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フィード・ワン Research Memo(4):主力の畜産飼料事業では各機能を強化。市場シェア15%を獲得(1)
配信日時:2025/07/31 11:04
配信元:FISCO
*11:04JST フィード・ワン Research Memo(4):主力の畜産飼料事業では各機能を強化。市場シェア15%を獲得(1)
■フィード・ワン<2060>の事業概要
同社の事業セグメントは、畜産飼料事業、水産飼料事業、食品事業の3つであり、セグメント別の事業内容と強みは以下のとおり。
1. 畜産飼料事業
畜産飼料事業では、配合飼料の原料調達から製造・販売までのプロセスをほぼ一貫して手掛けており、各プロセスにおいて強みを有する。
(1) プロセスと強み
(a) 原料調達
【強み1:三井物産グループとしての世界的調達ネットワーク】
同社の売上高に占める原価の比率は約9割に上る。畜産飼料における原料の約半分はとうもろこしが占め、その他穀物・大豆油かすが続く。とうもろこしは主産地が米国やブラジルであり、相場の変動はもちろん、為替や海上運賃の影響を大きく受ける。調達においては三井物産グループであることで適切なタイミングや価格で十分な量が確保できるというメリットがある。ちなみに、2025年3月期は、円安が進行したものの、相場が軟調に推移し、とうもろこしの輸入価格は前期比で12.2%低下した。畜産飼料販売価格は値下げと値上げを繰り返して通期では前期比6.4%低下した。
(b) 製造
【強み2:生産基盤の強化による製品の安定供給とスケール】
畜産飼料事業で言えば、北海道から九州まで配置された全国13工場で地域の需要を賄っており、言わば地産地消の体制が整っている。年間販売数量約370万トンは市場シェア15%にあたり、JA全農に次いで2位、民間企業では2位を引き離しての1位である。畜種別の販売数量構成比では、牛、豚、鶏で各30%超とバランスが良く、ある畜種で伝染病(例えば、鳥インフルエンザ)が発生した場合も、他の畜種である程度カバーできるといったメリットがある。配合飼料の製造は典型的な装置産業であり、大規模な設備によるスケールメリットが効き易く、生産性の高い施設が有利となる。同社の製造設備には築50年〜60年超の老朽化した工場もあるが、2020年に竣工した最新鋭の北九州畜産工場などもある。販売数量が相対的に多い同社は、より低コストでの生産ができるという優位性がある。
(c) 製品開発・研究開発
【強み3:特許技術を搭載した製品ラインナップ】
同社は研究所を3拠点有し研究開発体制が整っており、差別性の高い製品をリリースしてきた歴史がある。搾乳のDX化に合わせた搾乳ロボット専用飼料である「ファイブギアドロップ」や品種改良が進んだ豚の課題に対応した「ノリノリポーク」など市場の変化に応じた製品を上市しており多くの特許も取得している。10年以上前から暑熱対策飼料にも力を入れており、昨今の酷暑下において顧客のニーズに一層マッチすることで販売数量を伸ばしている。
(d) 営業・価格
【強み4:全国に販売拠点を配置し顧客ニーズをきめ細かく把握できる体制を整備】
【強み5:牛のゲノム解析や生乳分析による最新技術を活用した顧客サービス】
同社製品のユーザーは、養鶏や養豚、養牛を営む農家である。営業活動は、特約店のスタッフが行う場合もあるが、基本的には各支店の同社スタッフが行う。同社が得意とするのは提案営業・コンサルティング営業であり、畜種ごとに専門性を持ったスタッフが顧客のニーズに合致した製品を提案できる体制が整っている。研究所との連携も密で、研究所の技術スタッフが同行することも多いという。牛のゲノム解析や生乳分析による最新技術を活用した配合飼料コンサルティングは手厚い顧客サービスの典型事例である。販売価格に関しては、畜産飼料業界では四半期ごとに価格改定が行われ、原料価格の変動が販売価格に反映されることになる。
【畜産飼料の価格改定】
畜産飼料の販売価格の改定は、主原料であるとうもろこしの相場、海上運賃、外国為替等の動向を反映して四半期ごとに行われる。JA全農が先行して価格改定を発表し、同社を含む配合飼料メーカーも改定を行う。改定額は、畜種別・銘柄別に異なる。業界として四半期ごとの価格改定を行い、顧客の理解が得られる仕組みとなっていることは、配合飼料メーカーとして、急激な環境変化がない限り利益を確保しやすい基盤となっていると言える。一方、プライスリーダーであるJA全農の改定を見据えながらも、原料価格動向に則した価格改定が利益確保のカギであるため、重要な意思決定となる。ちなみに、水産飼料業界では、価格改定は各社不定期であり、販売価格の改定にはタイムラグが発生するケースがある。同社の畜産飼料販売価格は、2025年3月期第3四半期に前四半期比4,473円/トン値下げ(JA全農は約4,850円/トン値下げ)、2025年3月期第4四半期は同2,356円/トン値上げ(JA全農は約2,750円/トン値上げ)と値下げと値上げを繰り返しながら、通年では前期比6.4%低下(4,067円/トン低下)となった。
【配合飼料価格安定制度】
畜産飼料においては、輸入原料価格の高騰による畜産経営への急激な影響を緩和するため、「配合飼料価格安定制度」が設けられている。この制度は、畜産経営者と配合飼料メーカーの積立による「通常補てん」と通常補てんでは賄いきれない異常な価格高騰時に補完する「異常補てん」(国と配合飼料メーカーが積立)の2段階の仕組みにより、畜産経営者に対して補てんを実施するものである。いずれも四半期ごとの原料価格が過去1年間の平均輸入価格を一定幅で上回った場合に発動し、補てん金が支払われる。配合飼料メーカー負担の積立金は税務上、販管費として計上が認められており、その増減が同社業績に影響を及ぼす。配合飼料メーカー負担の積立金単価は1,821円/トン(2025年3月期下期、前年同期は1,422円)と上昇しており、加えて製造数量も増加していることから積立金負担が増える傾向にある。2025年3月期の同制度積立金は、前期比1,528百万円増の6,637百万円となった。同期間の営業利益(6,343百万円)に匹敵する金額であり、そのインパクトの大きさがわかる。なお、積立金単価は、積立金残高の積み上がり状況等を勘案して年度毎に決定される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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同社の事業セグメントは、畜産飼料事業、水産飼料事業、食品事業の3つであり、セグメント別の事業内容と強みは以下のとおり。
1. 畜産飼料事業
畜産飼料事業では、配合飼料の原料調達から製造・販売までのプロセスをほぼ一貫して手掛けており、各プロセスにおいて強みを有する。
(1) プロセスと強み
(a) 原料調達
【強み1:三井物産グループとしての世界的調達ネットワーク】
同社の売上高に占める原価の比率は約9割に上る。畜産飼料における原料の約半分はとうもろこしが占め、その他穀物・大豆油かすが続く。とうもろこしは主産地が米国やブラジルであり、相場の変動はもちろん、為替や海上運賃の影響を大きく受ける。調達においては三井物産グループであることで適切なタイミングや価格で十分な量が確保できるというメリットがある。ちなみに、2025年3月期は、円安が進行したものの、相場が軟調に推移し、とうもろこしの輸入価格は前期比で12.2%低下した。畜産飼料販売価格は値下げと値上げを繰り返して通期では前期比6.4%低下した。
(b) 製造
【強み2:生産基盤の強化による製品の安定供給とスケール】
畜産飼料事業で言えば、北海道から九州まで配置された全国13工場で地域の需要を賄っており、言わば地産地消の体制が整っている。年間販売数量約370万トンは市場シェア15%にあたり、JA全農に次いで2位、民間企業では2位を引き離しての1位である。畜種別の販売数量構成比では、牛、豚、鶏で各30%超とバランスが良く、ある畜種で伝染病(例えば、鳥インフルエンザ)が発生した場合も、他の畜種である程度カバーできるといったメリットがある。配合飼料の製造は典型的な装置産業であり、大規模な設備によるスケールメリットが効き易く、生産性の高い施設が有利となる。同社の製造設備には築50年〜60年超の老朽化した工場もあるが、2020年に竣工した最新鋭の北九州畜産工場などもある。販売数量が相対的に多い同社は、より低コストでの生産ができるという優位性がある。
(c) 製品開発・研究開発
【強み3:特許技術を搭載した製品ラインナップ】
同社は研究所を3拠点有し研究開発体制が整っており、差別性の高い製品をリリースしてきた歴史がある。搾乳のDX化に合わせた搾乳ロボット専用飼料である「ファイブギアドロップ」や品種改良が進んだ豚の課題に対応した「ノリノリポーク」など市場の変化に応じた製品を上市しており多くの特許も取得している。10年以上前から暑熱対策飼料にも力を入れており、昨今の酷暑下において顧客のニーズに一層マッチすることで販売数量を伸ばしている。
(d) 営業・価格
【強み4:全国に販売拠点を配置し顧客ニーズをきめ細かく把握できる体制を整備】
【強み5:牛のゲノム解析や生乳分析による最新技術を活用した顧客サービス】
同社製品のユーザーは、養鶏や養豚、養牛を営む農家である。営業活動は、特約店のスタッフが行う場合もあるが、基本的には各支店の同社スタッフが行う。同社が得意とするのは提案営業・コンサルティング営業であり、畜種ごとに専門性を持ったスタッフが顧客のニーズに合致した製品を提案できる体制が整っている。研究所との連携も密で、研究所の技術スタッフが同行することも多いという。牛のゲノム解析や生乳分析による最新技術を活用した配合飼料コンサルティングは手厚い顧客サービスの典型事例である。販売価格に関しては、畜産飼料業界では四半期ごとに価格改定が行われ、原料価格の変動が販売価格に反映されることになる。
【畜産飼料の価格改定】
畜産飼料の販売価格の改定は、主原料であるとうもろこしの相場、海上運賃、外国為替等の動向を反映して四半期ごとに行われる。JA全農が先行して価格改定を発表し、同社を含む配合飼料メーカーも改定を行う。改定額は、畜種別・銘柄別に異なる。業界として四半期ごとの価格改定を行い、顧客の理解が得られる仕組みとなっていることは、配合飼料メーカーとして、急激な環境変化がない限り利益を確保しやすい基盤となっていると言える。一方、プライスリーダーであるJA全農の改定を見据えながらも、原料価格動向に則した価格改定が利益確保のカギであるため、重要な意思決定となる。ちなみに、水産飼料業界では、価格改定は各社不定期であり、販売価格の改定にはタイムラグが発生するケースがある。同社の畜産飼料販売価格は、2025年3月期第3四半期に前四半期比4,473円/トン値下げ(JA全農は約4,850円/トン値下げ)、2025年3月期第4四半期は同2,356円/トン値上げ(JA全農は約2,750円/トン値上げ)と値下げと値上げを繰り返しながら、通年では前期比6.4%低下(4,067円/トン低下)となった。
【配合飼料価格安定制度】
畜産飼料においては、輸入原料価格の高騰による畜産経営への急激な影響を緩和するため、「配合飼料価格安定制度」が設けられている。この制度は、畜産経営者と配合飼料メーカーの積立による「通常補てん」と通常補てんでは賄いきれない異常な価格高騰時に補完する「異常補てん」(国と配合飼料メーカーが積立)の2段階の仕組みにより、畜産経営者に対して補てんを実施するものである。いずれも四半期ごとの原料価格が過去1年間の平均輸入価格を一定幅で上回った場合に発動し、補てん金が支払われる。配合飼料メーカー負担の積立金は税務上、販管費として計上が認められており、その増減が同社業績に影響を及ぼす。配合飼料メーカー負担の積立金単価は1,821円/トン(2025年3月期下期、前年同期は1,422円)と上昇しており、加えて製造数量も増加していることから積立金負担が増える傾向にある。2025年3月期の同制度積立金は、前期比1,528百万円増の6,637百万円となった。同期間の営業利益(6,343百万円)に匹敵する金額であり、そのインパクトの大きさがわかる。なお、積立金単価は、積立金残高の積み上がり状況等を勘案して年度毎に決定される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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