みんかぶニュース 市況・概況
明日の株式相場に向けて=ディープシークは好機をもたらすか
配信日時:2025/01/30 17:30
配信元:MINKABU
きょう(30日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比99円高の3万9513円と続伸。相変わらず焦点の定まらない曖昧模糊とした地合いが続いている。今週は週明け早々に「ディープシーク・ショック」に見舞われたが、これについてはその影響がまだはっきりとは見えてこない。ソフトバンクグループ<9984.T>が参画する「スターゲート」プロジェクトが盛り上がる矢先、ハシゴを外された格好で日米を問わず関連株にとっては衝撃度の強いネガティブ材料となった。ただし、多分に思惑先行で嫌気している部分もある。とりあえず、このニュースで反射的に機関投資家はAI用半導体周辺に位置する銘柄の持ち高を軽くしたものの、その後は様子見的なムードが漂う。東京市場では半導体関連からその他の銘柄に資金が流れ込む呼び水ともなっており、リターンリバーサル効果でむしろ全体として値上がり銘柄数が増えるような現象も起きた。
米国側はディープシークのAI新モデルについて、トランプ米大統領が好意的ともとれる発言をし、エヌビディアもあっさりその優秀性を認めるなど余裕を感じさせたが、案の定それは本音とは別物で、その後は国を挙げて中国への包囲網を強化する動きがあからさまとなっている。オープンAIのデータを不正利用して高性能かつ低コストのAI基盤モデルの開発に成功した、という疑念で調査を始めており、経済安全保障の観点から政治的な圧力がかかることは避けられない。中国によるデータのスパイ行為が事実であってもそうでなくても、米中間のAI摩擦は一段と先鋭化していく方向が見えている。
マクロ面の材料では今週は欧米の金融政策決定会合が注目材料だ。FOMCは29日(日本時間きょう未明)に結果が開示され、事前予想通り政策金利の現状維持(利下げ見送り)となったが、声明文が“タカ派的”という理由で前日のNYダウ、ナスダック総合株価指数ともに下げ幅を広げる場面があった。
具体的に何がタカ派的だったかというと、インフレ率に対する評価で、前回までの会合後の声明文には記されていた「2%の物価目標に向けて前進した」というセンテンスが削除されたことを指している。これにマーケットは神経質に反応した。その後のパウエルFRB議長の記者会見でも当然俎上に載ったが、削除した理由についてパウエル氏いわく「文章を短くしただけ」という、聞き手を脱力させるようなフォローを入れた。それでもダウなど全体指数にはそれなりに下げ渋る効果が働いたが、マーケットで若干インフレ再燃の匂いが意識されてきたことは、今後のFRBの緩和姿勢にも影響を与える前兆となる。
一方、きょうはECB理事会が政策金利を発表するが、こちらは0.25%の利下げが濃厚視されている状況。ここにきてドイツの主要株価指数であるDAXが強さを取り戻し、前日まで連日の史上最高値更新となっている。英FTSE100も最高値近辺で頑強な値動きを維持しており、何のことはないトランプ米大統領就任で“米国第一主義”による弊害を恐れていた欧州株市場が、当の米株市場よりもむしろリスクオンを享受しているのは皮肉なところである。やはり背景にあるのは金融政策で、ECBは今回利下げを行った場合、4会合連続となる。更に次回3月会合でも緩和策を継続する公算が大きい。
金融政策について日本は荒野を一人行く状態で、その点は楽しみが少ないが、世界の中で圧倒的に金利水準が低いのは事実であり、マーケットを取り巻く資金は今のところ潤沢だ。きょうは半導体関連が買い戻されたが、その陰で任天堂<7974.T>が静かに最高値街道を走るなどIP関連株にも根強い買いが続いている。また、再び上昇エンジンが作動したビットコイン価格を横目にメタプラネット<3350.T>など仮想通貨関連の一角が生気を取り戻した。基本は循環物色で、欲張って深追いすると足をすくわれるが、幅広くテーマごとに分散してヒットアンドアウェイで流動性相場を堪能することは可能だ。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に発表される1月の都区部消費者物価指数(CPI)のほか、12月の有効求人倍率、12月の失業率、12月の鉱工業生産、12月の商業動態統計などが開示される。また、午前中に3カ月物国庫短期証券の入札と2年国債の入札が予定。午後には12月の自動車輸出実績、12月の住宅着工統計が発表される。海外では12月の米個人所得・個人消費支出・PCEデフレーターにマーケットの関心が高い。このほか、ボウマンFRB理事の講演が予定され、その内容に耳目が集まる。(銀)
出所:MINKABU PRESS
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