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大豊建 Research Memo(3):土木事業では高度な独自施工技術を有しており、他社との差別化を実現
配信日時:2025/06/09 17:33
配信元:FISCO
*17:33JST 大豊建 Research Memo(3):土木事業では高度な独自施工技術を有しており、他社との差別化を実現
■事業概要
1. 土木事業
土木事業は、大豊建設<1822>の基幹部門の1つとして長年にわたり発展を遂げてきた事業として、創業以来、港湾・トンネル・ダム・橋梁など社会インフラの建設及び整備を行っており、国土強靭化や地域開発の推進に貢献してきた。特に港湾・河川・都市インフラなどの分野において豊富な実績と高い技術力を有している。同社の土木事業における最大の強みは、独自に培ってきた「ニューマチックケーソン工法」と「シールド工法」という2つの施工技術にある。これらの技術は同社が業界の先駆けとして確立してきたものであり、他社との差別化を実現するうえで重要な競争優位の要因となっている。
「ニューマチックケーソン工法」は、地中や水中の基礎構築を行う際に、作業空間に圧縮空気を送り込んで水の浸入を防ぎながら掘削を進める工法である。特に立坑や橋梁といった構造物に多用されており、地下水圧が高い場所でも安定した作業が可能となる。同社はこの分野で長年にわたって施工実績を積み重ねており、安全管理や作業効率の点で非常に高い評価を受けている。地盤条件が厳しい場所でも、掘削時に発生する土砂の処理や周辺環境への配慮を的確に行う技術力を備えており、施工リスクの低減という面でも顧客からの信頼が厚い。
もう1つの柱である「シールド工法」は、地下空間にトンネルを築く際に用いられる工法であり、円筒状の掘削機(シールドマシン)を使って地中を掘り進めながら、その背後にトンネル構造を構築していく。都市部での地下鉄・上下水道・共同溝といったインフラ整備には不可欠な技術であり、同社はそのなかでも特に、複雑な地層や高い水圧がかかる地盤といった、難易度の高い現場に対応できる技術とノウハウを有している。また、急曲線のカーブなど複雑なトンネル形状にも柔軟に対応可能であり、都市インフラの更新や再開発において高い競争力を発揮している。
加えて、同社はこれらの伝統的な施工技術に、IoTやAIなどの先端技術を融合させることにより、施工現場の「見える化」や「省人化」を進めている。BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling, Management:調査・計画・設計・施工・維持管理の各段階において3次元モデルを活用し、情報共有を円滑化することにより業務効率化や生産性向上を目指す取り組み)の活用や、センサーによるリアルタイム地盤監視などの取り組みを通じて、安全性と品質の両立、さらにはコストと工期の最適化を実現している。こうした取り組みは、国内の老朽インフラの更新や災害対応など社会的ニーズの高まりに対応するだけでなく、海外における港湾整備や地下鉄建設などの国際案件においても、技術力を生かす機会を広げている。同社の土木事業は、確立された技術基盤の上に最先端のイノベーションを積み重ねることにより、安定した成長と高付加価値化を両立するビジネスモデルを構築していると考えられる。
2. 建築事業
建築事業は、土木事業と並ぶ同社の事業の重要な柱であり、官公庁案件をはじめ、教育・医療・福祉施設、物流倉庫、商業施設、さらには集合住宅やオフィスビルなど多様な用途の建築を手掛けているのが特徴である。特に、同社は公共性の高い建築物において長年の実績を有し、発注者との信頼関係や品質・安全管理への高い評価を背景に、安定した受注基盤を築いている。
同社の建築事業における強みの1つは、設計・施工一体型のプロジェクト推進体制にある。従来型の設計分離方式に加え、近年では顧客ニーズの多様化と迅速な対応が求められるなかで、同社は設計から施工までを一貫して担うデザインビルド方式や、CM(Construction Management)手法の導入を進めている。これにより、コスト・品質・工期の建築プロジェクト3大要素をバランスよく最適化することができる体制を整備しており、発注者側のプロジェクトリスクの低減にも寄与している。
また、建築分野における同社の差別化要因として注目されるのが、耐震補強、省エネ・環境対応建築への積極的な取り組みである。老朽化が進む公共施設や学校などの改修・耐震化ニーズに応えるための高い施工技術と実績を有し、近年ではZEB(Net Zero Energy Building:建物のエネルギー消費を大幅に削減し、再生可能エネルギーの活用によって年間の一次エネルギー消費量を正味ゼロにすることを目指した建築物)対応建築の推進にも力を入れている。これらの対応は、国のカーボンニュートラル政策や地方自治体の環境配慮型発注要件への適合という観点においても競争力を高めている。
加えて、同社は物流施設の分野においても存在感を強めており、特に大型倉庫や配送センターの建設においては、施工管理力とコスト競争力を生かした積極展開を図っている。EC市場の拡大に伴い、先進的物流施設への需要が拡大するなか、同社はそのニーズに即応することができる体制を整備し、デベロッパーや物流事業者からの信頼を獲得している。
技術面では、BIMの活用による設計・施工の効率化や、現場におけるICTツールの導入により生産性向上を図っており、施工現場の見える化やトラブルの事前回避など、品質と安全性を重視したマネジメント手法が浸透している。また、技能者不足が深刻化するなかで、現場管理の効率化や若手技術者の育成などの人材戦略にも注力しており、持続的な競争力の確保に向けた取り組みが評価される。
同社の建築事業は伝統的な公共建築に強みを持ちながらも、民間施設、リニューアル事業、環境対応建築などの成長分野にも柔軟に対応する体制を整備しており、事業ポートフォリオの安定性と成長性を両立する構造となっている。
3. その他の事業
その他の事業では、主力である土木・建築工事の受注・施工に加えて多角化戦略の一環として、子会社を通じて不動産、塗装工事、建設資材リースなどの周辺事業に取り組んでいる。子会社の大豊不動産(株)は自社保有地を活用した不動産の賃貸・管理・開発を手掛けており、安定的な収益基盤の確保を図っている。大豊塗装工業(株)は、建築物の内外装や構造物の防食・防水工事などを中心とした塗装工事業を担っており、母体企業とのシナジー効果を発揮している。進和機工(株)は、建設工事に必要な仮設資材のリース・販売・施工を主軸に、機材管理や物流の効率化などの面で本体事業を下支えしている。これらの子会社事業はいずれも本体の建設業との補完関係が強く、グループ全体としての競争力を高める役割を果たしていることに加え、収益の多様化により経営の安定化に寄与している。
(執筆:フィスコアナリスト 吉林拓馬)
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1. 土木事業
土木事業は、大豊建設<1822>の基幹部門の1つとして長年にわたり発展を遂げてきた事業として、創業以来、港湾・トンネル・ダム・橋梁など社会インフラの建設及び整備を行っており、国土強靭化や地域開発の推進に貢献してきた。特に港湾・河川・都市インフラなどの分野において豊富な実績と高い技術力を有している。同社の土木事業における最大の強みは、独自に培ってきた「ニューマチックケーソン工法」と「シールド工法」という2つの施工技術にある。これらの技術は同社が業界の先駆けとして確立してきたものであり、他社との差別化を実現するうえで重要な競争優位の要因となっている。
「ニューマチックケーソン工法」は、地中や水中の基礎構築を行う際に、作業空間に圧縮空気を送り込んで水の浸入を防ぎながら掘削を進める工法である。特に立坑や橋梁といった構造物に多用されており、地下水圧が高い場所でも安定した作業が可能となる。同社はこの分野で長年にわたって施工実績を積み重ねており、安全管理や作業効率の点で非常に高い評価を受けている。地盤条件が厳しい場所でも、掘削時に発生する土砂の処理や周辺環境への配慮を的確に行う技術力を備えており、施工リスクの低減という面でも顧客からの信頼が厚い。
もう1つの柱である「シールド工法」は、地下空間にトンネルを築く際に用いられる工法であり、円筒状の掘削機(シールドマシン)を使って地中を掘り進めながら、その背後にトンネル構造を構築していく。都市部での地下鉄・上下水道・共同溝といったインフラ整備には不可欠な技術であり、同社はそのなかでも特に、複雑な地層や高い水圧がかかる地盤といった、難易度の高い現場に対応できる技術とノウハウを有している。また、急曲線のカーブなど複雑なトンネル形状にも柔軟に対応可能であり、都市インフラの更新や再開発において高い競争力を発揮している。
加えて、同社はこれらの伝統的な施工技術に、IoTやAIなどの先端技術を融合させることにより、施工現場の「見える化」や「省人化」を進めている。BIM/CIM(Building/ Construction Information Modeling, Management:調査・計画・設計・施工・維持管理の各段階において3次元モデルを活用し、情報共有を円滑化することにより業務効率化や生産性向上を目指す取り組み)の活用や、センサーによるリアルタイム地盤監視などの取り組みを通じて、安全性と品質の両立、さらにはコストと工期の最適化を実現している。こうした取り組みは、国内の老朽インフラの更新や災害対応など社会的ニーズの高まりに対応するだけでなく、海外における港湾整備や地下鉄建設などの国際案件においても、技術力を生かす機会を広げている。同社の土木事業は、確立された技術基盤の上に最先端のイノベーションを積み重ねることにより、安定した成長と高付加価値化を両立するビジネスモデルを構築していると考えられる。
2. 建築事業
建築事業は、土木事業と並ぶ同社の事業の重要な柱であり、官公庁案件をはじめ、教育・医療・福祉施設、物流倉庫、商業施設、さらには集合住宅やオフィスビルなど多様な用途の建築を手掛けているのが特徴である。特に、同社は公共性の高い建築物において長年の実績を有し、発注者との信頼関係や品質・安全管理への高い評価を背景に、安定した受注基盤を築いている。
同社の建築事業における強みの1つは、設計・施工一体型のプロジェクト推進体制にある。従来型の設計分離方式に加え、近年では顧客ニーズの多様化と迅速な対応が求められるなかで、同社は設計から施工までを一貫して担うデザインビルド方式や、CM(Construction Management)手法の導入を進めている。これにより、コスト・品質・工期の建築プロジェクト3大要素をバランスよく最適化することができる体制を整備しており、発注者側のプロジェクトリスクの低減にも寄与している。
また、建築分野における同社の差別化要因として注目されるのが、耐震補強、省エネ・環境対応建築への積極的な取り組みである。老朽化が進む公共施設や学校などの改修・耐震化ニーズに応えるための高い施工技術と実績を有し、近年ではZEB(Net Zero Energy Building:建物のエネルギー消費を大幅に削減し、再生可能エネルギーの活用によって年間の一次エネルギー消費量を正味ゼロにすることを目指した建築物)対応建築の推進にも力を入れている。これらの対応は、国のカーボンニュートラル政策や地方自治体の環境配慮型発注要件への適合という観点においても競争力を高めている。
加えて、同社は物流施設の分野においても存在感を強めており、特に大型倉庫や配送センターの建設においては、施工管理力とコスト競争力を生かした積極展開を図っている。EC市場の拡大に伴い、先進的物流施設への需要が拡大するなか、同社はそのニーズに即応することができる体制を整備し、デベロッパーや物流事業者からの信頼を獲得している。
技術面では、BIMの活用による設計・施工の効率化や、現場におけるICTツールの導入により生産性向上を図っており、施工現場の見える化やトラブルの事前回避など、品質と安全性を重視したマネジメント手法が浸透している。また、技能者不足が深刻化するなかで、現場管理の効率化や若手技術者の育成などの人材戦略にも注力しており、持続的な競争力の確保に向けた取り組みが評価される。
同社の建築事業は伝統的な公共建築に強みを持ちながらも、民間施設、リニューアル事業、環境対応建築などの成長分野にも柔軟に対応する体制を整備しており、事業ポートフォリオの安定性と成長性を両立する構造となっている。
3. その他の事業
その他の事業では、主力である土木・建築工事の受注・施工に加えて多角化戦略の一環として、子会社を通じて不動産、塗装工事、建設資材リースなどの周辺事業に取り組んでいる。子会社の大豊不動産(株)は自社保有地を活用した不動産の賃貸・管理・開発を手掛けており、安定的な収益基盤の確保を図っている。大豊塗装工業(株)は、建築物の内外装や構造物の防食・防水工事などを中心とした塗装工事業を担っており、母体企業とのシナジー効果を発揮している。進和機工(株)は、建設工事に必要な仮設資材のリース・販売・施工を主軸に、機材管理や物流の効率化などの面で本体事業を下支えしている。これらの子会社事業はいずれも本体の建設業との補完関係が強く、グループ全体としての競争力を高める役割を果たしていることに加え、収益の多様化により経営の安定化に寄与している。
(執筆:フィスコアナリスト 吉林拓馬)
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