。医薬分野、特許分野、金融・法務分野が増収に貢献する一方で、工業・ローカライゼーション分野は減収を予想する。派遣事業、通訳事業も増収を見込む。なお、その他事業に含まれるコンベンション事業は、通訳事業に付随して発生する事業機会であり、自律的な拡大はねらわない方針を継続する。営業利益は微増を予想、また、生産性向上等による売上総利益の増加が販管費の増加をカバーすると予想する。テクノロジーの変化が急速に進む事業環境のなかで、弊社では、同社は最新技術をいち早く取り入れて生産性を上げ、顧客企業からの信頼を深めているため、今後もシェア向上による業績の拡大が可能であると考えている。2026年3月期の売上高、営業利益に関しては、コンベンション事業縮小の影響などが軽微で翻訳事業の寄与度が高くなるため、予想のリアリティが高いと考えている。
4. 成長戦略
同社は、2025年5月に新たな中期経営計画を発表した。新中期経営計画では、同社を取り巻く事業環境がMT(機械翻訳)や生成AIの普及により大きく変化しており、これまで以上にAI・データ活用による事業競争力の強化が重要な課題であると位置付けた。基本方針としては、「New Standards in Translation」をキーワードとし、専門分野に精通した翻訳者・通訳者と日々蓄積される豊富な言語資産の活用を通じて、デジタル時代に対応した高付加価値かつ高効率な言語サービス及び事業モデルを業界のトップランナーとして構築・提供する決意を宣言している。重点施策としては、(1) LLM(大規模言語モデル)の活用なども含めたAI・データの活用による事業競争力の強化、(2) プロジェクト管理業務の効率化に主眼を置いた業務効率化の推進、(3) 翻訳事業とのシナジーが考えられる企業のM&Aなども視野に入れた成長戦略を含めた安定した収益・成長基盤の確立、の3点である。2028年3月期の目標値では、売上高で2025年3月期実績の1.16倍となる13,000百万円、営業利益で同1.35倍となる1,200百万円、当期純利益で同1.11倍となる800百万円とさらなる成長を計画する。テクノロジーの進化が早く、価格低下リスクもある業界ではあるが、同社はいち早くMT(機械翻訳)を活用して生産性を向上させており、価格低下時の対応力に自信を持つ。市場(金額ベース)が伸び悩んでも、シェア拡大により業績を伸ばせる数少ないプレーヤーであることに注目したい。
5. 株主還元策
同社は、企業の利益成長に応じた継続的な還元を行うことを方針としている。2006年の上場以来13期連続で配当金の増配または維持を続けたが、コロナ禍の影響で2021年3月期は減益となり減配、それ以降はまた増配が続いている。同社では2024年に配当方針を変更し、配当性向で35%を目標とすることを新たに決定した。この方針の下、2025年3月期は配当金75.0円(前期比10.0円増)、配当性向34.6%となった。2026年3月期は配当金75.0円(前期と同様)、配当性向39.9%を予想する。
■Key Points
・2025年3月期は主力の翻訳事業と通訳事業で過去最高売上も、コンベンション事業縮小の影響などで売上微減
・自己資本比率76.5%。無借金経営を継続。ROEは10%以上を継続
・2026年3月期は、主力の翻訳事業が増収をけん引。生産性向上による売上総利益増により販管費増を吸収し増益予想
・AI・データの活用による競争力強化等を基本戦略とする新中期経営計画を策定。激変する業界においても売上・利益の着実な成長を計画
・2026年3月期は配当金75.0円、配当性向39.9%を予想。新配当方針により配当性向が上昇
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、特許、工業・ローカライゼーション、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、人材派遣、コンベンション(イベントの企画・運営)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応している。機械翻訳技術の取り込みにも積極的であり、同技術を持つ(株)みらい翻訳に資本参加するとともに、社内の翻訳業務にも機械翻訳を活用し、生産性を向上させている。国内翻訳業界をけん引する存在であり世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。
1. 事業内容
主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野に分けて専門化し、ノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる翻訳登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは2,911名(2025年3月末時点)の登録者である。7年前から本格的に機械翻訳を導入し、品質の向上や作業時間の短縮、さらには売上総利益率の向上を達成している。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。顧客数3,300社、年間受注件数は49,200件に上る。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、派遣事業、通訳事業、その他事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連しており、翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。
2. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の連結業績は、売上高が前期比0.8%減の11,210百万円、営業利益が同1.3%減の890百万円、経常利益が同3.5%減の905百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.7%増の723百万円と前期並みの売上・各利益を確保した。売上高に関しては、コアビジネスである翻訳事業及び通訳事業で過去最高売上を更新し、派遣事業も堅調だったものの、コンベンション事業を含むその他事業の減収をカバーできず、全社では微減となった。翻訳事業では、特許分野が堅調、医薬分野が復調、工業・ローカライゼーション分野が減少、金融・法務分野が好調である。売上総利益額は前期とほぼ同等、売上総利益率では高い水準を維持している。翻訳事業のセグメント利益は低下したものの、コンベンション事業を含むその他事業の収益性の改善が粗利率上昇の要因となった。販管費は人件費増を主因として微増、結果として営業利益及び経常利益はわずかに減益となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が増益となったのは、子会社株式売却益と第4四半期の東京本社移転に伴う移転補償金の計上が要因である。
3. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の連結業績は、売上高が前期比1.6%増の11,400百万円、営業利益が同1.0%増の900百万円、経常利益が同1.5%増の920百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同12.9%減の630百万円と、増収及び営業増益を予想する。翻訳事業の売上高は堅調な増収を見込む。新たな中期経営計画の下、AIやデータの活用により事業競争力の強化を推し進め、顧客シェアの拡大を図るとともに、新しいサービスの開発・提供により顧客との関係構築を深める。医薬分野、特許分野、金融・法務分野が増収に貢献する一方で、工業・ローカライゼーション分野は減収を予想する。派遣事業、通訳事業も増収を見込む。なお、その他事業に含まれるコンベンション事業は、通訳事業に付随して発生する事業機会であり、自律的な拡大はねらわない方針を継続する。営業利益は微増を予想、また、生産性向上等による売上総利益の増加が販管費の増加をカバーすると予想する。テクノロジーの変化が急速に進む事業環境のなかで、弊社では、同社は最新技術をいち早く取り入れて生産性を上げ、顧客企業からの信頼を深めているため、今後もシェア向上による業績の拡大が可能であると考えている。2026年3月期の売上高、営業利益に関しては、コンベンション事業縮小の影響などが軽微で翻訳事業の寄与度が高くなるため、予想のリアリティが高いと考えている。
4. 成長戦略
同社は、2025年5月に新たな中期経営計画を発表した。新中期経営計画では、同社を取り巻く事業環境がMT(機械翻訳)や生成AIの普及により大きく変化しており、これまで以上にAI・データ活用による事業競争力の強化が重要な課題であると位置付けた。基本方針としては、「New Standards in Translation」をキーワードとし、専門分野に精通した翻訳者・通訳者と日々蓄積される豊富な言語資産の活用を通じて、デジタル時代に対応した高付加価値かつ高効率な言語サービス及び事業モデルを業界のトップランナーとして構築・提供する決意を宣言している。重点施策としては、(1) LLM(大規模言語モデル)の活用なども含めたAI・データの活用による事業競争力の強化、(2) プロジェクト管理業務の効率化に主眼を置いた業務効率化の推進、(3) 翻訳事業とのシナジーが考えられる企業のM&Aなども視野に入れた成長戦略を含めた安定した収益・成長基盤の確立、の3点である。2028年3月期の目標値では、売上高で2025年3月期実績の1.16倍となる13,000百万円、営業利益で同1.35倍となる1,200百万円、当期純利益で同1.11倍となる800百万円とさらなる成長を計画する。テクノロジーの進化が早く、価格低下リスクもある業界ではあるが、同社はいち早くMT(機械翻訳)を活用して生産性を向上させており、価格低下時の対応力に自信を持つ。市場(金額ベース)が伸び悩んでも、シェア拡大により業績を伸ばせる数少ないプレーヤーであることに注目したい。
5. 株主還元策
同社は、企業の利益成長に応じた継続的な還元を行うことを方針としている。2006年の上場以来13期連続で配当金の増配または維持を続けたが、コロナ禍の影響で2021年3月期は減益となり減配、それ以降はまた増配が続いている。同社では2024年に配当方針を変更し、配当性向で35%を目標とすることを新たに決定した。この方針の下、2025年3月期は配当金75.0円(前期比10.0円増)、配当性向34.6%となった。2026年3月期は配当金75.0円(前期と同様)、配当性向39.9%を予想する。
■Key Points
・2025年3月期は主力の翻訳事業と通訳事業で過去最高売上も、コンベンション事業縮小の影響などで売上微減
・自己資本比率76.5%。無借金経営を継続。ROEは10%以上を継続
・2026年3月期は、主力の翻訳事業が増収をけん引。生産性向上による売上総利益増により販管費増を吸収し増益予想
・AI・データの活用による競争力強化等を基本戦略とする新中期経営計画を策定。激変する業界においても売上・利益の着実な成長を計画
・2026年3月期は配当金75.0円、配当性向39.9%を予想。新配当方針により配当性向が上昇
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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