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明日の株式相場に向けて=「株は需給」の好見本となる謎の急騰劇

配信日時:2022/02/08 17:00 配信元:MINKABU
 きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比35円高の2万7284円と小反発。前日の米国株市場では、NYダウは引け際戻してわずかにプラス圏を維持したものの、ナスダック指数の方はマイナス圏で着地。10日発表の米消費者物価指数(CPI)発表を前に様子見で覇気が感じられず、いわば売り買いともに攻める姿勢を放棄したような地合いだった。東京市場もこれに倣ってというのも変な話だが、売買主体が外国人であるため、国内に手掛かり材料が見当たらない以上は同様の地合いとなりがちである。  もっとも、国内に手掛かり材料が見当たらないというのは問題であって、岸田首相は株式市場にやる気を出させるような材料の提供を放棄しているような状態である。果たして確信犯的にそうしているのかどうかは分からないが、市場では「財務官僚の意見に耳を傾け過ぎとみられても仕方ないような言動が岸田首相には多い」(準大手証券ストラテジスト)という声が聞かれる。「株主資本主義の見直し」に言及すれば、富裕層ではなく庶民の味方というイメージにつながると誤解している。企業が株主に対するコストを従業員にシフトさせることで、結果、賃金上昇に結び付くという短絡的な発想だとすれば、これは重症である。株価を下げることによる逆資産効果は馬鹿にならない。かつて大蔵省が主導した1990年の総量規制によってバブル潰しに奔走したあげく、日本経済を世界で唯一長期デフレの深淵に引きずり込んだ“失われた20年”で証明されている。この再来を予期させるような政策スタンスを続けるのであれば、日本経済はポスト岸田政権に期待するよりない。  個別株を見るとグロース株への風向きの悪さは相変わらずである。国内は新発10年債利回りが上昇しているとはいえ0.2%台にやっと乗せてきた段階だが、米長期金利は2%台乗せが目前だ。これでも出遅れているのだが、1月のCPIの結果次第で更に跳ね上がる懸念もある。3月中旬のFOMCでのFRBのタカ派傾斜が一段と強まることへのプレッシャーを株式市場が跳ね飛ばせるとすれば、どういうシナリオなのかは正直現段階では見えにくい。22年3月期の国内企業の決算見通しは上方修正も相次ぎ、確かに好調といってよいのだが、業績相場への切符を手にするためには23年3月期の見通しこそが重要となる。  しかし、この時期に業績ではなく需給オンリーで株価を躍進させる銘柄もある。例えばきょうはオリエンタルランド<4661.T>が一時1000円を超える上昇で2万1900円台まで買われ8連騰、連日の最高値更新となった。22年3月期の営業赤字幅が当初より縮小する見込みとはいっても、株価が最高圏で舞い上がるような急騰劇は、普通の感覚ではとても理解できない。市場関係者によると「OLCは筆頭株主の京成電鉄<9009.T>をはじめ、三井不動産<8801.T>、そして千葉県が“テコでも動かない安定株主”として上位株主に名を連ねている。また、信用買い残が少なく優待目的などで株価動向に関係なく現物株で保有し続ける個人が非常に多い。厳しい収益状況を横目に株価下落を見込んで空売りを仕掛けても、狼狽売りを引き出すようなことはできない」(ネット証券マーケットアナリスト)という。  そして、OLCの株価上昇は信用倍率1倍で日証金では逆日歩がついている、という理由だけではない。カギを握っているのは海外ヘッジファンドの動向で、貸株調達による空売りのショートカバーが反映されている可能性が高い。45日ルールを考慮して2月15日にかけてポジション解消の動きが半ば強制的に発生するが、これはもちろん買いポジションの解消だけではない。OLCのような銘柄には空売りポジションの解消すなわち買い戻し圧力が顕在化する。ガチガチの現物保有でキャピタルゲインやロスに絡む売りニーズが発生しない銘柄においては、たとえ時価総額が8兆円近い大型株であっても、実質的な品薄状態のなか真空地帯を舞い上がる。まさに「株は需給」を地で行く展開である。  あすのスケジュールでは、1月のマネーストック、1月の工作機械受注など。またマザーズ市場にライトワークス<4267.T>が新規上場する。海外ではインド中銀、タイ中銀が政策金利を発表。このほか12月の米卸売在庫・売上高など。国内主要企業の決算発表では明治ホールディングス<2269.T>、日本マクドナルドホールディングス<2702.T>、SUMCO<3436.T>、東レ<3402.T>、富士フイルムホールディングス<4901.T>、トヨタ自動車<7203.T>、ヤマトホールディングス<9064.T>などが予定されている。海外主要企業ではウォルト・ディズニー<DIS>、ウーバーテクノロジーズ<UBER>などの決算発表に注目度が高い。(銀) 出所:MINKABU PRESS

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