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テノックス Research Memo(5):基礎工事を通して社会に「安全」と「安心」を提供する
配信日時:2022/01/19 15:15
配信元:FISCO
■新中期経営計画
1. 長期ビジョン
テノックス<1905>は、2018年度に長期ビジョン(目指すべき企業像)を策定、「人間尊重、技術志向、積極一貫」という経営理念をバックボーンに、変化する社会のニーズに適応した技術革新に積極的に取り組むことで新たな価値と市場を創出し、基礎工事を通して社会に「安全」と「安心」を提供し、全てのステークホルダーが豊かさを実感できるサステナブルな企業を目指している。しかし、策定時と比べて、東京オリンピック・パラリンピック向け工事の一巡、常態化する異常気象、コロナ禍を経たニューノーマルなど経営環境に大きな変化があり、長期ビジョンの実現への橋頭保づくりを目的とした前中期経営計画(2018年度~2020年度)は対応が道半ばとなった。このため、Phase2と位置付ける新中期経営計画(2021年度~2023年度)では、少子高齢化による新設工事の減少、インフラ維持や激甚災害への対応で少量多様化する建設ニーズ、働き方改革や生産性向上を目的とする省力化・自動化・デジタル化などに「適応」することで、新たな50年の礎となる「高付加価値」を追求していくことになった。
3つの基本戦略で「適応力」を高める考え
2. 新中期経営計画
新中期経営計画では、スローガンを「進取の気性」とし、ニーズに適応した高付加価値を創出し、社会課題の解決や企業価値の向上につなげていく方針である。そのため、開発戦略、営業・施工戦略、ESG戦略の3つの基本戦略によって、新しい時代の社会や生活様式への「適応力」を高めていく考えである。開発戦略では、基礎工事技術で高付加価値を創出し、災害の激甚化や担い手不足、工事への信頼向上といった課題を解消する。営業・施工戦略では、強みを活かして設計提案から施工まで一気通貫した受注を確保することで需要の減少などの課題に対応する一方、国土の強靭化や開発途上国の社会インフラ整備などにも貢献する。ESG戦略では、社会課題の解決や企業価値の向上などに積極的に取り組み、サステナビリティ経営の高度化を図る。
3つの基本戦略により、国土のリダンダンシー※整備事業(高速鉄道整備事業及び高速道路整備事業)における基礎工事を確保するとともに、民間建築事業での営業領域の拡大、ベトナムなど海外での基礎工事事業の本格展開などを推進する方針である。また、「VCCS」の利用拡大と標準化、ICT施工技術の積極的な導入、M&Aや業務資本提携を生かした業容拡大なども進める計画である。これにより2024年3月期を最終年度に、前中期経営計画の目標値であった売上高220億円、経常利益15億円、ROE8%に再チャレンジする考えである。なお、新中期経営計画で順調に増加する見込みのキャッシュ・フローに関して、同社は成長投資と後述する株主還元に戦略的かつバランスよく配分していく方針である。なかでも成長投資については、手元資金や自己株式の活用、必要に応じて社債の発行や借入により、3年間で35億円を計画している。内容は、施工機械や研究開発・実験工事、ICT技術導入、海外事業投資、基幹システム刷新、グリーン投資など多岐にわたる。
※リダンダンシー(Redundancy):「冗長性」や「余剰」を意味する。国土計画上では、自然災害などによる障害発生時に、一部区間の途絶や一部施設の破壊が全体の機能不全に繋がらないよう、交通ネットワークやライフラインなどインフラをあらかじめ多重化したり、予備の手段を用意したりすること。
3つの基本戦略に沿って具体策が進行
3. 新中期経営計画の進捗
新中期経営計画がスタートして半年経過したが、3つの基本戦略に沿って、すでに具体的な施策が着実に進行している。GTL(Gas to Liquid)燃料の導入や既存杭引抜き時の地盤改良対策の検討、国土強靭化・リダンダンシープロジェクトへの貢献などである。
(1) GTL燃料の導入
同社は、GTL燃料を基礎工事業界で初めて建設現場に導入した。GTL燃料は石油由来の軽油に代わるクリーンな燃料で、燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量を約8.5%削減するほか、無色無臭で燃やしても煤が出にくく、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質を低減することができる。東京機材センターにおいてクレーンやゼネレーターで試験運用を進めてきたが、今期に入って実際の地盤改良工事現場で使用する施工機での運用を開始した。クリーン化のコストが大きく増えないことからゼネコンや設計事務所の関心が高く、同社は差別化技術として順次拡大していく方針である。
(2) 既存杭引抜き時の地盤改良対策工事
既存建物を解体する際、建物を支えてきた杭(既存杭)の撤去後に杭孔の埋戻し処理を適切に行わないと、孔曲がりや孔壁崩壊などにより新設杭の品質確保に影響を及ぼすことがある。このため、杭の撤去と同時に埋戻し処理を行い、周辺地盤の緩みを防止して原地盤程度の強度に復旧・安定させる地盤改良対策が必要となる。同社はそうした地盤改良技術の確立に取り組んでおり、現在、試験施工を行っているところである。また、原地盤程度の強度を確保する方法として産業副産物を用いた材料を活用していくことを検討しており、関東と関西を皮切りに事業展開を考えている。
(3) 国土強靭化、リダンダンシープロジェクトへの貢献
北陸新幹線延伸工事での実績を背景に、同社は2022年3月期第3四半期に、北海道新幹線の延伸事業の工事第一弾として「北海道新幹線、市渡高架橋他」の基礎工事を受注した。すでに鋼管ソイルセメント杭の施工試験を実施しているが、同社にとって今後の鉄道基礎工事の受注につながる重要案件という位置づけである。また、近年頻発する豪雨災害に対して、水処理施設・排水機場・ポンプ場など国土交通省が注力している水処理系施設の整備へ向けて、同社は鋼管杭及びコンクリート杭などを使用した設計提案を強化している。
(4) 二酸化炭素固定化技術の開発
同社は、日本コンクリート工業との業務提携の一環として「PAdeCS研究会」に加盟、コンクリートスラッジ由来の脱リン材「PAdeCS」製造時に二酸化炭素を封入して生成されるエコタンカルを基礎工事の施工に使用するという技術の開発を進めている。コンクリートの代わりにエコタンカルを使うことで、地盤改良の際にエコタンカル1トン当たり440キログラムの二酸化炭素を、特別大きなコストをかけずに固定化できる技術である。来期を目途にプロジェクト前段階での試験施工を実施するべく、現在、室内試験を行っているところである。同社は、こうした技術によって基礎工事における「脱炭素」の流れをけん引する考えで、技術を確立したあとは他社が活用できる方法を検討する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 長期ビジョン
テノックス<1905>は、2018年度に長期ビジョン(目指すべき企業像)を策定、「人間尊重、技術志向、積極一貫」という経営理念をバックボーンに、変化する社会のニーズに適応した技術革新に積極的に取り組むことで新たな価値と市場を創出し、基礎工事を通して社会に「安全」と「安心」を提供し、全てのステークホルダーが豊かさを実感できるサステナブルな企業を目指している。しかし、策定時と比べて、東京オリンピック・パラリンピック向け工事の一巡、常態化する異常気象、コロナ禍を経たニューノーマルなど経営環境に大きな変化があり、長期ビジョンの実現への橋頭保づくりを目的とした前中期経営計画(2018年度~2020年度)は対応が道半ばとなった。このため、Phase2と位置付ける新中期経営計画(2021年度~2023年度)では、少子高齢化による新設工事の減少、インフラ維持や激甚災害への対応で少量多様化する建設ニーズ、働き方改革や生産性向上を目的とする省力化・自動化・デジタル化などに「適応」することで、新たな50年の礎となる「高付加価値」を追求していくことになった。
3つの基本戦略で「適応力」を高める考え
2. 新中期経営計画
新中期経営計画では、スローガンを「進取の気性」とし、ニーズに適応した高付加価値を創出し、社会課題の解決や企業価値の向上につなげていく方針である。そのため、開発戦略、営業・施工戦略、ESG戦略の3つの基本戦略によって、新しい時代の社会や生活様式への「適応力」を高めていく考えである。開発戦略では、基礎工事技術で高付加価値を創出し、災害の激甚化や担い手不足、工事への信頼向上といった課題を解消する。営業・施工戦略では、強みを活かして設計提案から施工まで一気通貫した受注を確保することで需要の減少などの課題に対応する一方、国土の強靭化や開発途上国の社会インフラ整備などにも貢献する。ESG戦略では、社会課題の解決や企業価値の向上などに積極的に取り組み、サステナビリティ経営の高度化を図る。
3つの基本戦略により、国土のリダンダンシー※整備事業(高速鉄道整備事業及び高速道路整備事業)における基礎工事を確保するとともに、民間建築事業での営業領域の拡大、ベトナムなど海外での基礎工事事業の本格展開などを推進する方針である。また、「VCCS」の利用拡大と標準化、ICT施工技術の積極的な導入、M&Aや業務資本提携を生かした業容拡大なども進める計画である。これにより2024年3月期を最終年度に、前中期経営計画の目標値であった売上高220億円、経常利益15億円、ROE8%に再チャレンジする考えである。なお、新中期経営計画で順調に増加する見込みのキャッシュ・フローに関して、同社は成長投資と後述する株主還元に戦略的かつバランスよく配分していく方針である。なかでも成長投資については、手元資金や自己株式の活用、必要に応じて社債の発行や借入により、3年間で35億円を計画している。内容は、施工機械や研究開発・実験工事、ICT技術導入、海外事業投資、基幹システム刷新、グリーン投資など多岐にわたる。
※リダンダンシー(Redundancy):「冗長性」や「余剰」を意味する。国土計画上では、自然災害などによる障害発生時に、一部区間の途絶や一部施設の破壊が全体の機能不全に繋がらないよう、交通ネットワークやライフラインなどインフラをあらかじめ多重化したり、予備の手段を用意したりすること。
3つの基本戦略に沿って具体策が進行
3. 新中期経営計画の進捗
新中期経営計画がスタートして半年経過したが、3つの基本戦略に沿って、すでに具体的な施策が着実に進行している。GTL(Gas to Liquid)燃料の導入や既存杭引抜き時の地盤改良対策の検討、国土強靭化・リダンダンシープロジェクトへの貢献などである。
(1) GTL燃料の導入
同社は、GTL燃料を基礎工事業界で初めて建設現場に導入した。GTL燃料は石油由来の軽油に代わるクリーンな燃料で、燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量を約8.5%削減するほか、無色無臭で燃やしても煤が出にくく、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)といった大気汚染物質を低減することができる。東京機材センターにおいてクレーンやゼネレーターで試験運用を進めてきたが、今期に入って実際の地盤改良工事現場で使用する施工機での運用を開始した。クリーン化のコストが大きく増えないことからゼネコンや設計事務所の関心が高く、同社は差別化技術として順次拡大していく方針である。
(2) 既存杭引抜き時の地盤改良対策工事
既存建物を解体する際、建物を支えてきた杭(既存杭)の撤去後に杭孔の埋戻し処理を適切に行わないと、孔曲がりや孔壁崩壊などにより新設杭の品質確保に影響を及ぼすことがある。このため、杭の撤去と同時に埋戻し処理を行い、周辺地盤の緩みを防止して原地盤程度の強度に復旧・安定させる地盤改良対策が必要となる。同社はそうした地盤改良技術の確立に取り組んでおり、現在、試験施工を行っているところである。また、原地盤程度の強度を確保する方法として産業副産物を用いた材料を活用していくことを検討しており、関東と関西を皮切りに事業展開を考えている。
(3) 国土強靭化、リダンダンシープロジェクトへの貢献
北陸新幹線延伸工事での実績を背景に、同社は2022年3月期第3四半期に、北海道新幹線の延伸事業の工事第一弾として「北海道新幹線、市渡高架橋他」の基礎工事を受注した。すでに鋼管ソイルセメント杭の施工試験を実施しているが、同社にとって今後の鉄道基礎工事の受注につながる重要案件という位置づけである。また、近年頻発する豪雨災害に対して、水処理施設・排水機場・ポンプ場など国土交通省が注力している水処理系施設の整備へ向けて、同社は鋼管杭及びコンクリート杭などを使用した設計提案を強化している。
(4) 二酸化炭素固定化技術の開発
同社は、日本コンクリート工業との業務提携の一環として「PAdeCS研究会」に加盟、コンクリートスラッジ由来の脱リン材「PAdeCS」製造時に二酸化炭素を封入して生成されるエコタンカルを基礎工事の施工に使用するという技術の開発を進めている。コンクリートの代わりにエコタンカルを使うことで、地盤改良の際にエコタンカル1トン当たり440キログラムの二酸化炭素を、特別大きなコストをかけずに固定化できる技術である。来期を目途にプロジェクト前段階での試験施工を実施するべく、現在、室内試験を行っているところである。同社は、こうした技術によって基礎工事における「脱炭素」の流れをけん引する考えで、技術を確立したあとは他社が活用できる方法を検討する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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