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酒井重 Research Memo(3):高付加価値化と海外シェアの拡大で成長を図る
配信日時:2022/06/14 15:23
配信元:FISCO
■事業概要
1. 事業内容
酒井重工業<6358>の主たる事業は、道路舗装などに使われるロードローラの製造・販売で、ロードローラ関連が売上高の約95%を占める。また、「道路建設機械事業を通じて世界の国土開発という社会事業に貢献する」を企業理念に掲げている。
一口でロードローラと言っても、能力や大きさなどは多岐にわたっている。同社の製品数はプラットフォームだけでも20種ほどあり、これにバリエーションを加えた最終製品数は70~80種に及ぶ。大きさも約1トンから20トン(大型土木向け)と幅広い。中心の価格帯は500万円(中型ローラ)~1,000万円(大型ローラ)だが、ロードカッタなど数千万円するものもある。なお、生産は見込み生産であり、受注生産は行っていない。製品の耐用年数は20~30年であるが、ここまで使い切る顧客は少なく、多くの場合は法定償却(7~10年)後に買い換え需要が発生する。また、償却済み機材の多くは中古品として海外(特に発展途上国)へ転売される。
2022年3月期の地域区分別売上高※は、国内14,292百万円(売上高比率53.7%)、北米5,039百万円(同18.9%)、アジア6,492百万円(同24.4%)、中近東・ロシアCIS44百万円(同0.2%)、その他731百万円(同2.8%)となっている。
※「地域区分別売上高」とは、顧客向けに実際に販売された金額であり、決算短信での報告セグメントである「所在地別売上高」とは異なる。
主な販売先は、国内では約70%が建機レンタル会社(カナモト<9678>、西尾レントオール<9699>等)向け、残り30%がエンドユーザー(大手や中小のゼネコン、道路工事会社等)向けとなっている。エンドユーザー向けには、与信管理の関係からファイナンス会社経由のものも含まれる。海外では、主に代理店経由でエンドユーザーに販売されるが、北米では一部がレンタル会社経由となっている。
2. 特色、強み
既述のように同社はロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーであるが、以下のような特色や強みを持っている。
(1) 専業メーカーとしての長い歴史
同社の最大の特色(強み)は、ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーとしての長い歴史であろう。言い換えれば、選択と集中によるグローバルニッチ戦略によって専門性を高め、独自の技術を蓄積してきたことだ。この長い歴史と経験によって、下記のような技術力や信用力を高めてきた。
(2) 技術力
単に「道路を固める、舗装する」と言っても、それぞれの土地や土質、土壌などによって必要な圧力・回転力等(締固め技術)は異なる。そのため、工事会社はそれぞれの工事現場(地盤等)に合った異なる種類のロードローラが必要な場合も多い。同社によると、ローラの施工機能自体が、道路や盛土の最終品質(密度、平坦性、寿命)を決定付けるとのことで、一般的には、転圧密度が1%上がると道路寿命が10%延長されると言われているようだ。そのため工事発注者・施工者にとっては、ロードローラの価格だけでなく、製品品質(性能)も非常に重要な要素となっている。同社は、長い間ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーとして歩んできたことから、この「締固め技術」については高い技術力を誇っており、同業他社が追い付くことは容易ではない。
同社の技術力を一言で言えば、「モノとコトの知見」である。すなわち、工事全体を俯瞰したエンジニアリング力と多様な材料への対応力である。具体的には、タイヤによる揉みこみ、縦振動による転圧力UP、横振動によるすり付け、垂直振動による厚層転圧、タイヤ振動によるさらなる高密度転圧、高周波振動による難転圧問題解消等、各種技術の組み合わせにより施工品質と施工効率の向上を可能にしている。
同社の技術力の高さについての一例としては、「機械的振動技術」と「その防振技術」の関係制御力が挙げられる。ロードローラにおいて、施工機能を高める重要な手段が各種の機械的振動であるが、一方でこの振動自体が機械故障の原因となり、さらにはオペレーターの居住性に大きく影響する。したがって、振動締固め力強化と機械品質の相反する関係を制御する力(技術)が重要であり、これは短期間で蓄積できるものではない。
(3) 信用力
経験工学と実績に裏付けられた信用力も同社の強みだ。地下の締固め品質を確保する技術についてはブラックボックスであり、後発メーカーや非専業メーカーが容易に真似できるものではない。例えば、高温で運ばれてくるアスファルト合材は限られた時間のなかで施工する必要があることに加え、施工不良の場合は再施工という大きな代償を伴う。また、道路や盛土の施工品質問題の発生は遅効性があり、完工時の締固め品質はブラックボックスになる傾向にある。このような経験工学は、長年使い慣れたブランドと様々な現場経験による長年の知見が強みとなっており、これらの点が多くの顧客から信頼を得ている。
3. シェア及び競合
(一社)日本建設機械工業会のデータによれば、2021年度の国内建設機械出荷額は2.9兆円、このうち同社の主要製品であるロードローラ等の道路機械は2.6%となっている。この道路機械市場で、同社のシェアは70%超とトップメーカーとなっている。競合先としては日立建機<6305>などがあるが、いずれも専業メーカーではない。また、海外メーカーも一部進出しているものの存在感は薄い。したがって、国内においては、市場の浮沈がそのまま同社の業績につながっているとも言える。
世界市場(海外市場)では、正確な統計がないものの、同社のシェア(生産台数ベース)は5~6%と推定される。ただし、これは全世界をベースにしたもので、同社が主戦場としている日本、ASEAN、北米の市場に限ればシェアは20%程度のようだ。なお、世界市場での主な競合はCaterpillar、FAYAT SAS、Deere&Company、Volvo Personvagnar ABなどであるが、ロードローラの専業メーカーは見当たらない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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1. 事業内容
酒井重工業<6358>の主たる事業は、道路舗装などに使われるロードローラの製造・販売で、ロードローラ関連が売上高の約95%を占める。また、「道路建設機械事業を通じて世界の国土開発という社会事業に貢献する」を企業理念に掲げている。
一口でロードローラと言っても、能力や大きさなどは多岐にわたっている。同社の製品数はプラットフォームだけでも20種ほどあり、これにバリエーションを加えた最終製品数は70~80種に及ぶ。大きさも約1トンから20トン(大型土木向け)と幅広い。中心の価格帯は500万円(中型ローラ)~1,000万円(大型ローラ)だが、ロードカッタなど数千万円するものもある。なお、生産は見込み生産であり、受注生産は行っていない。製品の耐用年数は20~30年であるが、ここまで使い切る顧客は少なく、多くの場合は法定償却(7~10年)後に買い換え需要が発生する。また、償却済み機材の多くは中古品として海外(特に発展途上国)へ転売される。
2022年3月期の地域区分別売上高※は、国内14,292百万円(売上高比率53.7%)、北米5,039百万円(同18.9%)、アジア6,492百万円(同24.4%)、中近東・ロシアCIS44百万円(同0.2%)、その他731百万円(同2.8%)となっている。
※「地域区分別売上高」とは、顧客向けに実際に販売された金額であり、決算短信での報告セグメントである「所在地別売上高」とは異なる。
主な販売先は、国内では約70%が建機レンタル会社(カナモト<9678>、西尾レントオール<9699>等)向け、残り30%がエンドユーザー(大手や中小のゼネコン、道路工事会社等)向けとなっている。エンドユーザー向けには、与信管理の関係からファイナンス会社経由のものも含まれる。海外では、主に代理店経由でエンドユーザーに販売されるが、北米では一部がレンタル会社経由となっている。
2. 特色、強み
既述のように同社はロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーであるが、以下のような特色や強みを持っている。
(1) 専業メーカーとしての長い歴史
同社の最大の特色(強み)は、ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーとしての長い歴史であろう。言い換えれば、選択と集中によるグローバルニッチ戦略によって専門性を高め、独自の技術を蓄積してきたことだ。この長い歴史と経験によって、下記のような技術力や信用力を高めてきた。
(2) 技術力
単に「道路を固める、舗装する」と言っても、それぞれの土地や土質、土壌などによって必要な圧力・回転力等(締固め技術)は異なる。そのため、工事会社はそれぞれの工事現場(地盤等)に合った異なる種類のロードローラが必要な場合も多い。同社によると、ローラの施工機能自体が、道路や盛土の最終品質(密度、平坦性、寿命)を決定付けるとのことで、一般的には、転圧密度が1%上がると道路寿命が10%延長されると言われているようだ。そのため工事発注者・施工者にとっては、ロードローラの価格だけでなく、製品品質(性能)も非常に重要な要素となっている。同社は、長い間ロードローラをはじめとする道路建設機械の専業メーカーとして歩んできたことから、この「締固め技術」については高い技術力を誇っており、同業他社が追い付くことは容易ではない。
同社の技術力を一言で言えば、「モノとコトの知見」である。すなわち、工事全体を俯瞰したエンジニアリング力と多様な材料への対応力である。具体的には、タイヤによる揉みこみ、縦振動による転圧力UP、横振動によるすり付け、垂直振動による厚層転圧、タイヤ振動によるさらなる高密度転圧、高周波振動による難転圧問題解消等、各種技術の組み合わせにより施工品質と施工効率の向上を可能にしている。
同社の技術力の高さについての一例としては、「機械的振動技術」と「その防振技術」の関係制御力が挙げられる。ロードローラにおいて、施工機能を高める重要な手段が各種の機械的振動であるが、一方でこの振動自体が機械故障の原因となり、さらにはオペレーターの居住性に大きく影響する。したがって、振動締固め力強化と機械品質の相反する関係を制御する力(技術)が重要であり、これは短期間で蓄積できるものではない。
(3) 信用力
経験工学と実績に裏付けられた信用力も同社の強みだ。地下の締固め品質を確保する技術についてはブラックボックスであり、後発メーカーや非専業メーカーが容易に真似できるものではない。例えば、高温で運ばれてくるアスファルト合材は限られた時間のなかで施工する必要があることに加え、施工不良の場合は再施工という大きな代償を伴う。また、道路や盛土の施工品質問題の発生は遅効性があり、完工時の締固め品質はブラックボックスになる傾向にある。このような経験工学は、長年使い慣れたブランドと様々な現場経験による長年の知見が強みとなっており、これらの点が多くの顧客から信頼を得ている。
3. シェア及び競合
(一社)日本建設機械工業会のデータによれば、2021年度の国内建設機械出荷額は2.9兆円、このうち同社の主要製品であるロードローラ等の道路機械は2.6%となっている。この道路機械市場で、同社のシェアは70%超とトップメーカーとなっている。競合先としては日立建機<6305>などがあるが、いずれも専業メーカーではない。また、海外メーカーも一部進出しているものの存在感は薄い。したがって、国内においては、市場の浮沈がそのまま同社の業績につながっているとも言える。
世界市場(海外市場)では、正確な統計がないものの、同社のシェア(生産台数ベース)は5~6%と推定される。ただし、これは全世界をベースにしたもので、同社が主戦場としている日本、ASEAN、北米の市場に限ればシェアは20%程度のようだ。なお、世界市場での主な競合はCaterpillar、FAYAT SAS、Deere&Company、Volvo Personvagnar ABなどであるが、ロードローラの専業メーカーは見当たらない。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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