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筑波精工 Research Memo(7):自動車のEV化は追い風だが、本格的な立ち上がりは2023年以降
配信日時:2022/06/13 16:07
配信元:FISCO
■中長期の展望
筑波精工<6596>の今後の成長は、1)自動車のEV化見通し、2)パワー半導体(IGBTやMOSFET)の需要動向、3)ウエハ薄型化・大口径化の見通し、といった自動車のEV化を中心とした3つの要素がポイントと言える。
1. 自動車のEV化とパワー半導体
自動車EV化に向けた動きについて、経済産業省「第2回モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会」資料によると、日本の電気自動車(EV)及びプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)は、2030年新車販売台数の20~30%(2019年新車販売台数の約20~30倍)とする普及目標を掲げている。欧州・中国においても自動車EV化の普及を目指し補助金政策を実施していると言う。こうした動きから、自動車EV化への動きは今後も高まりを見せていくと予想される。また自動車EV化には不可欠な部品であるIGBT等のパワー半導体の需要も併せて伸びることになる。
半導体で使用するウエハは、発熱量を抑えるためにできる限り薄型化する必要がある。IGBTやMOSFETのようなパワー半導体においては、電流をウエハ表面と裏面の間を高速スイッチングする必要があるため、ウエハは電圧を流す縦方向を特に薄くする必要がある。さらにウエハを大口径化する動きもある。従来は6インチ(150mm)、8インチ(200mm)であったウエハを12インチ(300mm)へ移行する動きが高まっている。メーカーにとっては径を大きくすることで、1枚のウエハからより多くのデバイスを作成することにより生産効率を上げ、半導体1個当たりの生産コストを下げることが可能となるためである。ウエハの薄型化・大口径化が進むと、接着剤による薄型ウエハ補強では、行程終了後にウエハを接着面から剥離する際に細かなひび(マイクロクラックと呼ばれている)が発生し、歩留まりが急激に悪化する。大口径化による生産性向上に加え、発熱の原因となるオン抵抗値を小さくするためにウエハは一段と薄くなっていく。このように取り回しがより困難な薄型で大口径のウエハを扱う場合に、どうしても利用する必要のある「Supporter」に匹敵する治具はいまのところ他に存在していない。したがって今後の薄型化・大口径化されたウエハプロセス工程では、「Supporter」による電界を使った吸着保持方式に業界全体がシフトを進める可能性が高く、既に一部のメーカーでは実装実験が行われている。そうしたことからも今後同社の静電チャック「Supporter」の受注が増加する可能性が高いと言える。
2. 潜在市場の推測
上記のような事業環境から、同社の先行きは楽しみでもある。しかしシリコンウエハの薄型化が進むためには、まだ乗り越えるべき課題・壁も多い。さらに自動車のEV化は確実に進むと見られるが、本格的にEV化が進むのは同社によると2023年(2024年3月期)以降と思われる。したがって、同社の業績が大きく浮上するのは2025年3月期からと予想される。
では今後、潜在的な市場はどの程度あるのだろうか。同社の説明によると、現在のIGBT生産の主力は6インチウエハだが、2023年3月期から一部で12インチが立ち上がるようだ。さらに、この12インチウエハ1枚からは自動車約3台分のIGBTが取れると言う。したがって今後のEV自動車生産予測から、同社では12インチウエハ用「Supporter」の需要の高まりについては遅くとも2026年3月期に、7,000枚/年になると見ているようだ。
「Supporter」の価格は正式には開示されていないが、取材に対して会社は「1枚数千米ドルのレベル」と述べている。仮にこの価格を3千米ドル、1米ドルを120円とすると、2026年3月期の「Supporter」の売上高は、7,000×3,000×120=2,520百万円※となる可能性がある。
※これらの数字は、弊社推測によるもので、会社から正式に発表された数字ではない。
3. もう一つの潜在市場(MOSFET用)
また同社製品(主に「Supporter」)に対して、もう一つ大きな市場として期待されるのがMOSFET用だ。現在、主に自動車用と携帯電話用にバッテリーの大容量化が進んでおり、これらのバッテリーにおいては同時に高速(短時間)での充電が求められている。高速(短時間)で充電を行うためには、高電圧をかける必要があり、これに耐えられるMOSFET半導体が必須部品となる。ただし、MOSFET半導体の厚さは約100μであるが、サイズが大きくなるためデバイスメーカーとしては少しでも生産効率を上げるために8インチウエハでの生産を標準としている。しかしその生産工程ではウエハの「反り」が大きな問題となっており、これを解決するのが同社の「Supporter」である。
同社では、このMOSFET用Supporterの需要は2024年3月期には約1,500枚/年に達すると見ており、IGBT用と並んで楽しみな市場である。MOSFET用(8インチ用)の価格は、IGBT用(12インチ用)よりは低いと予想されるが、売上高は年間200~300百万円に達する可能性はあると弊社では見ている。
■株主還元策
まずは安定した業績確保が先決
同社はまだ発展途上の企業であり十分な利益を確保できていない。株主還元策はまだ先の話であり、まずは足元の利益をしっかり確保することが先決だろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<EY>
筑波精工<6596>の今後の成長は、1)自動車のEV化見通し、2)パワー半導体(IGBTやMOSFET)の需要動向、3)ウエハ薄型化・大口径化の見通し、といった自動車のEV化を中心とした3つの要素がポイントと言える。
1. 自動車のEV化とパワー半導体
自動車EV化に向けた動きについて、経済産業省「第2回モビリティの構造変化と2030年以降に向けた自動車政策の方向性に関する検討会」資料によると、日本の電気自動車(EV)及びプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)は、2030年新車販売台数の20~30%(2019年新車販売台数の約20~30倍)とする普及目標を掲げている。欧州・中国においても自動車EV化の普及を目指し補助金政策を実施していると言う。こうした動きから、自動車EV化への動きは今後も高まりを見せていくと予想される。また自動車EV化には不可欠な部品であるIGBT等のパワー半導体の需要も併せて伸びることになる。
半導体で使用するウエハは、発熱量を抑えるためにできる限り薄型化する必要がある。IGBTやMOSFETのようなパワー半導体においては、電流をウエハ表面と裏面の間を高速スイッチングする必要があるため、ウエハは電圧を流す縦方向を特に薄くする必要がある。さらにウエハを大口径化する動きもある。従来は6インチ(150mm)、8インチ(200mm)であったウエハを12インチ(300mm)へ移行する動きが高まっている。メーカーにとっては径を大きくすることで、1枚のウエハからより多くのデバイスを作成することにより生産効率を上げ、半導体1個当たりの生産コストを下げることが可能となるためである。ウエハの薄型化・大口径化が進むと、接着剤による薄型ウエハ補強では、行程終了後にウエハを接着面から剥離する際に細かなひび(マイクロクラックと呼ばれている)が発生し、歩留まりが急激に悪化する。大口径化による生産性向上に加え、発熱の原因となるオン抵抗値を小さくするためにウエハは一段と薄くなっていく。このように取り回しがより困難な薄型で大口径のウエハを扱う場合に、どうしても利用する必要のある「Supporter」に匹敵する治具はいまのところ他に存在していない。したがって今後の薄型化・大口径化されたウエハプロセス工程では、「Supporter」による電界を使った吸着保持方式に業界全体がシフトを進める可能性が高く、既に一部のメーカーでは実装実験が行われている。そうしたことからも今後同社の静電チャック「Supporter」の受注が増加する可能性が高いと言える。
2. 潜在市場の推測
上記のような事業環境から、同社の先行きは楽しみでもある。しかしシリコンウエハの薄型化が進むためには、まだ乗り越えるべき課題・壁も多い。さらに自動車のEV化は確実に進むと見られるが、本格的にEV化が進むのは同社によると2023年(2024年3月期)以降と思われる。したがって、同社の業績が大きく浮上するのは2025年3月期からと予想される。
では今後、潜在的な市場はどの程度あるのだろうか。同社の説明によると、現在のIGBT生産の主力は6インチウエハだが、2023年3月期から一部で12インチが立ち上がるようだ。さらに、この12インチウエハ1枚からは自動車約3台分のIGBTが取れると言う。したがって今後のEV自動車生産予測から、同社では12インチウエハ用「Supporter」の需要の高まりについては遅くとも2026年3月期に、7,000枚/年になると見ているようだ。
「Supporter」の価格は正式には開示されていないが、取材に対して会社は「1枚数千米ドルのレベル」と述べている。仮にこの価格を3千米ドル、1米ドルを120円とすると、2026年3月期の「Supporter」の売上高は、7,000×3,000×120=2,520百万円※となる可能性がある。
※これらの数字は、弊社推測によるもので、会社から正式に発表された数字ではない。
3. もう一つの潜在市場(MOSFET用)
また同社製品(主に「Supporter」)に対して、もう一つ大きな市場として期待されるのがMOSFET用だ。現在、主に自動車用と携帯電話用にバッテリーの大容量化が進んでおり、これらのバッテリーにおいては同時に高速(短時間)での充電が求められている。高速(短時間)で充電を行うためには、高電圧をかける必要があり、これに耐えられるMOSFET半導体が必須部品となる。ただし、MOSFET半導体の厚さは約100μであるが、サイズが大きくなるためデバイスメーカーとしては少しでも生産効率を上げるために8インチウエハでの生産を標準としている。しかしその生産工程ではウエハの「反り」が大きな問題となっており、これを解決するのが同社の「Supporter」である。
同社では、このMOSFET用Supporterの需要は2024年3月期には約1,500枚/年に達すると見ており、IGBT用と並んで楽しみな市場である。MOSFET用(8インチ用)の価格は、IGBT用(12インチ用)よりは低いと予想されるが、売上高は年間200~300百万円に達する可能性はあると弊社では見ている。
■株主還元策
まずは安定した業績確保が先決
同社はまだ発展途上の企業であり十分な利益を確保できていない。株主還元策はまだ先の話であり、まずは足元の利益をしっかり確保することが先決だろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<EY>
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