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日本電技 Research Memo(2):空調や生産ラインの自動化・省エネ化を進める「計装エンジニアリング」企業
配信日時:2022/06/23 15:12
配信元:FISCO
■会社概要
1. 会社概要
日本電技<1723>は、オフィスビルをはじめホテルや病院、工場など大型の非居住用建築物の空調設備を自動制御する空調計装の分野、及び工場の生産ラインや搬送ラインを自動化する産業システムの分野を事業領域としている。主力の空調計装の分野では、自動制御機器大手であるアズビルの最大手特約店として、また業界の草分け的な存在として、豊富な実績とノウハウを誇る。加えて、同社を含むアズビルグループが大半を握る空調計装市場で、業界大手で設計から施工、メンテナンスまでを手掛ける「エンジニアリング企業」としての強みを発揮している。一方、成長余地の大きい産業システムでは、空調計装やエンジニアリングのノウハウ、子会社ジュピターアドバンスシステムズ(株)の生産管理システムなどをベースに、付加価値の高い自動化・省エネ化技術によって工場や生産ラインの効率化を進めている。なお、「計装エンジニアリング」によって建物の快適性や生産の効率性を支えることは、省エネを通じて脱炭素社会の実現に貢献していると言うこともできるため、同社の事業そのものがサステナビリティの観点から評価できるということができる。
空調計装から産業システムへと業容を拡大
2. 沿革
山武計器(株)(現アズビル)が、1952年に米国有数の制御機器メーカーであるハネウェルと資本提携契約を締結、国内で空調制御機器の輸入販売を開始した。しかし、計装機器を据え付ける計装工事会社が世の中にほとんどなかったことから、島田七良氏ほか当時の創業メンバーは、空調計装事業の発展を確信して同社を設立、「エレクトリック技術で日本一を目指す」という志を込めて日本電技株式会社と名付けた。こうして同社は、1959年に空調自動制御の設計から施工、調整、保守までを一貫して行う、日本初の空調計装専業企業としてスタートした。現在同社は、アズビルと協働して空調計装業界をリードするとともに、空調計装専業として培ってきたエンジニアリング能力を、工場や生産ラインの自動化・省力化を進める産業システムの分野に展開、業容を拡大しているところである。
「計装」と「エンジニアリング」の機能を併せ持つ強み
3. 「計装エンジニアリング」
「計装」とは、ビルや工場において空調や生産ラインなど各種設備・機械装置を、計測・監視・制御の手法によって自動でコントロールする技術で、快適化・効率化・省力化・省エネ化の実現を目的としている。例えば、ビルの空調計装であれば、「最少のエネルギーで快適な環境を実現する」技術と位置付けられ、温度・湿度・気圧などを計測してその情報を監視し、一定の環境を維持するために機器を制御しながらビル全体の空調をコントロール、快適性や省エネ化を実現している。計装技術は近年、省エネ化に必須の技術として注目され、最新のIoT・AI技術を用いた計測・監視システムが開発されたり、「地域冷暖房」のコア技術として利用されたりするなど進化を続けている。また「エンジニアリング」とは、部分最適に陥りがちな設備・機械装置を、ユーザーにとって全体最適化する技術を指す。
こうした「計装」と「エンジニアリング」の機能を併せ持つ企業は少なく、「計装エンジニアリング」という技術自体が同社の強みとなっている。このため、年々高度化するアズビルの新製品への対応力は、取り扱い販売店のなかでも抜きんでていると言われている。「計装エンジニアリング」という技術はまた、人に変わる作業を柔軟に設計できるため、生産設備機器と結びつくことで工場や生産ラインの自動化・省力化に応用できる。しかし、こうしたアプローチを組織的に実行できる企業が同社の他にほとんどないようだ。中でも中小規模の食品工場は、機器を納品した生産設備メーカーがメンテナンスまで請け負うことが多く、自動化・省エネ化という点で課題が多かった。同社にとって「計装エンジニアリング」という技術を生かしやすい分野といえる。
空調計装はグループで7割以上のシェア、産業システムは未開拓
4. 空調計装と産業システムの市場動向
ビル空調は、個別空調とセントラル空調に分けられる。個別空調は、例えば雑居ビルのように1室ずつエアコンを置いて管理する手法で、比較的小さなビルやホテルなどの小部屋を得意とし、ダイキン工業<6367>や日立製作所<6501>といった巨大メーカーが中心プレイヤーである。セントラル空調は、ビル全体の空調を建物の特定箇所で一元管理(中央監視)する方法で、中型~大型のビルや商業施設など大空間を得意とし、大掛かりになるため空調機器メーカーとサブコン※、同社のような空調をコントロールする空調計装企業の3者が一体となってバリューチェーンを形成している。空調計装の国内市場規模は1,600億円以上と言われ、その6~7割程度をアズビルと同社を含むアズビル特約店が占めている。このため空調計装は、事実上、アズビル製の機器が業界スタンダードとなっている。また、アズビル特約店の中でも、唯一エンジニアリング部門を有する専業企業というポジションにある同社は、自他ともに認める高い技術力を誇る。
※大型ビルの建設工事の全体をプロデュースするゼネコンから空調や電気、衛生関連設備といった工事を特化して請負う設備業者。
空調計装の市場は、ビルや工場などの建設時に売上の立つ新設工事と、その後のメンテナンスやリニューアル工事など年々収益が積み上がる既設工事の2つに大別できる。近年の傾向として、建物個別の仕様・用途に合わせた空調設備の導入が求められるようになり、案件それぞれにカスタマイズできる技術力が必要とされる。例えば、病院の空調計装は精度に厳しく、温度管理はもちろん空気清浄と院内感染防止の観点から適切な湿度管理が要求される。特に、手術室には厳しい空調の基準が設けられており、換気差圧を利用して空気の清浄性を高める空調制御などが必要とされる。このほか、研究施設やクリーンルーム、美術館など、空調制御の技術が利用されている施設は世の中に数多くある。ちなみに、収益性は新設工事に比べると既設工事の方が高く、元請となった場合さらに条件が良くなると言われている。
工場全体や生産ラインの自動化・省エネ化を進めるのが産業システムである。「計装エンジニアリング」の進化形といえる。現在、自動化・スマート化など工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)によって効率化やコスト削減を進めているメーカーが多い。なかでも、食品・薬品・化粧品は他の産業と比較して人手に依存する現場が多く、今後の人手不足を考えると自動化・スマート化の余地は大きい。特に、食品メーカーでは、製造業全体の中で最も従事者数が多いため、メーカーも自動化や機械化への関心が高い。しかし、自ら自動化・スマート化するノウハウがない上、同社のような自動化・スマート化を推進できる企業もまだ少なかったため、市場は未開拓といえる。同社は独自の事業展開によってこうした市場の開拓を本格化するため、2022年4月に産業ソリューション事業部を新設、産業システム関連事業を完全に独り立ちさせた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 会社概要
日本電技<1723>は、オフィスビルをはじめホテルや病院、工場など大型の非居住用建築物の空調設備を自動制御する空調計装の分野、及び工場の生産ラインや搬送ラインを自動化する産業システムの分野を事業領域としている。主力の空調計装の分野では、自動制御機器大手であるアズビルの最大手特約店として、また業界の草分け的な存在として、豊富な実績とノウハウを誇る。加えて、同社を含むアズビルグループが大半を握る空調計装市場で、業界大手で設計から施工、メンテナンスまでを手掛ける「エンジニアリング企業」としての強みを発揮している。一方、成長余地の大きい産業システムでは、空調計装やエンジニアリングのノウハウ、子会社ジュピターアドバンスシステムズ(株)の生産管理システムなどをベースに、付加価値の高い自動化・省エネ化技術によって工場や生産ラインの効率化を進めている。なお、「計装エンジニアリング」によって建物の快適性や生産の効率性を支えることは、省エネを通じて脱炭素社会の実現に貢献していると言うこともできるため、同社の事業そのものがサステナビリティの観点から評価できるということができる。
空調計装から産業システムへと業容を拡大
2. 沿革
山武計器(株)(現アズビル)が、1952年に米国有数の制御機器メーカーであるハネウェルと資本提携契約を締結、国内で空調制御機器の輸入販売を開始した。しかし、計装機器を据え付ける計装工事会社が世の中にほとんどなかったことから、島田七良氏ほか当時の創業メンバーは、空調計装事業の発展を確信して同社を設立、「エレクトリック技術で日本一を目指す」という志を込めて日本電技株式会社と名付けた。こうして同社は、1959年に空調自動制御の設計から施工、調整、保守までを一貫して行う、日本初の空調計装専業企業としてスタートした。現在同社は、アズビルと協働して空調計装業界をリードするとともに、空調計装専業として培ってきたエンジニアリング能力を、工場や生産ラインの自動化・省力化を進める産業システムの分野に展開、業容を拡大しているところである。
「計装」と「エンジニアリング」の機能を併せ持つ強み
3. 「計装エンジニアリング」
「計装」とは、ビルや工場において空調や生産ラインなど各種設備・機械装置を、計測・監視・制御の手法によって自動でコントロールする技術で、快適化・効率化・省力化・省エネ化の実現を目的としている。例えば、ビルの空調計装であれば、「最少のエネルギーで快適な環境を実現する」技術と位置付けられ、温度・湿度・気圧などを計測してその情報を監視し、一定の環境を維持するために機器を制御しながらビル全体の空調をコントロール、快適性や省エネ化を実現している。計装技術は近年、省エネ化に必須の技術として注目され、最新のIoT・AI技術を用いた計測・監視システムが開発されたり、「地域冷暖房」のコア技術として利用されたりするなど進化を続けている。また「エンジニアリング」とは、部分最適に陥りがちな設備・機械装置を、ユーザーにとって全体最適化する技術を指す。
こうした「計装」と「エンジニアリング」の機能を併せ持つ企業は少なく、「計装エンジニアリング」という技術自体が同社の強みとなっている。このため、年々高度化するアズビルの新製品への対応力は、取り扱い販売店のなかでも抜きんでていると言われている。「計装エンジニアリング」という技術はまた、人に変わる作業を柔軟に設計できるため、生産設備機器と結びつくことで工場や生産ラインの自動化・省力化に応用できる。しかし、こうしたアプローチを組織的に実行できる企業が同社の他にほとんどないようだ。中でも中小規模の食品工場は、機器を納品した生産設備メーカーがメンテナンスまで請け負うことが多く、自動化・省エネ化という点で課題が多かった。同社にとって「計装エンジニアリング」という技術を生かしやすい分野といえる。
空調計装はグループで7割以上のシェア、産業システムは未開拓
4. 空調計装と産業システムの市場動向
ビル空調は、個別空調とセントラル空調に分けられる。個別空調は、例えば雑居ビルのように1室ずつエアコンを置いて管理する手法で、比較的小さなビルやホテルなどの小部屋を得意とし、ダイキン工業<6367>や日立製作所<6501>といった巨大メーカーが中心プレイヤーである。セントラル空調は、ビル全体の空調を建物の特定箇所で一元管理(中央監視)する方法で、中型~大型のビルや商業施設など大空間を得意とし、大掛かりになるため空調機器メーカーとサブコン※、同社のような空調をコントロールする空調計装企業の3者が一体となってバリューチェーンを形成している。空調計装の国内市場規模は1,600億円以上と言われ、その6~7割程度をアズビルと同社を含むアズビル特約店が占めている。このため空調計装は、事実上、アズビル製の機器が業界スタンダードとなっている。また、アズビル特約店の中でも、唯一エンジニアリング部門を有する専業企業というポジションにある同社は、自他ともに認める高い技術力を誇る。
※大型ビルの建設工事の全体をプロデュースするゼネコンから空調や電気、衛生関連設備といった工事を特化して請負う設備業者。
空調計装の市場は、ビルや工場などの建設時に売上の立つ新設工事と、その後のメンテナンスやリニューアル工事など年々収益が積み上がる既設工事の2つに大別できる。近年の傾向として、建物個別の仕様・用途に合わせた空調設備の導入が求められるようになり、案件それぞれにカスタマイズできる技術力が必要とされる。例えば、病院の空調計装は精度に厳しく、温度管理はもちろん空気清浄と院内感染防止の観点から適切な湿度管理が要求される。特に、手術室には厳しい空調の基準が設けられており、換気差圧を利用して空気の清浄性を高める空調制御などが必要とされる。このほか、研究施設やクリーンルーム、美術館など、空調制御の技術が利用されている施設は世の中に数多くある。ちなみに、収益性は新設工事に比べると既設工事の方が高く、元請となった場合さらに条件が良くなると言われている。
工場全体や生産ラインの自動化・省エネ化を進めるのが産業システムである。「計装エンジニアリング」の進化形といえる。現在、自動化・スマート化など工場のDX(デジタルトランスフォーメーション)によって効率化やコスト削減を進めているメーカーが多い。なかでも、食品・薬品・化粧品は他の産業と比較して人手に依存する現場が多く、今後の人手不足を考えると自動化・スマート化の余地は大きい。特に、食品メーカーでは、製造業全体の中で最も従事者数が多いため、メーカーも自動化や機械化への関心が高い。しかし、自ら自動化・スマート化するノウハウがない上、同社のような自動化・スマート化を推進できる企業もまだ少なかったため、市場は未開拓といえる。同社は独自の事業展開によってこうした市場の開拓を本格化するため、2022年4月に産業ソリューション事業部を新設、産業システム関連事業を完全に独り立ちさせた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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