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東邦ガス Research Memo(1):新中期経営計画では戦略事業の成長等により連結経常利益300億円を目指す
配信日時:2025/06/16 12:01
配信元:FISCO
*12:01JST 東邦ガス Research Memo(1):新中期経営計画では戦略事業の成長等により連結経常利益300億円を目指す
■要約
1. 会社概要
東邦ガス<9533>は、愛知県、岐阜県、三重県を地盤に、都市ガスからLPG、電気、周辺事業を展開する総合エネルギープロバイダーである。基本理念は「東邦ガスは、グループ各社とともに、人々との信頼のきずなを大切にし、うるおいと感動のあるくらしの創造と魅力にあふれ、いきいきとした社会の実現に寄与します。」であり、地域社会への貢献を実践している。2022年に100周年を迎えた歴史ある企業であり、時代とともにエネルギーの原料転換(石炭→石油→天然ガス)を経験し、脱皮を繰り返してきた。現在進行中のグループビジョンや中期経営計画では、電気事業や海外事業、さらにはエネルギー事業の枠を超えた分野の成長も計画している。都市ガス事業においては、東京ガス<9531>、大阪ガス<9532>とともに業界トップ3社の1社であり、ものづくり産業が盛んな東海3県において、業務用の販売量が多いのが同社の特徴である。2025年3月期末時点、子会社32社及び関連会社40社、従業員数6,074名を擁し、都市ガス、LPG、電気のトータルで地域の顧客約308万件にエネルギーを提供している。
2. 事業概要
同社の事業セグメントは、ガス事業、LPG・その他エネルギー事業、電気事業、その他事業に分かれる。ガス事業では、主に愛知県、岐阜県、三重県、岡山県において、都市ガスの製造・販売、ガス器具の販売、ガスの託送供給、ガス供給のための配管工事など一連の業務を行っている。全社売上高の構成比で62.4%(2025年3月期通期)、セグメント利益で70.7%(同)を占め、全社の業績を支える存在である。LPG・その他エネルギー事業は、LPG販売、LPG機器販売などのほかに、LNG販売、熱供給事業等を行う。全社売上高の構成比で14.8%(同)、セグメント利益で8.9%(同)である。電気事業は、電気の販売を行う。全社売上高の構成比で14.0%(同)、セグメント利益で1.2%(同)と足元の収益は小さいが成長性が高い。その他事業は、不動産の管理・賃貸、プラント・設備の設計施工、CN×P事業(CN化支援事業)、情報処理サービスの提供、車両・設備機器等のリース、海外における天然ガス等に関する開発・投資等、多様な事業を行っている。全社売上高の構成比で8.9%(同)、セグメント利益で19.2%(同)と収益貢献度が高い。
3. 業績動向
2025年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比3.6%増の656,010百万円、営業利益が同8.1%減の30,887百万円、経常利益が同20.6%減の32,412百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.8%減の25,454百万円となり、増収減益となった。売上高に関しては、主力ガス事業で前期比2.4%増の429,299百万円と堅調に推移した。LPG・その他エネルギー事業の売上高は、同0.1%増の101,601百万円と前期並みだった。電気事業の売上高は、同8.4%増の96,018百万円と順調に増加した。その他事業の売上高は、空調設備工事の受注増などにより前期比12.4%増の61,112百万円と伸長した。利益に関しては、ガス事業でのスライドタイムラグ(原材料費と売上高の期ずれ差益)など原料関連の市況変動等の影響が前期比約8,500百万円減となったことが、営業減益の主な要因となった。一方で電気事業では、調達コストの低減などにより売上原価が前期比で約6,000百万円改善し、セグメント利益での黒字化を達成した。
2026年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比7.0%減の610,000百万円、営業利益が同22.3%減の24,000百万円、経常利益が同7.4%減の30,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.8%減の25,000百万円と、減収減益を予想する。
売上高に関しては、2026年3月期は原材料費の低下に伴う都市ガス販売価格の低下や、電気においては前年夏場の高気温ほどには気温が上がらない前提(2025年3月期17.7℃、2026年3月期17.1℃予想)で販売量の減少を計画したため、前期比マイナス460億円の減収を見込む。営業利益に関しては、ガス事業において、スライドタイムラグのプラスの影響(前期比で約8,000百万円増)、経費の減少(前期比で約3,000百万円)などプラス要因があるものの、原材料在庫の受払差(前期比で約2,000百万円減)、その他の原料関連の市況変動等のマイナスの影響が上回り、合計で前期比約7,500百万円の減益要因となる。経常利益に関しては、営業減益(前期比6,887百万円減)が前提となるものの、営業外収支が改善するため、前期比2,412百万円減、同7.4%減を見込む。前期同様に、政策保有株式の売却も進める方針のため、投資有価証券売却益(特別利益)の計上も期待できる。弊社では、同社の計画精度が高いこと、足元のエネルギー価格の動向が予想の範囲内で推移していることなどから、2026年3月期の業績予想は十分達成可能であると考えている。
4. 成長戦略
同社は、2025年3月に新しい中期経営計画を発表した。2026年3月期を初年度、2028年3月期を最終年度とする3ヶ年計画であり、2030年代半ばに目指すグループビジョン(2022年に公表)に向けた第二ステップ前半にあたる。グループビジョンでは、「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」として多様なエネルギーの提供者であることとともに、「エネルギーの枠を超えた、くらし・ビジネスのパートナー」とうたっており、課題解決型ビジネスの深耕と、他分野との連携による事業領域の拡大を目指す。基本戦略としては、経営資源配分の見直しを加速し、事業構造の変革を推進する。コア事業の収益力を強化しつつ、そこで得たキャッシュを戦略事業に積極投資し成長する計画である。新中期経営計画の利益目標は、連結経常利益で300億円(2028年3月期)である。足元の経常利益の実力値が250億円と想定し、50億円伸ばす水準である。中期経営計画期間においては様々な費用の上昇(物価、賃金、利払い等)が想定されるなか、コア事業の効率化、収益力強化を継続しつつ、戦略事業(電気、海外、地域を基点とした課題解決型ビジネス)の利益を伸ばすことで収益向上を目指す。
5. 株主還元策
同社は、経営基盤の強化と安定配当を利益配分に関する基本方針としている。新たな中期経営計画の計画期間(2026年3月期~2028年3月期)においては、利益成長とともに累進的な増配を目指す計画である。また、自己株式の取得を進め、2028年3月期末の自己資本4,000億円を目安に最適化を図る。2025年3月期は、配当金80円(前期比10円増配、中間末40円済、期末40円)、配当性向31.3%となった。期中に自己株式の取得300億円を行っており、それを含めた総還元性向は100%を超える。2026年3月期は、配当金90円(前期比10円増配、中間末45円、期末45円)、配当性向35.1%を予想する。2025年9月末までを取得期間とした150億円(2025年3月公表)の自己株式の取得が決議されており、総還元性向が高くなることが想定される。
■Key Points
・東海3県を地盤に、都市ガス、LPG、電気、周辺事業を展開する総合エネルギープロバイダー
・大黒柱のガス事業とLPG関連事業が中核。成長力の高い電気事業及びその他事業(周辺、海外含む)。強みはソリューション提案力
・2025年3月期は増収減益。減益主要因は、原材料費と売上高の期ずれ差益の縮小。注力する電気事業は黒字達成
・新中期経営計画では、戦略事業の成長等により連結経常利益300億円(2028年3月期)を目指す
・累進的な増配方針。自社株買いを含めた総還元性向で100%超。2025年3月期の配当金は前期比10円増の年80円(中間40円済、期末40円)。2026年3月期も10円増の年90円を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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1. 会社概要
東邦ガス<9533>は、愛知県、岐阜県、三重県を地盤に、都市ガスからLPG、電気、周辺事業を展開する総合エネルギープロバイダーである。基本理念は「東邦ガスは、グループ各社とともに、人々との信頼のきずなを大切にし、うるおいと感動のあるくらしの創造と魅力にあふれ、いきいきとした社会の実現に寄与します。」であり、地域社会への貢献を実践している。2022年に100周年を迎えた歴史ある企業であり、時代とともにエネルギーの原料転換(石炭→石油→天然ガス)を経験し、脱皮を繰り返してきた。現在進行中のグループビジョンや中期経営計画では、電気事業や海外事業、さらにはエネルギー事業の枠を超えた分野の成長も計画している。都市ガス事業においては、東京ガス<9531>、大阪ガス<9532>とともに業界トップ3社の1社であり、ものづくり産業が盛んな東海3県において、業務用の販売量が多いのが同社の特徴である。2025年3月期末時点、子会社32社及び関連会社40社、従業員数6,074名を擁し、都市ガス、LPG、電気のトータルで地域の顧客約308万件にエネルギーを提供している。
2. 事業概要
同社の事業セグメントは、ガス事業、LPG・その他エネルギー事業、電気事業、その他事業に分かれる。ガス事業では、主に愛知県、岐阜県、三重県、岡山県において、都市ガスの製造・販売、ガス器具の販売、ガスの託送供給、ガス供給のための配管工事など一連の業務を行っている。全社売上高の構成比で62.4%(2025年3月期通期)、セグメント利益で70.7%(同)を占め、全社の業績を支える存在である。LPG・その他エネルギー事業は、LPG販売、LPG機器販売などのほかに、LNG販売、熱供給事業等を行う。全社売上高の構成比で14.8%(同)、セグメント利益で8.9%(同)である。電気事業は、電気の販売を行う。全社売上高の構成比で14.0%(同)、セグメント利益で1.2%(同)と足元の収益は小さいが成長性が高い。その他事業は、不動産の管理・賃貸、プラント・設備の設計施工、CN×P事業(CN化支援事業)、情報処理サービスの提供、車両・設備機器等のリース、海外における天然ガス等に関する開発・投資等、多様な事業を行っている。全社売上高の構成比で8.9%(同)、セグメント利益で19.2%(同)と収益貢献度が高い。
3. 業績動向
2025年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比3.6%増の656,010百万円、営業利益が同8.1%減の30,887百万円、経常利益が同20.6%減の32,412百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同6.8%減の25,454百万円となり、増収減益となった。売上高に関しては、主力ガス事業で前期比2.4%増の429,299百万円と堅調に推移した。LPG・その他エネルギー事業の売上高は、同0.1%増の101,601百万円と前期並みだった。電気事業の売上高は、同8.4%増の96,018百万円と順調に増加した。その他事業の売上高は、空調設備工事の受注増などにより前期比12.4%増の61,112百万円と伸長した。利益に関しては、ガス事業でのスライドタイムラグ(原材料費と売上高の期ずれ差益)など原料関連の市況変動等の影響が前期比約8,500百万円減となったことが、営業減益の主な要因となった。一方で電気事業では、調達コストの低減などにより売上原価が前期比で約6,000百万円改善し、セグメント利益での黒字化を達成した。
2026年3月期通期の連結業績は、売上高が前期比7.0%減の610,000百万円、営業利益が同22.3%減の24,000百万円、経常利益が同7.4%減の30,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同1.8%減の25,000百万円と、減収減益を予想する。
売上高に関しては、2026年3月期は原材料費の低下に伴う都市ガス販売価格の低下や、電気においては前年夏場の高気温ほどには気温が上がらない前提(2025年3月期17.7℃、2026年3月期17.1℃予想)で販売量の減少を計画したため、前期比マイナス460億円の減収を見込む。営業利益に関しては、ガス事業において、スライドタイムラグのプラスの影響(前期比で約8,000百万円増)、経費の減少(前期比で約3,000百万円)などプラス要因があるものの、原材料在庫の受払差(前期比で約2,000百万円減)、その他の原料関連の市況変動等のマイナスの影響が上回り、合計で前期比約7,500百万円の減益要因となる。経常利益に関しては、営業減益(前期比6,887百万円減)が前提となるものの、営業外収支が改善するため、前期比2,412百万円減、同7.4%減を見込む。前期同様に、政策保有株式の売却も進める方針のため、投資有価証券売却益(特別利益)の計上も期待できる。弊社では、同社の計画精度が高いこと、足元のエネルギー価格の動向が予想の範囲内で推移していることなどから、2026年3月期の業績予想は十分達成可能であると考えている。
4. 成長戦略
同社は、2025年3月に新しい中期経営計画を発表した。2026年3月期を初年度、2028年3月期を最終年度とする3ヶ年計画であり、2030年代半ばに目指すグループビジョン(2022年に公表)に向けた第二ステップ前半にあたる。グループビジョンでは、「地域におけるゆるぎないエネルギー事業者」として多様なエネルギーの提供者であることとともに、「エネルギーの枠を超えた、くらし・ビジネスのパートナー」とうたっており、課題解決型ビジネスの深耕と、他分野との連携による事業領域の拡大を目指す。基本戦略としては、経営資源配分の見直しを加速し、事業構造の変革を推進する。コア事業の収益力を強化しつつ、そこで得たキャッシュを戦略事業に積極投資し成長する計画である。新中期経営計画の利益目標は、連結経常利益で300億円(2028年3月期)である。足元の経常利益の実力値が250億円と想定し、50億円伸ばす水準である。中期経営計画期間においては様々な費用の上昇(物価、賃金、利払い等)が想定されるなか、コア事業の効率化、収益力強化を継続しつつ、戦略事業(電気、海外、地域を基点とした課題解決型ビジネス)の利益を伸ばすことで収益向上を目指す。
5. 株主還元策
同社は、経営基盤の強化と安定配当を利益配分に関する基本方針としている。新たな中期経営計画の計画期間(2026年3月期~2028年3月期)においては、利益成長とともに累進的な増配を目指す計画である。また、自己株式の取得を進め、2028年3月期末の自己資本4,000億円を目安に最適化を図る。2025年3月期は、配当金80円(前期比10円増配、中間末40円済、期末40円)、配当性向31.3%となった。期中に自己株式の取得300億円を行っており、それを含めた総還元性向は100%を超える。2026年3月期は、配当金90円(前期比10円増配、中間末45円、期末45円)、配当性向35.1%を予想する。2025年9月末までを取得期間とした150億円(2025年3月公表)の自己株式の取得が決議されており、総還元性向が高くなることが想定される。
■Key Points
・東海3県を地盤に、都市ガス、LPG、電気、周辺事業を展開する総合エネルギープロバイダー
・大黒柱のガス事業とLPG関連事業が中核。成長力の高い電気事業及びその他事業(周辺、海外含む)。強みはソリューション提案力
・2025年3月期は増収減益。減益主要因は、原材料費と売上高の期ずれ差益の縮小。注力する電気事業は黒字達成
・新中期経営計画では、戦略事業の成長等により連結経常利益300億円(2028年3月期)を目指す
・累進的な増配方針。自社株買いを含めた総還元性向で100%超。2025年3月期の配当金は前期比10円増の年80円(中間40円済、期末40円)。2026年3月期も10円増の年90円を予想
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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