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三菱瓦斯化学:半導体製造工程で欠かせない企業、ICT3事業に注力してPBR1倍割れ改善へ
配信日時:2025/09/05 17:16
配信元:FISCO
*17:16JST 三菱瓦斯化学:半導体製造工程で欠かせない企業、ICT3事業に注力してPBR1倍割れ改善へ
三菱瓦斯化学<4182>は、基礎化学品から高機能なファインケミカル、電子材料まで、社会の様々な分野に不可欠な化学製品を製造・販売する化学メーカーである。同社には2つのセグメントがあり、グリーン・エネルギー&ケミカルセグメント(GEC)は、メタノールやアンモニア系化学品、ヨウ素などの「天然ガス系化学品」と高機能ポリアミド「MXナイロン」の原料となるメタキシレンジアミン(MXDA)などを手掛ける「芳香族化学品」で構成され、機能化学品セグメントは、自動車部品や光学レンズに使われるエンジニアリングプラスチックスや半導体向け洗浄薬液などを扱う「機能化学品」と半導体パッケージ用BT材料など特定の市場で極めて高いシェアを誇る製品群からなる「特殊機能材」で構成されている。祖業であるメタノール事業で培った世界トップレベルの技術力を基盤に、独自の触媒技術や有機合成技術を駆使して川下展開を進め、時代のニーズに応じたユニークで高付加価値な製品を数多く生み出してきた歴史を持つ。
同社の競争優位性は、徹底した「グローバルニッチトップ戦略」に集約される。汎用的な製品でボリュームを追うのではなく、独自の技術力が最大限に活きる特定の市場(ニッチ市場)において、他社が容易に模倣できない世界トップクラスのシェアを持つ製品を多数保有している点が最大の強みである。世界市場トップシェア製品の比率約40%、自社開発技術による製品90%以上(単体:生産品目ベース)となる。世界シェア1位となる製品は、半導体パッケージ基板材料として不可欠なBT(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)材料のほか、酸素や二酸化炭素などの気体を遮断するMXナイロン、高屈折率カメラレンズで光学樹脂ポリマー「ユピゼータ○REP」、エポキシ樹脂硬化剤で「MXDA」(シェア8割以上、同社推定)、食品・医療の分野で「脱酸素剤」とビジネスや暮らしを支える幅広い製品で高いシェアを有している。近年需要が拡大している生成AI向けサーバーの高性能基板に使われる低誘電性樹脂(「OPE○R(オリゴ・フェニレン・エーテル)」も代表例となる。そのほか、グローバル市場で圧倒的な地位を確立、海外売上高比率は68%を占めている。
こうした優位性の源泉は、長年にわたり自社でゼロから技術を培ってきた研究開発力にある。技術を買収に頼る企業とは異なり、基礎から応用まで自社で開発を手掛けることで、顧客の高度な要求に柔軟に応えることが可能となっている。近年は、高性能な製品を開発する「プロダクトアウト」志向から、顧客との対話を深く行い、将来の技術トレンドやニーズを先取りして製品開発に繋げる「マーケットアウト志向」への転換を鮮明にしている。これは、顧客の次の展開を見据えたコミュニケーションを重要視し、共同で価値を創造していくスタイルであり、簡単には代替されない強固なパートナーシップを構築する上での差別化要因となっている。そのほか、グローバル展開では、1980年にはサウジアラビア、1992年にはベネズエラ、2005年にはブルネイなど、新興国にも先駆けて進出、また2013年にはトリニダード・トバゴにも展開するなど世界各地で製造・販売を行っている。
2026年3月期第1四半期の売上高は1,779億円(前年同期比5.4%減)、営業利益は109億円(同30.2%減)で着地した。主力のメタノール事業において市況が前年同期に比べ下落したことに加え、ポリカーボネート販売価格の下落、無機化学品やMXDAの損益悪化などが響いた。また、前年度に比べ円高方向に振れた為替も収益を圧迫する一因となった。市況製品の価格変動に業績が左右される側面は依然としてあるものの、特殊機能材セグメントにおける電子材料分野の需要伸長が、全体の業績を下支えする構図となっている。
2026年3月期通期の業績予想については、売上高7,500億円(前期比3.0%減)、営業利益460億円(同9.5%減)を見込む。売上高のみ従来計画(7,300億円)から上方修正し、各段階利益は前回予想を据え置いている。上期は、BT材料の好調な販売を維持する一方、メタノール市況の下落やPC、MXDAおよび誘導品等において需要低迷・採算悪化を見込む。下期には、為替前提を円安に見直したことにより増収の一方で、上期同様、PC、MXDAおよび誘導品での下振れる見込み。BT材料での品質対応強化に伴うコストは上期比で減少が見込まれるものの、下期においても継続する見込み。為替前提(2Q以降)は、1ドル145円(前回予想より5円の円安)、1ユーロ165円(前回予想より5円の円安)としている。
市場環境としては、半導体市場全体の回復ペースが当初の想定よりも緩やかであり、特にAI関連の最先端分野は強い需要が続く一方、それ以外の民生機器や産業機器向け需要の戻りは鈍い状況が続いている。現中計において、同社は「伸びる」「勝てる」「サステナブル」の観点で優れ、社会的価値と経済的価値を両立して持続的に成長できる事業を「Uniqueness&Presence事業」と再定義してフォーカス。前中計から実行してきた大型投資(EL薬品、BT材料、MXDA等)の成果の刈り取りを行っていく。BT材料は半導体市場の需要拡大を見据え、タイ工場を増設しており10月に運転開始予定、OPE○Rも生成AIサーバー向け基板材料として伸長している。また、半導体の微細化に伴って工程数が増加し、同社のEL薬品使用量も増加。半導体製造メーカーやファウンドリーの新設・増設に沿って、全世界で生産能力を増強した。
同社は現在、中期経営計画「Grow UP 2026」を推進中であり、最終年度である2027年3月期に売上高8,500億円、営業利益850億円、ROE9%以上、ROIC(投下資本利益率)8%以上という目標を掲げている。資本効率を強く意識して、事業ポートフォリオ改革を徹底。セグメント別ではグリーン・エネルギー&ケミカルでは、MXDA欧州等の減価償却費増加はあるものの、全般的な販売数量の増加等による増益要因が上回り増益を計画。機能化学品では、ICT3事業(電子材料、EL薬品、光学材料)の販売数量増加のほか、PC系の採算改善等で増益を計画している。そのほか、新規・次世代製品やライフサイエンス分野も経営資源を重点的に投入しており、新規製品売上では、環境循環型メタノール(CarbopathTM)を中心に2030年度には新規製品の売上高拡大を見込む。2030年には、売上高1.2兆円、営業利益1,200億円、営業利益率10%以上、ROE 12%以上、ROIC 10%以上を目指している。
株主還元については、累進配当を基本方針としており、安定的な配当継続への意識は高い。中計期間は自己株式の取得を含めた親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向50%を中期的な株主還元の目安としている。また、PBRは依然として0.7倍台と1倍を割れている。株価指標上は割安な水準にあると認識しているようで、新中計でROEを9%以上に引き上げるべく各種改善策に取り組むなか、認知度向上によるPERの切りあがりにも期待したい。
足元の業績は市況変動の影響を受け厳しい側面もあるが、半導体製造において欠かせない重要な材料を製造・販売しているほか、生成AIという巨大な成長トレンドを的確に捉え、BT材料やOPE○Rといったグローバルニッチトップ製品で着実に収益を上げている点は高く評価できよう。現在進行中の事業ポートフォリオ改革と、顧客ニーズを起点とする研究開発を経て収益構造はさらに強靭なものへと進化する可能性もある。まずはPBR1倍割れ改善に向けて同社の今後の動向に注目していきたい。
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同社の競争優位性は、徹底した「グローバルニッチトップ戦略」に集約される。汎用的な製品でボリュームを追うのではなく、独自の技術力が最大限に活きる特定の市場(ニッチ市場)において、他社が容易に模倣できない世界トップクラスのシェアを持つ製品を多数保有している点が最大の強みである。世界市場トップシェア製品の比率約40%、自社開発技術による製品90%以上(単体:生産品目ベース)となる。世界シェア1位となる製品は、半導体パッケージ基板材料として不可欠なBT(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)材料のほか、酸素や二酸化炭素などの気体を遮断するMXナイロン、高屈折率カメラレンズで光学樹脂ポリマー「ユピゼータ○REP」、エポキシ樹脂硬化剤で「MXDA」(シェア8割以上、同社推定)、食品・医療の分野で「脱酸素剤」とビジネスや暮らしを支える幅広い製品で高いシェアを有している。近年需要が拡大している生成AI向けサーバーの高性能基板に使われる低誘電性樹脂(「OPE○R(オリゴ・フェニレン・エーテル)」も代表例となる。そのほか、グローバル市場で圧倒的な地位を確立、海外売上高比率は68%を占めている。
こうした優位性の源泉は、長年にわたり自社でゼロから技術を培ってきた研究開発力にある。技術を買収に頼る企業とは異なり、基礎から応用まで自社で開発を手掛けることで、顧客の高度な要求に柔軟に応えることが可能となっている。近年は、高性能な製品を開発する「プロダクトアウト」志向から、顧客との対話を深く行い、将来の技術トレンドやニーズを先取りして製品開発に繋げる「マーケットアウト志向」への転換を鮮明にしている。これは、顧客の次の展開を見据えたコミュニケーションを重要視し、共同で価値を創造していくスタイルであり、簡単には代替されない強固なパートナーシップを構築する上での差別化要因となっている。そのほか、グローバル展開では、1980年にはサウジアラビア、1992年にはベネズエラ、2005年にはブルネイなど、新興国にも先駆けて進出、また2013年にはトリニダード・トバゴにも展開するなど世界各地で製造・販売を行っている。
2026年3月期第1四半期の売上高は1,779億円(前年同期比5.4%減)、営業利益は109億円(同30.2%減)で着地した。主力のメタノール事業において市況が前年同期に比べ下落したことに加え、ポリカーボネート販売価格の下落、無機化学品やMXDAの損益悪化などが響いた。また、前年度に比べ円高方向に振れた為替も収益を圧迫する一因となった。市況製品の価格変動に業績が左右される側面は依然としてあるものの、特殊機能材セグメントにおける電子材料分野の需要伸長が、全体の業績を下支えする構図となっている。
2026年3月期通期の業績予想については、売上高7,500億円(前期比3.0%減)、営業利益460億円(同9.5%減)を見込む。売上高のみ従来計画(7,300億円)から上方修正し、各段階利益は前回予想を据え置いている。上期は、BT材料の好調な販売を維持する一方、メタノール市況の下落やPC、MXDAおよび誘導品等において需要低迷・採算悪化を見込む。下期には、為替前提を円安に見直したことにより増収の一方で、上期同様、PC、MXDAおよび誘導品での下振れる見込み。BT材料での品質対応強化に伴うコストは上期比で減少が見込まれるものの、下期においても継続する見込み。為替前提(2Q以降)は、1ドル145円(前回予想より5円の円安)、1ユーロ165円(前回予想より5円の円安)としている。
市場環境としては、半導体市場全体の回復ペースが当初の想定よりも緩やかであり、特にAI関連の最先端分野は強い需要が続く一方、それ以外の民生機器や産業機器向け需要の戻りは鈍い状況が続いている。現中計において、同社は「伸びる」「勝てる」「サステナブル」の観点で優れ、社会的価値と経済的価値を両立して持続的に成長できる事業を「Uniqueness&Presence事業」と再定義してフォーカス。前中計から実行してきた大型投資(EL薬品、BT材料、MXDA等)の成果の刈り取りを行っていく。BT材料は半導体市場の需要拡大を見据え、タイ工場を増設しており10月に運転開始予定、OPE○Rも生成AIサーバー向け基板材料として伸長している。また、半導体の微細化に伴って工程数が増加し、同社のEL薬品使用量も増加。半導体製造メーカーやファウンドリーの新設・増設に沿って、全世界で生産能力を増強した。
同社は現在、中期経営計画「Grow UP 2026」を推進中であり、最終年度である2027年3月期に売上高8,500億円、営業利益850億円、ROE9%以上、ROIC(投下資本利益率)8%以上という目標を掲げている。資本効率を強く意識して、事業ポートフォリオ改革を徹底。セグメント別ではグリーン・エネルギー&ケミカルでは、MXDA欧州等の減価償却費増加はあるものの、全般的な販売数量の増加等による増益要因が上回り増益を計画。機能化学品では、ICT3事業(電子材料、EL薬品、光学材料)の販売数量増加のほか、PC系の採算改善等で増益を計画している。そのほか、新規・次世代製品やライフサイエンス分野も経営資源を重点的に投入しており、新規製品売上では、環境循環型メタノール(CarbopathTM)を中心に2030年度には新規製品の売上高拡大を見込む。2030年には、売上高1.2兆円、営業利益1,200億円、営業利益率10%以上、ROE 12%以上、ROIC 10%以上を目指している。
株主還元については、累進配当を基本方針としており、安定的な配当継続への意識は高い。中計期間は自己株式の取得を含めた親会社株主に帰属する当期純利益に対する総還元性向50%を中期的な株主還元の目安としている。また、PBRは依然として0.7倍台と1倍を割れている。株価指標上は割安な水準にあると認識しているようで、新中計でROEを9%以上に引き上げるべく各種改善策に取り組むなか、認知度向上によるPERの切りあがりにも期待したい。
足元の業績は市況変動の影響を受け厳しい側面もあるが、半導体製造において欠かせない重要な材料を製造・販売しているほか、生成AIという巨大な成長トレンドを的確に捉え、BT材料やOPE○Rといったグローバルニッチトップ製品で着実に収益を上げている点は高く評価できよう。現在進行中の事業ポートフォリオ改革と、顧客ニーズを起点とする研究開発を経て収益構造はさらに強靭なものへと進化する可能性もある。まずはPBR1倍割れ改善に向けて同社の今後の動向に注目していきたい。
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