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RSテクノ Research Memo(10):VRFB用電解液事業は2026年に中国市場に進出
配信日時:2025/03/31 13:10
配信元:FISCO
*13:10JST RSテクノ Research Memo(10):VRFB用電解液事業は2026年に中国市場に進出
■RS Technologies<3445>の今後の見通し
3. VRFB用電解液事業の戦略
(1) VRFBとは
同社は2023年10月にVRFB用電解液の開発、製造、販売を手掛けるLEシステムを100%子会社として新設した(旧 LEシステムから同年12月に事業承継)。VRFBは省エネ対策として1970年代から国策プロジェクトとして研究開発が進められてきた蓄電池で、現在広く普及しているリチウムイオン電池と比較して小型化には適さないものの、不燃性で安全性が高く長期間性能が劣化しないことや無制限に充放電が可能なことなどが特徴として挙げられる。
さらに、ほかの蓄電池が電極の化学変化で充放電を行うのに対して、VRFBは電解液の化学変化で充放電を行う仕組みのため、電解液を増やすだけで蓄電容量を容易に増やすことができ、設計の柔軟性があることから定置式の大型蓄電用途、具体的には太陽光発電や風力発電などに最適な蓄電池として注目され、ここ1〜2年で中国市場を中心に市場が急速に拡大している※。リチウムイオン電池(リン酸鉄系)との比較においては、初期コストは高いものの、10年運用でほぼ同コスト、20年運用で3割強コストが低くなり、長期運用を前提とした用途ではコスト優位性を発揮すると同社では試算している。
※ 中国におけるVRFB用電解液の公示入札実績は、2022年の200MWhから2023年は1,560MWh、2024年は3,700MWhと2年間で約18倍に急拡大した。
(2) 市場見通し
メガソーラー発電所の普及により、クリーンエネルギーの昼間の電力供給量が増加した一方で、需給面から廃棄されるケースも目立っており、発電した電力を一旦蓄えて夜間に利用するための定置式の大型蓄電池の必要性が国内外で急速に高まっている。同社提供の資料(世界銀行/国際復興銀行資料)によれば、定置式蓄電池の世界市場規模は2024年の234GWhから2030年は1,114GWhと4倍以上に拡大(年率30%成長)することが予測され、このうちVRFBについては2024年の5GWhから2030年は27GWh※と5倍以上(年率32%成長)の成長が見込まれる有望市場となっている。
※ VRFB用電解液に換算すると、2024年の約30万m3から2030年は約162万m3になる。
VRFBの市場の過半は中国を中心としたアジア地域で占められる見通しであり、既にVRFB市場に参入する企業も増えている。同社でも中国市場を開拓すべく、現地企業と合弁で製造拠点を開設し、2026年からの本格量産を目指す方針を打ち出している。
(3) 事業戦略
中国での事業戦略については、2024年11月に投資を行うための子会社、艾斯科技集団(厦門)有限公司を設立し、2025年3月にその子会社としてエネルギー関連会社の艾斯能源有限公司を設立、同子会社と現地パートナー企業で合弁会社を設立して、製造工場を建設する計画としている。また、合弁会社から技術指導料をLEシステムが得ることになる。新工場の規模については未定だが、中国内でトップシェアを目指しており、積極的に展開するものと予想される。なお、同社からは2024年度に総額約15億円を投下しており、地方政府からの補助金制度も活用しながら展開する予定である。
一方、国内市場では浪江工場(年産能力5千m3、約30億円)で引き続き電解液を製造し国内外に販売するのに加えて、電力コスト最適化から蓄電所建設までを顧客に提案するトータルソリューションプロバイダーとして、ワンストップサービスを提供することにしている。国内でも政府の政策によって定置式蓄電所の普及が進む方向にあり、潜在需要は大きい。
(4) LEシステムの強み
現状、電解液メーカーとしては中国メーカーが多いが、LEシステムは原材料の安定的な調達力、電解液生産プロセスのコスト競争力、多数の電池メーカーとの連携を可能とする総合技術力の3点を強みとして挙げており、これらの強みを生かして国内外の顧客開拓を進める戦略だ。
a) バナジウムの安定的な調達力
バナジウムの主要原産国は南アフリカ、中国、ロシア、米国の4ヶ国で9割超を占めている。用途としては製鋼添加剤向け(強度・耐熱性向上)が8割以上を占めているが、化学・エレクトロニクス業界向けでも幅広く利用されている。VRFB電解液用としては、五酸化バナジウムが一般的に用いられるが、市況変動により調達コストのコントロールが非常に難しいことが課題であった。LEシステムは、原材料として中間生成物であるメタバナジン酸アンモニウム(以下、AMV)を調達して製造しているため、市況変動の影響を受け難い。また、LEシステムでは火力発電所やプラント施設等から排出される廃棄物(残渣)からバナジウムを回収する多種の技術を保有しており、今後国内外の大手石油会社や鉄鋼メーカーのほか南アフリカの大手鉱山会社とも提携して、安定的に調達できる体制を確立することも考えられる。
b) コスト競争力
一般的な電解液の製造フローは、五酸化バナジウムを仕入れて、溶解・濾過、電解還元工程を経て3.5酸化バナジウムにし、電解液としている。これに対して、同社は五酸化バナジウムを精製するまでの中間生成物であるAMVから直接電解液を製造する技術を確立している。AMVは相対価格交渉で五酸化バナジウムよりも安価に調達できるほか、溶解時間が5分の1と短いため電気代が半分以下に低減できる。また、高い液面接触面積を持つ還元装置の利用で電解液の製造コストを他社比較で50%程度に抑えることが理論的には可能と同社では試算している。
VRFBのコストに占める電解液の比率は約35%と高いため、VRFBメーカーが採用するメリットは大きい。同社調べによれば、電解液に含まれる不純物の成分が他社製品より少ないことも強みとなる。不純物が少ないほど長期運用に適していると考えられるためだ。加えて、鉛フリーやアンチモンフリーの技術も確立しており、環境規制にも対応している。現状は国内工場で小規模ロット生産のため、中国メーカーと比較して割高な水準とはなっているが、品質面が評価され大型受注を獲得するなど実績も出始めている。また、中国で大量生産体制を確立できればコスト競争力も向上するため、シェアを拡大できる可能性が十分にあると弊社では見ている。
c) 総合技術力
LEシステムは、国内で30年以上の間、VRFBにかかわる研究開発に携わってきた。国内外のセルメーカーとネットワークを築いている人材を技術顧問団として有しているほか、独自でもセル開発が可能なVRFB設計技術をもち、最適なVRFBシステムを提案できることが強みである。特許戦略の面においても、バナジウムの回収技術や電解液製造プロセス、VRFBシステムの設計などで複数の特許を有している(保有特許10件以上)。同社ではこうした豊富なノウハウを強みに、国内でトータルソリューションプロバイダーとして事業拡大を目指す。
(4) LEシステムの業績計画
LEシステムの業績計画は、2025年12月期の売上高で約10億円を見込んでいるが、市場規模の大きい中国での事業展開が本格化すれば、急速に拡大するものと予想される。中国工場の量産化によって低価格化が進むことを考えても、数百億円規模の事業に育つ可能性は十分にある。営業利益率も20%程度は可能と見られ、収益柱の1つに育つ可能性は十分にあると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. VRFB用電解液事業の戦略
(1) VRFBとは
同社は2023年10月にVRFB用電解液の開発、製造、販売を手掛けるLEシステムを100%子会社として新設した(旧 LEシステムから同年12月に事業承継)。VRFBは省エネ対策として1970年代から国策プロジェクトとして研究開発が進められてきた蓄電池で、現在広く普及しているリチウムイオン電池と比較して小型化には適さないものの、不燃性で安全性が高く長期間性能が劣化しないことや無制限に充放電が可能なことなどが特徴として挙げられる。
さらに、ほかの蓄電池が電極の化学変化で充放電を行うのに対して、VRFBは電解液の化学変化で充放電を行う仕組みのため、電解液を増やすだけで蓄電容量を容易に増やすことができ、設計の柔軟性があることから定置式の大型蓄電用途、具体的には太陽光発電や風力発電などに最適な蓄電池として注目され、ここ1〜2年で中国市場を中心に市場が急速に拡大している※。リチウムイオン電池(リン酸鉄系)との比較においては、初期コストは高いものの、10年運用でほぼ同コスト、20年運用で3割強コストが低くなり、長期運用を前提とした用途ではコスト優位性を発揮すると同社では試算している。
※ 中国におけるVRFB用電解液の公示入札実績は、2022年の200MWhから2023年は1,560MWh、2024年は3,700MWhと2年間で約18倍に急拡大した。
(2) 市場見通し
メガソーラー発電所の普及により、クリーンエネルギーの昼間の電力供給量が増加した一方で、需給面から廃棄されるケースも目立っており、発電した電力を一旦蓄えて夜間に利用するための定置式の大型蓄電池の必要性が国内外で急速に高まっている。同社提供の資料(世界銀行/国際復興銀行資料)によれば、定置式蓄電池の世界市場規模は2024年の234GWhから2030年は1,114GWhと4倍以上に拡大(年率30%成長)することが予測され、このうちVRFBについては2024年の5GWhから2030年は27GWh※と5倍以上(年率32%成長)の成長が見込まれる有望市場となっている。
※ VRFB用電解液に換算すると、2024年の約30万m3から2030年は約162万m3になる。
VRFBの市場の過半は中国を中心としたアジア地域で占められる見通しであり、既にVRFB市場に参入する企業も増えている。同社でも中国市場を開拓すべく、現地企業と合弁で製造拠点を開設し、2026年からの本格量産を目指す方針を打ち出している。
(3) 事業戦略
中国での事業戦略については、2024年11月に投資を行うための子会社、艾斯科技集団(厦門)有限公司を設立し、2025年3月にその子会社としてエネルギー関連会社の艾斯能源有限公司を設立、同子会社と現地パートナー企業で合弁会社を設立して、製造工場を建設する計画としている。また、合弁会社から技術指導料をLEシステムが得ることになる。新工場の規模については未定だが、中国内でトップシェアを目指しており、積極的に展開するものと予想される。なお、同社からは2024年度に総額約15億円を投下しており、地方政府からの補助金制度も活用しながら展開する予定である。
一方、国内市場では浪江工場(年産能力5千m3、約30億円)で引き続き電解液を製造し国内外に販売するのに加えて、電力コスト最適化から蓄電所建設までを顧客に提案するトータルソリューションプロバイダーとして、ワンストップサービスを提供することにしている。国内でも政府の政策によって定置式蓄電所の普及が進む方向にあり、潜在需要は大きい。
(4) LEシステムの強み
現状、電解液メーカーとしては中国メーカーが多いが、LEシステムは原材料の安定的な調達力、電解液生産プロセスのコスト競争力、多数の電池メーカーとの連携を可能とする総合技術力の3点を強みとして挙げており、これらの強みを生かして国内外の顧客開拓を進める戦略だ。
a) バナジウムの安定的な調達力
バナジウムの主要原産国は南アフリカ、中国、ロシア、米国の4ヶ国で9割超を占めている。用途としては製鋼添加剤向け(強度・耐熱性向上)が8割以上を占めているが、化学・エレクトロニクス業界向けでも幅広く利用されている。VRFB電解液用としては、五酸化バナジウムが一般的に用いられるが、市況変動により調達コストのコントロールが非常に難しいことが課題であった。LEシステムは、原材料として中間生成物であるメタバナジン酸アンモニウム(以下、AMV)を調達して製造しているため、市況変動の影響を受け難い。また、LEシステムでは火力発電所やプラント施設等から排出される廃棄物(残渣)からバナジウムを回収する多種の技術を保有しており、今後国内外の大手石油会社や鉄鋼メーカーのほか南アフリカの大手鉱山会社とも提携して、安定的に調達できる体制を確立することも考えられる。
b) コスト競争力
一般的な電解液の製造フローは、五酸化バナジウムを仕入れて、溶解・濾過、電解還元工程を経て3.5酸化バナジウムにし、電解液としている。これに対して、同社は五酸化バナジウムを精製するまでの中間生成物であるAMVから直接電解液を製造する技術を確立している。AMVは相対価格交渉で五酸化バナジウムよりも安価に調達できるほか、溶解時間が5分の1と短いため電気代が半分以下に低減できる。また、高い液面接触面積を持つ還元装置の利用で電解液の製造コストを他社比較で50%程度に抑えることが理論的には可能と同社では試算している。
VRFBのコストに占める電解液の比率は約35%と高いため、VRFBメーカーが採用するメリットは大きい。同社調べによれば、電解液に含まれる不純物の成分が他社製品より少ないことも強みとなる。不純物が少ないほど長期運用に適していると考えられるためだ。加えて、鉛フリーやアンチモンフリーの技術も確立しており、環境規制にも対応している。現状は国内工場で小規模ロット生産のため、中国メーカーと比較して割高な水準とはなっているが、品質面が評価され大型受注を獲得するなど実績も出始めている。また、中国で大量生産体制を確立できればコスト競争力も向上するため、シェアを拡大できる可能性が十分にあると弊社では見ている。
c) 総合技術力
LEシステムは、国内で30年以上の間、VRFBにかかわる研究開発に携わってきた。国内外のセルメーカーとネットワークを築いている人材を技術顧問団として有しているほか、独自でもセル開発が可能なVRFB設計技術をもち、最適なVRFBシステムを提案できることが強みである。特許戦略の面においても、バナジウムの回収技術や電解液製造プロセス、VRFBシステムの設計などで複数の特許を有している(保有特許10件以上)。同社ではこうした豊富なノウハウを強みに、国内でトータルソリューションプロバイダーとして事業拡大を目指す。
(4) LEシステムの業績計画
LEシステムの業績計画は、2025年12月期の売上高で約10億円を見込んでいるが、市場規模の大きい中国での事業展開が本格化すれば、急速に拡大するものと予想される。中国工場の量産化によって低価格化が進むことを考えても、数百億円規模の事業に育つ可能性は十分にある。営業利益率も20%程度は可能と見られ、収益柱の1つに育つ可能性は十分にあると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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