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オンコリス Research Memo(6):次世代テロメライシンは米国で2023年のIND申請、臨床試験入りを目指す
配信日時:2021/09/09 15:16
配信元:FISCO
■開発パイプラインの動向
2. 次世代テロメライシン「OBP-702」
オンコリスバイオファーマ<4588>は次世代テロメライシンとして、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子であるp53を組み込んだアデノウイルス製剤「OBP-702」の開発を進めている。がん患者の30~40%でp53遺伝子に変異・欠損(悪化因子)があり、こうした患者向けの腫瘍溶解・遺伝子治療となる。テロメライシンより約10~30倍の抗腫瘍活性を示すほか、間質細胞※を破壊する能力の高いことが非臨床試験から明らかとなっている。
※臓器の結合組織に関わる細胞で、生体組織の支持構造を構成し、実質細胞を支える細胞である。線維芽細胞、免疫細胞、周皮細胞、内皮細胞及び炎症性細胞が間質細胞の最も一般的な種類で、間質細胞と腫瘍細胞との相互作用は、がん細胞の増殖と進行に大きな影響を及ぼすことが知られている。
2017年度の国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究プロジェクトとして採択され、岡山大学において、ヒト型骨肉腫細胞株をマウスに移植した非臨床試験を実施、投与後28日目の腫瘍の大きさをテロメライシンやp53の単独投与と比較したところ、大きさを約半分に抑える効果があることが確認されている。また、2019年4月に米国で開催された癌学会において、すい臓がん細胞の増殖に対して強力な抑制効果があり、すい臓がん細胞の組織浸潤と転移を抑制できる可能性のあることが動物実験モデルにより示されたほか、神経芽腫細胞に対してがん関連遺伝子やテロメラーゼ活性を抑制し、非常に強い増殖抑制作用が示されたことなどが研究報告として発表されている。
「OBP-702」の開発方針については、国内外の臨床医の意見を参考にして、アンメット・メディカル・ニーズが強く、テロメライシンで効果が得られにくいがん種、あるいは既存治療法に抵抗を示すがん(p53遺伝子欠損・変異がん)や間質細胞の多い難治性がんなどを対象に、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法で開発を進めていく方針だ。具体的には、骨肉腫、直腸がん、すい臓がんなどを想定している。
なお、今後の開発スケジュールについては、米国でIND申請を2023年に行い、第1相臨床試験を実施して安全性を確認する。対象疾患は未定だが、骨肉腫か直腸がんとなる可能性が高いと弊社では見ている。当初は2022年内のIND申請を計画していたが、「OBP-702」の生産性が低くコスト高となるため、生産性を高めたうえで臨床試験を開始することにした。製法はテロメライシンと同様だが、「OBP-702」の活性が強すぎて元々の細胞が死んでしまい、細胞を捕食して増殖するウイルスの量がテロメライシンの数分の1程度と少なくなることが要因だ。同社ではウイルスの回収量を引き上げるために、培養液等の諸条件を最適化して細胞数を増やす取り組みを進めており、2021年内にはこうした課題もクリアできると見ている。
また、日本での開発は米国での第1相臨床試験で安全性を確認した後に、2024年以降に治験申請を行う予定だ。岡山大学ですい臓がんを対象とした医師主導の第1/2相臨床試験を免疫チェックポイント阻害剤との併用で実施していく予定にしている。動物実験モデルではそれぞれの単独療法よりも併用療法のほうが格段に高い薬効が確認されており、開発期間を短縮する意味もあって、当初から併用療法で開発を進めていく考えだ。日米それぞれで開発を進め順調に進めば、2025年頃にライセンス契約を締結できる可能性がある。
新型コロナウイルス感染症治療薬は2022年に治験申請を行い、ライセンス契約も視野に入れながら開発を進めていく方針
3. 新型コロナウイルス感染症治療薬「OBP-2011」
同社は鹿児島大学との共同研究の中で、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対して強い増殖抑制効果を有する低分子化合物を複数特定し、培養細胞を用いた実験では承認済みのレムデシビルと同等以上の活性が示されたことを確認した。2020年6月に同研究成果に基づいて、鹿児島大学が出願中の抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結し、開発に着手した。鹿児島大学に対しては、今後、開発進展に応じたマイルストーン、第三者からの収入に応じたロイヤリティなどを支払っていくことになる。
2021年3月に、複数の候補化合物の中から「OBP-2011」を開発品とすることを決定し、経口剤として開発を進めていくことを発表している。対象はPCR陽性の無症状から軽症までの患者とする。2022年上半期までにGMP基準による製造や毒性試験、薬理試験、前臨床試験などを完了し、直ちに治験申請を行って第1a/1b相臨床試験を実施する予定だ。数十人規模の健常者を対象に単回投与及び反復投与を実施する。安全性に問題が無ければ、PCR陽性者を対象にした第2相臨床試験を低用量群と高用量群に分けて実施し、順調に進めば2023年内にPOCを取得できる可能性がある。なお、国内で経口薬が先に販売されていれば被験者の募集が難しくなる可能性があり、その場合にはアジア地域での治験実施も視野に入れている。なお、作用機序については既存承認薬や競合の開発品とは異なるため、併用療法により薬効が向上する可能性もあると見ている。今後、作用機序を整理して、欧米の大手製薬企業とのライセンス契約交渉も進めていくことにしている。
なお、治療薬開発に向けた共同開発体制も整備している。2021年4月に前臨床試験受託の国内最大手である新日本科学<2395>と共同開発契約を締結し、前臨床試験のスピードアップを図る体制を整えたほか、2021年7月には治験薬のGMP製造を委託することでスペラファーマ(株)と基本合意を行った(スペラファーマの子会社のスペラネクサス(株)で原薬の製造を行う)。「OBP-2011」は新型コロナウイルス感染症の変異株についても薬効が確認されているだけに、今後の早期開発が待望される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 次世代テロメライシン「OBP-702」
オンコリスバイオファーマ<4588>は次世代テロメライシンとして、テロメライシンに強力ながん抑制遺伝子であるp53を組み込んだアデノウイルス製剤「OBP-702」の開発を進めている。がん患者の30~40%でp53遺伝子に変異・欠損(悪化因子)があり、こうした患者向けの腫瘍溶解・遺伝子治療となる。テロメライシンより約10~30倍の抗腫瘍活性を示すほか、間質細胞※を破壊する能力の高いことが非臨床試験から明らかとなっている。
※臓器の結合組織に関わる細胞で、生体組織の支持構造を構成し、実質細胞を支える細胞である。線維芽細胞、免疫細胞、周皮細胞、内皮細胞及び炎症性細胞が間質細胞の最も一般的な種類で、間質細胞と腫瘍細胞との相互作用は、がん細胞の増殖と進行に大きな影響を及ぼすことが知られている。
2017年度の国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の研究プロジェクトとして採択され、岡山大学において、ヒト型骨肉腫細胞株をマウスに移植した非臨床試験を実施、投与後28日目の腫瘍の大きさをテロメライシンやp53の単独投与と比較したところ、大きさを約半分に抑える効果があることが確認されている。また、2019年4月に米国で開催された癌学会において、すい臓がん細胞の増殖に対して強力な抑制効果があり、すい臓がん細胞の組織浸潤と転移を抑制できる可能性のあることが動物実験モデルにより示されたほか、神経芽腫細胞に対してがん関連遺伝子やテロメラーゼ活性を抑制し、非常に強い増殖抑制作用が示されたことなどが研究報告として発表されている。
「OBP-702」の開発方針については、国内外の臨床医の意見を参考にして、アンメット・メディカル・ニーズが強く、テロメライシンで効果が得られにくいがん種、あるいは既存治療法に抵抗を示すがん(p53遺伝子欠損・変異がん)や間質細胞の多い難治性がんなどを対象に、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法で開発を進めていく方針だ。具体的には、骨肉腫、直腸がん、すい臓がんなどを想定している。
なお、今後の開発スケジュールについては、米国でIND申請を2023年に行い、第1相臨床試験を実施して安全性を確認する。対象疾患は未定だが、骨肉腫か直腸がんとなる可能性が高いと弊社では見ている。当初は2022年内のIND申請を計画していたが、「OBP-702」の生産性が低くコスト高となるため、生産性を高めたうえで臨床試験を開始することにした。製法はテロメライシンと同様だが、「OBP-702」の活性が強すぎて元々の細胞が死んでしまい、細胞を捕食して増殖するウイルスの量がテロメライシンの数分の1程度と少なくなることが要因だ。同社ではウイルスの回収量を引き上げるために、培養液等の諸条件を最適化して細胞数を増やす取り組みを進めており、2021年内にはこうした課題もクリアできると見ている。
また、日本での開発は米国での第1相臨床試験で安全性を確認した後に、2024年以降に治験申請を行う予定だ。岡山大学ですい臓がんを対象とした医師主導の第1/2相臨床試験を免疫チェックポイント阻害剤との併用で実施していく予定にしている。動物実験モデルではそれぞれの単独療法よりも併用療法のほうが格段に高い薬効が確認されており、開発期間を短縮する意味もあって、当初から併用療法で開発を進めていく考えだ。日米それぞれで開発を進め順調に進めば、2025年頃にライセンス契約を締結できる可能性がある。
新型コロナウイルス感染症治療薬は2022年に治験申請を行い、ライセンス契約も視野に入れながら開発を進めていく方針
3. 新型コロナウイルス感染症治療薬「OBP-2011」
同社は鹿児島大学との共同研究の中で、新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対して強い増殖抑制効果を有する低分子化合物を複数特定し、培養細胞を用いた実験では承認済みのレムデシビルと同等以上の活性が示されたことを確認した。2020年6月に同研究成果に基づいて、鹿児島大学が出願中の抗SARS-CoV-2薬の特許譲受に関する契約を締結し、開発に着手した。鹿児島大学に対しては、今後、開発進展に応じたマイルストーン、第三者からの収入に応じたロイヤリティなどを支払っていくことになる。
2021年3月に、複数の候補化合物の中から「OBP-2011」を開発品とすることを決定し、経口剤として開発を進めていくことを発表している。対象はPCR陽性の無症状から軽症までの患者とする。2022年上半期までにGMP基準による製造や毒性試験、薬理試験、前臨床試験などを完了し、直ちに治験申請を行って第1a/1b相臨床試験を実施する予定だ。数十人規模の健常者を対象に単回投与及び反復投与を実施する。安全性に問題が無ければ、PCR陽性者を対象にした第2相臨床試験を低用量群と高用量群に分けて実施し、順調に進めば2023年内にPOCを取得できる可能性がある。なお、国内で経口薬が先に販売されていれば被験者の募集が難しくなる可能性があり、その場合にはアジア地域での治験実施も視野に入れている。なお、作用機序については既存承認薬や競合の開発品とは異なるため、併用療法により薬効が向上する可能性もあると見ている。今後、作用機序を整理して、欧米の大手製薬企業とのライセンス契約交渉も進めていくことにしている。
なお、治療薬開発に向けた共同開発体制も整備している。2021年4月に前臨床試験受託の国内最大手である新日本科学<2395>と共同開発契約を締結し、前臨床試験のスピードアップを図る体制を整えたほか、2021年7月には治験薬のGMP製造を委託することでスペラファーマ(株)と基本合意を行った(スペラファーマの子会社のスペラネクサス(株)で原薬の製造を行う)。「OBP-2011」は新型コロナウイルス感染症の変異株についても薬効が確認されているだけに、今後の早期開発が待望される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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