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三洋化成 Research Memo(7):ユニークでグローバルな高収益企業に成長し、社会に貢献することを目指す

配信日時:2021/12/23 15:37 配信元:FISCO
■三洋化成工業<4471>の成長戦略

中期経営計画については、第11次中期経営計画を2022年3月期からスタートする予定であったが、コロナ禍による不透明感を考慮して策定を1年先送りした。1年かけて全社員で徹底的に議論して策定していくようだ。ただし基本方針に大きな変化はなく、全社員が誇りを持ち、働きがいを感じるユニークでグローバルな高収益企業に成長し、社会に貢献することを目指す。

重点戦略としては、サステナブル経営の推進、営業・研究組織の一体化による経営判断・意思決定のスピードアップ、持続可能な社会の実現に向けたソリューションの提供、DX推進と基幹システム刷新、事業拡大のためのアライアンス強化及びグローバル化推進、働き方改革、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)、健康経営の推進などを掲げている。

1. 中期成長に向けた戦略
中期成長に向けた戦略としては、全樹脂電池、慢性創傷治療、外科用止血材、アグリ・ニュートリション、匂いセンサーなど、独自技術やアライアンスを活用した新製品開発・新規事業創出を積極的に推進していく。事業を通じて持続可能な経済成長と社会的課題の解決に貢献するスペシャリティ・ケミカル企業として、ブルーオーシャン戦略で新規事業を創出する方針だ。

(1) 全樹脂電池
新型リチウムイオン電池「全樹脂電池(All Polymer Battery)」は、従来の電池構造とは異なるバイポーラ構造により、異常時に信頼性を発揮する。同社は、「全樹脂電池」の開発を行うAPBと2019年2月に資本業務提携(持分法適用会社)、2020年12月にはHAPS(High Altitude Platform Station:成層圏の通信プラットフォーム)向け蓄電池としての開発に向けて基本合意した。2021年5月には全樹脂電池量産のための第1工場であるAPB福井センター武生工場が竣工し、2021年10月にサンプル製造を開始している。

(2) バイオ・メディカル事業分野
バイオ・メディカル事業分野については、QOL(Quality of Life)向上の実現に向けて事業拡大を図っていく方針だ。慢性創傷治療を目的とする新規治療材料「シルクエラスチン®」は、京都大学大学院医学研究科形成外科学講座森本尚樹教授らと共同開発しており、有効性確認を目的として、同社が中心となり、京都大学及び広陵化学工業(株)とともに2021年7月に企業治験を開始(国内5医療機関で実施)した。また広島大学での動物実験で半月板修復の足場(移植基板)としての有効性も確認できたため、臨床応用に向けて研究開発を進める。2023年3月期に日本初の遺伝子組み換え技術を用いた医療機器として薬事承認申請予定、2024年3月期に医療機器として国内上市を目指している。

外科用止血材「マツダイト」は、水と反応して柔軟な皮膜をつくるウレタン素材の外科手術用止血材である。胸部大動脈や弓部分岐動脈の人工血管への置換手術の際の吻合部に使用される。同社が製造し、テルモ<4543>に販売委託している。2014年2月に同社初の医療機器として国内で発売開始、2019年7月にCEマーキングを取得して欧州市場への展開を開始、2020年3月に脳血管を除く血管全体吻合部の止血材へ適応拡大、2021年7月に香港での発売を開始した。

(3) アグリ・ニュートリション事業分野
アグリ・ニュートリション分野への事業展開としては、ペプチドの活用(ペプチド農業)を研究開発している。2021年3月にファーマフーズと資本業務提携したほか、2021年6月には持続可能な農業を目指して宮崎県新富町と連携協定を締結した。ペプチド技術を農作物の育成に活用し、持続可能な農業に貢献できる技術の実用化を目指す。なお、2021年9月にファーマフーズと「アグリ・ニュートリション基本計画」を策定しており、新たなペプチド農業を確立し、宮崎県新富町において農業支援を本格展開する計画だ。

(4) 匂いセンサー
2021年7月に、長瀬産業とAI技術を応用した「匂いセンサー」の共同事業化に合意した。「匂いセンサー」の特長は、界面制御技術を織り込んだ樹脂材料で構成されていることである。匂いの検知材料に先端AI技術を融合し、特定の匂いをデジタルで識別、定量化するデジタル嗅覚技術は医療分野、食品・飲料などの生活関連分野での応用が期待されている。事業化に向けては、都鶴酒造と「匂いセンサー」を活用した新しい日本酒造りに関する共同研究を開始した。まずは、日本酒の醸造工程における品質管理と香り成分の管理・計測・分析を通じて、新商品開発への活用を目指す。

(5) その他
2020年6月に世界初の超軽量透明断熱材「SUFA」を開発するテイエムファクトリに出資したほか、2021年9月にはBASF(本社:ドイツ)とPUD(ポリウレタンディスパージョン)開発の戦略的協業に関する覚書に調印した。両社は新しいPUDソリューションを通じて、サステナビリティへの貢献が高い革新的な製品の共同開発・生産を目指している。

2021年12月にはロート製薬と資本業務提携した。両社が注力しているスキンケア・医療分野をはじめ、戦略的に相互のリソースを活用して独自の原料開発及び新機能・異業種への適用を図り、事業拡大・企業価値向上を目指す。なお、両社は市場買い付けによって互いに2億円相当の普通株式を取得する予定としている。

2. 弊社の見方
同社は生活・健康産業をはじめとする幅広い産業向けに製品を提供する全天候型の収益構造のため、景気要因による需要変動の影響が比較的小さく、業績は比較的安定して推移している。この点は高く評価すべきだが、裏返せば成長魅力に欠ける面があることも否定できない。この点について、樋口章憲代表取締役社長兼執行役員社長は「4~5年先の開花に向けて種まきを行っている。企業変革を遂行して、働きがいを感じられる「ワクワクする会社」を作り上げ、さらなる企業価値の向上を目指す」と意欲的に語っている。全天候型の収益基盤と安定した財務基盤にブルーオーシャン戦略による新規事業創出が加わることになり、成長ポテンシャルは高いと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)


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