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飯野海運 Research Memo(8):中期経営計画の進捗は順調
配信日時:2025/07/14 11:08
配信元:FISCO
*11:08JST 飯野海運 Research Memo(8):中期経営計画の進捗は順調
■飯野海運<9119>の成長戦略・サステナビリティ経営
1. 中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」の進捗状況
同社は長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、2023年5月に策定した中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」(2024年3月期〜2026年3月期)において、「ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦」をテーマに掲げた。重視する財務数値目標は、2024年3月期に経常利益111億円、EBITDA(営業利益+減価償却費+主たる事業投資に係る受取配当金及び持分法投資損益)255億円、ROE9%、ROIC4.5%など、2025年3月期に経常利益115〜125億円、EBITDA270〜280億円、ROE9〜10%、ROIC4~5%など、2026年3月期に経常利益130〜140億円、EBITDA280〜290億円、ROE9〜10%、ROIC4〜5%などを掲げた。これに対して中期経営計画1期目の2024年3月期は経常利益218億円、EBITDA333億円、ROE16.3%、ROIC8.6%など、2期目の2025年3月期は経常利益174億円、EBITDA325億円、ROE13.2%、ROIC7.5%など、2期連続ですべての項目が計画値を達成または上回る着地となった。最終年度の2026年3月期は世界経済の不透明感や円高影響などを考慮して減収減益予想としているが、中期経営計画の進捗はおおむね順調と言えるだろう。
安定収益源を積み上げ
2. 安定収益源を積み上げるための重点戦略
同社の事業は市況変動の影響が避けられないものの、市況変動リスクを軽減するため安定収益源の積み上げを推進し、盤石な事業基盤の構築を目指している。重点戦略としては、「経済的価値の創造」として事業ポートフォリオ経営(成長事業への経営資源配分、グローバル事業の拡張、環境配慮への取り組みと投資推進)、「社会的価値の創造」としてマテリアリティの克服(脱炭素社会の実現に向けた計画策定と実行、人的資本の強化、人権尊重への対応)を推進している。
事業ポートフォリオ経営の成長事業への経営資源配分では、脱炭素化の加速で成長が見込まれる外航ガス船事業の強化・拡充、競争力向上やシナジー創出につながる戦略投資の実行を推進する。これにより、現在は成長事業領域に位置付けている外航ガス船を主力事業にシフトさせてケミカルタンカーやドライバルク船に並ぶ柱とする方針だ。また主力事業のケミカルタンカーは強みを持つステンレス船隊による差別化営業の強化やインフレ・環境対応追加コストを適切に反映したCOAの更改など、ドライバルク船は中長期契約獲得や独自性・差別化強化など、安定・成熟事業領域の油槽船は既存船の環境負荷軽減への対応とサービス強化など、内海・近海ガス船はアンモニア輸送やLNGバンカリング等の新たな需要への対応など、不動産業は築古ビルのバリューアップや海外不動産への戦略的な取り組みなどを推進する。
グローバル事業の拡張では、各事業の既存ネットワークを生かした横断的な営業展開、成長の見込めるエリア(特にアジア~中東~欧州)での事業拡張を推進する。環境配慮への取り組みと投資推進ではサステナブルな貨物輸送への対応を継続し、環境負荷軽減に資する船舶や不動産への投資を推進するとともに、その管理ノウハウを蓄積する。また戦略投資では、本業の競争優位性を向上させるため、事業間シナジーが見込める未参入の船種や不動産物件のほか、再生可能エネルギー関連事業やスタートアップへの投資などにも取り組む方針である。なおスタートアップへの投資では2023年6月に海外2社の海事ベンチャーキャピタル(VC)に出資した。再生可能エネルギー関連では2024年12月に石油資源開発<1662>(以下、JAPEX)と太陽光発電所の共同事業に関する基本合意書を締結し、2025年4月に第1号案件として秋田申川太陽光発電所(秋田県男鹿市)の建設を決定した。JAPEXの開発支援を受けて同社100%出資の合同会社が保有し、2025年12月の運転開始を予定している。
なおキャッシュ・アロケーション(2025年5月時点の最新見通し)としては、3年間合計で前中期経営計画比2倍超となる1,000億円の投資(うち環境関連投資に600億円)と追加投資枠105億円、及び株主還元185億円を計画しており、投資の内訳は成長・新規事業(外航ガス船、戦略投資)に500億円、主力事業(ケミカルタンカー、ドライバルク船)に200億円、安定・成熟事業(油槽船、内航・近海ガス船、不動産業)に300億円としている。そして2025年1月末時点で意思決定済みの投資進捗率は85%程度とおおむね順調である。投資進捗率の内訳は成長・新規事業が81%(新型アンモニア運搬船「GAS INNOVATOR」やLPG二元燃料主機関搭載「OCEANUS AURORA」など)、主力事業が78%(2026年3月期竣工予定のケミカルタンカー2隻、石炭専用船「YODOHIME」ローターセイル設置など)、安定・成熟事業が98%(米国テキサス州ダラス近郊木造オフィスビル、英国ロンドン2棟目オフィスビル111 STRANDなど)となっている。船台の状況、船価の高騰、次世代燃料エンジン選択などの不透明感があるため、特に主力事業について慎重な投資判断が求められる状況だが、残り1年でさらなる投資の上積みを図る方針だ。
マテリアリティの克服については、2050年までにカーボンニュートラル(CN)を達成するためのロードマップを策定し、脱炭素への取り組みを一段と強化する方針としている。海運業においては、ゼロエミッション燃料(水素、アンモニア)を含めた次世代燃料への本格転換を推進するほか、風力を含む推進性向上・燃費改善設備及びシステムの搭載、バイオ燃料の安定的確保と段階的導入、船上CO2回収・貯留の導入、AIを活用した運航効率改善などにも取り組む。2030年までの次世代燃料船への投資額は、自主運航船(主に中小型のケミカルタンカー・ドライバルク船・内航ガス船)ベースで650億円、定期貸船(主に大型の油槽船・外航ガス船)ベースで1,500億円の計画である。不動産業においては、再生可能エネルギー利用の拡大、築古ビルの改修や高効率機器への更新、非化石証書付電力の調達拡大、次世代オフィスビルの知見獲得・保有などにより、脱炭素化を推進するとともに、競争力強化にもつなげる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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1. 中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」の進捗状況
同社は長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、2023年5月に策定した中期経営計画「The Adventure to Our Sustainable Future」(2024年3月期〜2026年3月期)において、「ポートフォリオ経営とカーボンニュートラルへの挑戦」をテーマに掲げた。重視する財務数値目標は、2024年3月期に経常利益111億円、EBITDA(営業利益+減価償却費+主たる事業投資に係る受取配当金及び持分法投資損益)255億円、ROE9%、ROIC4.5%など、2025年3月期に経常利益115〜125億円、EBITDA270〜280億円、ROE9〜10%、ROIC4~5%など、2026年3月期に経常利益130〜140億円、EBITDA280〜290億円、ROE9〜10%、ROIC4〜5%などを掲げた。これに対して中期経営計画1期目の2024年3月期は経常利益218億円、EBITDA333億円、ROE16.3%、ROIC8.6%など、2期目の2025年3月期は経常利益174億円、EBITDA325億円、ROE13.2%、ROIC7.5%など、2期連続ですべての項目が計画値を達成または上回る着地となった。最終年度の2026年3月期は世界経済の不透明感や円高影響などを考慮して減収減益予想としているが、中期経営計画の進捗はおおむね順調と言えるだろう。
安定収益源を積み上げ
2. 安定収益源を積み上げるための重点戦略
同社の事業は市況変動の影響が避けられないものの、市況変動リスクを軽減するため安定収益源の積み上げを推進し、盤石な事業基盤の構築を目指している。重点戦略としては、「経済的価値の創造」として事業ポートフォリオ経営(成長事業への経営資源配分、グローバル事業の拡張、環境配慮への取り組みと投資推進)、「社会的価値の創造」としてマテリアリティの克服(脱炭素社会の実現に向けた計画策定と実行、人的資本の強化、人権尊重への対応)を推進している。
事業ポートフォリオ経営の成長事業への経営資源配分では、脱炭素化の加速で成長が見込まれる外航ガス船事業の強化・拡充、競争力向上やシナジー創出につながる戦略投資の実行を推進する。これにより、現在は成長事業領域に位置付けている外航ガス船を主力事業にシフトさせてケミカルタンカーやドライバルク船に並ぶ柱とする方針だ。また主力事業のケミカルタンカーは強みを持つステンレス船隊による差別化営業の強化やインフレ・環境対応追加コストを適切に反映したCOAの更改など、ドライバルク船は中長期契約獲得や独自性・差別化強化など、安定・成熟事業領域の油槽船は既存船の環境負荷軽減への対応とサービス強化など、内海・近海ガス船はアンモニア輸送やLNGバンカリング等の新たな需要への対応など、不動産業は築古ビルのバリューアップや海外不動産への戦略的な取り組みなどを推進する。
グローバル事業の拡張では、各事業の既存ネットワークを生かした横断的な営業展開、成長の見込めるエリア(特にアジア~中東~欧州)での事業拡張を推進する。環境配慮への取り組みと投資推進ではサステナブルな貨物輸送への対応を継続し、環境負荷軽減に資する船舶や不動産への投資を推進するとともに、その管理ノウハウを蓄積する。また戦略投資では、本業の競争優位性を向上させるため、事業間シナジーが見込める未参入の船種や不動産物件のほか、再生可能エネルギー関連事業やスタートアップへの投資などにも取り組む方針である。なおスタートアップへの投資では2023年6月に海外2社の海事ベンチャーキャピタル(VC)に出資した。再生可能エネルギー関連では2024年12月に石油資源開発<1662>(以下、JAPEX)と太陽光発電所の共同事業に関する基本合意書を締結し、2025年4月に第1号案件として秋田申川太陽光発電所(秋田県男鹿市)の建設を決定した。JAPEXの開発支援を受けて同社100%出資の合同会社が保有し、2025年12月の運転開始を予定している。
なおキャッシュ・アロケーション(2025年5月時点の最新見通し)としては、3年間合計で前中期経営計画比2倍超となる1,000億円の投資(うち環境関連投資に600億円)と追加投資枠105億円、及び株主還元185億円を計画しており、投資の内訳は成長・新規事業(外航ガス船、戦略投資)に500億円、主力事業(ケミカルタンカー、ドライバルク船)に200億円、安定・成熟事業(油槽船、内航・近海ガス船、不動産業)に300億円としている。そして2025年1月末時点で意思決定済みの投資進捗率は85%程度とおおむね順調である。投資進捗率の内訳は成長・新規事業が81%(新型アンモニア運搬船「GAS INNOVATOR」やLPG二元燃料主機関搭載「OCEANUS AURORA」など)、主力事業が78%(2026年3月期竣工予定のケミカルタンカー2隻、石炭専用船「YODOHIME」ローターセイル設置など)、安定・成熟事業が98%(米国テキサス州ダラス近郊木造オフィスビル、英国ロンドン2棟目オフィスビル111 STRANDなど)となっている。船台の状況、船価の高騰、次世代燃料エンジン選択などの不透明感があるため、特に主力事業について慎重な投資判断が求められる状況だが、残り1年でさらなる投資の上積みを図る方針だ。
マテリアリティの克服については、2050年までにカーボンニュートラル(CN)を達成するためのロードマップを策定し、脱炭素への取り組みを一段と強化する方針としている。海運業においては、ゼロエミッション燃料(水素、アンモニア)を含めた次世代燃料への本格転換を推進するほか、風力を含む推進性向上・燃費改善設備及びシステムの搭載、バイオ燃料の安定的確保と段階的導入、船上CO2回収・貯留の導入、AIを活用した運航効率改善などにも取り組む。2030年までの次世代燃料船への投資額は、自主運航船(主に中小型のケミカルタンカー・ドライバルク船・内航ガス船)ベースで650億円、定期貸船(主に大型の油槽船・外航ガス船)ベースで1,500億円の計画である。不動産業においては、再生可能エネルギー利用の拡大、築古ビルの改修や高効率機器への更新、非化石証書付電力の調達拡大、次世代オフィスビルの知見獲得・保有などにより、脱炭素化を推進するとともに、競争力強化にもつなげる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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