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MDNT Research Memo(3):「細胞加工業」「再生医療等製品事業」の両利きの経営を推進
配信日時:2025/07/31 12:03
配信元:FISCO
*12:03JST MDNT Research Memo(3):「細胞加工業」「再生医療等製品事業」の両利きの経営を推進
■会社概要
2. 事業概要
(1) 事業ポートフォリオ
メディネット<2370>は「細胞加工業」をコア事業、「再生医療等製品事業」を戦略事業と位置付け、事業を展開している。この戦略は、経営における「深化」(既存事業の深掘り)と「探索」(新規事業分野の探求)を両立させる「両利きの経営」を追求するものである。同社のこの「両利きの経営」は現在、初期段階にある。
(2) 細胞加工業
細胞加工業は、特定細胞加工物製造業、CDMO事業、バリューチェーン事業の3本柱で構成される。
特定細胞加工物製造業は医療機関からの依頼に基づき再生・細胞医療で用いる治療用細胞(特定細胞加工物)を製造し、CDMO事業は主に製薬会社から再生医療等製品や治験製品の製造を受託する。CDMO事業は将来の基幹事業として期待される。バリューチェーン事業は、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供など、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供する。
2014年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、2015年5月に品川細胞培養加工施設で「特定細胞加工物製造許可」を取得した。これにより免疫細胞治療関連の加工に加え、体細胞・幹細胞・iPS細胞など多様な特定細胞加工物の製造受託が可能となり、再生医療等製品の開発から商業生産まで一貫して対応できる体制を確立した。
これに伴い、同社は医療法人社団滉志会に対して3つの細胞培養加工施設(新横浜・大阪・福岡)への「免疫細胞療法総合支援サービス」の契約を終了し、2017年9月に「特定細胞加工物製造委受託」契約へ切り替えた。この契約変更は、医師向けの細胞加工から再生医療等製品の製造まで一貫して実施する体制の構築を目的とする。同社は細胞加工業における製造体制の効率化を図るため、2019年4月までに各細胞培養加工施設を品川細胞培養加工施設へ統合した。
(3) がん免疫細胞治療における課題
がん免疫細胞治療の普及には複数の課題が存在する。これには、患者の費用負担が自費診療である点、保険適用に必要なエビデンスデータの不足、そして体制の未整備が含まれる。
抗がん剤は保険適用により患者の費用負担を軽減する利点を持つ一方、継続使用によるがんの耐性獲得や治療効果の漸減、最終的には使用可能な抗がん剤がなくなる可能性をはらむ。標準治療ではがんが細胞レベルで完全に消失することは稀とされるが、がん免疫細胞治療は体内に残存するがん細胞を攻撃し、再発・転移を抑制する。このため、標準治療との併用により相乗効果が期待される。
しかし、がん免疫細胞治療の適用については、主治医の判断において採用しないケースが多発している。これは、患者の要望を取り入れた治療が可能であっても、標準治療を重視する医師が多数存在するためである。がん免疫細胞治療が保険適用承認を得るには、臨床試験によるエビデンスデータの収集・蓄積が不可欠であり、これには数年を要する。最新治療を保険診療として広く普及させるためには、この点が大きな課題である。
(4) 再生医療等製品事業
同社は、既存の免疫細胞療法総合支援サービスのみでは事業拡大に限界があるとの判断から、2003年のころより、再生・細胞医療の研究開発に着手した。2017年には、再生医療等製品の製造販売承認取得を目指して、自家細胞培養軟骨(米国製品名「NeoCart®」(以下、「NeoCart」)、開発番号MDNT-01)の国内での製造・販売ライセンス契約を締結し、事業化を推進した。これにより、再生医療等製品事業の基盤が確立した。現在、同社は自家細胞培養軟骨を筆頭に、複数の開発パイプラインを進めている。
自社単体の研究開発に加え、大学病院との共同研究を通じて再生医療等製品の製造・販売承認取得を目指し、研究開発を進める。国内外の再生医療等製品開発動向を注視し、有望な技術・物質を有する企業などとのアライアンスによるパイプライン拡充も視野に入れている。しかし、同事業は現在開発段階にあり、事業収益は発生していない。
コア事業で安定収益を確保、ほかのバイオベンチャーに比べ安定した財務体質を持つ
3. 特徴と強み
同社の特長と強みは、瀬田クリニック東京からの安定した受注が細胞加工業の収益基盤を構築し、ほかのバイオベンチャーと比較して安定した財務体質を築いている点にある。これに加え、長年にわたる細胞加工の技術と実績、そして国内最大級の施設も同社の重要な事業基盤となっている。
(1) 細胞加工業としての実績
同社の強みは、培ってきた独自のノウハウと培養加工設備の適切な運用にある。これにより、細胞加工において安全かつ高品質な製品を生み出すことが可能になる。
同社の核となる細胞加工ノウハウは、20年以上にわたる事業活動を通じて蓄積された。特定細胞加工物製造件数は累計で約19.8万件(年間1万件ペース、2025年3月末)に達した。また、国内最大級の品川細胞培養加工施設も同社の強みとして挙げられる。この施設は2015年に「特定細胞加工物製造許可」を、2020年には「再生医療等製品製造業許可」を取得済みであり、特定細胞加工物・再生医療等製品・治験製品について、開発から商用生産まで、様々な細胞・組織の加工や開発・製造受託が可能である。
(2) 瀬田クリニック東京との協力関係
瀬田クリニック東京は同社のがん免疫細胞治療用細胞加工技術を活用する、がん免疫細胞治療専門クリニックである。同クリニックは20年以上にわたり同社と緊密な関係を維持しており、瀬田クリニック東京及び同クリニックと医療連携を行う全国の医療機関からの売上高は、同社全体の約6割を占める。
しかし、この売上構成は顧客集中リスクが伴う。同医療機関での医療事故や患者減少などが発生した場合、特定細胞加工物の受託が減少する可能性が想定される。顧客集中リスク緩和のため、がん免疫細胞治療を活用する医療機関の新規開拓を進めるなど、策を講じる必要があると見られる。
(3) コア事業の所有
細胞加工業は過去に慢性的な損失を計上してきたが、同社は事業構造改革を通じて利益体質への転換を図り、収益性の高いビジネスモデルの構築を推進している。
同社の財務体質はほかのバイオベンチャーと比較して安定しており、モノづくり企業と同様に、コア事業で生み出したキャッシュを成長の原資として新規事業へ順次投入することが可能だ。そのため、現在開発段階にある再生医療等製品事業の収益化が実現すれば、外部からの資金調達に過度に依存することなく、企業内で資金を循環させる財務構造を構築できると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
<HN>
2. 事業概要
(1) 事業ポートフォリオ
メディネット<2370>は「細胞加工業」をコア事業、「再生医療等製品事業」を戦略事業と位置付け、事業を展開している。この戦略は、経営における「深化」(既存事業の深掘り)と「探索」(新規事業分野の探求)を両立させる「両利きの経営」を追求するものである。同社のこの「両利きの経営」は現在、初期段階にある。
(2) 細胞加工業
細胞加工業は、特定細胞加工物製造業、CDMO事業、バリューチェーン事業の3本柱で構成される。
特定細胞加工物製造業は医療機関からの依頼に基づき再生・細胞医療で用いる治療用細胞(特定細胞加工物)を製造し、CDMO事業は主に製薬会社から再生医療等製品や治験製品の製造を受託する。CDMO事業は将来の基幹事業として期待される。バリューチェーン事業は、再生・細胞医療のコンサルティング、細胞培養加工施設の運営管理、細胞加工技術者の派遣・教育システムの提供など、特定細胞加工物を取り扱ううえで必要な一連の知見やノウハウを提供する。
2014年に施行された「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、2015年5月に品川細胞培養加工施設で「特定細胞加工物製造許可」を取得した。これにより免疫細胞治療関連の加工に加え、体細胞・幹細胞・iPS細胞など多様な特定細胞加工物の製造受託が可能となり、再生医療等製品の開発から商業生産まで一貫して対応できる体制を確立した。
これに伴い、同社は医療法人社団滉志会に対して3つの細胞培養加工施設(新横浜・大阪・福岡)への「免疫細胞療法総合支援サービス」の契約を終了し、2017年9月に「特定細胞加工物製造委受託」契約へ切り替えた。この契約変更は、医師向けの細胞加工から再生医療等製品の製造まで一貫して実施する体制の構築を目的とする。同社は細胞加工業における製造体制の効率化を図るため、2019年4月までに各細胞培養加工施設を品川細胞培養加工施設へ統合した。
(3) がん免疫細胞治療における課題
がん免疫細胞治療の普及には複数の課題が存在する。これには、患者の費用負担が自費診療である点、保険適用に必要なエビデンスデータの不足、そして体制の未整備が含まれる。
抗がん剤は保険適用により患者の費用負担を軽減する利点を持つ一方、継続使用によるがんの耐性獲得や治療効果の漸減、最終的には使用可能な抗がん剤がなくなる可能性をはらむ。標準治療ではがんが細胞レベルで完全に消失することは稀とされるが、がん免疫細胞治療は体内に残存するがん細胞を攻撃し、再発・転移を抑制する。このため、標準治療との併用により相乗効果が期待される。
しかし、がん免疫細胞治療の適用については、主治医の判断において採用しないケースが多発している。これは、患者の要望を取り入れた治療が可能であっても、標準治療を重視する医師が多数存在するためである。がん免疫細胞治療が保険適用承認を得るには、臨床試験によるエビデンスデータの収集・蓄積が不可欠であり、これには数年を要する。最新治療を保険診療として広く普及させるためには、この点が大きな課題である。
(4) 再生医療等製品事業
同社は、既存の免疫細胞療法総合支援サービスのみでは事業拡大に限界があるとの判断から、2003年のころより、再生・細胞医療の研究開発に着手した。2017年には、再生医療等製品の製造販売承認取得を目指して、自家細胞培養軟骨(米国製品名「NeoCart®」(以下、「NeoCart」)、開発番号MDNT-01)の国内での製造・販売ライセンス契約を締結し、事業化を推進した。これにより、再生医療等製品事業の基盤が確立した。現在、同社は自家細胞培養軟骨を筆頭に、複数の開発パイプラインを進めている。
自社単体の研究開発に加え、大学病院との共同研究を通じて再生医療等製品の製造・販売承認取得を目指し、研究開発を進める。国内外の再生医療等製品開発動向を注視し、有望な技術・物質を有する企業などとのアライアンスによるパイプライン拡充も視野に入れている。しかし、同事業は現在開発段階にあり、事業収益は発生していない。
コア事業で安定収益を確保、ほかのバイオベンチャーに比べ安定した財務体質を持つ
3. 特徴と強み
同社の特長と強みは、瀬田クリニック東京からの安定した受注が細胞加工業の収益基盤を構築し、ほかのバイオベンチャーと比較して安定した財務体質を築いている点にある。これに加え、長年にわたる細胞加工の技術と実績、そして国内最大級の施設も同社の重要な事業基盤となっている。
(1) 細胞加工業としての実績
同社の強みは、培ってきた独自のノウハウと培養加工設備の適切な運用にある。これにより、細胞加工において安全かつ高品質な製品を生み出すことが可能になる。
同社の核となる細胞加工ノウハウは、20年以上にわたる事業活動を通じて蓄積された。特定細胞加工物製造件数は累計で約19.8万件(年間1万件ペース、2025年3月末)に達した。また、国内最大級の品川細胞培養加工施設も同社の強みとして挙げられる。この施設は2015年に「特定細胞加工物製造許可」を、2020年には「再生医療等製品製造業許可」を取得済みであり、特定細胞加工物・再生医療等製品・治験製品について、開発から商用生産まで、様々な細胞・組織の加工や開発・製造受託が可能である。
(2) 瀬田クリニック東京との協力関係
瀬田クリニック東京は同社のがん免疫細胞治療用細胞加工技術を活用する、がん免疫細胞治療専門クリニックである。同クリニックは20年以上にわたり同社と緊密な関係を維持しており、瀬田クリニック東京及び同クリニックと医療連携を行う全国の医療機関からの売上高は、同社全体の約6割を占める。
しかし、この売上構成は顧客集中リスクが伴う。同医療機関での医療事故や患者減少などが発生した場合、特定細胞加工物の受託が減少する可能性が想定される。顧客集中リスク緩和のため、がん免疫細胞治療を活用する医療機関の新規開拓を進めるなど、策を講じる必要があると見られる。
(3) コア事業の所有
細胞加工業は過去に慢性的な損失を計上してきたが、同社は事業構造改革を通じて利益体質への転換を図り、収益性の高いビジネスモデルの構築を推進している。
同社の財務体質はほかのバイオベンチャーと比較して安定しており、モノづくり企業と同様に、コア事業で生み出したキャッシュを成長の原資として新規事業へ順次投入することが可能だ。そのため、現在開発段階にある再生医療等製品事業の収益化が実現すれば、外部からの資金調達に過度に依存することなく、企業内で資金を循環させる財務構造を構築できると見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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