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ノイルイミューン Research Memo(3):がん免疫細胞治療薬を独自開発(2)
配信日時:2025/05/26 15:33
配信元:FISCO
*15:33JST ノイルイミューン Research Memo(3):がん免疫細胞治療薬を独自開発(2)
■ノイルイミューン・バイオテック<4893>の会社概要
4. 事業概要
ハイブリッド型ビジネスモデルを確立し、バランスのとれた安定収益と大型収益の確保による安定的な高成長型バイオベンチャーを目指す。
(1) 同社の事業領域と注目されるCAR-T細胞療法の市場
がんは日本人の死因の第1位であり、年々増加を続けていることから「国民病」とも呼ばれている。2020年生涯がん罹患率の統計では「2人に1人はがんにかかる」とされており、がんは高罹患率・低生存率の病として、多くの人々の命を脅かしている。
様々ながん治療法の中でも、がん免疫細胞療法ががん治療の最前線として近年注目を集めており、その中心となるのがCAR-T細胞療法である。この治療法は、がん細胞を効率的に検出し、強力ながん殺傷効果を持つ細胞を人工的に作製して投与するものである。
CAR-T細胞療法は、1990年代からの腫瘍免疫学の革新的な進歩のなか研究開発が進められ、2017年に世界で最初のCAR-T細胞療法が承認されているが、最初に効果が認められたのは血液がん(白血病、悪性リンパ腫など)であった。しかし、血液がんはがん全体の7%に過ぎず、がん罹患患者において90%以上と多数を占める固形がん(肺がん、大腸がん、乳がんなど)に対しては、未だに十分な効果が得られていないという課題があり、CAR-T細胞療法にとって固形がんは大きな未開拓市場として残っていると言える。このため、世界中の多くのがん免疫ベンチャー企業や製薬企業が固形がんに対して従来のCAR-T細胞療法が持つ課題を克服し、有効性を発揮させるための研究を進めている。
ちなみに、CAR-T細胞療法の市場規模は、2033年には302.5億米ドル(2024年からのCAGR 23%)に達すると予測されており、巨大市場の創出が期待されている。同社も、この成長著しい市場へ免疫細胞療法の治療効果を高める同社独自の革新的技術をもって早期参入している。
(2) PRIME技術の独自開発
では、CAR-T細胞療法が固形がんに対して未だ十分な効果が得られていないのはなぜか。血液がんの場合、がん細胞は基本的に血管やリンパ管、骨髄中に存在するため、血管内に投与したCAR-T細胞は容易にがん細胞のところに到達できる。また、血液がんのがん細胞は、CAR-T細胞が認識できる標的を均一に持っている。
一方、固形がんの場合、がん細胞は血管の外に塊として存在するため、十分な数のCAR-T細胞ががん細胞に到達することが難しい。さらに、一部のがん細胞は標的を持たないため、CAR-T細胞がそれらを検出できないという課題がある。固形がんに対してCAR-T細胞療法の効果を発揮させるための主な課題は、1) がんの局所に免疫細胞をいかに集積させるか、2) 不均一性の高い固形がんに対して、集積した免疫細胞(投与したCAR-T細胞だけでなく、体内の免疫細胞も含む)が免疫応答を起こせるようにする、の2点に集約される。
これら2つの課題を克服するために、同社が開発した技術が「PRIME技術」である。
CAR-T細胞はCAR遺伝子を導入した細胞であるが、PRIME CAR-T細胞はさらに「CCL19」と「IL-7」の2つの遺伝子を搭載している。CCL19遺伝子はケモカインとして知られ、免疫細胞を集積させる能力を持ち、固形がんに到達した一部のCAR-T細胞がこのCCL19を産生することで、周囲の免疫細胞をがん局所に引き寄せる役割を果たす。一方、IL-7遺伝子は免疫反応の増強因子として機能し、投与したCAR-T細胞だけでなく、がんの局所に集積した免疫細胞全体の活性化を促す。
これら2つの遺伝子は、もともと人間のリンパ節内に存在する特殊な細胞によって産生され、そこに免疫細胞が集積し、T細胞の初期の活性化(プライミング)に重要なT細胞領域が形成されていることが分かっていた。このT細胞領域の形成に重要な役割を持つ遺伝子(CCL19、IL-7)を利用することで、がん局所にT細胞を集積させ、活性化させることが期待できる。人間が生体内に本来備えているT細胞の活性化システムを固形がんの治療に活用し、この2つの遺伝子をCAR-T細胞に組み合わせることは合理的な戦略と言える。
PRIME技術は、がん抗原を標的として検出する様々なCAR(人工的に作られたT細胞を活性化させる抗原受容体)と組み合わせることが可能であり、CARを変更することで様々ながん抗原を標的とする新たなPRIME CAR-Tパイプラインを次々と創出することが可能となる。
PRIME CAR-T細胞は、CAR-T細胞に「CCL19」と「IL-7」という2つの遺伝子を搭載していることが特徴である。CAR-T細胞の機能を強化するためには様々な方法があるが、他社の技術は主に、CAR-T細胞の「活性」の機能のみを高めている。一方、同社の技術は、免疫細胞に対する「集積」の機能も同時に高めるため、投与したCAR-T細胞だけではなく、集積してきた体内の免疫細胞も同時に活性化できる点が他社との大きな差別化となっている。このように、「CCL19」と「IL-7」により「集積」と「活性」の両方の機能を強化する方法は他社に比べて高い競争優位性を有し、固形がんに対するCAR-T細胞治療の応用において必要不可欠な技術と言える。「CCL19」と「IL-7」の2つを同時に産生するPRIME技術については既に特許出願済みで、他社が同様の技術を使用することが制限されている。
(3) 「自社創薬事業」と「共同パイプライン事業」での相乗効果
同社は、PRIME技術をベースに2つの事業を展開する。主力事業の一つである自社創薬事業では、自社主導で開発パイプラインを構築し、高リターンを目指す。一方で、共同パイプライン事業では、PRIME技術を技術供与し、相手先のパイプラインに組み込むことで、ライセンス収入による安定収益を確保する。これら2つの事業を同時並行で進めるハイブリッド型ビジネスモデルを採用し、従来の創薬バイオベンチャーとは異なる、安定した成長を実現することを目指す。
PRIME技術の特許は、基本特許と個別のパイプライン特許で構成され、世界50ヶ国以上の広範な地域で特許出願されている。その結果、PRIME技術の権益は細部にわたって保護されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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4. 事業概要
ハイブリッド型ビジネスモデルを確立し、バランスのとれた安定収益と大型収益の確保による安定的な高成長型バイオベンチャーを目指す。
(1) 同社の事業領域と注目されるCAR-T細胞療法の市場
がんは日本人の死因の第1位であり、年々増加を続けていることから「国民病」とも呼ばれている。2020年生涯がん罹患率の統計では「2人に1人はがんにかかる」とされており、がんは高罹患率・低生存率の病として、多くの人々の命を脅かしている。
様々ながん治療法の中でも、がん免疫細胞療法ががん治療の最前線として近年注目を集めており、その中心となるのがCAR-T細胞療法である。この治療法は、がん細胞を効率的に検出し、強力ながん殺傷効果を持つ細胞を人工的に作製して投与するものである。
CAR-T細胞療法は、1990年代からの腫瘍免疫学の革新的な進歩のなか研究開発が進められ、2017年に世界で最初のCAR-T細胞療法が承認されているが、最初に効果が認められたのは血液がん(白血病、悪性リンパ腫など)であった。しかし、血液がんはがん全体の7%に過ぎず、がん罹患患者において90%以上と多数を占める固形がん(肺がん、大腸がん、乳がんなど)に対しては、未だに十分な効果が得られていないという課題があり、CAR-T細胞療法にとって固形がんは大きな未開拓市場として残っていると言える。このため、世界中の多くのがん免疫ベンチャー企業や製薬企業が固形がんに対して従来のCAR-T細胞療法が持つ課題を克服し、有効性を発揮させるための研究を進めている。
ちなみに、CAR-T細胞療法の市場規模は、2033年には302.5億米ドル(2024年からのCAGR 23%)に達すると予測されており、巨大市場の創出が期待されている。同社も、この成長著しい市場へ免疫細胞療法の治療効果を高める同社独自の革新的技術をもって早期参入している。
(2) PRIME技術の独自開発
では、CAR-T細胞療法が固形がんに対して未だ十分な効果が得られていないのはなぜか。血液がんの場合、がん細胞は基本的に血管やリンパ管、骨髄中に存在するため、血管内に投与したCAR-T細胞は容易にがん細胞のところに到達できる。また、血液がんのがん細胞は、CAR-T細胞が認識できる標的を均一に持っている。
一方、固形がんの場合、がん細胞は血管の外に塊として存在するため、十分な数のCAR-T細胞ががん細胞に到達することが難しい。さらに、一部のがん細胞は標的を持たないため、CAR-T細胞がそれらを検出できないという課題がある。固形がんに対してCAR-T細胞療法の効果を発揮させるための主な課題は、1) がんの局所に免疫細胞をいかに集積させるか、2) 不均一性の高い固形がんに対して、集積した免疫細胞(投与したCAR-T細胞だけでなく、体内の免疫細胞も含む)が免疫応答を起こせるようにする、の2点に集約される。
これら2つの課題を克服するために、同社が開発した技術が「PRIME技術」である。
CAR-T細胞はCAR遺伝子を導入した細胞であるが、PRIME CAR-T細胞はさらに「CCL19」と「IL-7」の2つの遺伝子を搭載している。CCL19遺伝子はケモカインとして知られ、免疫細胞を集積させる能力を持ち、固形がんに到達した一部のCAR-T細胞がこのCCL19を産生することで、周囲の免疫細胞をがん局所に引き寄せる役割を果たす。一方、IL-7遺伝子は免疫反応の増強因子として機能し、投与したCAR-T細胞だけでなく、がんの局所に集積した免疫細胞全体の活性化を促す。
これら2つの遺伝子は、もともと人間のリンパ節内に存在する特殊な細胞によって産生され、そこに免疫細胞が集積し、T細胞の初期の活性化(プライミング)に重要なT細胞領域が形成されていることが分かっていた。このT細胞領域の形成に重要な役割を持つ遺伝子(CCL19、IL-7)を利用することで、がん局所にT細胞を集積させ、活性化させることが期待できる。人間が生体内に本来備えているT細胞の活性化システムを固形がんの治療に活用し、この2つの遺伝子をCAR-T細胞に組み合わせることは合理的な戦略と言える。
PRIME技術は、がん抗原を標的として検出する様々なCAR(人工的に作られたT細胞を活性化させる抗原受容体)と組み合わせることが可能であり、CARを変更することで様々ながん抗原を標的とする新たなPRIME CAR-Tパイプラインを次々と創出することが可能となる。
PRIME CAR-T細胞は、CAR-T細胞に「CCL19」と「IL-7」という2つの遺伝子を搭載していることが特徴である。CAR-T細胞の機能を強化するためには様々な方法があるが、他社の技術は主に、CAR-T細胞の「活性」の機能のみを高めている。一方、同社の技術は、免疫細胞に対する「集積」の機能も同時に高めるため、投与したCAR-T細胞だけではなく、集積してきた体内の免疫細胞も同時に活性化できる点が他社との大きな差別化となっている。このように、「CCL19」と「IL-7」により「集積」と「活性」の両方の機能を強化する方法は他社に比べて高い競争優位性を有し、固形がんに対するCAR-T細胞治療の応用において必要不可欠な技術と言える。「CCL19」と「IL-7」の2つを同時に産生するPRIME技術については既に特許出願済みで、他社が同様の技術を使用することが制限されている。
(3) 「自社創薬事業」と「共同パイプライン事業」での相乗効果
同社は、PRIME技術をベースに2つの事業を展開する。主力事業の一つである自社創薬事業では、自社主導で開発パイプラインを構築し、高リターンを目指す。一方で、共同パイプライン事業では、PRIME技術を技術供与し、相手先のパイプラインに組み込むことで、ライセンス収入による安定収益を確保する。これら2つの事業を同時並行で進めるハイブリッド型ビジネスモデルを採用し、従来の創薬バイオベンチャーとは異なる、安定した成長を実現することを目指す。
PRIME技術の特許は、基本特許と個別のパイプライン特許で構成され、世界50ヶ国以上の広範な地域で特許出願されている。その結果、PRIME技術の権益は細部にわたって保護されている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)
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