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「台湾有事」が消えるか? 台湾総統選で野党連携「藍白合作」が決定【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2023/11/17 10:45
配信元:FISCO
*10:45JST 「台湾有事」が消えるか? 台湾総統選で野党連携「藍白合作」が決定【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。
11月15日、台湾の総統選に関して、野党の国民党と台湾民衆党が連携することが決まった。国民党のシンボルカラー「藍」と台湾民衆党のシンボルカラー「白」を取って、これを「藍白合作」と称する。
今年2月1日のコラム<「自由貿易は死んだ!」と嘆いた台湾TSMC創始者・張忠謀と習近平の仲が示唆する世界の趨勢>(※2)や2月12日のコラム<習近平「台湾懐柔」のための「統一戦線」が本格稼働>(※3)で、「藍白合作」があり得るという趣旨のことを書いた時、在日の台湾人ジャーナリストを中心として「そんなことなど絶対にあり得な――い!」と激しく批判していて驚いた記憶がある。しかし実際には「藍白合作」が実現したのだから、批判していた人たちの主張は正しくなかったことになる。
今となっては「藍白合作」に関して数多くの情報が中国語のネット空間に出回っているが、その中の一つであるアメリカのメディアRFA(Radio Free Asia)中文は<台湾の野党勢力は統合に成功し、世論調査で総統と副総統の選出が決まる>(※4)というタイトルで、11月15日に決定内容の詳細を報道している。
それによれば、台湾の野党勢力である国民党と台湾民衆党は、馬英九前総統の仲介と調整の下、「藍白合作」を宣言した上で、「世論調査によって、連立野党の総統と副総統の候補者を選ぶことに合意した」とのこと。非常に合理的な決定だ。
立候補者は国民党の侯友宜氏と台湾民衆党の柯文哲氏だが、どちらが総統として立候補し、どちらが副総統になるかに関しては、内部で取り決めるのではなく、世論調査で決めるという。それなら内部でのもめ事がなく、決めやすいのかもしれない。
調査結果は、11月7日から11月17日にかけて調査専門家によって検討・評価され、18日(土)の朝、馬英九基金会が結果を発表することになっているという。
侯友宜氏は「結果がどうなろうとも、藍白が協力して台湾と人民を統一し、同時に人民の意思に合致し、政党の交代を実現し、腐敗した無能な民進党(民主進歩党)を排除し、台湾海峡の両岸が平和になり、台湾海峡が安定し、人民が安心できるようになることを願っている」と述べた。
柯文哲氏は「水曜日(15日)にはアメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席がサンフランシスコで会談するが、最も重要な議題は台湾問題だということは分かっている。だから今日は非常に機嫌が悪いんだ。台湾は世界で最も戦争が起こりやすい場所とされていて、その結果、ウクライナとイスラエルでさえ最も深刻な場所とは見なされなくなり、台湾は世界で最も危険性の高い場所になろうとしている」という趣旨のことを述べているが、過去に何度も「民進党が大っ嫌いだ!なぜなら民進党だと戦争が起きるからだ!」と述べたことがある。
台湾の一部では、「藍白合作」は中国側の要望であり、世論調査によって総統と副総統を決めるというアイディアも、中国が出したものだという批判もあるようだが、野党が複数分立していたら、当然、政権与党・民進党の頼清徳候補には勝てないことになるのは、誰の目にも明らかな論理だろう。それは、選挙のある国なら、どの国でも同じだ。
現在の総統選立候補者の支持率は、概ね以下のようになっている。概ねというのは、台湾には「民意調査機関(民間の小さな団体もある)」が非常に多く、どの機関・団体が調査したかによって、相当に違いが出て来るからだ。従って、それら多くの調査機関・団体の平均値を見るしかなく、「概ね」という幅のある値になる。以下に示すのは11月10日前後の平均値だ。
●民進党の頼清徳:約32.9%
●国民党の侯友宜:約23.9%
●民衆党の柯文哲:約23.1%
●無党派の郭台銘:約 5.0%
民進党のシンボルカラーは「緑」だが、頼清徳と「非緑陣営」を分けて調査したデータもある。それは必ずしも上記の合計と一致するわけではなく、
●緑の頼清徳:約35%
●非緑陣営:約50.5%
となっている。また頼清徳と「侯友宜+柯文哲」とに分けた場合の調査もあり、その場合は平均として
●頼清徳:約39%
●侯友宜+柯文哲:約47.4%
という感じで、頼清徳氏はなかなかに強い。
侯友宜と柯文哲を比較すると、何れもわずかに侯友宜が高いので、侯友宜が総統候補、柯文哲が副総統候補として立候補することになる可能性もある。18日の午前中にはどうなるかがはっきりするようだ。
郭台銘氏も必要な推薦人29万人を遥かに上回る100万人以上の推薦人を得ているので、郭台銘にも立候補資格がある。ただ支持率が低いので、ひょっとしたら、たとえば「侯友宜が総統、柯文哲が副総統、郭台銘が首相(行政院長)」といった内閣が出来上がる可能性もなくはない。どうなるかに関しては、18日および届け出の締め切り日24日の結果を見て、さらに分析を深めたい。
さまざまな角度から見た民意の情況や「藍白合作」に関しては、拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いた。
台湾で起きている批判の通り、「非緑陣営」が連盟を結べば結ぶほど、中国には有利になる。親米ではなく、中立ではあるものの親中に傾いており、独立を叫ばないという点で一致しているからだ。独立さえ叫ばなければ戦争は起きない。すなわち「台湾有事」という事態にはなりにくい。「第二のCIA」と呼ばれているNED(全米民主主義基金)の活躍もしにくくなる。
そうなると、「日本有事」も起こらなくなるわけだが、日本人はどちらを望むのか。
真相を見極める複眼的視点が、日本人にも要求されている。
追記:1971年10月25日に、「中華民国」台湾はアメリカがリードして国連から追い出された。アメリカは「中国」を代表する国家は「中華人民共和国」(共産中国)一国しかないとして「一つの中国」を認め、「中華人民共和国」が国連に加盟する方向に強引に持って行った。その瞬間、中国が「台湾は中国の不可分の領土」とすることを、国連が認めたことになる。もしこれを覆したいのなら国連で再議決するしかない。平和裏になら統一することもアメリカは認めている。
国連で再議決する以外に台湾統一を阻止する方法は、唯一、中国が武力を行使したときである。したがって今となっては統一させたくないアメリカは、何としても台湾有事を創り出したいと考えている。
1946年から1948年にかけて戦われた国共内戦(国民党と中国共産党の内戦)で共産党軍により食糧封鎖され家族を餓死で亡くし、餓死体の上で野宿させられて恐怖のあまり記憶喪失になった筆者としては、どんなことがあっても、再び中国共産党と、当時の国民党が逃げた先である台湾との間に戦争が起きることだけは阻止したい。だから台湾が戦争をしない道を選ぶことを望んでいる。平和統一実現を望んでいるのではない。台湾の民意は「統一は反対だけど、戦争も反対」というのが主流だ。この状況で習近平は絶対に統一はできない。しかし戦争が起きないことは重要だ。その意図をご理解いただきたい。
この論考はYahoo(※5)から転載しました。
写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/3966
(※3)https://grici.or.jp/4006
(※4)https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/gangtai/hcm-11152023090134.html
(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/be6279c2b24d677ac554efbc37ad992f7fcad91c
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11月15日、台湾の総統選に関して、野党の国民党と台湾民衆党が連携することが決まった。国民党のシンボルカラー「藍」と台湾民衆党のシンボルカラー「白」を取って、これを「藍白合作」と称する。
今年2月1日のコラム<「自由貿易は死んだ!」と嘆いた台湾TSMC創始者・張忠謀と習近平の仲が示唆する世界の趨勢>(※2)や2月12日のコラム<習近平「台湾懐柔」のための「統一戦線」が本格稼働>(※3)で、「藍白合作」があり得るという趣旨のことを書いた時、在日の台湾人ジャーナリストを中心として「そんなことなど絶対にあり得な――い!」と激しく批判していて驚いた記憶がある。しかし実際には「藍白合作」が実現したのだから、批判していた人たちの主張は正しくなかったことになる。
今となっては「藍白合作」に関して数多くの情報が中国語のネット空間に出回っているが、その中の一つであるアメリカのメディアRFA(Radio Free Asia)中文は<台湾の野党勢力は統合に成功し、世論調査で総統と副総統の選出が決まる>(※4)というタイトルで、11月15日に決定内容の詳細を報道している。
それによれば、台湾の野党勢力である国民党と台湾民衆党は、馬英九前総統の仲介と調整の下、「藍白合作」を宣言した上で、「世論調査によって、連立野党の総統と副総統の候補者を選ぶことに合意した」とのこと。非常に合理的な決定だ。
立候補者は国民党の侯友宜氏と台湾民衆党の柯文哲氏だが、どちらが総統として立候補し、どちらが副総統になるかに関しては、内部で取り決めるのではなく、世論調査で決めるという。それなら内部でのもめ事がなく、決めやすいのかもしれない。
調査結果は、11月7日から11月17日にかけて調査専門家によって検討・評価され、18日(土)の朝、馬英九基金会が結果を発表することになっているという。
侯友宜氏は「結果がどうなろうとも、藍白が協力して台湾と人民を統一し、同時に人民の意思に合致し、政党の交代を実現し、腐敗した無能な民進党(民主進歩党)を排除し、台湾海峡の両岸が平和になり、台湾海峡が安定し、人民が安心できるようになることを願っている」と述べた。
柯文哲氏は「水曜日(15日)にはアメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席がサンフランシスコで会談するが、最も重要な議題は台湾問題だということは分かっている。だから今日は非常に機嫌が悪いんだ。台湾は世界で最も戦争が起こりやすい場所とされていて、その結果、ウクライナとイスラエルでさえ最も深刻な場所とは見なされなくなり、台湾は世界で最も危険性の高い場所になろうとしている」という趣旨のことを述べているが、過去に何度も「民進党が大っ嫌いだ!なぜなら民進党だと戦争が起きるからだ!」と述べたことがある。
台湾の一部では、「藍白合作」は中国側の要望であり、世論調査によって総統と副総統を決めるというアイディアも、中国が出したものだという批判もあるようだが、野党が複数分立していたら、当然、政権与党・民進党の頼清徳候補には勝てないことになるのは、誰の目にも明らかな論理だろう。それは、選挙のある国なら、どの国でも同じだ。
現在の総統選立候補者の支持率は、概ね以下のようになっている。概ねというのは、台湾には「民意調査機関(民間の小さな団体もある)」が非常に多く、どの機関・団体が調査したかによって、相当に違いが出て来るからだ。従って、それら多くの調査機関・団体の平均値を見るしかなく、「概ね」という幅のある値になる。以下に示すのは11月10日前後の平均値だ。
●民進党の頼清徳:約32.9%
●国民党の侯友宜:約23.9%
●民衆党の柯文哲:約23.1%
●無党派の郭台銘:約 5.0%
民進党のシンボルカラーは「緑」だが、頼清徳と「非緑陣営」を分けて調査したデータもある。それは必ずしも上記の合計と一致するわけではなく、
●緑の頼清徳:約35%
●非緑陣営:約50.5%
となっている。また頼清徳と「侯友宜+柯文哲」とに分けた場合の調査もあり、その場合は平均として
●頼清徳:約39%
●侯友宜+柯文哲:約47.4%
という感じで、頼清徳氏はなかなかに強い。
侯友宜と柯文哲を比較すると、何れもわずかに侯友宜が高いので、侯友宜が総統候補、柯文哲が副総統候補として立候補することになる可能性もある。18日の午前中にはどうなるかがはっきりするようだ。
郭台銘氏も必要な推薦人29万人を遥かに上回る100万人以上の推薦人を得ているので、郭台銘にも立候補資格がある。ただ支持率が低いので、ひょっとしたら、たとえば「侯友宜が総統、柯文哲が副総統、郭台銘が首相(行政院長)」といった内閣が出来上がる可能性もなくはない。どうなるかに関しては、18日および届け出の締め切り日24日の結果を見て、さらに分析を深めたい。
さまざまな角度から見た民意の情況や「藍白合作」に関しては、拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で書いた。
台湾で起きている批判の通り、「非緑陣営」が連盟を結べば結ぶほど、中国には有利になる。親米ではなく、中立ではあるものの親中に傾いており、独立を叫ばないという点で一致しているからだ。独立さえ叫ばなければ戦争は起きない。すなわち「台湾有事」という事態にはなりにくい。「第二のCIA」と呼ばれているNED(全米民主主義基金)の活躍もしにくくなる。
そうなると、「日本有事」も起こらなくなるわけだが、日本人はどちらを望むのか。
真相を見極める複眼的視点が、日本人にも要求されている。
追記:1971年10月25日に、「中華民国」台湾はアメリカがリードして国連から追い出された。アメリカは「中国」を代表する国家は「中華人民共和国」(共産中国)一国しかないとして「一つの中国」を認め、「中華人民共和国」が国連に加盟する方向に強引に持って行った。その瞬間、中国が「台湾は中国の不可分の領土」とすることを、国連が認めたことになる。もしこれを覆したいのなら国連で再議決するしかない。平和裏になら統一することもアメリカは認めている。
国連で再議決する以外に台湾統一を阻止する方法は、唯一、中国が武力を行使したときである。したがって今となっては統一させたくないアメリカは、何としても台湾有事を創り出したいと考えている。
1946年から1948年にかけて戦われた国共内戦(国民党と中国共産党の内戦)で共産党軍により食糧封鎖され家族を餓死で亡くし、餓死体の上で野宿させられて恐怖のあまり記憶喪失になった筆者としては、どんなことがあっても、再び中国共産党と、当時の国民党が逃げた先である台湾との間に戦争が起きることだけは阻止したい。だから台湾が戦争をしない道を選ぶことを望んでいる。平和統一実現を望んでいるのではない。台湾の民意は「統一は反対だけど、戦争も反対」というのが主流だ。この状況で習近平は絶対に統一はできない。しかし戦争が起きないことは重要だ。その意図をご理解いただきたい。
この論考はYahoo(※5)から転載しました。
写真: ロイター/アフロ
(※1)https://grici.or.jp/
(※2)https://grici.or.jp/3966
(※3)https://grici.or.jp/4006
(※4)https://www.rfa.org/mandarin/yataibaodao/gangtai/hcm-11152023090134.html
(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/be6279c2b24d677ac554efbc37ad992f7fcad91c
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帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(2)【【中国問題グローバル研究所】
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2024/11/27 16:21
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帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【【中国問題グローバル研究所】
*16:16JST 帰化中国人投資家が日本を乗っ取る?(1)【【中国問題グローバル研究所】
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2024/11/27 16:16
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トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】
*16:56JST トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆イーロン・マスク:(バイデン政権における)対中関税反対を表明イーロン・マスクは今年5月23日にパリで開催された大手テクノロジー企業の経営者などが集まる毎年恒例のビバテック会議に登壇し、「現在、中国のEVに対する米国の関税に反対する」(※2)と表明した。バイデン政権が、トランプ前大統領が導入した多くの関税を維持しながら、中国のEVに対する関税を4倍の100%以上に引き上げることに関して、イーロン・マスクは「市場を歪めるような措置は好ましくない」と述べている。イーロン・マスクはもともと民主党を支持する傾向にあったが、2021年8月5日にバイデンが呼び掛けたEVサミットにイーロン・マスクだけが招待されなかったことがあった(※3)。バイデンはホワイトハウスにゼネラルモーターズ、フォード、(フィアット・クライスラーとフランスのPSAが合併して設立された)ステランティスのCEOたちを招待しながら、世界最大のEVメーカーであるテスラのCEOイーロン・マスクを招待しなかったのだ。イーロン・マスクは当日Xに「いやー、テスラが招待されなかったのは奇妙じゃないかな」と投稿し(※4)、不満を漏らした。以来、バイデンから心が離れていき、2024年7月14日に起きたトランプ銃撃事件により、一気に強烈なトランプ支持に変わっていったようだ。翌日の7月15日にコラム<中国ネット民 トランプの「突き上げた拳」を熱狂絶賛――「これぞ強いリーダー!」>(※5)を書いたが、なんだか筆者には、中国のネット民とイーロン・マスクには一脈通じるものがあるように感ぜられる。◆イーロン・マスク:戦争屋ネオコンに反対と投稿トランプが勝利宣言をすると、イーロン・マスクは11月6日にXで<ネオコンの戦争屋に力を与えるべきではないことに賛同する>(※6)と投稿した。ご存じのようにネオコン(Neoconservatism、新保守主義者)は自由主義や民主主義を重視して「民主」を輸出し、世界各地の親米的でない政権を転覆させて武力介入も辞さない政治思想集団だ。いうまでもなくNED(全米民主主義基金)は、このネオコンのもと世界各地で暗躍し、「民主」を輸出して戦争を仕掛ける組織である。トランプが米国の利益を最重要視するのに対して、ネオコンはグローバリゼーションを広げて世界における米一極支配を目指す。トランプがNEDを嫌うことは11月5日のコラム<トランプは実は習近平やプーチンが好きで、民主の輸出機関NEDが嫌い>(※7)で書いた。ネオコンはトランプ1.0政権ではジョン・ボルトン(大統領補佐官)などが一部入り込んでいたため、たとえばトランプが金正恩と会談して朝鮮半島における第二次世界大戦以降の紛争を解決しようとしたことを阻止してしまった。トランプはどれだけこの事を後悔しているかしれないと推測する。トランプは朝鮮半島問題を解決して、ノーベル平和賞をもらいたかったのだ。2016年5月に、ベトナム戦争終結に寄与したとしてノーベル平和賞を受賞したキッシンジャー元国務長官から外交に関する手ほどきを受けた時から、トランプはノーベル平和賞受賞を目指していた。そのトランプが嫌う「戦争屋ネオコン(→NEDの暗躍)」をイーロン・マスクも嫌っていることを知ったのは、筆者にとっても大きい。◆トランプ2.0は、習近平にとっては悪くない以上さまざまな側面から、イーロン・マスクはトランプ2.0の対中高関税に対する緩衝材になるだけでなく、何よりもNEDの暗躍を一定程度は抑え込むだろうということによって、習近平にとっては非常に悪くない政権になるのではないかと思うのである。中国は米国から高関税などの制裁を受けることに関しては、少しも恐れていない。むしろ、その制裁があったからこそ自力更生を加速強化させてくれたし、結果ハイテク国家戦略「中国製造2025」は、その目標年である来年2025年までにほぼ完遂する。最先端の半導体製造装置に関しては未達成だが、他の新産業のほとんどの分野において中国は今や世界一になっている。また、仮に高関税をかけられても、中国はBRICS+という非米側陣営を拡大することによって経済的な結びつきを強化し、米一極支配から抜け出そうとしている。そのことは10月30日のコラム<中露を軸とした「BRICS+」の狙い G7を超えて「米一極支配からの脱出」を図る>(※8)で書いたとおりだ。実際にどうなるか、未知数はあるものの、少なくともトランプ2.0は習近平にとって決して悪いものではないと考えていいだろう。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。ドナルド・トランプ前大統領を応援するテスラのイーロン・マスクCEO(写真:REX/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.reuters.com/business/autos-transportation/elon-musk-im-against-tax-incentives-evs-2024-05-23/(※3)https://edition.cnn.com/2021/08/05/business/tesla-snub-white-house-event/index.html(※4)https://x.com/elonmusk/status/1423156475799683075(※5)https://grici.or.jp/5451(※6)https://x.com/elonmusk/status/1853944431512314093(※7)https://grici.or.jp/5746(※8)https://grici.or.jp/5725(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/107c839d144ea564fd20c010880197274142511b
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2024/11/11 16:56
GRICI
トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(1)【中国問題グローバル研究所】
*16:45JST トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。大統領選に圧勝したドナルド・トランプ前大統領は、選挙運動中に「全ての国に10~20%、中国からの全輸入品に60%の関税を課す」と表明している。しかし最大のトランプ支援者となったテスラCEOのイーロン・マスクは、EVの上海工場で莫大なビジネス権益を有しているだけでなく、中国政府に特別な厚遇を受け、習近平国家主席がトップを務める清華大学経済管理学院顧問委員会(海外大手企業トップが集まり中国経済発展を助ける委員会)のメンバーの一人だ。李強国務院総理(首相)が上海市の書記だったころに上海工場を設立したため、李強首相とも特別に仲がいい。母親のメイ・マスクともども、大の「中国ファン」なのである。そのため昨年は「台湾は北京政府の統治下にあるべきだ」として台湾の平和統一を支持する発言をしたり、バイデン政権が対中高関税をかけることに対して反対の表明をしたりしている。そんなイーロン・マスクが来年1月から始まる第二次トランプ政権「トランプ2.0」で発令されるであろう対中高関税政策を黙って見ているだろうか。おそらくイーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるのではないかと思われる。イーロン・マスクはまた「戦争屋ネオコンに反対!」とXに投稿しており、アメリカ・ファーストのトランプはそのネオコンの下で動く「第二のCIA」であるNED(全米民主主義基金)が嫌いだ。習近平にとって、トランプ2.0は、心地悪くはないものとなる可能性がある。◆テスラEVの利益のほとんどは上海工場から世界一の大富豪として知られるイーロン・マスクは、EV(電動自動車)の製造工場をアメリカのカルフォルニアとテキサスに持っているが、2023年の生産台数)はそれぞれ55.5万台と14.6万台で、あまり多くはない。一方、上海工場での2023年の生産台数は95.8万台に上り、全生産能力の半分以上を占めるに至っている。また今年9月には、上海工場から100万台目の中国製EVを輸出したと発表した。それが可能になったのは、習近平が上海工場設立に対して、独資企業としてスタートしてもいいという特別の厚遇をしたからだ。外国企業に対する独資認可は、テスラ上海工場が初めてのケースである。2019年1月7日に上海工場が着工し、同年12月30日には最初の車が納車された。着工から納車まで1年もかからなかったというこの生産スピードは、サプライチェーンが中国内に全て揃っているお陰でもある。習近平は2015年にハイテク国家戦略「中国製造2025」を発布したが、イーロン・マスクの登場は、その戦略にぴったりと当てはまった。拙著『嗤う習近平の白い牙 イーロン・マスクともくろむ中国のパラダイム・チェンジ』で詳述したように、習近平は「中国製造2025」達成を可能ならしめるためにも、テスラ上海工場をそのバネにする必要があったのだ。事実、これをきっかけに中国のEV製造は一気に成長して世界一になった。習近平にとってイーロン・マスクは無くてはならない存在だし、イーロン・マスクにとっても中国は欠かすことのできないビジネス・パートナーだ。したがってイーロン・マスクが対中高関税の緩衝材となるのではないかと推測されるのである。◆中国のネット:イーロン・マスクが対中高関税の潤滑油になるたとえば11月8日の新浪財形網には<トランプがホワイトハウスに戻ってくるが、マスが中米間の潤滑油になるのではないか?>(※2)という見出しで、筆者と同様の観測をしている。またシンガポールの聯合早報も11月7日、<トランプの高関税は中国にどの程度の打撃を与えるか? 学者はマスクの立ち位置留意すべきと>(※3)という見出しで北京特派員の見解を報道している。それによれば「中国で莫大なビジネス権益を持つ起業家であるイーロン・マスクは、米中貿易摩擦の緩衝材になる可能性がある」と学者が述べているとのこと。トランプ勝利が判明する前の11月4日、中国のネットの観察者網は<マスクは極端な親中派なので、米中間の重要な対話者として機能するのでは?>(※4)という趣旨の分析をしている。こういった視点からの分析は枚挙にいとまがないほど中国語のネット空間に溢れている。◆イーロン・マスク:北京が台湾を統治すべきと表明2023年9月13日、ロサンゼルス(のRoyce Hall on UCLA’s campus)で開催されたAll-In Summit 2023にリモートで参加したイーロン・マスクは、「台湾と中国の関係」を「ハワイと米国の関係」にたとえた(※5)。凄いスピードで話しているので、喋っている言葉を逐語訳すると何を言っているかわからなくなる。そこで彼の言わんとするところを要約してピックアップすると、以下のようになる。●台湾の再統一は中国の根本的な問題だ。半世紀以上にわたり、中国は台湾を返還する政策をとってきた。●彼らの視点から見ると、中国にとっての台湾は、アメリカのハワイのようなものかもしれない。●ただ、中国の再統一の試みを、米国の太平洋艦隊が武力で阻止したために中国の一部ではないようにしてしまっているだけだ。●台湾は中国の不可欠な部分であるが、台湾は「故意に中国の所有物であることを否定し」、米国が「いかなる形の再統一努力をも妨害している。(2023年9月のイーロン・マスクの発言要旨は以上)すると、9月14日、台湾外交部がマスク発言に対して激しく抗議した(※6)。それでもなお、イーロン・マスクは2023年11月になると、また台湾に関して言及した。2023年11月10日、レックス・フリードマンが主催するポッドキャストにオンラインで取材に応じ、以下のように回答して(※7)いる。●中国は台湾に対して強い感情を抱いている。その点については、長い間、非常に明確にしてきました。この観点から言えば、ハワイのような国ではなく、ハワイよりも重要な国の一つということになる。●中国は台湾を、中国の基本的な一部、台湾ではなく「中国の台湾島」と見なしています。今は台湾は中国の一部になってないが、そうあるべきだ。それが実現していない唯一の理由は、米国の太平洋艦隊のためだ。●中国は平和的もしくは軍事的に台湾を併合すると明言していますが、中国の立場からすれば、台湾を統一する可能性は 100%だ。(2023年11月のイーロン・マスクの発言要旨は以上)ここまでの踏み込んだ発言を断言的に表明したイーロン・マスクという人物が、習近平にとって、どれだけ重要か想像がつくだろう。そうでなくともトランプは大統領選挙中に何度も「もし中国が台湾を武力攻撃したら、あなたならどう反応するか?」という複数のメディアの問いに、毎回回答をはぐらかしてきた。それはバイデン大統領が何度も「米国は介入する」と明言した意思決定と歴然たる対比を成していた。ましてやイーロン・マスクがトランプ側に立った今、トランプ2.0における対台湾の認識は習近平にとって何よりも重要なものだ。トランプは11月6日の勝利宣言演説(※8)で、イーロン・マスクを「超天才」と呼び、「われわれの天才を守らなければならない」とまで述べている。きっとイーロン・マスクの意見を政権運営に取り入れていくことだろう。このこと一つをとっても、トランプ2.0における米中関係がイーロン・マスクの存在によりどれだけ悪化を防ぐか、その効果は計り知れない。「トランプ2.0 イーロン・マスクが対中高関税の緩衝材になるか(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。ドナルド・トランプ前大統領を応援するテスラのイーロン・マスクCEO(写真:REX/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://finance.sina.com.cn/jjxw/2024-11-08/doc-incvkiwc1758856.shtml(※3)https://www.zaobao.com.sg/news/china/story20241107-5307017(※4)https://www.guancha.cn/internation/2024_11_04_754094.shtml(※5)https://www.youtube.com/watch?v=tKqJ5-kkUGk(※6)https://edition.cnn.com/2023/09/14/business/elon-musk-taiwan-china-comments-intl-hnk/index.html(※7)https://www.youtube.com/watch?v=JN3KPFbWCy8(※8)https://www.youtube.com/watch?v=WI9fbbQ-aTo(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/107c839d144ea564fd20c010880197274142511b
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2024/11/11 16:45
GRICI
トランプは実は習近平やプーチンが好きで、民主の輸出機関NEDが嫌い【中国問題グローバル研究所】
*10:31JST トランプは実は習近平やプーチンが好きで、民主の輸出機関NEDが嫌い【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。世界中に「民主」を輸出しては戦争を仕掛けるNED(全米民主主義基金)は現在、アメリカの民主党を中心に全世界で暗躍しているが、ドナルド・トランプ前大統領はNEDが嫌いで、実は習近平国家主席やプーチン大統領が好きなようだ。トランプ政権時代だった2018年、アメリカの雑誌The New PublicがCNNの録音を基に報道している。習近平やプーチンにしても、中国やロシアに潜り込んで反政府勢力を育てあげては政府転覆をさせようと暗躍しているNEDこそは最大の敵なので、当然ながら民主党政権よりはトランプに当選してほしいと思っているだろう。本稿ではThe New Public情報を、いくつかのパーツに分けてご紹介し、最後に中露が団結する原因の一つに関しても触れる。◆The New Public-1:トランプは習近平やプーチンを尊敬している1914年に創刊されたアメリカの権威ある雑誌The New Publicは2018年3月6日に<Trump’s Disdain for Democracy Promotion (トランプは民主主義推進を軽蔑している)>(※2)というタイトルで、トランプが習近平やプーチンを尊敬し、NEDを嫌っているという趣旨の内容の報道をしている。トランプの発言は、CNNの録音に基づいているらしい。作者はカナダ人の作家でありジャーナリストで、The New Publicのスタッフ・ライターでもあるJeet Heer(ジート・ヒヤー)だ。その内容をテーマ別にご紹介したい。まずは習近平とプーチンに関して。●ドナルド・トランプ大統領は、マー・ア・ラーゴで行われた非公開の募金活動で、中国の習近平国家主席に関して「彼は権力把握に関して実に賢明だ。何と言っても彼は今や終身大統領だ」と驚嘆してみせた上で、「私もいつか、それを試してみる必要があるだろう」と述べた。●トランプの周りに集まった寄付者たちは笑ったが、彼の独裁者称賛は不吉だ。2016年、彼はウラジーミル・プーチンを「非常にリーダー的だ…これまでの大統領がリーダーであった以上に」と述べたことがあり、プーチンをも称賛した。●トランプは、海外で民主主義と人権を促進することがアメリカの外交政策上の利益になるとは考えていない。それどころか、トランプ政権は、そうする任務を負った機関を弱体化させようとしている。◆The New Public-2:トランプはNEDを嫌い弱体化させようとしている●「国務省の2019会計年度予算要求に込められているのは、NEDの予算を削減するだけでなく、National Democratic Institute(全米民主党研究所)やInternational Republican Institute(国際共和研究所)を含む中核機関とNEDとの関係を解体する提案だ」とワシントン・ポストは報じた。●NEDとこれらの研究所にとって、この提案は彼らの組織だけでなく、彼らが献身している民主化の使命に対する攻撃でもある。●トランプ氏の民主主義推進に対する嫌悪感は、彼の権威主義的傾向と一致している。◆The New Public-3:トランプは「他国の内政干渉」より「自国の強化」を重視●20世紀のほとんどの間、民主党は「平和な世界を確保する最善の方法は、他の国々に民主主義の価値観と制度を採用するように奨励することである」と考えていた。共和党は「アメリカは自国の民主主義の守護者であり、他国の内政には責任がない」という、よりシニカルで孤立主義的な見方に傾いていた。●ところが共和党のレーガン大統領は、「民主主義のインフラを育成する」よう呼びかけ、1983年にNEDが超党派の支持を得て設立された。民主主義の推進を外交政策の要に据えるにあたり、レーガンは、少し前までリベラルな民主党員や社会主義者だったネオコンの幹部に助けられた。ネオコン知識人や政策オタクたちは、民主主義推進の中心性を主張した。●しかし、レーガンやジョージ・W・ブッシュのような共和党の大統領の許可にもかかわらず、民主主義の推進は右派から普遍的に支持されることは決してなかった。トランプはレーガンの伝統(NED)を放棄し、(レーガン以前の)硬派な現実政治に戻りつつある。●1980年代から、一連の民主主義革命が南アメリカ、アジア、アフリカ、東ヨーロッパの多くの国を襲った(筆者注:「アラブの春」など)。多くの場合、これらの革命は、超党派のアメリカの外交政策によって支援されたり、促進されたりした。近年、民主主義は後退し始めており、権威主義が台頭している。●この変化は、トランプの支援を受けて持続する可能性が高い。民主主義がますます危機に瀕しているという事実は、NEDのような機関をより重要にしている。トランプはそれを弱体化させ、むしろ、権威主義者や有力者になりそうな人々に、「アメリカは彼らの邪魔をしない」と言っている。●2020年にトランプが民主党に取って代わられたとしても、トランプが共和党の民主化に対する軽蔑を復活させた今、少なくともしばらくは、両党が団結して民主化を推進していた日々は戻らないかもしれない。(以上)◆The New PublicはNEDが戦争の武器になっていることに触れていないThe New Publicが、「トランプがNEDを嫌っていること」と「本当は習近平やプーチンが好きなこと」に関して報道しているのは実にすばらしく、また「アラブの春」に象徴される「他国の民主化への働き」を論じているのは高く評価する。それは拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』で考察した内容と一致し、また「国務省の2019会計年度予算要求」によって、筆者の分析を補強していてくれているので非常にありがたい。しかし、肝心のことを忘れてはいないか。それは、NEDは「他国の民主化を支援すること」によって、「他国への内政干渉」を行い、「民主主義的でない国」=「アメリカに親密でない国」の政権を転覆させるという、国際法的には許されないことを設立後からこんにちまでやり続けていたという事実だ。その結果、絶えることのない紛争を巻き起こし続けてきた。世界から戦争が消えないのは、そのせいである。それ故にこそ、筆者はNEDが何をやってきたのかを徹底して分析し、「第二のCAI」として「戦争を先導する役割」に反対し続けてきた。ネオコンは戦争屋と結びついているので、この世から戦争が消えると商売が繁盛しないため、いつでも、どこかで戦争が起きている状態が最も望ましいと考えている。だから世界各地でNEDが暗躍し続けているのだ。この視点がThe New Public報道の作者であるJeet Heer氏には完全に欠落している。◆習近平がNEDを嫌うわけ:NEDが台湾独立を支援しているから何度も言い続けてきたので、くり返すのも申し訳ないが、習近平がNEDを嫌い、反スパイ法を制定したのは、NEDが台湾に支局を置いて、台湾独立をけしかけているからだ。中国大陸内での監視が激しく、NEDスタッフが上陸して暗躍するのが困難になったので、最近ではネットを用いて「白紙運動」などをけしかけている。それも拙著『習近平が狙う「米一極から多極化へ」』で詳述した。そのため、習近平はトランプが当選してくれることを願っているだろう。もちろんトランプは中国に高関税をかけたり、さまざまな制裁をしたりしてくるだろうが、そのようなことはいくらでも対処できる。むしろ、制裁により国産を目指すしかなくなったので、新産業における中国の目覚ましい発展を可能にさせてくれたほどで、制裁とか高関税などは、中国にとっては小さな問題でしかない。◆ウクライナの親ロシア政権を転覆させたのはNEDとバイデンこれに関しても何度も書いてきたが、たとえば2023年12月4日のコラム<ウクライナ危機を生んだのは誰か?PartIV 2016-2022 台湾有事を招くNEDの正体を知るため>(※3)などに書いたように、NED自身が年次報告書でNEDの活動の実態を証言しているので、これを疑う余地はない。(陰謀論というレッテルを貼って事実から逃げている人は、NEDの年次報告書をご覧になることをお勧めする。)結果、プーチンももちろんNEDの暗躍には絶対に反対で、それ故に中露の結びつきは、ちょっとやそっとでは弱体化しない。最近では露朝が近づいたので、習近平とプーチンの仲に「亀裂が?」という「希望」を書きたがる評論家が多いが、それは事実とは異なる。今年10月30日に書いたコラム<中露を軸とした「BRICS+」の狙い G7を超えて「米一極支配からの脱出」を図る>(※4)に書いたように、習近平とプーチンは巨大な世界戦略のもとに行動しており、石破内閣が北朝鮮のウクライナ派兵を足掛かりに中国に接近しようとしても、まるで話にならない厳然たる事実があることを見逃してはならない。なお、いまこの時点でアメリカ大統領選の投票が行われているはずだが、結果は明日6日以降にならないと判明しないようなので、「当選」に関しては未来形で書いている。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※5)より転載しました。大統領選挙中のトランプ前大統領(写真:ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://newrepublic.com/article/147290/trumps-disdain-democracy-promotion(※3)https://grici.or.jp/4885(※4)https://grici.or.jp/5725(※5)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f10f4eeb3e2ad1a0c7cecc7f2ae36103b1729b48
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2024/11/06 10:31
GRICI
中国「反日」のジレンマ なぜ「短期滞在ノンビザ」日本はダメで韓国はいいのか?【中国問題グローバル研究所】
*15:55JST 中国「反日」のジレンマ なぜ「短期滞在ノンビザ」日本はダメで韓国はいいのか?【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。中国は11月2日、韓国など9カ国を15日以内の短期滞在のビザ免除(ノンビザ)対象にすると発表した。日本は対象となっていない。韓国は良くて日本がダメな理由はどこにあるのか?考察を深めると、そこには中国「反日」のジレンマが垣間見える。◆中国政府ノンビザ対象国追加を発表中国政府は11月2日、<中国はスロバキアを含む9カ国に対してビザ免除政策を試験的に実施している>(※2)という見出しで9ヵ国のビザ免除を追加的に発表している。内容は以下の通り。――中国外交部領事司は、中国と諸外国との人材交流をさらに促進するため、中国はビザ免除国の範囲を拡大し、「スロバキア、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、アイスランド、アンドラ、モナコ、リヒテンシュタイン、韓国」の一般パスポート保有者に対するビザ免除政策を試行することを決定した。2024年11月8日から2025年12月31日まで、上記の国の通常のパスポートを保有する者は、ビジネス、観光、家族、親族や友人訪問、乗り継ぎなどのために15日を超えない範囲内でビザなしで中国に入国できる。ビザ免除の条件を満たさない者は、入国前に中国渡航へのビザを申請する必要がある。(以上)日本にとって気になるのは、なぜ韓国に対して免除するのに、日本がその対象から除外されたかだ。韓国メディアは、韓国が中国のビザ免除対象になるのは初めてだと、驚きを以て伝えている。中国は実は、2020年のコロナ禍以前は日本に対しても短期のビザなし渡航を認めていたが、コロナ禍を受けてすべての国に対してノンビザを停止した。コロナ終了に伴い中国は短期ノンビザ対象国を広げているが、日本はこれまでのところ対象となっていない。日本側は再開を要望しているが、中国政府は中国人の訪日でも同様に免除する「相互主義」を求めて応じていないと一般に言われている。果たしてそうだろうか?◆日中双方にない外交・公用ビザ「相互免除」2024年5月28日、中国領事服務網は<中国と外国の相互ビザ免除協定一覧表>(※3)を公開している。この中に「日本」はない。G7が全てないのかと言ったらそうではなく、「ドイツ、フランス、イギリス、イタリア」は入っている。しかし、日本以外に、「アメリカとカナダ」も入っていない。G7以外でクワッドなどの対中包囲網に参加している国を見てみると、インドやオーストラリアも免除されていない。しかし、たしかに「韓国」は入っている。中国と韓国の間では・2013年8月10日に外交旅券保持者に対して、・2014年12月25日に中国側公務旅券に対して、・2014年12月25日に韓国側官用旅券に対して、それぞれビザを免除することが取り決められた。それなら日本はどうなのかを確認してみよう。日本の外務省の令和6年(2024年)10月1日時点における<外交・公用旅券所持者に対する外交・公用旅券免除国>(※4)を見ると、たしかに中国が入っていない。しかし、日本はコロナ前も中国を外交・公用旅券免除国にしていないのに、中国は日本に対して短期ビザ免除を実施していた。したがって、「外交・公用旅券所持者に対する外交・公用旅券免除国」の対象国にしないことが理由ではないことが明白だろう。その証拠に、オーストラリアの場合、「外交・公用旅券所持者に対する外交・公用旅券免除国」の対象ではないのに、今年6月には短期ビザが免除されるた(※5)。◆では、なぜ日本は免除されないのか?今年7月30日、駐日本国の呉中国大使は記者会見で<ビザ免除再開しないのは「日中関係が原因」>(※6)と述べ、日本に対して改善を求めた。報道によれば、日本人が訪中する際のビザ免除が再開されない理由について、呉大使は「中日関係の全体の雰囲気や、直面している困難、立場の違いが関係している。条件面の調整ではなく、停滞する日中関係が影響している」という認識を示したとのこと。日中関係がコロナ前とコロナに入ってからでは、どのように違っただろうか?考えられるのはバイデン政権になったあと、日米豪印による「クワッド」や米英豪による「オーカス」などの小さなグループを最大限に活用して対中包囲網を形成し始めたことだ。それでもオーストラリア(豪)などがグループのメンバーであっても短期ビザ免除になったのは、「日本ではないから」である。韓国など、米韓軍事同盟により激しい軍事演習をやっていても、ノンビザの対象になる。それもやはり「日本ではないから」だ。なぜ「日本」だといけないのか。それは中国から言わせれば「中国を侵略したから」以外のなにものでもない。毛沢東はそもそも日中戦争時代に日本軍と共謀して国民党軍の蒋介石をやっつけようとしたくらいだから、プロパガンダでは「抗日戦争を戦っているのは共産党軍だ」と主張して民衆を惹きつけるために激しく「抗日」を叫んだが、実際は1956年に遠藤三郎(元大日本帝国陸軍中将)などを中南海に招聘して「皇軍に感謝する」と言ったくらいだ。しかし、その毛沢東でさえ、日本が朝鮮戦争の武器弾薬の倉庫となり日米安保条約を結ぼうとしたときには「反対武装日本」運動を全国的に大々的に展開した。街のいたる所に「中国侵略を終えたばかりの日本が、アメリカのポチになって再軍備をしようとしている」ことを表すポスターが掲げられていた。江沢民が反日教育を始めたあとは、拙著『中国「反日」の闇 浮かび上がる日本の闇』にも詳述したように、日本が国際社会で現在どのような動き方をしているかをつぶさに教える学習指導要領に沿って、若者は時々刻々の日本の動きを日々教えられる。だから日本の政治姿勢を実によく知っている。結果、「日本帝国主義」への怒りは、「現在の日本」へと投影されていく。それがネットで拡散して、「反日感情同調圧力」となっているのだ。岸田元首相はバイデンに諂(へつら)ってNATOの東京事務所を設置すべく動いていたし、自民党総裁選前の河野太郎氏は9月9日、NATOへの日本の加盟に関し「将来、そういう選択肢があってもいい」と述べ、首相に就任した場合、NATOの連絡事務所を東京に誘致する考えも示した(※7)。そして石破首相は今も「アジア版NATO」の考えを否定してはいない。「そのような日本を許してなるものか」という憤りが中国社会全体に流れている。かかる状況で、もし日本に甘い顔を見せたら、ネット民がどのような反応をするかは、中国政府は百も承知だ。韓国に短期ノンビザを認めただけで、中国のネットは荒れている(※8)。ましてや日本になどノンビザを認めたら、若者がどれだけ習近平を「売国奴」と罵るかわからない。だから、今はできないのだ。◆反日のジレンマ習近平としても日本企業には投資してほしいし、特に日本の半導体製造装置関連企業には中国に協力してほしくてならない。多くの観光客にも訪中してほしいからこそ、コロナ後に短期ノンビザ対象国を増やしているところだ。しかし、日本が台湾独立や軍事拡大の方向に動き、ましてや徒党を組んで対中包囲網などを試みようとしている限り、絶対に日本に甘い顔をするわけにはいかない。そこには「反日教育」を強化するしかないところに追い込まれた習近平のジレンマがあるはずだ。胡錦涛政権初期に胡錦涛は「過度の反日教育はナショナリズムを招き好ましくない」として馬立誠に「対日新思考」を書かせたところ、胡錦涛は売国奴として罵倒され、2008年の時には「現在の李鴻章」とまで言われて危機一髪の状況にまで追い込まれている。習近平が中共中央総書記に選ばれることになっていた2012年秋、建国以来最大規模と言ってもいいほどの激しい反日暴動が起きた。だから11月に総書記になった習近平は、江沢民が始めてしまった「反日教育」を強化する以外に選択肢はなかったのだとも言える。しかしもし、明日5日の米大統領選で「アメリカ・ファースト」のトランプが当選したら、事態は一気に変わっていく可能性もないではない。なぜなら、高関税はかけても、徒党を組んでじわじわと対中包囲網を形成したり、NED(全米民主主義基金)を暗躍させて台湾独立をそそのかすような動きを、トランプはしないからだ。日本が対米追随をしても、そこそことなる。明日の米大統領選の結果が待たれる。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。JAPAN PASSPORT(写真:吉原秀樹/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://www.gov.cn/lianbo/bumen/202411/content_6984511.htm(※3)http://cs.mfa.gov.cn/wgrlh/bgzl/202110/t20211029_10403855.shtml(※4)https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/fna/page22_002019.html(※5)https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202406/content_6959255.htm(※6)https://www.asahi.com/articles/ASS7Z3J9SS7ZUHBI02MM.html(※7)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA082BW0Y4A900C2000000/(※8)https://www.voachinese.com/amp/china-expands-visa-free-policy-to-0-more-countries-including-south-korea-20241102/7848699.html(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/def4fadecd68e21816827d52ba4bace6922856e6
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2024/11/05 15:55
GRICI
米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(2)【中国問題グローバル研究所】
*10:44JST 米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。◆国民民主の玉木代表には「石破氏を降ろすなら国会で協力する」と言って欲しかった玉木代表は各党と等距離を保ち、予算案・法案によっては自民党に協力するとしている。おまけに国民民主が首相指名選挙で1回目だけでなく2回目の決選投票においても自党の代表の名前を書くということは、それだけ無効票を増やして石破氏に有利に働くことになるのは明らかだろう。11月2日のデイリーは<「国民民主は裏自民党に」 首班指名決選投票の選択による可能性 選挙コンサルが指摘「2回目が無効票になれば」>(※2)と書き、国民民主を「裏自民」と称している。そこまでは言わないにしても、玉木代表にはせめて「石破氏を降ろすなら、自民党との国会における部分協力はしてもいい」と言って欲しかった。国民民主は野党として、現在の自民党の政治不信を批判してきたはずだ。石破首相は安倍元総理にも「辞任しろ」と迫ったのだから、今般の選挙で責任を取って辞任しないのはおかしい。特に「総理になっても、せめて予算委員会を開催してからでないと解散はしない」とあれだけ総裁選で言っておきながら、総理になった瞬間、正確に言えば総理になる前日に、「いきなり解散」を言い始めた石破首相は、それだけでも信用ができない人間性を持っており、そのような人物に日本の運命を託したくはない。そういう正義感を、玉木氏には持っていて欲しかった。今からでも遅くはないので、そのように迫るだけの豪胆さを持てば、もっと人気が上がるだろう。筆者は何度も、政治評論家(故)鈴木棟一氏が主宰していた「永田町社稷(しゃしょく)会」で講演をしたことがあるが、そのたびに玉木氏も会場におられて、講演が終わると挨拶に来られて話を交わしたものだ。非常に低姿勢でざっくばらん。感じのいい人だった。鈴木棟一氏も「ね!彼、悪くなよね」と二人のいつもの会話の中でも話題になったことがある。「応援してあげようか」と、まだ無名の玉木氏に好感を抱いていたものだ。このたびの選挙で躍進したのは祝賀したいが、しかし、政治改革をしないままの自民党を維持させる方向には動いてほしくない。別に野田代表が良いというわけではなく、このたびの一連の動き方をした石破氏を寛大に扱うとすれば、自民党はさらに小汚く動いて腐敗するだろうし、日本国民にさらなる不幸をもたらすだろうと憂うのである。選挙の結果は「民意」だ。「民意」よりも「党利」を優先しないようにしてほしい。日本の国家としての発言力・外交力を弱体化させれば、最終的に日本の権益を損ねるという、大所高所からの視点が持てるような党に育ってほしいと望む。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※3)より転載しました。衆議院選挙で惨敗した石破首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://news.yahoo.co.jp/articles/7a72df75ad6db808af092a703304280ca2ee4cb5(※3)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/086541d745f9f65623135803a1bedc1c27e32af3
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2024/11/05 10:44
GRICI
米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(1)【中国問題グローバル研究所】
*10:40JST 米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(1)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している(※1)遠藤 誉所長の考察を2回に渡ってお届けする。自民総総裁選のときの約束を破り、すぐに解散選挙を行った「嘘つき総理」に関する中国の見方は、10月28日のコラム<自公惨敗により日本短命内閣(回転ドア)が続けば中国には有利>(※2)で書いた。しかしその後、石破首相は居直りを決めていることがわかった。そのような不安定な日本の政局を中国およびアメリカは今どう見ているのか、改めて考察したい。◆観察者網:石破おろしの声が上がっても、野党が団結せずバラバラやや政府色があり、知識層が集まる観察者網は10月31日、<精彩を失う! 石破茂は大きな賭けに出て惨敗 それは中国にとっても悪いニュース>(※3)という見出しで、米中問題専門家の見解を報道している。そこには、おおむね以下のような内容が書かれている。●石破茂は首相に就任した途端、確実に勝てると読んだ賭けに出て惨敗。●石破は岸田政権が残した裏金問題をうまく解決するのかと思ったが、権力を握るとすぐに危険な動きに出て、自民党の基盤をさらに弱体化させた。●その結果、日本の政局は混乱に陥っており、この2日間、自民党内では石破の辞任を求める声が上がっている。●しかし、野党が団結していないため、自民党が政権の座に留まる可能性を高めている。野党を合わせると総得票数の過半数を占めているにもかかわらず、野党は非常に分散しており、野党連合を形成するのは自公連合を拡大させるよりも、さらに難しい。●中国のネット民が最も懸念しているのは、日本が回転ドアのように短命政権をくり返すようになったときに、日中関係がどうなるかということだ。一つには、内政で忙殺されていると中国に対して強硬なことを実施する時間などなくなるという可能性が考えられ、他方では逆に、内政があまりに不安定なために外界に敵を作って国民の目をそらせ、かえって対中強硬策を取るかもしれないという可能性もある。前者ならば「勝手にやってくれ」という感じだが、後者だと中国にとっても、これは悪いニュースになるというわけだ。(以上)10月4日のコラム<中国は石破首相をどう見ているか?>(※4)でも書いたように、自民党の中には右から左まで、どんな人でもいる。もう自民党一党だけで日本の左翼も右翼も代表できるほど、非常に幅広く網羅している。それに比べて野党は、やたら細かな主張の違いにこだわって別の党を結成しているので、政権を取りに行こうという図太さというか腹の太さがなく、たしかに「野党連携は、自公が他党を取り込んで拡大するよりも困難である」現状はある。◆環球時報:日本の政治的混乱は右翼ポピュリズムを激化させる可能性が10月29日、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」は<日本の政治的混乱は右翼ポピュリズムを激化させる可能性がある>(※5)という見出しで、日本政局の混乱を論じている。論旨概要は以下の通り。●12年間続いた「一党優位」の状況は崩壊し、最大野党・立憲民主党の台頭により、日本の政治情勢は再び「二大勢力併存」の方向へ進化する可能性がある。しかし衆議院で過半数を超える議席を保持している政党がないため、将来的に大きな不確実性をもたらす。●それでも保守・右傾化の政治生態系は変わっていない。●自民党の長期政権によってもたらされた政策の安定は、戦後日本の経済復興の重要な支えとなったが、同時に「金権政治」「派閥政治」「密室政治」など多くの欠点も生み出した。●裏金事件の影響で自民党と最大野党・立憲民主党の力は盛衰をくり返し、新たな「二党対立」の状況が到来する可能性もあるが、アメリカの共和党と民主党や、イギリスの保守党と労働党を比較しても、日本の自民党と立憲民主党の統治理念や内政・外交路線の違いは変わらない。このことは、日本が二大政党制に移行する条件が未熟であることを示している。●日本政治における社会党や日本共産党に代表される伝統的な左翼勢力は徐々に縮小し、保守と分類されるその他の大小政党が95%以上を占め、全体として政治の保守右傾化が進展し続けている。●1955年の自民党結党以来、党内の主流派論争は「経済重視、軍事軽視の保守本流」と「憲法改正と自主防衛を主張する保守傍流」の対立であり、長い間、前者が優勢だった。21世紀に入ると、小泉純一郎から安倍晋三に至る政治の右傾化の進展に伴い、「戦後体制からの脱却」を目的とした「憲法改正・軍備増強路線」が主流となった。この文脈において、岸田文雄氏は保守的な出身であったにもかかわらず、在任中に「外部の脅威」を喧伝し、日本の防衛・安全保障戦略を守りから攻撃へ大幅に調整することを推進し、戦後最大の軍拡路線を打ち出した。●経済政策の面では、安倍政権の異例の量的緩和政策による副作用、特に日本の多額の国債と累積財政赤字を前に、金融政策の正常化と財政健全化をあえて提案する政党はほとんどない。それどころか、票を集めるために「パイの塗り分け」をし、減税などの功利的な財政刺激策の提案を競っている。●一方で、国民の心をつかむために、各党の政策提案が近視眼的な功利主義やポピュリズムを強める可能性もある。外交安全保障政策の面では、日本が国内の紛争を外に転嫁することに警戒する必要がある。●国力の衰退と中国の発展を前に、日本の政界は不安を隠せず、対中政策は対立思想に満ちており、合理的な中国観や対中政策に関する議論はほとんど存在しなくなっている。(以上)この見解は完全に中国共産党、すなわち中国という国家の対日観の一部を表明しており、中国は「保守と分類されるその他の大小政党が95%以上を占め、全体として政治の保守右傾化が進展し続けている」という見解を代表している。これが「日本は日本帝国の軍国主義に戻っている」という視点となって小学校から高校に至るまで教育されるので、かつての日中戦争に対する「反日教育」が「現在の日本」と重ねられて青少年の精神に染み込んでいくのである。この詳細は『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』で考察した。これは中国の対日視点の特徴だ。環球時報がここまで赤裸々にそれを披露するのも珍しい。日本に二大政党制が出来上がらないのは、前述したように自民党内には右から左まで何でも網羅する「貪欲なまでの包摂力」があり、一党だけで日本政治が賄えることに加えて、野党の提案でも国民に受けそうだと見るや、まるで自党の提案でもあるかのように主張し始めるという貪食力もある。「旧統一教会」や「裏金」まで包摂していくので、何でもありの汚れた一党支配が日本の国力を落としていくことにつながる。また、ネットを通した無党派層の票を各党が吸収していくという意味では、右か左かは別として、「ポピュリズムへの移行傾向」は否めないのかもしれない。◆ブルームバーグ:世界がトランプの復帰に備える中、日本は内向きに一方、ガラッと変わってアメリカはどう見ているのか。一つの新聞では代表できないものの、10月29日のブルームバーグは<世界がトランプの復帰に備える中、日本は選挙後、内向きになるリスクがある>(※6)という見出しで、おおむね以下のような分析をしている。●石破氏は過半数を失ったにもかかわらず、首相に留任する意向を示唆した。●弱い連立政権は新リーダーの機動力を制限する可能性もある。●ホワイトハウスに大きな変化が現れようとしているこの時に、日本は政策停滞の新たな段階に入る危険にさらされている。●日本は1990年代以来初めて明確な勝者が出ず、世界第4位にまで落ちた(かつての)「経済大国」を、さらに弱い政府が運営することがほぼ確実となった。今のところ、その政権を率いるのは石破茂首相で、同首相は退陣する予定はなく多数派対策に没頭している。●自称「防衛オタク」の石破氏が率いるとしても、不安定な政権は、ウクライナ戦争や、より強硬な中国に対抗する台湾支援など、世界の問題で日本が今後もより主導的な役割を担っていくかどうか疑問を投げかける。また、今年の市場の混乱を招いた数十年にわたる金融・財政刺激策への過度の依存から、より正統的な政策立案への回帰を目指す日本の取り組みも減速する可能性が高い。●石破氏が戦後最短の在任期間となるのを避けるため、自民党は国民民主党などの小規模野党に連携の可能性を打診したが、国民民主党代表の玉木雄一郎氏は、自民党主導の連立政権への参加はしないと回答。しかし、法案によっては国会で協力する用意があり、かつ11月11日に国会で首相を選出する際に、2回目の決選投票でも同党は玉木氏の名前を書くと述べている。(以上)さすがにブルームバーグは最も核心を突いている。玉木代表の言動にまで着目しているのは、さすがだ「米中は惨敗した石破首相の非辞任表明をどう見ているか?(2)【中国問題グローバル研究所】」に続く。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※7)より転載しました。衆議院選挙で惨敗した石破首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://grici.or.jp/5718(※3)https://user.guancha.cn/main/content?id=1324888(※4)https://grici.or.jp/5672(※5)https://opinion.huanqiu.com/article/4K23L7NgkHx(※6)https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-10-29/japan-risks-turning-inward-just-as-world-braces-for-trump-return(※7)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/086541d745f9f65623135803a1bedc1c27e32af3
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2024/11/05 10:40
GRICI
自公惨敗により日本短命内閣(回転ドア)が続けば中国には有利【中国問題グローバル研究所】
*10:27JST 自公惨敗により日本短命内閣(回転ドア)が続けば中国には有利【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している遠藤 誉所長の考察をお届けする。自民党が惨敗し、自公連携が過半数を割った。これに関して中国は強い関心を示し、日本メディアや米メディアの転載を主としながら、一斉に報道している。その中から見えてくるのは「日本に回転ドアのように短命内閣が続けば中国に有利」という視点だ。◆中共中央宣伝部の管轄下にある中央テレビ局CCTVの速報中央テレビ局CCTV端末は、28日の午前零時から朝7時にかけて、連続3本も速報で衆院選に関するニュースを報道した。まず10月28日午前零時に<日本の連立与党 衆議院選挙で過半数を獲得できず>(※2)という見出しで、27日の日本の衆院選の最新の開票状況を速報した。立憲民主党など野党側が得票を伸ばし、自公連立が過半数を取れなかったことが明確になったとし、石破茂氏が10月1日に首相に就任したばかりなのに戦後最速の衆議院解散を9日に表明した結果だと結んでいる。同日午前4時になるとCCTV端末は再び衆院選の最終結果が出たと報道(※3)した。概略は以下の通り。●自民191議席、公明24議席、両党合わせても215議席で過半数(233)割れをした。自民党は2012年以降のすべての衆院選で過半数以上の議席を獲得してきたが、その優位性も失った。●野党は、立憲民主党148議席、維新38議席、国民民主28議席など躍進した。●日本は議院内閣制を採用しており、憲法は、統治するために衆議院において過半数が必要とは規定していないが、首相指名と議会決議の大多数の可決には過半数の票が必要であるため、議席の過半数を獲得するかどうかにかかわらず、衆議院で過半数を獲得できるかどうかは、連立与党が議会で発言する権利があるかを判断する重要な基準となる。●日本のメディアは、選挙で惨敗する中、石破茂首相が責任を問われる可能性があると分析し、石破茂氏が権力を維持し続けることができるかどうかが焦点となっている。●日本の衆議院選挙は4年ごとに行われ、現衆議院議員の任期は当初2025年10月に満了する予定だったのに、石破茂氏が新首相に選出された瞬間に、9日の衆院解散を表明したことが招いた結果だ。同日7時42分になると、CCTV端末は、今度は<裏金の影に包まれた日本の衆院選 石破茂就任後初の「試験」は失敗に終わった>(※4)という見出しで、以下のような角度から石破首相の惨敗の原因を報道している。●裏金スキャンダルに経済問題が重なり選挙に影響し、自公連立与党は大幅に議席を減らし、過半数割れをした。●自民党側は維新や国民民主との連立を模索しているが、両党の党首とも自公連合には参加しないと表明している。●自公連立が惨敗した背景の一つには経済の問題がある。近年、日本は自公連立のもと、世界第3位の経済大国からドイツに追い抜かれ世界第4位に転落した。日本国民の多くは経済生活の現状に不満を抱いている。●そこに加えて自民党の議員だけが利益を得ているような裏金事件が明るみに出て、日本国民の政治に対する信頼は失われつつある。CCTVにしては珍しくネット民のコメントがあったが、そこには「日本がアメリカの束縛から抜け出し自我(独立)を実現することを望む。なんならBRICS+に加盟してもいいんだぜ。共に手を携えて世界の平和と安定の発展を守っていかないか?」という皮肉が書いてある。◆環球時報:日本は再び回転ドア首相時代に入るのか?10月28日午前7時40分、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」電子版「環球網」は<米メディア「石破茂が下野すれば、日本は再び首相が頻繁に交代する時代に戻る可能性がある」>(※5)という見出しで、米メディアの見方を伝えている。中国にとって最も関心が高いのは、アメリカが日本の政権をどう見ているかで、日本の首相が短命でコロコロ変わっていった時代のことを「回転ドア首相時代」と呼んでいる。回転ドア政権になると日本の発言力は極度に下落し、対米追随をしても威力がないので、中国としては喜ばしい。事実、1989年6月4日天安門事件後の対中経済封鎖を解除させたときから1992年10月の天皇陛下訪中に足る頃の日本の首相は、日本人でさえ印象的でないほど、回転ドアのように次から次へと交代していた。たとえば、その前後の日本の首相名を書くと任期を書くと以下のようになる。1987年11月6日~1989年6月3日:竹下登1989年6月3日~1989年8月10日:宇野宗佑1989年8月10日~1990年2月28日:海部俊樹(第一次)1990年2月28日~1991年11月5日:海部俊樹(第二次)1991年11月5日~1992年8月9日:宮澤喜一1992年8月9日~1993年4月28日:細川護煕この期間、中国は日本を思うように操ることができた。1989年6月の対中経済封鎖を日本がイの一番に解除したことによって、中国のその後の経済発展を可能ならしめたし、1992年2月に訪日した江沢民は、「天皇訪中さえ実現すれば、中国は二度と再び歴史問題を提起しない」と約束しておきながら1994年から激しい反日教育を開始している(詳細は『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』)。日本は中国に舐められているのだ。加えて、このように日本の内閣に短命な回転ドアが始まると、中国は日本をさらにコントロールしやすくなる。それを手ぐすね引いて待っているのである。環球網が引用しているのは27日のニューヨークタイムズ<Japan Election: Governing Party Projected to Lose Majority>(※6)(日本選挙:与党が過半数を失う見通し)やBBCの<Japan’s ruling party loses its majority in blow to new PM>(※7)(日本の与党、新首相に打撃を与え過半数を失う)などで、BBCは「自民党は深い穴を掘っており、そこから這い上がるのは簡単ではない」と述べている。◆「嘘をついた」石破首相の自業自得こんなことになったのも、もとはと言えば石破首相が「嘘をついた」のが原因だ。自民党総裁選期間中には、あれだけ「せめて予算委員会を開催してからでないと解散してはいけない。それが私の意見です」と何度も表現を変えながらも「すぐ解散」だけはしないと主張してきたのに、総裁に当選するや否や、まだ総理大臣の指名さえもらってないのに、9月末日の時点で「すぐ解散」を言い始めた。この時点で、「この人は絶対に信用できない」という深い印象を持った。主義主張の問題以前に、人間として信用できない総理を、国民の誰が喜ぶのかということだ。総裁選の時には、あれだけ激しく「アジア版NATO」を主張して「私は防衛が分かっているんだ」という「軍事オタク」の側面を誇らしげに誇張しておきながら、総理になった瞬間に「アジア版NATO」を引っ込め、「そんなこと言いましたか」とばかりに平然としている節操のなさ。「アジア版NATO」は究極の対中包囲網で、しかも非現実的な机上の空論に過ぎない。いかにも現在の安全保障状況の国際情勢を知らない素人が妄想するような代物だ。それでいて10月20日のコラム<犯人は日本の外相か? 日中首脳会談「石破発言」隠し>(※8)に書いたような小汚い細工をする。「中国とともに闘う」ことと「アジア版NATO」精神は完全に矛盾するからだ。石破茂氏が首相になり「すぐさま解散」をしたことによって、日本は国際社会で激しく信用を失ってしまった。そのことが日本の国益を甚だしく損ね、日本国民にも多大なマイナスの影響を与えることを肝に銘じてほしい。この論考はYahoo!ニュース エキスパート(※9)より転載しました。2024年 衆議院選挙 投開票日から一夜 石破首相が会見(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)(※1)https://grici.or.jp/(※2)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=15704207535381446355(※3)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=11611148186993138506(※4)https://content-static.cctvnews.cctv.com/snow-book/index.html?item_id=8768252961522500342(※5)https://world.huanqiu.com/article/4K1DYyEW5um(※6)https://www.nytimes.com/2024/10/26/world/asia/japan-election.html(※7)https://www.bbc.com/news/articles/c8xpev42g78o(※8)https://grici.or.jp/5699(※9)https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/72c9b7c934f84b60d34765fae102dc10842b389c
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2024/10/29 10:27
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