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新晃工業 Research Memo(7):端境期とコロナ禍が重なるなかで増収を確保
配信日時:2022/01/13 16:07
配信元:FISCO
■業績動向
1. 2022年3月期第2四半期の業績
新晃工業<6458>の2022年3月期第2四半期の業績は、売上高17,571百万円(前年同期比12.0%増)、営業利益1,829百万円(同3.0%減)、経常利益2,010百万円(同6.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,429百万円(同17.4%減)となった。国内経済は、各種政策の効果や海外経済の改善などにより持ち直しの動きはあったものの、コロナ禍の影響を背景に依然として不透明な状況が続いた。建設業界は、東京オリンピック・パラリンピック特需の端境期にコロナ禍の影響が重なったことから民間需要が低調に推移したため、第2四半期累計のAHUの全国出荷台数が最低水準となるなど厳しい環境となった。このような環境のなかでも、同社は売上高で増収を確保し利益でも微減益にとどめたが、ともにコロナ禍前の2020年3月期の水準を取り戻すことはできなかった。しかし期初計画比では、売上高で229百万円の未達だったものの、営業利益で229百万円、経常利益で210百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で229百万円の超過達成となった。なお、「収益認識に関する会計基準」等を第1四半期連結会計期間の期首から適用したため、売上高で399百万円、営業利益以下で148百万円、利益剰余金の当期首残高で53百万円増加している。
前年同期にコロナ禍の影響で大きく落ち込んだ反動はあったものの、新規需要が低水準で推移したため、同社は工事・サービス事業や高付加価値製品に注力した。工事・サービス事業に関しては、大型物件と並行して中小規模の更新物件を確実に取り込む一方、新晃アトモスの設備劣化診断などを切り口に、バブル期に導入された空調設備の更新需要を掘り起こした。また、コロナ禍の収束が見えないなか、「健康空調」の提案を強化し、浮遊細菌やウイルスを分解・除去し、浄化した空気を室内に取り込むUVCランプ搭載FCUを4月に投入した。この結果、ビル管理事業の業績回復と収益認識基準等の適用などによって増収を確保した。利益面では、水AHU市場の落ち込みによる価格競争やヒートポンプAHU市場への参入コスト、原材料価格の高騰などにより売上総利益率が低下した一方、販管費は、システム投資や工場の労働環境改善など先行的費用で増加したが、営業利益率で2ケタを維持できる範囲にコントロールした。このように、減益にはなったが、同社の利益重視の姿勢は変わっていない。なお期初計画に照らすと、売上高は、半導体不足などにより製品の納入が遅れたことが要因で未達となった。一方、利益については端境期とコロナ禍が重なることが予測されたため、保守的な予算組みにしていたことから超過達成となった。
セグメント別では、日本は、上記同様の理由によりに、売上高15,033百万円(前年同期比8.8%増)、セグメント利益(営業利益)1,929百万円(同0.5%減)となった。一方アジアは、主力の中国で、景気の回復テンポが鈍化するなか、高機能型AHUを中心に計画段階から提案を進めたことで販売を伸ばし、売上高は2,545百万円(同35.3%増)と大きく増加した。しかし、高付加価値化による収益性回復に課題を残したほか、貸倒引当金を追加計上したことより、セグメント損失は124百万円(前年同期は77百万円の損失)となった。
厳しい事業環境を前提に下期も保守的な想定
2. 2022年3月期の業績見通し
同社は、2022年3月期の業績を売上高41,500百万円(前期比5.9%増)、営業利益5,200百万円(同20.8%減)、経常利益5,600百万円(同20.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,800百万円(同24.3%減)と見込んでいる。国内経済に関しては、コロナ禍に対して様々な防疫措置が実施され、特にワクチン接種の普及によって収束に向かうことが期待されているが、依然再拡大の懸念も残るため、不透明感がぬぐえない状況が続くと考えられる。また、生産年齢人口の減少ペースが徐々に速まり、施工現場や生産現場などにおける労働者不足がより深刻化してくると予測されている。
こうした事業環境のため、引き続き価格競争の激化や人手不足による人件費の増加などを懸念し、同社は通期業績見通しを変えていない。なかでも下期だけを見ると、売上高で横ばい圏、営業利益で30%近い減益と非常に慎重に見ていることがわかる。とは言え、更新・メンテナンスの堅調な需要、大規模再開発プロジェクトの立ち上がり、小口案件やヒートポンプAHU、「健康空調」などの営業強化などを考慮すると、同社の売上高予想はやや保守的と言えるだろう。また、ヒートポンプ市場への参入コストなどにより売上総利益率は低下する方向だが、部材調達に関しては調達部門を格上げしたうえ集約・増強して対応する計画である。販管費については、増収に伴う稼働率向上により効率化が進む見込みである。加えて第2四半期で超過達成したことを考慮すると、利益面でも保守的な予想となっていると考えられる。
大規模再開発やAHUの更新など、間もなく需要期入りへ
3. 中期成長イメージ
主力の水AHUは、2022年3月期は端境期やコロナ禍の影響が残るものの、下期以降及び中期的には東京や大阪の大規模再開発に向けて需要回復が見込まれる。新たな市場としてデータセンター向け空調機器も伸びそうだ。また、バブル期納入後20年以上が経過した水AHUの更新需要も中長期的に広がっていくことが予想される。新規物件と更新需要の予想は精度の高い同社の需要予測などに基づく確度の高いシナリオと言えるため、中期経営計画の達成に向けてポイントとなるのは、ヒートポンプAHUの拡大とSIMAプロジェクトの深化である。ヒートポンプAHUは、同社経営陣が直接営業に関わって着実に拡大していく考えである。現在フェーズ1のSIMAプロジェクトは、ライン生産を一部導入することで徐々に効率化が進んでいるが、今後フェーズ2で生産ラインのさらなる進化、フェーズ3で営業も巻き込んだ製販一体となった効率化を進める方針である。このように、2022年3月期第2四半期までの厳しさとは逆に、下期以降は業況が改善し、中期的に売上・利益の反転増加が見込まれる。この結果、中期経営計画で目指す2025年3月期売上高520億円、営業利益75億円という目標も射程圏に入ってくるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<EY>
1. 2022年3月期第2四半期の業績
新晃工業<6458>の2022年3月期第2四半期の業績は、売上高17,571百万円(前年同期比12.0%増)、営業利益1,829百万円(同3.0%減)、経常利益2,010百万円(同6.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益1,429百万円(同17.4%減)となった。国内経済は、各種政策の効果や海外経済の改善などにより持ち直しの動きはあったものの、コロナ禍の影響を背景に依然として不透明な状況が続いた。建設業界は、東京オリンピック・パラリンピック特需の端境期にコロナ禍の影響が重なったことから民間需要が低調に推移したため、第2四半期累計のAHUの全国出荷台数が最低水準となるなど厳しい環境となった。このような環境のなかでも、同社は売上高で増収を確保し利益でも微減益にとどめたが、ともにコロナ禍前の2020年3月期の水準を取り戻すことはできなかった。しかし期初計画比では、売上高で229百万円の未達だったものの、営業利益で229百万円、経常利益で210百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で229百万円の超過達成となった。なお、「収益認識に関する会計基準」等を第1四半期連結会計期間の期首から適用したため、売上高で399百万円、営業利益以下で148百万円、利益剰余金の当期首残高で53百万円増加している。
前年同期にコロナ禍の影響で大きく落ち込んだ反動はあったものの、新規需要が低水準で推移したため、同社は工事・サービス事業や高付加価値製品に注力した。工事・サービス事業に関しては、大型物件と並行して中小規模の更新物件を確実に取り込む一方、新晃アトモスの設備劣化診断などを切り口に、バブル期に導入された空調設備の更新需要を掘り起こした。また、コロナ禍の収束が見えないなか、「健康空調」の提案を強化し、浮遊細菌やウイルスを分解・除去し、浄化した空気を室内に取り込むUVCランプ搭載FCUを4月に投入した。この結果、ビル管理事業の業績回復と収益認識基準等の適用などによって増収を確保した。利益面では、水AHU市場の落ち込みによる価格競争やヒートポンプAHU市場への参入コスト、原材料価格の高騰などにより売上総利益率が低下した一方、販管費は、システム投資や工場の労働環境改善など先行的費用で増加したが、営業利益率で2ケタを維持できる範囲にコントロールした。このように、減益にはなったが、同社の利益重視の姿勢は変わっていない。なお期初計画に照らすと、売上高は、半導体不足などにより製品の納入が遅れたことが要因で未達となった。一方、利益については端境期とコロナ禍が重なることが予測されたため、保守的な予算組みにしていたことから超過達成となった。
セグメント別では、日本は、上記同様の理由によりに、売上高15,033百万円(前年同期比8.8%増)、セグメント利益(営業利益)1,929百万円(同0.5%減)となった。一方アジアは、主力の中国で、景気の回復テンポが鈍化するなか、高機能型AHUを中心に計画段階から提案を進めたことで販売を伸ばし、売上高は2,545百万円(同35.3%増)と大きく増加した。しかし、高付加価値化による収益性回復に課題を残したほか、貸倒引当金を追加計上したことより、セグメント損失は124百万円(前年同期は77百万円の損失)となった。
厳しい事業環境を前提に下期も保守的な想定
2. 2022年3月期の業績見通し
同社は、2022年3月期の業績を売上高41,500百万円(前期比5.9%増)、営業利益5,200百万円(同20.8%減)、経常利益5,600百万円(同20.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,800百万円(同24.3%減)と見込んでいる。国内経済に関しては、コロナ禍に対して様々な防疫措置が実施され、特にワクチン接種の普及によって収束に向かうことが期待されているが、依然再拡大の懸念も残るため、不透明感がぬぐえない状況が続くと考えられる。また、生産年齢人口の減少ペースが徐々に速まり、施工現場や生産現場などにおける労働者不足がより深刻化してくると予測されている。
こうした事業環境のため、引き続き価格競争の激化や人手不足による人件費の増加などを懸念し、同社は通期業績見通しを変えていない。なかでも下期だけを見ると、売上高で横ばい圏、営業利益で30%近い減益と非常に慎重に見ていることがわかる。とは言え、更新・メンテナンスの堅調な需要、大規模再開発プロジェクトの立ち上がり、小口案件やヒートポンプAHU、「健康空調」などの営業強化などを考慮すると、同社の売上高予想はやや保守的と言えるだろう。また、ヒートポンプ市場への参入コストなどにより売上総利益率は低下する方向だが、部材調達に関しては調達部門を格上げしたうえ集約・増強して対応する計画である。販管費については、増収に伴う稼働率向上により効率化が進む見込みである。加えて第2四半期で超過達成したことを考慮すると、利益面でも保守的な予想となっていると考えられる。
大規模再開発やAHUの更新など、間もなく需要期入りへ
3. 中期成長イメージ
主力の水AHUは、2022年3月期は端境期やコロナ禍の影響が残るものの、下期以降及び中期的には東京や大阪の大規模再開発に向けて需要回復が見込まれる。新たな市場としてデータセンター向け空調機器も伸びそうだ。また、バブル期納入後20年以上が経過した水AHUの更新需要も中長期的に広がっていくことが予想される。新規物件と更新需要の予想は精度の高い同社の需要予測などに基づく確度の高いシナリオと言えるため、中期経営計画の達成に向けてポイントとなるのは、ヒートポンプAHUの拡大とSIMAプロジェクトの深化である。ヒートポンプAHUは、同社経営陣が直接営業に関わって着実に拡大していく考えである。現在フェーズ1のSIMAプロジェクトは、ライン生産を一部導入することで徐々に効率化が進んでいるが、今後フェーズ2で生産ラインのさらなる進化、フェーズ3で営業も巻き込んだ製販一体となった効率化を進める方針である。このように、2022年3月期第2四半期までの厳しさとは逆に、下期以降は業況が改善し、中期的に売上・利益の反転増加が見込まれる。この結果、中期経営計画で目指す2025年3月期売上高520億円、営業利益75億円という目標も射程圏に入ってくるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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