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翻訳センター Research Memo(1):2022年3月期は翻訳事業がコロナ禍前水準に回復し増収、各利益はV字回復
配信日時:2022/07/01 16:11
配信元:FISCO
■要約
翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、派遣、国際会議運営(コンベンション)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応する。多数の中小プレーヤーがひしめく分散業界において、組織化・システム化された営業・制作機能を整備し、品質・スピード・コストのバランス、大規模案件対応などで他社の一歩先を行く。機械翻訳技術の取り込みにも積極的であり、(株)みらい翻訳と資本業務提携するとともに、社内の翻訳業務にも機械翻訳を活用し、生産性を向上させている。国内翻訳業界1位はもちろん、世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。
1. 事業内容
主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野ごとに組織が分かれ、専門化してノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは2,681名(2022年3月末時点)の登録者であり、機械翻訳や翻訳支援ツールを使い効率的かつ品質の高い翻訳サービスの提供を行っている。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、派遣事業、通訳事業、コンベンション事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連していて翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。
2. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比4.3%増の10,337百万円、営業利益が同94.0%増の811百万円、経常利益が同80.8%増の841百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同387.0%増の573百万円と堅調な増収と各利益の大幅なV字回復を達成した。売上高に関しては、主力の翻訳事業では、特許分野や工業・ローカライゼーション分野をはじめ各分野で需要が回復した。派遣事業は堅調に推移した。通訳事業では、オンライン会議の定着に伴う通訳需要を積極的に取り込み増収となった。コンベンション事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の影響が残った。営業利益は、売上総利益増のインパクトが大きく同94.0%増と前期からV字回復した。機械翻訳や翻訳支援ツールを積極的に活用し、翻訳制作の生産性向上に取り組んだ結果、原価率が低減したことが主な要因である。セグメント利益では、翻訳事業(前期比287百万円増)、通訳事業(同53百万円増)、コンベンション事業(同41百万円増)と、派遣事業を除くすべての事業が増益に貢献した。
3. 2023年3月期の業績予想
2023年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比7.3%増の11,100百万円、営業利益が同12.1%増の910百万円、経常利益が同9.3%増の920百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.1%増の620百万円とコロナ禍前の水準を超え、営業・経常利益で過去最高益を予想する。翻訳事業の売上高は前期比で672百万円増の見込み。新中期経営計画ではドキュメント別に専門性を高める戦略を推し進め、顧客シェアの拡大を図る。前期も伸びた特許分野、経済情勢の影響を受けにくい医薬分野、2022年3月期にコロナ禍の影響から回復した工業・ローカライゼーション分野、伸び率の高い金融・法務分野、それぞれが成長する計画である。派遣事業は例年どおり堅調に推移する予想となっている。通訳事業・コンベンション事業は、ともにオンライン通訳やオンライン会議運営支援などデジタルを活用したサービス提供を中心に展開する。増収効果に加え、デジタル化の推進による生産性の改善も増益に貢献する。2022年6月初旬時点では、インバウンドの本格的な規制緩和が計画されており、特に厳しい事業環境が予想される通訳・コンベンション業界においても好転の兆しも見えてきた。従来より同社の業績予想の精度には定評があり、弊社では2023年3月期も売上高・各利益ともに予想値を達成するものと見ている。
4. 成長戦略
同社は、2023年3月期から2025年3月期を最終年度とする3ヶ年の新中期経営計画を2022年5月に発表した。最終年度における数値計画は、売上高で12,100百万円(年平均成長率5.4%)、営業利益で1,100百万円(年平均成長率10.7%)である。注目に値するのは、利益の伸びである。初年度の2023年3月期には910百万円と過去最高益を更新し、さらに利益を積み上げる計画である。結果として連結営業利益率では最終年度に9.0%(2022年3月期は7.8%)へ上昇させる。同社はコロナ禍前の5年間(2014年3月期~2019年3月期)で、売上高の年平均成長率6.5%、営業利益の平均成長率19.8%を成した実績がある。同社は、翻訳・通訳業界で知名度が高く、機械翻訳をいち早く導入して生産性も高めているため、新中期経営計画期間においても、着実に増収増益の継続が期待できる。
5. 株主還元策
同社は、利益成長に応じた継続的な還元を行うことを方針としている。2021年3月期はコロナ禍の影響で減益となったために減配となったが、2022年3月期は配当金年間40円(前期比20円増)、配当性向23.2%と2020年3月期の水準に大きく戻した。2023年3月期は配当金45円(同5円増)、配当性向24.1%を予想している。過去最高益予想を背景に、配当金もコロナ禍前を超える過去最高の更新を見込む。
■Key Points
・2022年3月期は主力の翻訳事業がコロナ禍前の水準に回復し増収。機械翻訳などデジタル化進展により原価が低減し利益のV字回復を達成
・自己資本比率は70%超。無借金経営を継続。短期及び中長期の安全性は極めて高い
・2023年3月期は過去最高益を予想。主力の翻訳事業の需要回復とデジタル化の推進が原動力
・新中期経営計画を策定。2025年3月期に売上高121億円、営業利益11億円を目指す。ドキュメント別言語資産活用モデルの確立が新戦略
・2022年3月期は配当金40円(前期比20円増)に回復。2023年3月期はコロナ禍前の水準を超える配当金45円と5円増配を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<EY>
翻訳センター<2483>は、翻訳業界の国内最大手。医薬分野の専門翻訳会社として創業し、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務など専門性の高い産業翻訳分野で領域を拡大してきた。現在は翻訳だけでなく通訳、派遣、国際会議運営(コンベンション)、通訳者・翻訳者教育などに多角化し、顧客企業のグローバル展開における幅広い外国語ニーズに対応する。多数の中小プレーヤーがひしめく分散業界において、組織化・システム化された営業・制作機能を整備し、品質・スピード・コストのバランス、大規模案件対応などで他社の一歩先を行く。機械翻訳技術の取り込みにも積極的であり、(株)みらい翻訳と資本業務提携するとともに、社内の翻訳業務にも機械翻訳を活用し、生産性を向上させている。国内翻訳業界1位はもちろん、世界の語学サービス企業でも上位のポジションである。
1. 事業内容
主力の翻訳事業では、分野特化戦略を推進しており、「特許」「医薬」「工業・ローカライゼーション」「金融・法務」の4分野ごとに組織が分かれ、専門化してノウハウを蓄積している。グループネットワークを生かしたサービスの提案、ICTによる登録者マッチングシステムも強みである。現場で制作を担当するのは2,681名(2022年3月末時点)の登録者であり、機械翻訳や翻訳支援ツールを使い効率的かつ品質の高い翻訳サービスの提供を行っている。大規模プロジェクトや多言語対応などに機動的に対応できることも同社の強みである。連結子会社(株)アイ・エス・エスが行う、派遣事業、通訳事業、コンベンション事業はそれぞれの分野でポジションを築いているが、相互に関連していて翻訳事業を含めたクロスセリングが行われ、グループのシナジーが発揮されている。
2. 2022年3月期の業績概要
2022年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比4.3%増の10,337百万円、営業利益が同94.0%増の811百万円、経常利益が同80.8%増の841百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同387.0%増の573百万円と堅調な増収と各利益の大幅なV字回復を達成した。売上高に関しては、主力の翻訳事業では、特許分野や工業・ローカライゼーション分野をはじめ各分野で需要が回復した。派遣事業は堅調に推移した。通訳事業では、オンライン会議の定着に伴う通訳需要を積極的に取り込み増収となった。コンベンション事業では、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の影響が残った。営業利益は、売上総利益増のインパクトが大きく同94.0%増と前期からV字回復した。機械翻訳や翻訳支援ツールを積極的に活用し、翻訳制作の生産性向上に取り組んだ結果、原価率が低減したことが主な要因である。セグメント利益では、翻訳事業(前期比287百万円増)、通訳事業(同53百万円増)、コンベンション事業(同41百万円増)と、派遣事業を除くすべての事業が増益に貢献した。
3. 2023年3月期の業績予想
2023年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比7.3%増の11,100百万円、営業利益が同12.1%増の910百万円、経常利益が同9.3%増の920百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同8.1%増の620百万円とコロナ禍前の水準を超え、営業・経常利益で過去最高益を予想する。翻訳事業の売上高は前期比で672百万円増の見込み。新中期経営計画ではドキュメント別に専門性を高める戦略を推し進め、顧客シェアの拡大を図る。前期も伸びた特許分野、経済情勢の影響を受けにくい医薬分野、2022年3月期にコロナ禍の影響から回復した工業・ローカライゼーション分野、伸び率の高い金融・法務分野、それぞれが成長する計画である。派遣事業は例年どおり堅調に推移する予想となっている。通訳事業・コンベンション事業は、ともにオンライン通訳やオンライン会議運営支援などデジタルを活用したサービス提供を中心に展開する。増収効果に加え、デジタル化の推進による生産性の改善も増益に貢献する。2022年6月初旬時点では、インバウンドの本格的な規制緩和が計画されており、特に厳しい事業環境が予想される通訳・コンベンション業界においても好転の兆しも見えてきた。従来より同社の業績予想の精度には定評があり、弊社では2023年3月期も売上高・各利益ともに予想値を達成するものと見ている。
4. 成長戦略
同社は、2023年3月期から2025年3月期を最終年度とする3ヶ年の新中期経営計画を2022年5月に発表した。最終年度における数値計画は、売上高で12,100百万円(年平均成長率5.4%)、営業利益で1,100百万円(年平均成長率10.7%)である。注目に値するのは、利益の伸びである。初年度の2023年3月期には910百万円と過去最高益を更新し、さらに利益を積み上げる計画である。結果として連結営業利益率では最終年度に9.0%(2022年3月期は7.8%)へ上昇させる。同社はコロナ禍前の5年間(2014年3月期~2019年3月期)で、売上高の年平均成長率6.5%、営業利益の平均成長率19.8%を成した実績がある。同社は、翻訳・通訳業界で知名度が高く、機械翻訳をいち早く導入して生産性も高めているため、新中期経営計画期間においても、着実に増収増益の継続が期待できる。
5. 株主還元策
同社は、利益成長に応じた継続的な還元を行うことを方針としている。2021年3月期はコロナ禍の影響で減益となったために減配となったが、2022年3月期は配当金年間40円(前期比20円増)、配当性向23.2%と2020年3月期の水準に大きく戻した。2023年3月期は配当金45円(同5円増)、配当性向24.1%を予想している。過去最高益予想を背景に、配当金もコロナ禍前を超える過去最高の更新を見込む。
■Key Points
・2022年3月期は主力の翻訳事業がコロナ禍前の水準に回復し増収。機械翻訳などデジタル化進展により原価が低減し利益のV字回復を達成
・自己資本比率は70%超。無借金経営を継続。短期及び中長期の安全性は極めて高い
・2023年3月期は過去最高益を予想。主力の翻訳事業の需要回復とデジタル化の推進が原動力
・新中期経営計画を策定。2025年3月期に売上高121億円、営業利益11億円を目指す。ドキュメント別言語資産活用モデルの確立が新戦略
・2022年3月期は配当金40円(前期比20円増)に回復。2023年3月期はコロナ禍前の水準を超える配当金45円と5円増配を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
<EY>
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