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オンコリス Research Memo(1):新型コロナの影響で開発スケジュールはやや遅れるも着実に進めていく方針
配信日時:2021/09/09 15:11
配信元:FISCO
■要約
オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャーである。開発品の上市実績はまだないが、2019年4月に中外製薬<4519>とテロメライシンに関する独占的ライセンス契約及び資本提携契約を締結し、テロメライシンの開発が進んでいるほか、次世代テロメライシンや新型コロナウイルス治療薬の開発にも着手している。
1. テロメライシンの開発動向
テロメライシンの開発については国内で導出先の中外製薬が、米国で同社(医師主導治験)が複数の臨床試験を進めているが、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で全体的にスケジュールが遅れ気味となっている。国内で中外製薬が進めている食道がんを対象とした放射線併用療法での第2相臨床試験は、当初計画では2022年内の承認申請を目指していたが、2024年にずれ込む見通しとなっている。中外製薬ではこの他にも、食道がん(化学放射線療法併用)、肝細胞がん(免疫チェックポイント阻害剤/分子標的薬併用)、頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤/化学放射線療法併用)を対象とした第1相臨床試験に取り組んでおり、それぞれ2023~24年に終了する見込みとなっている。
一方、米国での臨床試験は食道がん(化学放射線療法併用)、胃がん、頭頸部がんを対象とした医師主導の第1相または第2相臨床試験が進められている。このうち、胃がん、頭頸部がんの第2相臨床試験については2022年に中間解析を実施し、その後の開発方針を決めていくことになる。同社は中外製薬と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約と、日本・台湾・中国圏を除く地域での開発・製造・販売に関する独占的オプション権を付与するライセンス契約を締結(ライセンス契約の総額は500億円以上)していることから、これら臨床試験の結果が良好であれば、中外製薬がオプション権を行使し、グループ会社である米Genentech, Inc.(以下、ジェネンテック社)が開発を引き継いで進めていく可能性がある。また、中国圏については、2021年内にライセンス契約の締結を目指すべく複数企業と交渉を進めている。
2. その他パイプラインの動向
テロメライシンよりも腫瘍殺傷効果の高い次世代テロメライシン「OBP-702」は、骨肉腫や直腸がん、すい臓がん等を対象に免疫チェックポイント阻害剤等との併用療法で開発を進めていく方針だ。GMP製造における課題(生産性向上)を解決し、2023年に米国、2024年以降に国内で治験申請をそれぞれ行う予定にしている。また、新型コロナウイルス感染症治療薬「OBP-2011」は、無症状から軽症患者までを対象とした経口剤として開発を進めていく。2022年上半期までに第1相臨床試験を開始し、並行して導出活動も進めていく予定だ。変異株にも有効性のあることが確認されていることから早期開発が待ち望まれる。そのほか、2020年6月に米Transposon Therapeutics, Inc.(以下、トランスポゾン社)と総額3億米ドル以上の独占的ライセンス契約を締結した「OBP-601」については、米国で神経変性疾患を対象とした第2相臨床試験が開始される。終了見込みは2023~24年頃となっている。また、早期がんの発見につながるがん検査薬、テロメスキャンについては、順天堂大学と共同でAI技術を利用したCTC検査プラットフォームを2024年までに完成させ、2025年以降の商用化を目標としている。
3. 業績動向
2021年12月期第2四半期累計の売上高は前年同期比56百万円増加の193百万円、営業損失は同26百万円縮小の633百万円となった。台湾のMedigen Biotechnology Corp.(以下、メディジェン社)からのテロメライシンにかかる開発協力金収入や、中外製薬向け治験薬販売収入等の計上により増収となったが、引き続き開発ステージのため営業損失を計上した。2021年12月期は売上高で350~700百万円、営業損失で1,650~2,000百万円を見込んでいる。レンジ予想となっているのは、テロメライシンの研究開発の進展に連動して発生する開発協力金収入等を考慮したものだ。また、費用面では研究開発費等が前期の1,050百万円から増加する見通しとなっているが、治験等の進捗が遅れていることもあり計画を下回る可能性もある(2021年12月期第2四半期累計は371百万円)。なお、2021年6月末の現金及び預金の水準は4,647百万円となっており、2年程度の事業活動資金は確保しているが、収益化の時期が遅れるようだと、2023年頃には再度資金調達を行う可能性がある。
■Key Points
・コロナ禍の影響で治験の進捗に遅れが生じているものの、国内外で複数の臨床試験を進める
・次世代テロメライシンは生産性向上のための最適化に取り組み、米国で2023年のIND申請、臨床試験入りを目指す
・新型コロナウイルス感染症治療薬は2022年に治験申請を行い、ライセンス契約も視野に入れながら開発を進めていく方針に
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャーである。開発品の上市実績はまだないが、2019年4月に中外製薬<4519>とテロメライシンに関する独占的ライセンス契約及び資本提携契約を締結し、テロメライシンの開発が進んでいるほか、次世代テロメライシンや新型コロナウイルス治療薬の開発にも着手している。
1. テロメライシンの開発動向
テロメライシンの開発については国内で導出先の中外製薬が、米国で同社(医師主導治験)が複数の臨床試験を進めているが、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で全体的にスケジュールが遅れ気味となっている。国内で中外製薬が進めている食道がんを対象とした放射線併用療法での第2相臨床試験は、当初計画では2022年内の承認申請を目指していたが、2024年にずれ込む見通しとなっている。中外製薬ではこの他にも、食道がん(化学放射線療法併用)、肝細胞がん(免疫チェックポイント阻害剤/分子標的薬併用)、頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤/化学放射線療法併用)を対象とした第1相臨床試験に取り組んでおり、それぞれ2023~24年に終了する見込みとなっている。
一方、米国での臨床試験は食道がん(化学放射線療法併用)、胃がん、頭頸部がんを対象とした医師主導の第1相または第2相臨床試験が進められている。このうち、胃がん、頭頸部がんの第2相臨床試験については2022年に中間解析を実施し、その後の開発方針を決めていくことになる。同社は中外製薬と日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約と、日本・台湾・中国圏を除く地域での開発・製造・販売に関する独占的オプション権を付与するライセンス契約を締結(ライセンス契約の総額は500億円以上)していることから、これら臨床試験の結果が良好であれば、中外製薬がオプション権を行使し、グループ会社である米Genentech, Inc.(以下、ジェネンテック社)が開発を引き継いで進めていく可能性がある。また、中国圏については、2021年内にライセンス契約の締結を目指すべく複数企業と交渉を進めている。
2. その他パイプラインの動向
テロメライシンよりも腫瘍殺傷効果の高い次世代テロメライシン「OBP-702」は、骨肉腫や直腸がん、すい臓がん等を対象に免疫チェックポイント阻害剤等との併用療法で開発を進めていく方針だ。GMP製造における課題(生産性向上)を解決し、2023年に米国、2024年以降に国内で治験申請をそれぞれ行う予定にしている。また、新型コロナウイルス感染症治療薬「OBP-2011」は、無症状から軽症患者までを対象とした経口剤として開発を進めていく。2022年上半期までに第1相臨床試験を開始し、並行して導出活動も進めていく予定だ。変異株にも有効性のあることが確認されていることから早期開発が待ち望まれる。そのほか、2020年6月に米Transposon Therapeutics, Inc.(以下、トランスポゾン社)と総額3億米ドル以上の独占的ライセンス契約を締結した「OBP-601」については、米国で神経変性疾患を対象とした第2相臨床試験が開始される。終了見込みは2023~24年頃となっている。また、早期がんの発見につながるがん検査薬、テロメスキャンについては、順天堂大学と共同でAI技術を利用したCTC検査プラットフォームを2024年までに完成させ、2025年以降の商用化を目標としている。
3. 業績動向
2021年12月期第2四半期累計の売上高は前年同期比56百万円増加の193百万円、営業損失は同26百万円縮小の633百万円となった。台湾のMedigen Biotechnology Corp.(以下、メディジェン社)からのテロメライシンにかかる開発協力金収入や、中外製薬向け治験薬販売収入等の計上により増収となったが、引き続き開発ステージのため営業損失を計上した。2021年12月期は売上高で350~700百万円、営業損失で1,650~2,000百万円を見込んでいる。レンジ予想となっているのは、テロメライシンの研究開発の進展に連動して発生する開発協力金収入等を考慮したものだ。また、費用面では研究開発費等が前期の1,050百万円から増加する見通しとなっているが、治験等の進捗が遅れていることもあり計画を下回る可能性もある(2021年12月期第2四半期累計は371百万円)。なお、2021年6月末の現金及び預金の水準は4,647百万円となっており、2年程度の事業活動資金は確保しているが、収益化の時期が遅れるようだと、2023年頃には再度資金調達を行う可能性がある。
■Key Points
・コロナ禍の影響で治験の進捗に遅れが生じているものの、国内外で複数の臨床試験を進める
・次世代テロメライシンは生産性向上のための最適化に取り組み、米国で2023年のIND申請、臨床試験入りを目指す
・新型コロナウイルス感染症治療薬は2022年に治験申請を行い、ライセンス契約も視野に入れながら開発を進めていく方針に
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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