注目トピックス 日本株
デリカフHD Research Memo(6):2022年3月期は2期ぶりの黒字化を目指す
配信日時:2022/01/05 16:16
配信元:FISCO
■今後の見通し
1. 2022年3月期の業績見通し
デリカフーズホールディングス<3392>の2022年3月期の業績見通しは、コロナ禍の影響がいつまで続くか不確定なため、レンジでの開示となっている。売上高は35,000~37,000百万円(前期比10.3~16.6%増)、営業利益は60~460百万円(前期は1,467百万円の損失)、経常利益は100~500百万円(同1,031百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は80~450百万円(同953百万円の損失)を見込んでいる。業績予想のレンジは緊急事態宣言の継続期間を前提に作っており、現在の状況と最も近いのは予想の下限値の前提(9月までの半年間緊急事態宣言が続き、その後は再発出されない)となっている。
このうち売上高については、外食業界以外の顧客開拓が順調に進んでいることから達成可能な水準で計画を上回る可能性もあると弊社では見ている。2021年10月の売上高がコロナ禍前の水準を超えてきており、11月に入っても首都圏や大阪でまん延防止等重点措置が解除されたことで飲食店の時短営業が解除されたことにより、繁忙感が一段と増している状況にある。業務用を主体とする同業他社のなかで2年前の売上水準を上回っている企業はほかになく、事業ポートフォリオの変革に取り組んできた成果と言える。
こうした動きは(一社)日本フードサービス協会が毎月発表している外食産業の月次売上動向と同社の動向を比較しても明らかに見て取れる。2021年2月までは外食業界の売上と同社の売上はほぼ同様の動きとなっていたが、3月以降は同社の売上回復が鮮明となっている。この差が外食以外の取り込み並びに外食のなかでもコロナ禍に強い外食の取り込みを進めてきた成果と弊社では考えている。同社の2020年3月期下期の売上高が約200億円だったことから、当下期も同水準で推移したとすれば通期売上高は会社計画の上限値であった370億円を超え380億円に達することになる。なお、新規顧客及び既存顧客との取引深耕による売上獲得については、通期で50億円超となる見通しだ(前期実績は43億円)。
一方、経常利益の100百万円という数字を見るとややハードルが高いように見える。10月の経常利益は83百万円と黒字化しているものの、通期で100百万円を達成するためには下期に700百万円強の利益を出す必要があるためだ。2020年3月期下期の経常利益は268百万円であり、過去においても500百万円を超えた年はない。このため、今後どれだけ売上を伸ばすことができるかが利益計画達成のカギを握るものと考えられる。経常利益が一時的に落ち込んだ2021年9月から、翌月10月のV字回復状況から今後の展開には注目したい。仮に計画を達成した場合には、収益力が大幅に強化されたことの証左となり、2023年3月期業績の急回復が期待できることにもなる。
(1) ミールキット事業の取り組み
こうしたなか、同社では新規事業の取り組みを積極的に進めている。ミールキット事業ではSPA型事業を拡大していくべく、販売子会社となる楽彩(株)を2021年8月に設立し、2022年2月以降に本格始動する予定となっている。一般消費者向けに「新たな食のライフスタイル」を提供することをコンセプトに、生鮮野菜による健康を意識したメニュー等を開発して、ターゲット層を絞った付加価値型のサービスを提供していくものと見られる。既に青果専門店である九州屋の3店舗で実演販売も開始し顧客からも高い評価を得ていることもあり、今後取扱店舗数を拡大していく予定にしている。
ミールキット事業では生協やヨシケイ開発(株)、オイシックス(オイシックス・ラ・大地<3182>)などが先行しているが、品質面の差が出る野菜の取り扱いに関して、同社は鮮度の維持管理から真空加熱野菜等の製造に至るまで豊富なノウハウを持っており、他社にない強みになると考えている。また、自社ブランド展開だけでなくOEMでの展開も広げていく予定である。
今後のミールキット事業拡大のため、同社は調味料等の小袋をパッケージングする長崎工場の能力増強投資を3億円かけて下期に実施する計画となっている。ミールキットの製造については長崎工場で調味料等のパッケージングを行い、それを全国のカット野菜工場に送って、各工場で製造したカット野菜やそのほか食材等と梱包して出荷する格好となる。ミールキットの国内市場規模は、生活スタイルの変化もあって、現在の1,600億円から今後は2,000億円を超える市場に育つと見られており、今後の動向が注目される。
(2) 冷凍野菜事業の取り組み
また、冷凍野菜についても愛知事業所に約3億円をかけて製造ラインを導入し、2022年4月以降に量産を開始する計画となっている。同社は野菜の商品形態として生野菜、カット野菜、真空加熱野菜を揃えているが、今回、冷凍野菜も手掛けることですべての形態が揃うことになり、顧客開拓並びに既存顧客との取引深耕が期待される。既に冷凍弁当事業者などからも引き合いが来ているようだ。
(3) BtoC事業の取り組み
BtoC事業では異業種連携コラボの第1弾として、大手アパレル企業のバロックジャパンリミテッド<3548>と青果日和研究所の協業を2021年9月に発表した。バロックジャパンリミテッドが新たに手掛ける新業態のフードビジネス「SHEL’TTER DELI」(川口店)において、「青果日和」ブランドの商品開発や店舗運営のノウハウを提供している。今後も、異業種他社とのコラボレーションは積極的に推し進めていくもようだ。現在、第2弾の連携案件についても交渉中となっている。
(4) DXの取り組み
そのほか2022年3月期に取り組むべき課題として、DXの推進及び実装に取り組んでいる。具体的には、受発注ECサイト「DELICA Connect」を新たに導入し、現在FAXを使って注文している多くの顧客に対して同サイトの利用を進めていくというものだ。現在150店舗を超える顧客が利用しているが、今後利用店舗をさらに拡大することで業務効率の向上を図っていく方針だ。また物流センターでの生産性向上を図るためAIを搭載した自動選別装置を共同開発し、2022年3月期より埼玉FSセンターに試験導入している。高い経験値が必要なトマトの検品作業を自動化することを目的としており、実装に向け準備中である。
(5) リバウンド(雇用難)に向けた体制準備
同社はアフターコロナのリバウンド(雇用難)に向けて、従業員の定着及び育成のための各種人財強化施策を実行している。具体的には、契約社員の部門限定正社員への登用やパート社員の契約社員への登用、若手社員を対象とした飛び級制度の導入※、外国人雇用を見据えた国際人材室の新設、幹部養成講座の開設、熟練職員へのインセンティブ制度の導入などを実施している。
※主任昇格時期が入社4年目以降だったものを、能力によって2~3年で昇格できるようにした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<EY>
1. 2022年3月期の業績見通し
デリカフーズホールディングス<3392>の2022年3月期の業績見通しは、コロナ禍の影響がいつまで続くか不確定なため、レンジでの開示となっている。売上高は35,000~37,000百万円(前期比10.3~16.6%増)、営業利益は60~460百万円(前期は1,467百万円の損失)、経常利益は100~500百万円(同1,031百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は80~450百万円(同953百万円の損失)を見込んでいる。業績予想のレンジは緊急事態宣言の継続期間を前提に作っており、現在の状況と最も近いのは予想の下限値の前提(9月までの半年間緊急事態宣言が続き、その後は再発出されない)となっている。
このうち売上高については、外食業界以外の顧客開拓が順調に進んでいることから達成可能な水準で計画を上回る可能性もあると弊社では見ている。2021年10月の売上高がコロナ禍前の水準を超えてきており、11月に入っても首都圏や大阪でまん延防止等重点措置が解除されたことで飲食店の時短営業が解除されたことにより、繁忙感が一段と増している状況にある。業務用を主体とする同業他社のなかで2年前の売上水準を上回っている企業はほかになく、事業ポートフォリオの変革に取り組んできた成果と言える。
こうした動きは(一社)日本フードサービス協会が毎月発表している外食産業の月次売上動向と同社の動向を比較しても明らかに見て取れる。2021年2月までは外食業界の売上と同社の売上はほぼ同様の動きとなっていたが、3月以降は同社の売上回復が鮮明となっている。この差が外食以外の取り込み並びに外食のなかでもコロナ禍に強い外食の取り込みを進めてきた成果と弊社では考えている。同社の2020年3月期下期の売上高が約200億円だったことから、当下期も同水準で推移したとすれば通期売上高は会社計画の上限値であった370億円を超え380億円に達することになる。なお、新規顧客及び既存顧客との取引深耕による売上獲得については、通期で50億円超となる見通しだ(前期実績は43億円)。
一方、経常利益の100百万円という数字を見るとややハードルが高いように見える。10月の経常利益は83百万円と黒字化しているものの、通期で100百万円を達成するためには下期に700百万円強の利益を出す必要があるためだ。2020年3月期下期の経常利益は268百万円であり、過去においても500百万円を超えた年はない。このため、今後どれだけ売上を伸ばすことができるかが利益計画達成のカギを握るものと考えられる。経常利益が一時的に落ち込んだ2021年9月から、翌月10月のV字回復状況から今後の展開には注目したい。仮に計画を達成した場合には、収益力が大幅に強化されたことの証左となり、2023年3月期業績の急回復が期待できることにもなる。
(1) ミールキット事業の取り組み
こうしたなか、同社では新規事業の取り組みを積極的に進めている。ミールキット事業ではSPA型事業を拡大していくべく、販売子会社となる楽彩(株)を2021年8月に設立し、2022年2月以降に本格始動する予定となっている。一般消費者向けに「新たな食のライフスタイル」を提供することをコンセプトに、生鮮野菜による健康を意識したメニュー等を開発して、ターゲット層を絞った付加価値型のサービスを提供していくものと見られる。既に青果専門店である九州屋の3店舗で実演販売も開始し顧客からも高い評価を得ていることもあり、今後取扱店舗数を拡大していく予定にしている。
ミールキット事業では生協やヨシケイ開発(株)、オイシックス(オイシックス・ラ・大地<3182>)などが先行しているが、品質面の差が出る野菜の取り扱いに関して、同社は鮮度の維持管理から真空加熱野菜等の製造に至るまで豊富なノウハウを持っており、他社にない強みになると考えている。また、自社ブランド展開だけでなくOEMでの展開も広げていく予定である。
今後のミールキット事業拡大のため、同社は調味料等の小袋をパッケージングする長崎工場の能力増強投資を3億円かけて下期に実施する計画となっている。ミールキットの製造については長崎工場で調味料等のパッケージングを行い、それを全国のカット野菜工場に送って、各工場で製造したカット野菜やそのほか食材等と梱包して出荷する格好となる。ミールキットの国内市場規模は、生活スタイルの変化もあって、現在の1,600億円から今後は2,000億円を超える市場に育つと見られており、今後の動向が注目される。
(2) 冷凍野菜事業の取り組み
また、冷凍野菜についても愛知事業所に約3億円をかけて製造ラインを導入し、2022年4月以降に量産を開始する計画となっている。同社は野菜の商品形態として生野菜、カット野菜、真空加熱野菜を揃えているが、今回、冷凍野菜も手掛けることですべての形態が揃うことになり、顧客開拓並びに既存顧客との取引深耕が期待される。既に冷凍弁当事業者などからも引き合いが来ているようだ。
(3) BtoC事業の取り組み
BtoC事業では異業種連携コラボの第1弾として、大手アパレル企業のバロックジャパンリミテッド<3548>と青果日和研究所の協業を2021年9月に発表した。バロックジャパンリミテッドが新たに手掛ける新業態のフードビジネス「SHEL’TTER DELI」(川口店)において、「青果日和」ブランドの商品開発や店舗運営のノウハウを提供している。今後も、異業種他社とのコラボレーションは積極的に推し進めていくもようだ。現在、第2弾の連携案件についても交渉中となっている。
(4) DXの取り組み
そのほか2022年3月期に取り組むべき課題として、DXの推進及び実装に取り組んでいる。具体的には、受発注ECサイト「DELICA Connect」を新たに導入し、現在FAXを使って注文している多くの顧客に対して同サイトの利用を進めていくというものだ。現在150店舗を超える顧客が利用しているが、今後利用店舗をさらに拡大することで業務効率の向上を図っていく方針だ。また物流センターでの生産性向上を図るためAIを搭載した自動選別装置を共同開発し、2022年3月期より埼玉FSセンターに試験導入している。高い経験値が必要なトマトの検品作業を自動化することを目的としており、実装に向け準備中である。
(5) リバウンド(雇用難)に向けた体制準備
同社はアフターコロナのリバウンド(雇用難)に向けて、従業員の定着及び育成のための各種人財強化施策を実行している。具体的には、契約社員の部門限定正社員への登用やパート社員の契約社員への登用、若手社員を対象とした飛び級制度の導入※、外国人雇用を見据えた国際人材室の新設、幹部養成講座の開設、熟練職員へのインセンティブ制度の導入などを実施している。
※主任昇格時期が入社4年目以降だったものを、能力によって2~3年で昇格できるようにした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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