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昭和産業 Research Memo(4):2025年3月期は原料相場や輸送コストの影響で価格改定が難航(1)
配信日時:2025/07/04 13:04
配信元:FISCO
*13:04JST 昭和産業 Research Memo(4):2025年3月期は原料相場や輸送コストの影響で価格改定が難航(1)
■業績動向
1. 2025年3月期の業績
昭和産業<2004>の2025年3月期の連結業績は、売上高334,425百万円(前期比3.4%減)、営業利益11,126百万円(同15.4%減)、経常利益13,591百万円(同17.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益11,599百万円(同6.1%減)と減収減益となった。業績予想に対する達成率は、売上高96.7%、営業利益92.7%、経常利益104.5%、親会社株主に帰属する当期純利益105.4%となった。営業利益は厳しい状況だが、「中期経営計画23-25」の資金配分計画に基づいて不動産売却益を計上し、最終利益を計画どおり確保した。経営環境は、インフレによる物価高から国内の消費意欲は停滞する一方、人気の高い日本の食と文化を背景にインバウンド需要が拡大している。コストに関しては、地政学リスクからエネルギーや為替の変動は激しく、原料穀物相場については気候変動の影響もあり落ち着かない状況にある。同社は、穀物の需給状況のほか政府売渡価格や先物相場等を反映し、運賃や人件費等のコストも加味して適正価格を設定するが、2025年3月期は油脂製品の主原料となる菜種や大豆相場のボラティリティに左右され、適正価格の維持に難航し、収益に影響した。2025年4月から油脂製品の20%以上の価格引き上げを実施しており、2026年3月期にリカバリーを図る。一方、製粉カテゴリと糖質カテゴリについては、原価に対し適正価格で対応し、収益を支えた。同社は臨機応変な価格改定はもちろん、収益率の高い付加価値商品の販売比率を高める計画で、実際、製油カテゴリでは半流動性油脂の販売が足元で伸びている。
販売数量については、食品事業でマーケットイン志向のワンストップ型営業に注力した。このうち、製粉カテゴリでは小麦の政府売渡価格の2度の引き下げに伴い価格改定を行ったほか、海外向け小麦粉が伸長し、さらに米の代替需要等から外食向けと家庭用パスタが前期を上回った。製油カテゴリでは、機能的に価値のある商品の提案や課題解決型営業に取り組み、2024年3月から3度値上げしたものの、需要回復傾向にある業務用油脂と家庭用こめ油等の販売が前期を上回った。糖質カテゴリでは、独自性の高い低分解水あめや粉あめ等のほか、飲料用途に加え医薬用等にも利用されるぶどう糖、ビール用途等の需要増に対応するコーンスターチが増加し、前期を上回った。いずれのカテゴリも販売数量はおおむね好調に推移したが、主原料価下落に伴う販売価格低下の影響を受け、売上高は前期比減少し、計画値に対してもややネガティブな状況となった。飼料事業では、需要に即した高付加価値商材の提案や畜産物販売支援等、営業活動での顧客サポートに注力した。この結果、配合飼料や鶏卵販売数量は、2024年10月からの鳥インフルエンザ感染拡大の影響を受けたものの前期を上回った。ただ、鶏卵相場が軟調に推移したことから売上高は前期を下回った。その他については、主要事業の倉庫業で商社や主要顧客との取り組みを強化し、貨物取扱量が前期を上回った結果、売上高は前期比増加した。
利益面については、食品事業では、製粉カテゴリで生産拠点の一体運用を図り物流コスト低減や生産効率向上に注力し、製油カテゴリではグループで連携して生産拠点の効率的運用や原材料調達の効率化に取り組んだ。糖質カテゴリでもグループで連携し、課題解決や生産効率化等を進めた。グループ一体での原価低減策が奏功し、売上総利益額は前期比0.4%増と同水準を維持したものの、物流費や人件費等の増加を抑えきれず販管費は同5.1%増となった結果、営業利益以下は前期比減少となった。なお、販管費の多くを占める物流コストに関し、2023年2月より(株)明治と、鉄道コンテナを共同利用する物流のモーダルシフト※を開始している。最近では自社単独で鹿島工場から福岡向けの社内転送でもモーダルシフトを採用した。ほかにも神戸工場では製粉立体自動倉庫が2026年2月に完成予定で、構内作業の自動化により人件費の削減が見込まれる。これらの販管費等コスト縮小は利益率向上につながるだろう。
※ トラック等自動車による貨物輸送を、主に鉄道や船舶等の環境負荷が低い輸送手段に切り替えること。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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1. 2025年3月期の業績
昭和産業<2004>の2025年3月期の連結業績は、売上高334,425百万円(前期比3.4%減)、営業利益11,126百万円(同15.4%減)、経常利益13,591百万円(同17.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益11,599百万円(同6.1%減)と減収減益となった。業績予想に対する達成率は、売上高96.7%、営業利益92.7%、経常利益104.5%、親会社株主に帰属する当期純利益105.4%となった。営業利益は厳しい状況だが、「中期経営計画23-25」の資金配分計画に基づいて不動産売却益を計上し、最終利益を計画どおり確保した。経営環境は、インフレによる物価高から国内の消費意欲は停滞する一方、人気の高い日本の食と文化を背景にインバウンド需要が拡大している。コストに関しては、地政学リスクからエネルギーや為替の変動は激しく、原料穀物相場については気候変動の影響もあり落ち着かない状況にある。同社は、穀物の需給状況のほか政府売渡価格や先物相場等を反映し、運賃や人件費等のコストも加味して適正価格を設定するが、2025年3月期は油脂製品の主原料となる菜種や大豆相場のボラティリティに左右され、適正価格の維持に難航し、収益に影響した。2025年4月から油脂製品の20%以上の価格引き上げを実施しており、2026年3月期にリカバリーを図る。一方、製粉カテゴリと糖質カテゴリについては、原価に対し適正価格で対応し、収益を支えた。同社は臨機応変な価格改定はもちろん、収益率の高い付加価値商品の販売比率を高める計画で、実際、製油カテゴリでは半流動性油脂の販売が足元で伸びている。
販売数量については、食品事業でマーケットイン志向のワンストップ型営業に注力した。このうち、製粉カテゴリでは小麦の政府売渡価格の2度の引き下げに伴い価格改定を行ったほか、海外向け小麦粉が伸長し、さらに米の代替需要等から外食向けと家庭用パスタが前期を上回った。製油カテゴリでは、機能的に価値のある商品の提案や課題解決型営業に取り組み、2024年3月から3度値上げしたものの、需要回復傾向にある業務用油脂と家庭用こめ油等の販売が前期を上回った。糖質カテゴリでは、独自性の高い低分解水あめや粉あめ等のほか、飲料用途に加え医薬用等にも利用されるぶどう糖、ビール用途等の需要増に対応するコーンスターチが増加し、前期を上回った。いずれのカテゴリも販売数量はおおむね好調に推移したが、主原料価下落に伴う販売価格低下の影響を受け、売上高は前期比減少し、計画値に対してもややネガティブな状況となった。飼料事業では、需要に即した高付加価値商材の提案や畜産物販売支援等、営業活動での顧客サポートに注力した。この結果、配合飼料や鶏卵販売数量は、2024年10月からの鳥インフルエンザ感染拡大の影響を受けたものの前期を上回った。ただ、鶏卵相場が軟調に推移したことから売上高は前期を下回った。その他については、主要事業の倉庫業で商社や主要顧客との取り組みを強化し、貨物取扱量が前期を上回った結果、売上高は前期比増加した。
利益面については、食品事業では、製粉カテゴリで生産拠点の一体運用を図り物流コスト低減や生産効率向上に注力し、製油カテゴリではグループで連携して生産拠点の効率的運用や原材料調達の効率化に取り組んだ。糖質カテゴリでもグループで連携し、課題解決や生産効率化等を進めた。グループ一体での原価低減策が奏功し、売上総利益額は前期比0.4%増と同水準を維持したものの、物流費や人件費等の増加を抑えきれず販管費は同5.1%増となった結果、営業利益以下は前期比減少となった。なお、販管費の多くを占める物流コストに関し、2023年2月より(株)明治と、鉄道コンテナを共同利用する物流のモーダルシフト※を開始している。最近では自社単独で鹿島工場から福岡向けの社内転送でもモーダルシフトを採用した。ほかにも神戸工場では製粉立体自動倉庫が2026年2月に完成予定で、構内作業の自動化により人件費の削減が見込まれる。これらの販管費等コスト縮小は利益率向上につながるだろう。
※ トラック等自動車による貨物輸送を、主に鉄道や船舶等の環境負荷が低い輸送手段に切り替えること。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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