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アイカ工 Research Memo(2):化成品と建装建材の2本柱。建装建材が営業利益の約7割を占める(1)
配信日時:2025/07/14 15:02
配信元:FISCO
*15:02JST アイカ工 Research Memo(2):化成品と建装建材の2本柱。建装建材が営業利益の約7割を占める(1)
■アイカ工業<4206>の事業概要
1. 事業ポートフォリオ概況
同社事業は化成品セグメントと建装建材セグメントの2本柱で構成される。2025年3月期の売上高について、化成品が55.7%、建装建材44.3%となり、化成品セグメントが過半を占める。一方、営業利益においては化成品セグメント29.3%に対し、建装建材セグメントが70.7%を稼ぐ高収益構造が特徴となっている。
地域別には、2025年3月期に海外売上高比率が48.0%とほぼ半分を占める。化成品セグメントは、中国、タイ、インドネシア、ベトナム、台湾、マレーシア、ニュージーランドなど、建装建材セグメントでは中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナム、シンガポール、台湾と広範な地域で事業展開している。同社事業ポートフォリオは、グローバルな景況感や不動産・建築市況に影響を受けるものの、両セグメントが広範な地域に事業・顧客が分散されていることで、経営上のボラティリティを和らげている。
また、同社は中期経営計画において、連結売上高3,000億円、海外売上比率50%以上を掲げるが、化成品セグメント・建装建材セグメント双方において地域多角化と高付加価値化を進めることで、事業の安定性を図りながらも、収益力の強化を進めている。
2. 化成品セグメント
(1) 国内
主力商品である接着剤においては、建築施工用から工業用まで豊富なラインナップの接着剤を擁し、建物・家具・自動車・電子製品など多種多様な産業用途や使用環境に対応している。また、研磨布紙(サンドペーパー)や自動車ブレーキの摩擦材、鋳物用型材、断熱材、耐火材、塗料などの原料となるフェノール樹脂などが幅広い工業製品の素材として使用されている。
次に、建設樹脂においては、塗り壁材・塗り床材・補修補強材などの製品が該当する。代表的な製品である1975年発売の塗り壁材「ジョリパット」は発売以来、色柄デザインの改良や耐候性・低汚染性・防カビといった機能向上が重ねられ、職人の手仕事による豊かな表現を可能とする内外装材として、市場ニーズに応じて進化を続けている。また、塗り床材については、近年半導体・EV関連工場や物流倉庫の建設プロジェクトが各地で進むなか、需要が拡大している。塗り床材は、コンクリート床を保護し、耐熱・耐薬品・帯電防止など用途に応じた機能を付加できる製品であるが、足元の旺盛な需要を獲得すべく、豊富な製品群を顧客に提供している。
最後に、機能材料分野が非建設分野として注力領域となっている。有機微粒子においては、化粧品用途でファンデーションの伸展性を良くする機能などを持つ「ガンツパール」が高い市場シェアを誇っており、同分野においてブランド力を保持している。UV硬化型樹脂は紫外線で硬化し、タッチパネルや携帯電話・デジタルカメラ向けのハードコーティング剤として用いられている。さらに足元では、自動車内外装向けの3次元加飾フィルムに対する期待感が大きい。自動車製造で排出されるCO2の約25%が塗装工程に起因するとされているが、塗装の代替手段として同製品に注目が集まっている。内装向け製品では既に採用が拡大しているなか、今後は外装向け製品において、業界に先駆けて早期実用化するべく取り組みを進めている。
近年の業況としては、低採算品の見直しなど収益性の改善を着実に進めている。具体的には、祖業である国内接着剤製品が競合製品の多さや原材料価格高騰のため利益率が低下していたことから、採算性の低い品目の統廃合や適正な売価設定を断行している。その結果、取引減から同事業の売上高は部分的には減少したものの、採算性が大幅に向上し、営業利益率は改善している。このように収益性を維持しつつ、成長が見込める産業分野(半導体工場・データセンター等)や3次元加飾フィルムなどの機能材料分野での拡販により、収益規模においても事業拡大を目指している。
同事業の強みとしては、長年培った接着剤開発のノウハウと信頼性の高い品質が挙げられる。国内におけるトップクラスのシェア及び実績に対する顧客信頼は厚い。加えて、多種多様な製品群で顧客ニーズにきめ細かく対応できる柔軟性も特長と言える。また、自社で化学原料から製品設計まで手掛ける総合力により、環境規制への先行対応や独創的な商品開発が可能であり、競合他社との差別化につながっている。
(2) 海外
近年のM&Aを通じた事業拡大の結果、海外が化成品セグメントの売上高において大半を占めており、2025年3月期においてはセグメント売上高の71.8%を占めている。また、主要子会社であるアイカ・アジア・パシフィックグループ(AAPグループ)の売上高は海外売上高のうち75.1%となっており、海外ビジネスにおいて中核的存在になっている。
AAPグループについては、2012年にダイネア社(フィンランド)のアジア太平洋部門子会社の株式取得を契機に会社設立している。その後も、M&Aによる地域拡大を順調に進めており、現在では、中国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、シンガポールなどで事業を営んでいる。海外における化成品事業は、現地ニーズに即した接着剤・樹脂製品を地産地消で開発し、提供していることが特徴である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 三浦 健太郎)
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1. 事業ポートフォリオ概況
同社事業は化成品セグメントと建装建材セグメントの2本柱で構成される。2025年3月期の売上高について、化成品が55.7%、建装建材44.3%となり、化成品セグメントが過半を占める。一方、営業利益においては化成品セグメント29.3%に対し、建装建材セグメントが70.7%を稼ぐ高収益構造が特徴となっている。
地域別には、2025年3月期に海外売上高比率が48.0%とほぼ半分を占める。化成品セグメントは、中国、タイ、インドネシア、ベトナム、台湾、マレーシア、ニュージーランドなど、建装建材セグメントでは中国、インド、タイ、インドネシア、ベトナム、シンガポール、台湾と広範な地域で事業展開している。同社事業ポートフォリオは、グローバルな景況感や不動産・建築市況に影響を受けるものの、両セグメントが広範な地域に事業・顧客が分散されていることで、経営上のボラティリティを和らげている。
また、同社は中期経営計画において、連結売上高3,000億円、海外売上比率50%以上を掲げるが、化成品セグメント・建装建材セグメント双方において地域多角化と高付加価値化を進めることで、事業の安定性を図りながらも、収益力の強化を進めている。
2. 化成品セグメント
(1) 国内
主力商品である接着剤においては、建築施工用から工業用まで豊富なラインナップの接着剤を擁し、建物・家具・自動車・電子製品など多種多様な産業用途や使用環境に対応している。また、研磨布紙(サンドペーパー)や自動車ブレーキの摩擦材、鋳物用型材、断熱材、耐火材、塗料などの原料となるフェノール樹脂などが幅広い工業製品の素材として使用されている。
次に、建設樹脂においては、塗り壁材・塗り床材・補修補強材などの製品が該当する。代表的な製品である1975年発売の塗り壁材「ジョリパット」は発売以来、色柄デザインの改良や耐候性・低汚染性・防カビといった機能向上が重ねられ、職人の手仕事による豊かな表現を可能とする内外装材として、市場ニーズに応じて進化を続けている。また、塗り床材については、近年半導体・EV関連工場や物流倉庫の建設プロジェクトが各地で進むなか、需要が拡大している。塗り床材は、コンクリート床を保護し、耐熱・耐薬品・帯電防止など用途に応じた機能を付加できる製品であるが、足元の旺盛な需要を獲得すべく、豊富な製品群を顧客に提供している。
最後に、機能材料分野が非建設分野として注力領域となっている。有機微粒子においては、化粧品用途でファンデーションの伸展性を良くする機能などを持つ「ガンツパール」が高い市場シェアを誇っており、同分野においてブランド力を保持している。UV硬化型樹脂は紫外線で硬化し、タッチパネルや携帯電話・デジタルカメラ向けのハードコーティング剤として用いられている。さらに足元では、自動車内外装向けの3次元加飾フィルムに対する期待感が大きい。自動車製造で排出されるCO2の約25%が塗装工程に起因するとされているが、塗装の代替手段として同製品に注目が集まっている。内装向け製品では既に採用が拡大しているなか、今後は外装向け製品において、業界に先駆けて早期実用化するべく取り組みを進めている。
近年の業況としては、低採算品の見直しなど収益性の改善を着実に進めている。具体的には、祖業である国内接着剤製品が競合製品の多さや原材料価格高騰のため利益率が低下していたことから、採算性の低い品目の統廃合や適正な売価設定を断行している。その結果、取引減から同事業の売上高は部分的には減少したものの、採算性が大幅に向上し、営業利益率は改善している。このように収益性を維持しつつ、成長が見込める産業分野(半導体工場・データセンター等)や3次元加飾フィルムなどの機能材料分野での拡販により、収益規模においても事業拡大を目指している。
同事業の強みとしては、長年培った接着剤開発のノウハウと信頼性の高い品質が挙げられる。国内におけるトップクラスのシェア及び実績に対する顧客信頼は厚い。加えて、多種多様な製品群で顧客ニーズにきめ細かく対応できる柔軟性も特長と言える。また、自社で化学原料から製品設計まで手掛ける総合力により、環境規制への先行対応や独創的な商品開発が可能であり、競合他社との差別化につながっている。
(2) 海外
近年のM&Aを通じた事業拡大の結果、海外が化成品セグメントの売上高において大半を占めており、2025年3月期においてはセグメント売上高の71.8%を占めている。また、主要子会社であるアイカ・アジア・パシフィックグループ(AAPグループ)の売上高は海外売上高のうち75.1%となっており、海外ビジネスにおいて中核的存在になっている。
AAPグループについては、2012年にダイネア社(フィンランド)のアジア太平洋部門子会社の株式取得を契機に会社設立している。その後も、M&Aによる地域拡大を順調に進めており、現在では、中国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、シンガポールなどで事業を営んでいる。海外における化成品事業は、現地ニーズに即した接着剤・樹脂製品を地産地消で開発し、提供していることが特徴である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 三浦 健太郎)
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