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FJネクHD Research Memo(5):首都圏投資用マンションは個人の投資ニーズに支えられ堅調に推移
配信日時:2025/07/31 14:05
配信元:FISCO
*14:05JST FJネクHD Research Memo(5):首都圏投資用マンションは個人の投資ニーズに支えられ堅調に推移
■FJネクストホールディングス<8935>の業界環境
1. 販売環境
首都圏投資用マンションの供給戸数は、1990年代後半から2000年代前半にかけて順調に拡大したものの、2008年に地価の高騰やリーマン・ショックの影響などにより事業者の倒産や撤退が相次いだことから減少傾向をたどった。2010年に底を打つと、以降は単身世帯数の増加や人口の都心回帰※などを背景とした首都圏の賃貸需要の拡大、低金利の継続や将来の年金受給の不安のほか、相続税対策(基礎控除の引き下げなど)という新たなニーズも出てきた。近年では、物件価格上昇などによりマンション業界全体が調整局面を迎えるなかでも、個人からの底堅い購入需要に支えられて堅調に推移している。特に将来に向けた資産運用手段として、株式や投資信託、債券などと比べ、節税効果や保険機能が期待できるほか、キャッシュ・フローが安定していることや実物資産投資への安心感も背景として考えられる。近年においては、1口1万円からの投資が可能で手軽に始められる小口化商品(クラウドファンディングなど)により若年層の投資機会が創出され、不動産投資の裾野が広がっている。
※ 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2024年7月発表)によると、都道府県別の社会増減数(=転入者数−転出者数(外国人を除く))を見ると、1位から4位までを1都3県の首都圏が独占(2年連続)しており、コロナ禍後においても同社の供給エリアが上位を占める状況に変化はない。また同社資料より、東京都総務局統計部による東京都将来推計人口指数は、国内人口が減少するなかでも、東京都中心部(23区)の人口は2045年まで単身世帯を中心に増え続け、その後は横ばいから緩やかに減少するとの見方をしている。
2. 仕入開発環境
仕入開発面では土地仕入価格や建築費の高止まりが続いていることから、収益性の見極めが一層重要となっており、土地仕入れの結果が業績を左右する可能性が高まっている。同社は、信用力、財務力、豊富な情報力を生かし、設立以来一貫した採算性重視の仕入活動を行う方針としている。
3. 競合環境
同業者は投資用マンションの専業業者がほとんどであり、比較的規模が小さいところが多い業界構造となっている。そのなかで同社は、首都圏投資用マンション供給戸数で常にトップクラスの販売実績となっている※。
※ 2023年首都圏投資用マンション供給ランキング(不動産経済研究所が2024年8月に発表)では5年連続で第1位を獲得した。
■業績推移
中古マンションを含む、資産運用型マンションの販売が好調に推移
1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、首都圏における資産運用型マンションに対する賃貸需要、購入需要の拡大に支えられて業績は総じて順調に推移してきたと言える。2009年3月期にリーマン・ショックに伴う景気後退の影響で業績のボトムを迎えたものの、同社は仕入高を追わずに採算性に合った仕入れを継続するという方針の下、堅実な物件開発を進めたことで、大きな痛手を被った不動産業界においては比較的軽微な落ち込みで乗り切り、その後は景気回復とともに順調に業績を拡大してきた。2016年3月期以降は大幅な増収増益を続けており、売上高は2020年3月期まで5年連続で過去最高を更新した。2021年3月期はコロナ禍の影響により一旦後退したものの、翌2022年3月期にV字回復すると、2024年3月期の売上高は初めて1,000億円を突破し、社歴を重ねながらも、同社がまだまだ成長過程にあることを示している。
財務面では、業績の拡大に伴って有利子負債残高も増えてきたが、内部留保の積み増しなどにより自己資本比率も高い水準を維持しており、財務基盤の安定性に懸念はない。
2. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の業績は、売上高が前期比12.0%増の112,429百万円、営業利益が同0.6%増の9,488百万円、経常利益が同0.3%増の9,459百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.5%増の6,483百万円と計画を上回る増収増益となり、売上高は2年連続で過去最高を更新した。
売上高は、「不動産開発事業」の伸びが増収に大きく寄与した。主力の「不動産開発事業」におけるマンション販売戸数は3,249戸(前期比479戸増)となり、中古マンション販売を含めて過去最高水準を更新した。国内経済が緩やかな回復基調をたどる一方、施工費や用地価格の高騰が続くなかでも、資産運用型マンションに対する需要は底堅く、平均販売価格についても新築・中古ともに高水準を維持できた※1。売上高が計画を上回ったのは、中古マンション販売が想定以上に拡大したことが主因である。中古マンション市場が好況であることや「ガーラ」ブランドの人気の高さ、同社のサポート体制とスピーディな買取再販の実現※2が背景にある。また、「不動産管理事業」も賃貸管理戸数の積み上げにより順調に拡大した。一方、「建設事業」は完成工事件数減により減収となったものの、足元のマンション建設受注を順調に積み上げることができた。「旅館事業」については、高価格帯の旅館を中心に客室単価が上昇し増収を確保した。
※1 ガーラマンションシリーズの平均販売価格は前期比ほぼ横ばいの2,873万円を維持し、中古マンションは前期比6.2%増の2,710万円に伸長した。
※2 2025年3月期の中古マンションの平均販売日数は27.8日(業界平均85.3日)とスピーディな買取再販を実現している。
利益面では、工事原価の上昇に加え、中古マンション販売の構成比の高まりが粗利益率の低下要因となり、営業利益率は8.4%(前期は9.4%)に低下した。ただ、「不動産管理事業」を中心とする収益の底上げや費用の抑制により計画を上回る増益を確保することができた。
今後の業績の伸びに影響するたな卸資産(パイプライン)の状況については、販売用不動産(完成マンション)及び仕掛販売用不動産(開発用地及び開発中のマンション)ともに大きく積み増しており、厳しい仕入れ環境にあるなかでも採算性を重視した仕入れの継続により、パイプラインもしっかりと確保されている。とりわけ仕掛販売用不動産については、前期末比約1.5倍の43,324百万円に拡大しており約50のプロジェクトが進行中である。
財政状態については、たな卸資産を大きく積み増したことから総資産は前期末比10.7%増の105,477百万円となった。一方、自己資本も利益剰余金の積み増しにより同7.2%増の72,922百万円に増加したが、自己資本比率は69.1%(前期末は71.4%)に若干低下した。また、有利子負債はたな卸資産の積み増しとともに前期末比42.9%増の18,230百万円に増加し、有利子負債依存度※は17.3%(前期末は13.4%)に高まった。もっとも、財務の安全性に懸念はなく、今後の事業拡大に向けて積極的な財務バランスとの見方が妥当である。資本効率を示すROEは9.2%(前期末は9.8%)と若干低下したものの、同社の財務内容は総じて良好と言える。
※ 有利子負債残高÷(負債合計+純資産)×100で算出。
弊社でも、原材料費の高騰や金融環境の変化などの影響には注意が必要であるものの、首都圏における賃貸需要が底堅く推移していることや中古マンションを含めて購入需要が根強いこと、パイプラインを大きく積み増したこと、「建設事業」も受注残が確保できていることなどから、売上高予想の達成は十分に可能であると判断している。また、緩やかな増益を予想している利益面でも、原材料価格の上昇などを保守的に織り込んだ水準と見ている。したがって、前期同様、好調な中古マンション販売が想定以上に増えることにより業績が上振れする可能性にも注意が必要である。引き続き、来期以降の業績の伸びにつながるパイプラインの状況のほか、他社との業務提携を含む、将来を見据えた取り組みにも注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 販売環境
首都圏投資用マンションの供給戸数は、1990年代後半から2000年代前半にかけて順調に拡大したものの、2008年に地価の高騰やリーマン・ショックの影響などにより事業者の倒産や撤退が相次いだことから減少傾向をたどった。2010年に底を打つと、以降は単身世帯数の増加や人口の都心回帰※などを背景とした首都圏の賃貸需要の拡大、低金利の継続や将来の年金受給の不安のほか、相続税対策(基礎控除の引き下げなど)という新たなニーズも出てきた。近年では、物件価格上昇などによりマンション業界全体が調整局面を迎えるなかでも、個人からの底堅い購入需要に支えられて堅調に推移している。特に将来に向けた資産運用手段として、株式や投資信託、債券などと比べ、節税効果や保険機能が期待できるほか、キャッシュ・フローが安定していることや実物資産投資への安心感も背景として考えられる。近年においては、1口1万円からの投資が可能で手軽に始められる小口化商品(クラウドファンディングなど)により若年層の投資機会が創出され、不動産投資の裾野が広がっている。
※ 総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2024年7月発表)によると、都道府県別の社会増減数(=転入者数−転出者数(外国人を除く))を見ると、1位から4位までを1都3県の首都圏が独占(2年連続)しており、コロナ禍後においても同社の供給エリアが上位を占める状況に変化はない。また同社資料より、東京都総務局統計部による東京都将来推計人口指数は、国内人口が減少するなかでも、東京都中心部(23区)の人口は2045年まで単身世帯を中心に増え続け、その後は横ばいから緩やかに減少するとの見方をしている。
2. 仕入開発環境
仕入開発面では土地仕入価格や建築費の高止まりが続いていることから、収益性の見極めが一層重要となっており、土地仕入れの結果が業績を左右する可能性が高まっている。同社は、信用力、財務力、豊富な情報力を生かし、設立以来一貫した採算性重視の仕入活動を行う方針としている。
3. 競合環境
同業者は投資用マンションの専業業者がほとんどであり、比較的規模が小さいところが多い業界構造となっている。そのなかで同社は、首都圏投資用マンション供給戸数で常にトップクラスの販売実績となっている※。
※ 2023年首都圏投資用マンション供給ランキング(不動産経済研究所が2024年8月に発表)では5年連続で第1位を獲得した。
■業績推移
中古マンションを含む、資産運用型マンションの販売が好調に推移
1. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、首都圏における資産運用型マンションに対する賃貸需要、購入需要の拡大に支えられて業績は総じて順調に推移してきたと言える。2009年3月期にリーマン・ショックに伴う景気後退の影響で業績のボトムを迎えたものの、同社は仕入高を追わずに採算性に合った仕入れを継続するという方針の下、堅実な物件開発を進めたことで、大きな痛手を被った不動産業界においては比較的軽微な落ち込みで乗り切り、その後は景気回復とともに順調に業績を拡大してきた。2016年3月期以降は大幅な増収増益を続けており、売上高は2020年3月期まで5年連続で過去最高を更新した。2021年3月期はコロナ禍の影響により一旦後退したものの、翌2022年3月期にV字回復すると、2024年3月期の売上高は初めて1,000億円を突破し、社歴を重ねながらも、同社がまだまだ成長過程にあることを示している。
財務面では、業績の拡大に伴って有利子負債残高も増えてきたが、内部留保の積み増しなどにより自己資本比率も高い水準を維持しており、財務基盤の安定性に懸念はない。
2. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の業績は、売上高が前期比12.0%増の112,429百万円、営業利益が同0.6%増の9,488百万円、経常利益が同0.3%増の9,459百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.5%増の6,483百万円と計画を上回る増収増益となり、売上高は2年連続で過去最高を更新した。
売上高は、「不動産開発事業」の伸びが増収に大きく寄与した。主力の「不動産開発事業」におけるマンション販売戸数は3,249戸(前期比479戸増)となり、中古マンション販売を含めて過去最高水準を更新した。国内経済が緩やかな回復基調をたどる一方、施工費や用地価格の高騰が続くなかでも、資産運用型マンションに対する需要は底堅く、平均販売価格についても新築・中古ともに高水準を維持できた※1。売上高が計画を上回ったのは、中古マンション販売が想定以上に拡大したことが主因である。中古マンション市場が好況であることや「ガーラ」ブランドの人気の高さ、同社のサポート体制とスピーディな買取再販の実現※2が背景にある。また、「不動産管理事業」も賃貸管理戸数の積み上げにより順調に拡大した。一方、「建設事業」は完成工事件数減により減収となったものの、足元のマンション建設受注を順調に積み上げることができた。「旅館事業」については、高価格帯の旅館を中心に客室単価が上昇し増収を確保した。
※1 ガーラマンションシリーズの平均販売価格は前期比ほぼ横ばいの2,873万円を維持し、中古マンションは前期比6.2%増の2,710万円に伸長した。
※2 2025年3月期の中古マンションの平均販売日数は27.8日(業界平均85.3日)とスピーディな買取再販を実現している。
利益面では、工事原価の上昇に加え、中古マンション販売の構成比の高まりが粗利益率の低下要因となり、営業利益率は8.4%(前期は9.4%)に低下した。ただ、「不動産管理事業」を中心とする収益の底上げや費用の抑制により計画を上回る増益を確保することができた。
今後の業績の伸びに影響するたな卸資産(パイプライン)の状況については、販売用不動産(完成マンション)及び仕掛販売用不動産(開発用地及び開発中のマンション)ともに大きく積み増しており、厳しい仕入れ環境にあるなかでも採算性を重視した仕入れの継続により、パイプラインもしっかりと確保されている。とりわけ仕掛販売用不動産については、前期末比約1.5倍の43,324百万円に拡大しており約50のプロジェクトが進行中である。
財政状態については、たな卸資産を大きく積み増したことから総資産は前期末比10.7%増の105,477百万円となった。一方、自己資本も利益剰余金の積み増しにより同7.2%増の72,922百万円に増加したが、自己資本比率は69.1%(前期末は71.4%)に若干低下した。また、有利子負債はたな卸資産の積み増しとともに前期末比42.9%増の18,230百万円に増加し、有利子負債依存度※は17.3%(前期末は13.4%)に高まった。もっとも、財務の安全性に懸念はなく、今後の事業拡大に向けて積極的な財務バランスとの見方が妥当である。資本効率を示すROEは9.2%(前期末は9.8%)と若干低下したものの、同社の財務内容は総じて良好と言える。
※ 有利子負債残高÷(負債合計+純資産)×100で算出。
弊社でも、原材料費の高騰や金融環境の変化などの影響には注意が必要であるものの、首都圏における賃貸需要が底堅く推移していることや中古マンションを含めて購入需要が根強いこと、パイプラインを大きく積み増したこと、「建設事業」も受注残が確保できていることなどから、売上高予想の達成は十分に可能であると判断している。また、緩やかな増益を予想している利益面でも、原材料価格の上昇などを保守的に織り込んだ水準と見ている。したがって、前期同様、好調な中古マンション販売が想定以上に増えることにより業績が上振れする可能性にも注意が必要である。引き続き、来期以降の業績の伸びにつながるパイプラインの状況のほか、他社との業務提携を含む、将来を見据えた取り組みにも注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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