注目トピックス 日本株
テノックス Research Memo(6):中小案件が伸び悩んだが大型案件で利益を確保
配信日時:2022/01/19 15:16
配信元:FISCO
■業績動向
1. 2022年3月期第2四半期の業績動向
テノックス<1905>の2022年3月期第2四半期の業績は、売上高6,838百万円(前年同期比5.1%減)、営業利益48百万円(同189.3%増)、経常利益72百万円(同142.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益61百万円(同38.3%増)と減収増益となった。国内経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進んで景気回復への期待感は高まっているものの、感染症の再拡大により社会経済活動が大きく制限され、依然として先を見通せない状況にあった。建設業界においては、公共投資は補正予算などにより引き続き底堅く推移し、民間の設備投資にも回復の動きが出てきたものの、先行きの不透明感が拭えないことから受注活動で競争が激化、受注単価の下落を招いている状況である。また、建設資材の価格が上昇、特に鋼材が高騰しており、鋼管杭などの値決めに影響が生じている模様である。セメントも値上げ方向にあるが、鋼管杭からコンクリート杭へのシフトも検討されている。このため、同社としては、提携先の日本ヒュームや日本コンクリート工業、子会社化した広島組のノウハウを有効に活用していく方針である。
同社の売上高は、五井火力発電所発電設備建設工事(地盤改良:施工継続中)や東京レールゲートEAST整備事業(建築杭:2021年4月完工)、GLPALFALINK相模原IIプロジェクト(地盤改良:2021年8月完工)など大型の杭工事や地盤改良工事が順調に推移したものの、地盤改良工事の中小案件で価格競争が激化したため受注件数が減少、減収となった。利益面では、好採算の大型案件の構成比が上昇したこと、前期第2四半期に施工難易度の高い地盤改良が多かった反動などにより杭工事と地盤改良工事の工事利益率が向上したことにより、売上総利益率の改善につながった。一方、広島組の子会社化や営業強化を目的とした人材採用などにより、販管費は増加した。期初計画との比較では、売上総利益率と販管費はほぼ計画内だったが、売上の進捗が遅れたため利益面でもややビハインドすることとなったようだ。なお、収益認識会計基準等を適用した結果、売上高で277百万円、売上原価で277百万円それぞれ減少したが、利益面に与える影響はなかった。
セグメント別の業績は、建設事業が減収増益、土木建築コンサルティング全般等事業が増収減益、その他の事業が微増収増益となった。建設事業では、土木杭工事が、土木系の工事が増えなかったため増収に貢献できなかったが、地盤改良や関西で大型機の稼働率が上昇したため工事採算が改善した。建築杭工事と地盤改良工事は、好採算の大型案件によりともに増収増益となった。商品その他は、工事を伴わない鋼管杭材料の売買を収益認識しなくなったため、売上高が大きく減少する一因となった。海外は、今後再びロックダウンの影響が生じる懸念はあるが、ようやく本格的に動き出したところである。土木建築コンサルティングは、実験や設計を行っていることから下期売上に対する費用負担が上期に生じるため、赤字が先行している。
競争激化や資材価格の高騰など厳しい環境も想定
2. 2022年3月期の業績見通し
同社は2022年3月期の業績見通しについて、売上高18,000百万円(前期比13.2%増)、営業利益680百万円(同120.1%増)、経常利益700百万円(同111.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益400百万円(同130.8%増)と見込んでおり、期初計画から変更していない。国内経済は、10月の緊急事態宣言明け以後徐々に持ち直しつつあるが、新型株を含め新型コロナウイルス感染症が海外において猛威を振るっており、不透明感は依然拭えない。建設業界では、こうした不透明感を背景に中小案件で価格競争がさらに強まっており、加えて、世界的な経済の底打ち感から鋼管やセメントなど資材価格の値上げが見込まれている。大型案件の受注は計画通りながら、収益面で厳しい環境といえる。
同社は下期も引き続き「設計提案から施工までの一貫体制の強化」と「顧客ニーズに応える付加価値の創出」に精力的に取り組む方針である。この結果、国内建設事業は、中小案件は引き続き競争が厳しい状況だが、継続施工中の五井火力発電所発電設備建設工事をはじめ、ベルーナ吉見ロジスティクスセンターの増築工事(建築杭:2022年2月完工予定)や千客万来施設(6街区)新築工事(建築杭:2022年2月完工予定)など大型案件が売上高をけん引する見込みである。海外建設事業は、2021年3月期に予定していた案件が今期に期ズレして出件するため、売上増加が見込まれている。なお、大型案件の環境が良化していることから第2四半期末の受注残高が33.3%増と大きく伸びており、売上高は強含んで推移することが考えられる。これら増収に伴う増益に加え、施工機械の稼働が改善することによる利益率改善により、同社は期初計画通りの営業利益を見込んでいる。
しかし、資源価格の高騰などからゼネコンからの要請や中小案件での競争が、下期はさらに厳しくなることが想定され、容易に楽観できる状況にはないと考える。また、大型の土木杭工事で一部施工が4月以降に期ズレする懸念もある。このため、下期の売上高も未達になる可能性が高まっており、同社は、厳しい環境ながら短期的に成果の出やすい地盤改良の中小工事を取りに行くことも検討している。また、下期は上期以上に施工機の稼働率が向上することで売上総利益率の改善を見込んでいるが、足もとで鋼管価格高騰の影響が少しずつ生じていること、競争の厳しい地盤改良の中小案件を確保しに行くことから、売上総利益率も想定ほどに高まらない可能性がある。以上から、2022年3月期業績は期初計画からややネガティブに振れる可能性もあると考える。だからこそ下期から来期へ向けて、場所打ち杭中心の都市部案件に向けて残土の少ない回転杭や、成長中のデータセンター案件の取り込みに向けてコンクリート杭を提案するなど、営業力を強化した成果に期待したい。
戦略の成果をテコに中期経営計画の目標達成へ
3. 来期~中期成長イメージ
短期的にはやや厳しい経営環境が続くが、2023年3月期以降は、事業環境が徐々に改善していくことが予想される。その分、3つの基本戦略に加え、提携やM&Aなどこれまでの戦略の成果への期待も高まる。2023年3月期は北海道新幹線の土木工事が本格化する見込みである。高速道路や大阪モノレール延伸など関西での交通関係の土木案件や、工作機械メーカーや自動車メーカーなど民間企業の設備投資関連にも期待ができる。このため増収増益、できれば10億円台の営業利益を狙いたいところである。中期的には、大都市圏の道路拡張工事や北陸新幹線延伸工事、リニア中央新幹線高架部分などもターゲットに入る。資源価格の高騰に対しては、鋼管杭からコンクリート杭を提案していく方針である。人通りが多いなかで残土をなるべく出したくない都市部で、場所打ち杭に代わって回転杭を使うケースを狙いたいところであろう。大阪・関西万博でも回転杭の需要が見込まれる。環境面の要請からGTL燃料や二酸化炭素固定化技術へのニーズは非常に高いと考えられる。このように様々なケースに対応できるのは同社のラインアップが豊富なためで、近年の提携やM&Aの成果ということができる。こうした成果をテコに、同社は新中期経営計画の目標値(2024年3期売上高220億円、経常利益15億円、ROE8%)を達成する計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 2022年3月期第2四半期の業績動向
テノックス<1905>の2022年3月期第2四半期の業績は、売上高6,838百万円(前年同期比5.1%減)、営業利益48百万円(同189.3%増)、経常利益72百万円(同142.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益61百万円(同38.3%増)と減収増益となった。国内経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進んで景気回復への期待感は高まっているものの、感染症の再拡大により社会経済活動が大きく制限され、依然として先を見通せない状況にあった。建設業界においては、公共投資は補正予算などにより引き続き底堅く推移し、民間の設備投資にも回復の動きが出てきたものの、先行きの不透明感が拭えないことから受注活動で競争が激化、受注単価の下落を招いている状況である。また、建設資材の価格が上昇、特に鋼材が高騰しており、鋼管杭などの値決めに影響が生じている模様である。セメントも値上げ方向にあるが、鋼管杭からコンクリート杭へのシフトも検討されている。このため、同社としては、提携先の日本ヒュームや日本コンクリート工業、子会社化した広島組のノウハウを有効に活用していく方針である。
同社の売上高は、五井火力発電所発電設備建設工事(地盤改良:施工継続中)や東京レールゲートEAST整備事業(建築杭:2021年4月完工)、GLPALFALINK相模原IIプロジェクト(地盤改良:2021年8月完工)など大型の杭工事や地盤改良工事が順調に推移したものの、地盤改良工事の中小案件で価格競争が激化したため受注件数が減少、減収となった。利益面では、好採算の大型案件の構成比が上昇したこと、前期第2四半期に施工難易度の高い地盤改良が多かった反動などにより杭工事と地盤改良工事の工事利益率が向上したことにより、売上総利益率の改善につながった。一方、広島組の子会社化や営業強化を目的とした人材採用などにより、販管費は増加した。期初計画との比較では、売上総利益率と販管費はほぼ計画内だったが、売上の進捗が遅れたため利益面でもややビハインドすることとなったようだ。なお、収益認識会計基準等を適用した結果、売上高で277百万円、売上原価で277百万円それぞれ減少したが、利益面に与える影響はなかった。
セグメント別の業績は、建設事業が減収増益、土木建築コンサルティング全般等事業が増収減益、その他の事業が微増収増益となった。建設事業では、土木杭工事が、土木系の工事が増えなかったため増収に貢献できなかったが、地盤改良や関西で大型機の稼働率が上昇したため工事採算が改善した。建築杭工事と地盤改良工事は、好採算の大型案件によりともに増収増益となった。商品その他は、工事を伴わない鋼管杭材料の売買を収益認識しなくなったため、売上高が大きく減少する一因となった。海外は、今後再びロックダウンの影響が生じる懸念はあるが、ようやく本格的に動き出したところである。土木建築コンサルティングは、実験や設計を行っていることから下期売上に対する費用負担が上期に生じるため、赤字が先行している。
競争激化や資材価格の高騰など厳しい環境も想定
2. 2022年3月期の業績見通し
同社は2022年3月期の業績見通しについて、売上高18,000百万円(前期比13.2%増)、営業利益680百万円(同120.1%増)、経常利益700百万円(同111.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益400百万円(同130.8%増)と見込んでおり、期初計画から変更していない。国内経済は、10月の緊急事態宣言明け以後徐々に持ち直しつつあるが、新型株を含め新型コロナウイルス感染症が海外において猛威を振るっており、不透明感は依然拭えない。建設業界では、こうした不透明感を背景に中小案件で価格競争がさらに強まっており、加えて、世界的な経済の底打ち感から鋼管やセメントなど資材価格の値上げが見込まれている。大型案件の受注は計画通りながら、収益面で厳しい環境といえる。
同社は下期も引き続き「設計提案から施工までの一貫体制の強化」と「顧客ニーズに応える付加価値の創出」に精力的に取り組む方針である。この結果、国内建設事業は、中小案件は引き続き競争が厳しい状況だが、継続施工中の五井火力発電所発電設備建設工事をはじめ、ベルーナ吉見ロジスティクスセンターの増築工事(建築杭:2022年2月完工予定)や千客万来施設(6街区)新築工事(建築杭:2022年2月完工予定)など大型案件が売上高をけん引する見込みである。海外建設事業は、2021年3月期に予定していた案件が今期に期ズレして出件するため、売上増加が見込まれている。なお、大型案件の環境が良化していることから第2四半期末の受注残高が33.3%増と大きく伸びており、売上高は強含んで推移することが考えられる。これら増収に伴う増益に加え、施工機械の稼働が改善することによる利益率改善により、同社は期初計画通りの営業利益を見込んでいる。
しかし、資源価格の高騰などからゼネコンからの要請や中小案件での競争が、下期はさらに厳しくなることが想定され、容易に楽観できる状況にはないと考える。また、大型の土木杭工事で一部施工が4月以降に期ズレする懸念もある。このため、下期の売上高も未達になる可能性が高まっており、同社は、厳しい環境ながら短期的に成果の出やすい地盤改良の中小工事を取りに行くことも検討している。また、下期は上期以上に施工機の稼働率が向上することで売上総利益率の改善を見込んでいるが、足もとで鋼管価格高騰の影響が少しずつ生じていること、競争の厳しい地盤改良の中小案件を確保しに行くことから、売上総利益率も想定ほどに高まらない可能性がある。以上から、2022年3月期業績は期初計画からややネガティブに振れる可能性もあると考える。だからこそ下期から来期へ向けて、場所打ち杭中心の都市部案件に向けて残土の少ない回転杭や、成長中のデータセンター案件の取り込みに向けてコンクリート杭を提案するなど、営業力を強化した成果に期待したい。
戦略の成果をテコに中期経営計画の目標達成へ
3. 来期~中期成長イメージ
短期的にはやや厳しい経営環境が続くが、2023年3月期以降は、事業環境が徐々に改善していくことが予想される。その分、3つの基本戦略に加え、提携やM&Aなどこれまでの戦略の成果への期待も高まる。2023年3月期は北海道新幹線の土木工事が本格化する見込みである。高速道路や大阪モノレール延伸など関西での交通関係の土木案件や、工作機械メーカーや自動車メーカーなど民間企業の設備投資関連にも期待ができる。このため増収増益、できれば10億円台の営業利益を狙いたいところである。中期的には、大都市圏の道路拡張工事や北陸新幹線延伸工事、リニア中央新幹線高架部分などもターゲットに入る。資源価格の高騰に対しては、鋼管杭からコンクリート杭を提案していく方針である。人通りが多いなかで残土をなるべく出したくない都市部で、場所打ち杭に代わって回転杭を使うケースを狙いたいところであろう。大阪・関西万博でも回転杭の需要が見込まれる。環境面の要請からGTL燃料や二酸化炭素固定化技術へのニーズは非常に高いと考えられる。このように様々なケースに対応できるのは同社のラインアップが豊富なためで、近年の提携やM&Aの成果ということができる。こうした成果をテコに、同社は新中期経営計画の目標値(2024年3期売上高220億円、経常利益15億円、ROE8%)を達成する計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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