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中部鋼鈑 Research Memo(3):需要が伸び悩む中、電炉唯一の厚板専業メーカーのメリットを訴求
配信日時:2025/06/24 11:03
配信元:FISCO
*11:03JST 中部鋼鈑 Research Memo(3):需要が伸び悩む中、電炉唯一の厚板専業メーカーのメリットを訴求
■中部鋼鈑<5461>の事業環境
(一社)日本鉄鋼連盟が発表した2024年度の国内粗鋼生産量は、主要な販売先である自動車向けの鋼材が、同業界における認証不正問題により生産の回復が遅れたことや、中国からの安値の鋼材が市場に出回ったことで需要が低迷した等により、前年度比4.5%減の82,954千トンと、前年度に続き減少した。なお、6年連続で1億トンを下回って推移している。同社が製造する厚板の2024年(暦年)の生産量は前年比3.6%減の8,061千トンと、コロナ禍で落ち込んだ後は2年連続で増加するも、その後再び落ち込む状況が続いた。厚板は、造船、土木・建築、産業機械が主な需要先である。造船需要は2020年にコロナ禍で落ち込んだ以降低迷し、産業機械需要は輸出向けの在庫調整や国内での投資抑制の影響で鋼材消費が伸び悩んでいる。土木需要は一般公共工事や国土強靭化の予算は堅調も、人手不足の影響から工期の遅れが散見される。民間土木は再開発需要や設備投資意欲から増加傾向で、建築需要も非住宅分野である倉庫・物流施設やデータセンターに加え、首都圏を中心に大型開発案件が堅調に推移した。同社の厚板の用途別受注は、2023年度で産機・建機が61.0%、土木・建築が27.8%と合計で9割近くを占めており、需要が低下している造船の比率は0.1%と極めて低いため、電炉厚板専業メーカーである同社は堅調な販売を維持できていると言える。
一方、供給サイドでは、国内需要の頭打ちを懸念する鉄鋼大手が相次いで高炉の生産集約化や休止を打ち出している。粗鋼生産においても電炉の比率が高まることが予想される中、電炉厚板専業メーカーとして汎用品の厚板に強みを持つ同社のポジションは優位なものとなってきている。鉄鋼大手は供給能力を削減すると同時に、ユーザーに対して原料・エネルギーコストの価格への転嫁を求めており、需給面から価格上昇圧力が働いていると言う。このことも同社にとって追い風となるだろう。
2023年度の全国地域別厚板出荷は、関東地区が25%、関西地区が19%、中部地区が40%と、この3地区で85%を占めている。中部圏においては、愛知で開催されるアジア競技大会(2026年)、リニア事業(当初予定2027年)、名鉄名古屋駅地区再開発(2027年度新築着工)、名古屋栄地区再開発(2024年度から順次)、岐阜駅前再開発(2030年度完成予定)と工事イベントが目白押しである。中部圏に厚板工場を構えるのは同社しかないため、輸送コスト面からも受注に期待がかかる。
政府は、脱炭素化社会の実現に向けて、1) 2030年度に温室効果ガスを2013年度比46%削減、2) 2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げており、国内企業では脱炭素化が加速している。電気炉はCO2排出量が高炉に比べて少なく、主原料の鉄スクラップを自国でリサイクル資源として調達・活用できるため、電炉製品に対する関心が急速に高まっている。高炉の鉄鋼大手も電気炉への投資や参入を発表している。日本製鉄<5401>は、2022年から瀬戸内製鉄所広畑地区(姫路市)で電気炉の運転を開始しており、さらに九州製鉄所八幡地区における高炉プロセスから大型電炉プロセスへの転換、瀬戸内製鉄所広畑地区における電炉増設を計画している。JFEスチール(株)も革新電気炉の導入決定と、東日本製鉄所千葉地区でのステンレス製造の電気炉導入を公表した。こうした動きの中で、サプライチェーン上流・下流における温室効果ガス排出量の測定(Scope 3)の義務化や規制、炭素税の導入等の動きも注目されており、同社の製品に対する関心は一層高まると弊社では見ている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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(一社)日本鉄鋼連盟が発表した2024年度の国内粗鋼生産量は、主要な販売先である自動車向けの鋼材が、同業界における認証不正問題により生産の回復が遅れたことや、中国からの安値の鋼材が市場に出回ったことで需要が低迷した等により、前年度比4.5%減の82,954千トンと、前年度に続き減少した。なお、6年連続で1億トンを下回って推移している。同社が製造する厚板の2024年(暦年)の生産量は前年比3.6%減の8,061千トンと、コロナ禍で落ち込んだ後は2年連続で増加するも、その後再び落ち込む状況が続いた。厚板は、造船、土木・建築、産業機械が主な需要先である。造船需要は2020年にコロナ禍で落ち込んだ以降低迷し、産業機械需要は輸出向けの在庫調整や国内での投資抑制の影響で鋼材消費が伸び悩んでいる。土木需要は一般公共工事や国土強靭化の予算は堅調も、人手不足の影響から工期の遅れが散見される。民間土木は再開発需要や設備投資意欲から増加傾向で、建築需要も非住宅分野である倉庫・物流施設やデータセンターに加え、首都圏を中心に大型開発案件が堅調に推移した。同社の厚板の用途別受注は、2023年度で産機・建機が61.0%、土木・建築が27.8%と合計で9割近くを占めており、需要が低下している造船の比率は0.1%と極めて低いため、電炉厚板専業メーカーである同社は堅調な販売を維持できていると言える。
一方、供給サイドでは、国内需要の頭打ちを懸念する鉄鋼大手が相次いで高炉の生産集約化や休止を打ち出している。粗鋼生産においても電炉の比率が高まることが予想される中、電炉厚板専業メーカーとして汎用品の厚板に強みを持つ同社のポジションは優位なものとなってきている。鉄鋼大手は供給能力を削減すると同時に、ユーザーに対して原料・エネルギーコストの価格への転嫁を求めており、需給面から価格上昇圧力が働いていると言う。このことも同社にとって追い風となるだろう。
2023年度の全国地域別厚板出荷は、関東地区が25%、関西地区が19%、中部地区が40%と、この3地区で85%を占めている。中部圏においては、愛知で開催されるアジア競技大会(2026年)、リニア事業(当初予定2027年)、名鉄名古屋駅地区再開発(2027年度新築着工)、名古屋栄地区再開発(2024年度から順次)、岐阜駅前再開発(2030年度完成予定)と工事イベントが目白押しである。中部圏に厚板工場を構えるのは同社しかないため、輸送コスト面からも受注に期待がかかる。
政府は、脱炭素化社会の実現に向けて、1) 2030年度に温室効果ガスを2013年度比46%削減、2) 2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げており、国内企業では脱炭素化が加速している。電気炉はCO2排出量が高炉に比べて少なく、主原料の鉄スクラップを自国でリサイクル資源として調達・活用できるため、電炉製品に対する関心が急速に高まっている。高炉の鉄鋼大手も電気炉への投資や参入を発表している。日本製鉄<5401>は、2022年から瀬戸内製鉄所広畑地区(姫路市)で電気炉の運転を開始しており、さらに九州製鉄所八幡地区における高炉プロセスから大型電炉プロセスへの転換、瀬戸内製鉄所広畑地区における電炉増設を計画している。JFEスチール(株)も革新電気炉の導入決定と、東日本製鉄所千葉地区でのステンレス製造の電気炉導入を公表した。こうした動きの中で、サプライチェーン上流・下流における温室効果ガス排出量の測定(Scope 3)の義務化や規制、炭素税の導入等の動きも注目されており、同社の製品に対する関心は一層高まると弊社では見ている。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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