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筑波精工 Research Memo(1):2022年3月期は、顧客の試行錯誤による遅延から期初計画を下回る
配信日時:2022/06/13 16:01
配信元:FISCO
■要約
筑波精工<6596>の主力事業は、電界による吸着保持技術を生かした静電吸着システム「静電チャック(E-Chuck)」(以下、静電チャック)である。国際特許を保有している高度な技術でありながら、過去においてはあまり多くの需要が期待されていなかった。しかしここ数年で同社を取り巻く環境は変わりつつある。自動車の電気化(EV化)が急速に進み、これに伴い搭載されるパワー半導体の薄型化が重要となってきたからだ。薄型半導体を製造するプロセスで使用されることになる同社の静電チャックに注目が集まっている。現在の売上高はまだ少額だが、自動車のEV化が急速に進むと言われている2023年以降の動向が注目される。
1. 会社の沿革と主な事業内容
同社は、電気機械器具の製造販売並びに電気機械器具の検査、測定、治工具及び金型の販売を目的として、 1985年に栃木県真岡市熊倉町に設立された。設立当初は三洋電機(株)の半導体の後工程関係の設備を設計・販売していたが、並行して社内で開発を進めてきた様々な用途に応用が可能な静電チャックの開発に目途が付いたことから、2002年からは静電チャックの研究開発と静電チャック関連製品の販売に絞った事業展開を進めてきた。
2. 2022年3月期の業績(実績)
2022年3月期の業績は、売上高は215百万円(前期比10.7%増)、営業損失は74百万円(前期は90百万円の損失)、経常損失は73百万円(同86百万円の損失)、当期純損失は113百万円(同108百万円の損失)となり、期初計画である売上高468百万円、営業損失11百万円を下回った。売上高については、主要顧客の生産現場での立ち上がりが遅れたことに加え、2021年秋口から自動機用の部材(主に半導体等の電子部品)の納期遅延が発生し、大口受注が大きく影響を受けた(遅延した)。営業損益幅も、これに伴い予想以上に拡大した。同社製品を使った生産方式は全く新しい方式であることから、顧客サイドでも試行錯誤が続いたことから遅延が発生しており、案件そのものが失注したわけではない。そのため、懸念される結果ではなかったと言えるだろう。また当期純損失を計上したが、手元の現金及び預金は434百万円と比較的豊富であり、財務上の不安はない。
3. 2023年3月期の業績予想
2023年3月期の業績は、売上高は前期比72.3%増の372百万円、営業利益は7百万円(前期は74百万円の損失)、経常利益は6百万円(同73百万円の損失)、当期純利益は1百万円(同113百万円の損失)と、増収により収益性は改善し、営業利益転換を予想している。2022年3月期からのずれ込み案件が立ち上がることに加え、主要製品の販売を強化することで売上高は増収を見込んでいる。2022年3月期と同様に装着する機器の製造・販売が需要に追いつくかがカギとなりそうだ。
4. 中長期の展望:自動車EV化による本格的な立ち上がりは2023年以降
同社の今後の成長マップは、自動車のEV化の進展→IGBT※1等のパワー半導体の需要の高まり→薄型ウエハでの生産の必要性→同社の静電チャックへの需要増となる。現在までの業績は低迷しているが、今後は自動車のEV化に伴うパワー半導体のさらなる生産増が見込まれ、将来は明るいと言える。そのほか、自動車用や携帯電話用に高速バッテリーチャージャーの需要も増加しており、この高速バッテリーチャージャーに必須部品であるMOSFET※2半導体の生産工程においても同社製品が使われる可能性も高い。自動車向けパワー半導体の本格的な立ち上がりは、同社によると2023年以降になると見られており、同社の今後の動向を注視したい。
※1 IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)は、パワー半導体(より高い電圧、より大きな電流のコントロールを可能にする)の一種である。用途としては、“電気で動き、パワーの強弱を調整できるもの”で、電車や自動車(ハイブリッド車や電気自動車)、IHをはじめとする家庭調理機器やエアコン、冷蔵庫、洗濯機などがある。
※2 MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート電界効果トランジスタ)は、スイッチデバイスの一種。スイッチデバイスは電源を入れることで様々な機能を動かすための装置へ電力を供給する。その際に、入力電圧を各所出力電圧へ電圧変換して電力供給することが必要である。例えば、パソコンであれば、液晶パネル、CPU、メモリやオーディオアンプ、USBコネクタなどを動かすために、MOSFETが入力電圧を変換し、電力を供給する。スイッチデバイスのなかでもMOSFETは、電力を高効率に流し、低消費電力に優れ、製品の小型軽量化を可能にするものである。
■Key Points
・静電界を用いた吸着システム「静電チャック」が主力事業。自動車のEV化で要注目
・足元の業績はまだ低迷。2023年3月期は営業利益転換を目指す
・中長期の展望は明るく要注目だが、自動車EV化による本格的な立ち上がりは2023年以降の見込み
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<EY>
筑波精工<6596>の主力事業は、電界による吸着保持技術を生かした静電吸着システム「静電チャック(E-Chuck)」(以下、静電チャック)である。国際特許を保有している高度な技術でありながら、過去においてはあまり多くの需要が期待されていなかった。しかしここ数年で同社を取り巻く環境は変わりつつある。自動車の電気化(EV化)が急速に進み、これに伴い搭載されるパワー半導体の薄型化が重要となってきたからだ。薄型半導体を製造するプロセスで使用されることになる同社の静電チャックに注目が集まっている。現在の売上高はまだ少額だが、自動車のEV化が急速に進むと言われている2023年以降の動向が注目される。
1. 会社の沿革と主な事業内容
同社は、電気機械器具の製造販売並びに電気機械器具の検査、測定、治工具及び金型の販売を目的として、 1985年に栃木県真岡市熊倉町に設立された。設立当初は三洋電機(株)の半導体の後工程関係の設備を設計・販売していたが、並行して社内で開発を進めてきた様々な用途に応用が可能な静電チャックの開発に目途が付いたことから、2002年からは静電チャックの研究開発と静電チャック関連製品の販売に絞った事業展開を進めてきた。
2. 2022年3月期の業績(実績)
2022年3月期の業績は、売上高は215百万円(前期比10.7%増)、営業損失は74百万円(前期は90百万円の損失)、経常損失は73百万円(同86百万円の損失)、当期純損失は113百万円(同108百万円の損失)となり、期初計画である売上高468百万円、営業損失11百万円を下回った。売上高については、主要顧客の生産現場での立ち上がりが遅れたことに加え、2021年秋口から自動機用の部材(主に半導体等の電子部品)の納期遅延が発生し、大口受注が大きく影響を受けた(遅延した)。営業損益幅も、これに伴い予想以上に拡大した。同社製品を使った生産方式は全く新しい方式であることから、顧客サイドでも試行錯誤が続いたことから遅延が発生しており、案件そのものが失注したわけではない。そのため、懸念される結果ではなかったと言えるだろう。また当期純損失を計上したが、手元の現金及び預金は434百万円と比較的豊富であり、財務上の不安はない。
3. 2023年3月期の業績予想
2023年3月期の業績は、売上高は前期比72.3%増の372百万円、営業利益は7百万円(前期は74百万円の損失)、経常利益は6百万円(同73百万円の損失)、当期純利益は1百万円(同113百万円の損失)と、増収により収益性は改善し、営業利益転換を予想している。2022年3月期からのずれ込み案件が立ち上がることに加え、主要製品の販売を強化することで売上高は増収を見込んでいる。2022年3月期と同様に装着する機器の製造・販売が需要に追いつくかがカギとなりそうだ。
4. 中長期の展望:自動車EV化による本格的な立ち上がりは2023年以降
同社の今後の成長マップは、自動車のEV化の進展→IGBT※1等のパワー半導体の需要の高まり→薄型ウエハでの生産の必要性→同社の静電チャックへの需要増となる。現在までの業績は低迷しているが、今後は自動車のEV化に伴うパワー半導体のさらなる生産増が見込まれ、将来は明るいと言える。そのほか、自動車用や携帯電話用に高速バッテリーチャージャーの需要も増加しており、この高速バッテリーチャージャーに必須部品であるMOSFET※2半導体の生産工程においても同社製品が使われる可能性も高い。自動車向けパワー半導体の本格的な立ち上がりは、同社によると2023年以降になると見られており、同社の今後の動向を注視したい。
※1 IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)は、パワー半導体(より高い電圧、より大きな電流のコントロールを可能にする)の一種である。用途としては、“電気で動き、パワーの強弱を調整できるもの”で、電車や自動車(ハイブリッド車や電気自動車)、IHをはじめとする家庭調理機器やエアコン、冷蔵庫、洗濯機などがある。
※2 MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート電界効果トランジスタ)は、スイッチデバイスの一種。スイッチデバイスは電源を入れることで様々な機能を動かすための装置へ電力を供給する。その際に、入力電圧を各所出力電圧へ電圧変換して電力供給することが必要である。例えば、パソコンであれば、液晶パネル、CPU、メモリやオーディオアンプ、USBコネクタなどを動かすために、MOSFETが入力電圧を変換し、電力を供給する。スイッチデバイスのなかでもMOSFETは、電力を高効率に流し、低消費電力に優れ、製品の小型軽量化を可能にするものである。
■Key Points
・静電界を用いた吸着システム「静電チャック」が主力事業。自動車のEV化で要注目
・足元の業績はまだ低迷。2023年3月期は営業利益転換を目指す
・中長期の展望は明るく要注目だが、自動車EV化による本格的な立ち上がりは2023年以降の見込み
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<EY>
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