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昭和産業 Research Memo(8):グループ連携と海外事業の強化で高収益体質を目指す
配信日時:2025/07/04 13:08
配信元:FISCO
*13:08JST 昭和産業 Research Memo(8):グループ連携と海外事業の強化で高収益体質を目指す
■中期経営計画23-25
1. 「中期経営計画23-25」の概要
昭和産業<2004>は創立90周年を迎える2026年3月期のありたい姿として、長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」(2018年3月期~2026年3月期の9年間)を策定しており、2023年2月に3rd Stage「中期経営計画23-25」を公表した。「中期経営計画20-22」において目標としていた経常利益130億円は、コロナ禍等の事業環境悪化を受けて未達となったため、2026年3月期に再設定した。基本戦略として、1) 基盤事業の強化、2) 事業領域の拡大、3) 環境負荷の低減、4) プラットフォームの再構築、5) ステークホルダーエンゲージメントの強化、の5つを掲げ、営業組織改編による販売力の強化、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化、高付加価値商品の拡販、海外事業の拡大、適正な価格改定などにより利益を創出する計画だ。
定量目標では、基盤事業の強化で27億円、事業領域の拡大で8億円、事業環境の回復・環境変化への対応で30億円を創出し、2026年3月期に経常利益130億円を達成する。他の指標としてROE7.0%以上、NET D/Eレシオ0.6倍以下、ROIC4.0%以上、CCC75日を掲げている。非財務KPIでは、CO2排出量削減や食品ロスの削減などの環境目標、デジタル戦略、人的資本経営、事業規模の拡大や生産改善活動によるコスト削減等のRD&E戦略で目標値を設定している。
2. 進捗状況
(1) 基盤事業の強化
2025年3月期実績として、2023年3月期比27億円増の目標に対し29億円を創出した。内訳は、穀物ソリューションの進化で4億円増、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化で9億円増、商品構成の最適化で3億円増、差別化戦略による付加価値商品の拡販で12億円増となっている。グループ連携による事業規模拡大と収益力強化、並びに差別化戦略による付加価値商品の拡販が大きく寄与した。前者はグループ全体での生産拠点最適化による生産性向上・原価低減が奏功したと考えられる。製粉カテゴリでの需要を捉えた海外向け小麦粉の伸長や、製油カテゴリでの高付加価値ソリューションの収益化、糖質カテゴリでの機能性表示食品の新領域への参入による効果が寄与したと考えられる。なお、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化について、前期の成果と比較し約半減しているが、2025年3月期売上高減少の影響を受け数値が縮小したことが要因で、取り組み内容及び進捗ペースに大きな違いはない。2026年3月期もマーケットインの営業体制で様々なカテゴリの商品を顧客ニーズに合わせてワンストップで提供するとともに、新たな潜在需要を発掘する。また、穀物ソリューションのさらなる進化を目指して差別化を図るべく、引き続きRD&Eセンターを含めグループ一丸となって事業改革を進める。
(2) 事業領域の拡大
2025年3月期実績として、2023年3月期比8億円増の目標に対して4億円を創出した。アジアを中心に輸出が増加して海外事業が拡大した効果が現れた。同社は2024年4月に子会社(Showa Sangyo International Vietnam)を設立し、新工場を建設している。2026年3月期も海外事業の拡大を目指し海外顧客との接点を創出・確保するとともに、M&Aや海外企業との資本提携も視野に入れている。なお、冷凍食品市場では強力な競合先が多く、輸入冷凍食品の隆盛もあり、この2年間冷凍食品事業の進捗は芳しくない。この部分については課題と捉え、次期中期経営計画で施策を検討するようだ。
(3) 事業環境の回復・環境変化への対応
2025年3月期実績として、2023年3月期比30億円増の目標に対して34億円を創出した。内訳は販売数量の回復で5億円増、適正な価格改定で29億円増である。引き続き原価に見合う適正価格での販売や販管費削減のほか、フォローやリカバリー施策として付加価値や機能性を追求した新商品開発で差別化を図る等、グループ連携を活かし、全体最適で対応する。
3. 新領域への挑戦:オープンイノベーションと海外展開
(1) ファインケミカルとオレオケミカル
2024年9月に資本業務提携したスタートアップ企業のファイトケミカルプロダクツ(株)と協業し、オレオケミカルとファインケミカル領域へ参入する。ファイトケミカルプロダクツが開発した反応分離技術では、イオン交換樹脂を用いて高純度の有効成分を高効率かつ複数同時に生成することができ、同社グループから発生する副産物を掛け合わせることで、穀物ソリューションを進化させる。ファインケミカルに関しては、まずはファイトケミカルプロダクツが建設中の新プラントで量産化技術を確立し、その後に量産化工場を別途立ち上げる計画である。現在量産化技術の確立に向けた工場を建設中で2026年3月期中の稼働を目指している。ファイトケミカルプロダクツは2020年からこめ油の製造過程で発生する副産物からスーパービタミンE等の機能性素材を製造する工場を稼働させており、既に製造・販売している。また、反応分離技術のライセンス・エンジニアリング事業ではバイオ燃料や化粧品原料等への応用拡大を進めており、オープンイノベ―ションによる同社事業の拡大が予想される。オレオケミカルについては、子会社のボーソー油脂がファイトケミカルプロダクツと連携し、千葉県匝瑳市の脱炭素化推進プロジェクトに参画しており、同社のこめ油製造工程から発生する脂肪酸から、バイオ燃料や植物性の潤滑油の開発を検討している。ほかにも洗剤や化粧品等様々な用途への展開を研究しており、技術による新市場創造に注目したい。
(2) アセアン市場
2024年4月に設立したShowa Sangyo International Vietnamを起点に、2026年3月期に新たな工場を稼働する計画である。新工場は、天ぷら粉やホットケーキミックスをはじめとした小麦粉の付加価値商品となるプレミックス等を製造する工場である。ターゲットはベトナムの有力地場産業の水産や畜産の加工工場で、業務用プレミックスを中心に販売する。アセアン全体の市場規模は莫大なこともあり、ベトナム以外も対象マーケットとして捉え、輸出を念頭に製造する商品構成を計画する考えである。社会主義国家のベトナムへの進出はこれまでも許認可等困難な状況が多く、それでも工場建設に至った経緯から、同社はベトナムひいてはアセアン諸国での需要を確実に見出しているようだ。緻密な現地調査で正確に最大需要にリーチし、競合他社に先駆けて収益獲得が期待される。
■株主還元策
配当性向30%程度を目安に、安定的な配当の継続を図る
経営基盤の充実と財務体質の強化を通じて成長投資を継続することで企業価値の向上を図るとともに、株主に対する安定的な配当を継続しながら株主への利益還元を積極的に実施している。配当性向30%を基準に、2025年3月期は、期初計画では1株当たり年80.0円(中間40.0円/期末40.0円)、配当性向24.3%を予定していたが、元来厚い利益剰余金に加え、第1四半期に実施した資金効率改善としての固定資産売却を背景に、第3四半期決算発表時に期末配当を20.0円増額し年間100.0円に引き上げ、配当性向は28.1%となった。2026年3月期は、1株当たり年100.0円、配当性向34.2%を計画しており、目安とする30.0%超で株主還元に応える。また、2024年5月には自己株式990,000株の取得(取得価額総額3,400百万円)並びに消却により、さらなる株主還元を実現した。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 「中期経営計画23-25」の概要
昭和産業<2004>は創立90周年を迎える2026年3月期のありたい姿として、長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」(2018年3月期~2026年3月期の9年間)を策定しており、2023年2月に3rd Stage「中期経営計画23-25」を公表した。「中期経営計画20-22」において目標としていた経常利益130億円は、コロナ禍等の事業環境悪化を受けて未達となったため、2026年3月期に再設定した。基本戦略として、1) 基盤事業の強化、2) 事業領域の拡大、3) 環境負荷の低減、4) プラットフォームの再構築、5) ステークホルダーエンゲージメントの強化、の5つを掲げ、営業組織改編による販売力の強化、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化、高付加価値商品の拡販、海外事業の拡大、適正な価格改定などにより利益を創出する計画だ。
定量目標では、基盤事業の強化で27億円、事業領域の拡大で8億円、事業環境の回復・環境変化への対応で30億円を創出し、2026年3月期に経常利益130億円を達成する。他の指標としてROE7.0%以上、NET D/Eレシオ0.6倍以下、ROIC4.0%以上、CCC75日を掲げている。非財務KPIでは、CO2排出量削減や食品ロスの削減などの環境目標、デジタル戦略、人的資本経営、事業規模の拡大や生産改善活動によるコスト削減等のRD&E戦略で目標値を設定している。
2. 進捗状況
(1) 基盤事業の強化
2025年3月期実績として、2023年3月期比27億円増の目標に対し29億円を創出した。内訳は、穀物ソリューションの進化で4億円増、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化で9億円増、商品構成の最適化で3億円増、差別化戦略による付加価値商品の拡販で12億円増となっている。グループ連携による事業規模拡大と収益力強化、並びに差別化戦略による付加価値商品の拡販が大きく寄与した。前者はグループ全体での生産拠点最適化による生産性向上・原価低減が奏功したと考えられる。製粉カテゴリでの需要を捉えた海外向け小麦粉の伸長や、製油カテゴリでの高付加価値ソリューションの収益化、糖質カテゴリでの機能性表示食品の新領域への参入による効果が寄与したと考えられる。なお、グループ連携による事業規模拡大と収益力強化について、前期の成果と比較し約半減しているが、2025年3月期売上高減少の影響を受け数値が縮小したことが要因で、取り組み内容及び進捗ペースに大きな違いはない。2026年3月期もマーケットインの営業体制で様々なカテゴリの商品を顧客ニーズに合わせてワンストップで提供するとともに、新たな潜在需要を発掘する。また、穀物ソリューションのさらなる進化を目指して差別化を図るべく、引き続きRD&Eセンターを含めグループ一丸となって事業改革を進める。
(2) 事業領域の拡大
2025年3月期実績として、2023年3月期比8億円増の目標に対して4億円を創出した。アジアを中心に輸出が増加して海外事業が拡大した効果が現れた。同社は2024年4月に子会社(Showa Sangyo International Vietnam)を設立し、新工場を建設している。2026年3月期も海外事業の拡大を目指し海外顧客との接点を創出・確保するとともに、M&Aや海外企業との資本提携も視野に入れている。なお、冷凍食品市場では強力な競合先が多く、輸入冷凍食品の隆盛もあり、この2年間冷凍食品事業の進捗は芳しくない。この部分については課題と捉え、次期中期経営計画で施策を検討するようだ。
(3) 事業環境の回復・環境変化への対応
2025年3月期実績として、2023年3月期比30億円増の目標に対して34億円を創出した。内訳は販売数量の回復で5億円増、適正な価格改定で29億円増である。引き続き原価に見合う適正価格での販売や販管費削減のほか、フォローやリカバリー施策として付加価値や機能性を追求した新商品開発で差別化を図る等、グループ連携を活かし、全体最適で対応する。
3. 新領域への挑戦:オープンイノベーションと海外展開
(1) ファインケミカルとオレオケミカル
2024年9月に資本業務提携したスタートアップ企業のファイトケミカルプロダクツ(株)と協業し、オレオケミカルとファインケミカル領域へ参入する。ファイトケミカルプロダクツが開発した反応分離技術では、イオン交換樹脂を用いて高純度の有効成分を高効率かつ複数同時に生成することができ、同社グループから発生する副産物を掛け合わせることで、穀物ソリューションを進化させる。ファインケミカルに関しては、まずはファイトケミカルプロダクツが建設中の新プラントで量産化技術を確立し、その後に量産化工場を別途立ち上げる計画である。現在量産化技術の確立に向けた工場を建設中で2026年3月期中の稼働を目指している。ファイトケミカルプロダクツは2020年からこめ油の製造過程で発生する副産物からスーパービタミンE等の機能性素材を製造する工場を稼働させており、既に製造・販売している。また、反応分離技術のライセンス・エンジニアリング事業ではバイオ燃料や化粧品原料等への応用拡大を進めており、オープンイノベ―ションによる同社事業の拡大が予想される。オレオケミカルについては、子会社のボーソー油脂がファイトケミカルプロダクツと連携し、千葉県匝瑳市の脱炭素化推進プロジェクトに参画しており、同社のこめ油製造工程から発生する脂肪酸から、バイオ燃料や植物性の潤滑油の開発を検討している。ほかにも洗剤や化粧品等様々な用途への展開を研究しており、技術による新市場創造に注目したい。
(2) アセアン市場
2024年4月に設立したShowa Sangyo International Vietnamを起点に、2026年3月期に新たな工場を稼働する計画である。新工場は、天ぷら粉やホットケーキミックスをはじめとした小麦粉の付加価値商品となるプレミックス等を製造する工場である。ターゲットはベトナムの有力地場産業の水産や畜産の加工工場で、業務用プレミックスを中心に販売する。アセアン全体の市場規模は莫大なこともあり、ベトナム以外も対象マーケットとして捉え、輸出を念頭に製造する商品構成を計画する考えである。社会主義国家のベトナムへの進出はこれまでも許認可等困難な状況が多く、それでも工場建設に至った経緯から、同社はベトナムひいてはアセアン諸国での需要を確実に見出しているようだ。緻密な現地調査で正確に最大需要にリーチし、競合他社に先駆けて収益獲得が期待される。
■株主還元策
配当性向30%程度を目安に、安定的な配当の継続を図る
経営基盤の充実と財務体質の強化を通じて成長投資を継続することで企業価値の向上を図るとともに、株主に対する安定的な配当を継続しながら株主への利益還元を積極的に実施している。配当性向30%を基準に、2025年3月期は、期初計画では1株当たり年80.0円(中間40.0円/期末40.0円)、配当性向24.3%を予定していたが、元来厚い利益剰余金に加え、第1四半期に実施した資金効率改善としての固定資産売却を背景に、第3四半期決算発表時に期末配当を20.0円増額し年間100.0円に引き上げ、配当性向は28.1%となった。2026年3月期は、1株当たり年100.0円、配当性向34.2%を計画しており、目安とする30.0%超で株主還元に応える。また、2024年5月には自己株式990,000株の取得(取得価額総額3,400百万円)並びに消却により、さらなる株主還元を実現した。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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