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わずか1カ月(2)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2025/03/03 10:34
配信元:FISCO
*10:34JST わずか1カ月(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
今、何をすべきか
トランプ氏は就任1カ月目にして、数多くの同盟国政府の怒りと混乱を招いた。ロシアと中国はトランプ発の不協和音に大喜びしたに違いないが、トランプ氏の有効な政策がどのようなものになるのかを判断するにはおそらく時期尚早である。ただ、トランプ氏とその腹心による数々の嘘と脅しの中には真実もいくつかある。中でも目立つのは、欧州の防衛費が少なすぎる上、それがあまりに長く続いているという指摘だ。これはNATOの成り立ちの問題でもある。20世紀の紛争が終わった当時、米国が軍事力でトップに立ち、それを維持することを望んだ一方で、欧州のほとんどの国はドイツが軍事的に強くなることを望まなかったはずだ。現代の世界で見られる不均衡は主に、米国が作った国際秩序の産物である。トランプ氏は今その秩序の終了を宣言しており、欧州とアジアの諸国にはそれに応じた対応が求められる。
地政学的な結びつきが壊れ、規範が崩れるのは偶然の出来事ではない。トランプ氏、そしてその背後にいる人々が米国の政策として望んでいるのだ。彼らは同盟や海外援助に懐疑的である。効率化の名のもと、マスク氏のDOGEプログラムで最初に閉鎖される政府機関がUSAIDであることに驚きはない。食料・医療プログラムを通して何百万人もの命を救う取り組みに貢献してきたこの人道支援機関が「無駄遣い、不正、濫用」の温床であるとして廃止される。だがマスク氏はその実際の証拠をまだ示していない。そのような不正があったのであれば、責任者を追及する法的枠組みがある。ところが、今回見られるのは政治的スローガンと、後の影響が十分検討されないまま下された誤った判断である。米国第一主義により米国の人気が海外でなくなる中、トランプ氏の取り巻きは連邦政府の抜本改革で内部から国を弱体化させている。
今回、トランプ氏が中国を標的にしていないことには何か意味があるのか。習国家主席に個人的に一目置いているため中国を脅威とみなしていないのか。それとも、中国におけるマスク氏のビジネス上の利益が影響して、さしあたりソフトな姿勢を示す傾向にあるのか。我々には知る由もないが、彼の中国に対する姿勢にかかわらず、地政学的情勢と外交に対する現在の「迷惑で乱暴な」アプローチを踏まえて、台湾などアジアの同盟国はどのような扱いをされるのか非常に心配しているに違いない。長年にわたり築かれてきた欧州同盟国との関係を踏みにじったトランプ氏が、日本や韓国、オーストラリアに異なる対応をするとは到底考えられない。トランプ氏のせいで米国がまったく信頼できないパートナーとなる中、アジア諸国の指導者は米国との向き合い方を考え直すべきである。古いモデルは崩壊した。最悪のシナリオが展開しなかったとしても、アジアの各国政府は今すぐに対応することが肝要である。ルビオ国務長官は中国をかねてから批判しており、彼が中国に戦いを仕掛けるのを見たい気もするが、彼の権限は限られているし自分の雇用も守らねばならない。この2人大統領制には今のところ誰も太刀打ちできない。両院で共和党が過半数を占める議会ですら、すぐ目の前で自らの権限が侵食されているのに沈黙を守っている。連邦政府の予算の使い方を決めるのは議会だが、DOGEが牽引する改革熱が高まる中、トランプ氏とマスク氏は再三再四、議会を無視してきた。
英国を含めた欧州諸国政府は、先週の出来事で大きなショックを受けている。好むと好まざるとにかかわらず、防衛面でかつてないほどの自助努力の必要がある。すなわち、今後は部隊を増員し、国産の軍装備品・軍需物資を増やし、米国を含めた外国への依存を減らし、共同防衛に向けて積極的に連携することが求められる。欧州統合軍となると当面は各国指導者の手に余る問題であろうが、より密接な連携を進めることが不可欠である。ロシアの脅威がかつて考えられていたほど強力ではないことはウクライナが身をもって証明している。一方、欧州は相変わらず大規模かつ豊かな国の集まりであり、まだ本当の実力を見せていない。アジア諸国も、同様の対応を検討しないことなどありえない。
ここ数年間、上り調子で敵対的な姿勢を強める中国から突きつけられていた大きな問いは、中国につくか米国につくかであった。アジアの多くの指導者はこの問いに向き合うことを望まず、現状維持を切望していた。そして今、この問いはさらに難題と化している。米国はほんの数カ月前と同じパートナーではなくなった。トランプ氏が取引対象とみなせばすべてが交換材料になりえ、今後もそれが続く。アジア諸国の経済と社会は、米国の安全保障の傘の下でこの70年間めざましい発展を遂げてきた。これからは、自立しながらも共通の脅威に協力して立ち向かうことがより重要になる。極めて難しい議論にも向き合う必要があるだろう。北朝鮮の脅威に対する防衛として、核爆弾の開発を韓国に求める向きもすでにあり、そうなれば日本もそれに倣う必要が出てくる可能性が高い。
トランプ氏とマスク氏は、次に起こる事態に何の備えもなく既成の秩序を破壊できることを実証している。世界はすでにロシアと中国が近隣国と貿易相手国を脅し、いじめる危険な時代に突入していたが、悲しむべきことに、そして信じられないことに、今や米国もその脅威に加担している。
写真: U.S. President Donald Trump in the Oval Office of the White House(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
<CS>
今、何をすべきか
トランプ氏は就任1カ月目にして、数多くの同盟国政府の怒りと混乱を招いた。ロシアと中国はトランプ発の不協和音に大喜びしたに違いないが、トランプ氏の有効な政策がどのようなものになるのかを判断するにはおそらく時期尚早である。ただ、トランプ氏とその腹心による数々の嘘と脅しの中には真実もいくつかある。中でも目立つのは、欧州の防衛費が少なすぎる上、それがあまりに長く続いているという指摘だ。これはNATOの成り立ちの問題でもある。20世紀の紛争が終わった当時、米国が軍事力でトップに立ち、それを維持することを望んだ一方で、欧州のほとんどの国はドイツが軍事的に強くなることを望まなかったはずだ。現代の世界で見られる不均衡は主に、米国が作った国際秩序の産物である。トランプ氏は今その秩序の終了を宣言しており、欧州とアジアの諸国にはそれに応じた対応が求められる。
地政学的な結びつきが壊れ、規範が崩れるのは偶然の出来事ではない。トランプ氏、そしてその背後にいる人々が米国の政策として望んでいるのだ。彼らは同盟や海外援助に懐疑的である。効率化の名のもと、マスク氏のDOGEプログラムで最初に閉鎖される政府機関がUSAIDであることに驚きはない。食料・医療プログラムを通して何百万人もの命を救う取り組みに貢献してきたこの人道支援機関が「無駄遣い、不正、濫用」の温床であるとして廃止される。だがマスク氏はその実際の証拠をまだ示していない。そのような不正があったのであれば、責任者を追及する法的枠組みがある。ところが、今回見られるのは政治的スローガンと、後の影響が十分検討されないまま下された誤った判断である。米国第一主義により米国の人気が海外でなくなる中、トランプ氏の取り巻きは連邦政府の抜本改革で内部から国を弱体化させている。
今回、トランプ氏が中国を標的にしていないことには何か意味があるのか。習国家主席に個人的に一目置いているため中国を脅威とみなしていないのか。それとも、中国におけるマスク氏のビジネス上の利益が影響して、さしあたりソフトな姿勢を示す傾向にあるのか。我々には知る由もないが、彼の中国に対する姿勢にかかわらず、地政学的情勢と外交に対する現在の「迷惑で乱暴な」アプローチを踏まえて、台湾などアジアの同盟国はどのような扱いをされるのか非常に心配しているに違いない。長年にわたり築かれてきた欧州同盟国との関係を踏みにじったトランプ氏が、日本や韓国、オーストラリアに異なる対応をするとは到底考えられない。トランプ氏のせいで米国がまったく信頼できないパートナーとなる中、アジア諸国の指導者は米国との向き合い方を考え直すべきである。古いモデルは崩壊した。最悪のシナリオが展開しなかったとしても、アジアの各国政府は今すぐに対応することが肝要である。ルビオ国務長官は中国をかねてから批判しており、彼が中国に戦いを仕掛けるのを見たい気もするが、彼の権限は限られているし自分の雇用も守らねばならない。この2人大統領制には今のところ誰も太刀打ちできない。両院で共和党が過半数を占める議会ですら、すぐ目の前で自らの権限が侵食されているのに沈黙を守っている。連邦政府の予算の使い方を決めるのは議会だが、DOGEが牽引する改革熱が高まる中、トランプ氏とマスク氏は再三再四、議会を無視してきた。
英国を含めた欧州諸国政府は、先週の出来事で大きなショックを受けている。好むと好まざるとにかかわらず、防衛面でかつてないほどの自助努力の必要がある。すなわち、今後は部隊を増員し、国産の軍装備品・軍需物資を増やし、米国を含めた外国への依存を減らし、共同防衛に向けて積極的に連携することが求められる。欧州統合軍となると当面は各国指導者の手に余る問題であろうが、より密接な連携を進めることが不可欠である。ロシアの脅威がかつて考えられていたほど強力ではないことはウクライナが身をもって証明している。一方、欧州は相変わらず大規模かつ豊かな国の集まりであり、まだ本当の実力を見せていない。アジア諸国も、同様の対応を検討しないことなどありえない。
ここ数年間、上り調子で敵対的な姿勢を強める中国から突きつけられていた大きな問いは、中国につくか米国につくかであった。アジアの多くの指導者はこの問いに向き合うことを望まず、現状維持を切望していた。そして今、この問いはさらに難題と化している。米国はほんの数カ月前と同じパートナーではなくなった。トランプ氏が取引対象とみなせばすべてが交換材料になりえ、今後もそれが続く。アジア諸国の経済と社会は、米国の安全保障の傘の下でこの70年間めざましい発展を遂げてきた。これからは、自立しながらも共通の脅威に協力して立ち向かうことがより重要になる。極めて難しい議論にも向き合う必要があるだろう。北朝鮮の脅威に対する防衛として、核爆弾の開発を韓国に求める向きもすでにあり、そうなれば日本もそれに倣う必要が出てくる可能性が高い。
トランプ氏とマスク氏は、次に起こる事態に何の備えもなく既成の秩序を破壊できることを実証している。世界はすでにロシアと中国が近隣国と貿易相手国を脅し、いじめる危険な時代に突入していたが、悲しむべきことに、そして信じられないことに、今や米国もその脅威に加担している。
写真: U.S. President Donald Trump in the Oval Office of the White House(写真:ロイター/アフロ)
(※1)https://grici.or.jp/
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