注目トピックス 日本株

ヤマノHD Research Memo(5):既存事業の収益安定化策により、全事業で収益性改善

配信日時:2025/07/31 13:05 配信元:FISCO
*13:05JST ヤマノHD Research Memo(5):既存事業の収益安定化策により、全事業で収益性改善 ■業績動向

1. 2025年3月期の業績概要
ヤマノホールディングス<7571>の2025年3月期の連結業績は、売上高13,964百万円(前期比0.9%増)、EBITDA368百万円(同66.7%増)、営業利益256百万円(同153.9%増)、経常利益236百万円(同131.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益41百万円(前期は28百万円の損失)となった。2024年12月に修正した通期業績予想の売上高14,000百万円、営業利益260百万円、経常利益230百万円、親会社株主に帰属する当期純利益40百万円はほぼ計画どおりとなった。また、特別損失で有価証券評価損81百万円を計上し、負の資産を整理したうえで2期ぶりの復配(年間1.0円)を実現した。売上高は、美容、DSM事業が不採算店舗の閉鎖・統廃合などの影響で減収となったが、教育事業の売上が伸長したことから増収となった。2023年12月に子会社化した灯学舎の売上が通期で寄与した。損益面では、重点取り組みである「既存事業の収益安定化」策として、全事業の営業体制の最適化、不振事業(DSM・リユース事業)の構造改革、伸長事業(教育事業)の盤石化に注力し、収益構造改革と徹底したコスト最適化により全セグメントで収益性が改善し大幅な増益につながった。

2. 事業セグメント別動向
(1) 美容事業
美容事業の売上高は1,776百万円(前期比8.0%減)、セグメント利益は25百万円(同310.6%増)となった。営業資源の有効活用に向けて不採算店舗6店を閉鎖した。また、多様なサロン形態を有する強みを活かして、2024年5月には「MY jSTYLE」川越店を「La Bonheur」へと出店エリアの顧客層に合わせた業態転換を実施したほか、独立志向の従業員に対して2店舗をFC化(うち1店舗は直営店からの転換)するなど、営業体制の最適化を進めた。店舗閉鎖により減収とはなったが、損益面では固定費の削減、育成強化による店舗稼働率の上昇が図られ、1店舗当たりの平均営業利益率は前期より1.1ポイント改善し、セグメント利益が回復したほか、損益分岐点売上高も前期より10.4%低下し改善した。

(2) 和装宝飾事業
和装宝飾事業の売上高は9,582百万円(同0.0%増)、セグメント利益が181百万円(同30.5%増)となった。着物のメンテナンスサービスの強化、展示販売会における集客強化などに注力し、受注高は回復基調で推移した。上半期に加工会社との調整不足による納品遅延が発生していたが、第4四半期に集中した商品引渡しも計画どおり完了し、売上高は前期並みを確保した。また、不採算店舗を10店閉鎖、うち2店を移転するなど営業体制の最適化を進め、1店舗当たりの平均売上高が同5.4%上昇したほか、平均営業利益率は前期より0.4ポイント改善し、損益分岐点売上高も0.6%低下し改善した。

(3) DSM事業
DSM事業の売上高は834百万円(同4.0%減)、セグメント損失は31百万円(前期は49百万円の損失)と損失が続くが17百万円損益は改善した。販売員や顧客の高齢化などにより厳しい状況が続く中、営業体制の最適化を目的に4拠点の統廃合を実施し1拠点当たり平均売上高は同5.3%上昇した。拠点統廃合の影響や販売員稼働数の低下により減収となったが、損益面では、拠点統廃合による固定費の削減、販売費用の抑制などコスト管理の更なる強化により、1店舗当たり平均営業利益率は同2.1ポイント改善し、損益分岐点売上高も8.3%低下し損益は改善した。そのほか、顧客数を増やすための紹介キャンペーンの実施や休眠顧客の深耕開拓、提案商品の絞り込み、聴力の相談・診断、補聴器の試聴・販売・メンテナンスを行う「きこえの相談会」の強化など企画の見直しなどを図ることで販売員稼働数の向上につなげる取り組みを進めている。

(4) 教育事業
教育事業の売上高は1,453百万円(同26.3%増)、セグメント利益は123百万円(同30.2%増)となった。マンツーマンアカデミー及び東京ガイダンスが引き続き順調に推移し、加えて2023年12月にグループ入りした灯学舎が期初より寄与したことにより、売上高は大きく伸長した。損益面では、マンツーマンアカデミー及び東京ガイダンスのコスト管理の適正化が図られるとともに、若手従業員の積極的な採用や新規生徒数の確保など現場力の改善活動により、1教室当たりの平均売上高は同3.7%増、1教室当たりの平均営業利益率は同1.7ポイント上昇、損益分岐点売上高は同5.0%低下し改善した。

(5) その他の事業(リユース事業)
その他の事業の売上高は318百万円(同3.7%増)、セグメント損失は23百万円(前期は69百万円の損失)と損失は続くが46百万円損益が改善した。2024年3月期に苦戦したOLD FLIPの構造改革を推し進め、売上高は前期並みを確保しながら損益を改善した。構造改革としては、まず商業施設などへのポップアップストア出店時などに業務代行業者に販売員の派遣を依頼せずに自ら従業員を採用することで内製化を進めている。派遣販売員に任せられる業務は限定されるため、会社の方針を理解し店舗・商材についてマネジメントのできる人財を採用した結果、販売オペレーションの改善が進み、高粗利商品の多い店舗販売の売上高が同17.8%伸び、1店舗当たりの平均売上高は同4.3%上昇した。また、コストをかけていた倉庫の移転をはじめ他の間接費も含めて固定費を下げ、損益分岐点売上高は同20.3%低下し改善した。不安定化していた仕入れについても、取引先との取り組みを見直し商材が潤沢に入り、販売価格の上昇、仕入原価の低下につながり損益改善に貢献した。

3. 財務状況と経営指標
2025年3月期末の資産合計は前期末比690百万円減少し7,956百万円となった。現金及び預金が293百万円減少、売掛債権も424百万円減少したほか、ソフトウェア仮勘定は呉服販売管理システム開発に伴い101百万円増加した。仕入債務が239百万円減少したものの、「集金保証型ショッピングクレジット」※にかかる売掛債権が平準化したこともあり、必要な運転資金が265百万円減少し、営業活動によるキャッシュ・フローは384百万円の収入となった。投資活動によるキャッシュ・フローは126百万円の支出となり、258百万円のフリーキャッシュ・フローが生まれたが、財務活動によるキャッシュ・フローにおいて長短借入金の返済に充てるなど551百万円を支出したため現金及び現金同等物は293百万円減少した。長短借入金を合計で531百万円返済し、負債合計は同794百万円減少した。純資産合計は、利益剰余金41百万円、その他有価証券評価差額金61百万円がそれぞれ増加したことにより同103百万円増加し1,327百万円となる一方で、負債合計が大きく減少したため自己資本比率は16.7%と同2.6ポイント上昇した。

※ 「集金保証型ショッピングクレジット」は2018年10月から導入した。和装宝飾事業におけるカード・割賦販売の売掛債権の回収方法を、信販会社の一括立替払いの方式から、顧客の分割払いに合わせて回収する方式に変更した。回収に伴う運転資金は同社が負担するが、割賦手数料を同社が受け取る。以降、毎期売掛債権の増加に伴い運転資金が増加し、営業活動によるキャッシュ・フローは2019年3月期より支出に転じていたが、売掛債権の平準化に伴い2024年3月期に収入に転じていた。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)


<HN>

Copyright(c) FISCO Ltd. All rights reserved.

ニュースカテゴリ