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アーレスティ Research Memo(9):車体軽量化、CO2排出量削減、循環型社会の形成に貢献する(2)
配信日時:2025/01/23 14:09
配信元:FISCO
*14:09JST アーレスティ Research Memo(9):車体軽量化、CO2排出量削減、循環型社会の形成に貢献する(2)
■アーレスティ<5852>の中長期の成長戦略
(2) 2224中期経営計画の進捗状況
(a) 低コストで生産性の高いものづくりの確立
低コストで生産性の高いものづくりの確立に向けては、デジタル技術を活用した開発リードタイムの短縮、リーンな生産体制の拡大を進めている。開発工程においては、ロボット動作プログラムを事前にシュミレーションすることによる試作現場での準備作業時間の85%削減、設計時の解析結果と実際の鋳造結果のCAE解析による精度向上による試作回数・評価工数の削減、グローバルで保有する設備の使用状況の見える化による仕様決定に関わる工数削減などを進めリードタイムの短縮を実現している。工場においては、従来は生産工程内での自動化・省力化が中心であったが、現在は、生産工程間の自動化・省力化に着目して、AGV(Automated Guided Vehicle:自動搬送車と呼ばれる無人搬送システム)/AGF(Automated Guided Forklift:自動フォークリフト)の利用、ビッグデータやAIを活用した自動外観検査装置の導入などリーンな生産体制整備を進めている。また、業務・技術の標準化により同一品質・同一生産性を確実なものにし、「ワンプリントマルチロケーション」の強みをさらに強化しているほか、グローバルで地域の受注変動に対応するために製品、生産設備の補完を進めている。日本、中国、メキシコから、労務費が高騰し慢性的な人手不足に陥っている米国への製品補完拡大、日系自動車の需要の低下により生産余力の生まれた中国からインドへの生産設備の移管、米国からメキシコへの金型移管などを進めている。
(b) CO2削減活動の推進
同社の製品の97%はアルミスクラップからリサイクルされたアルミニウム二次合金を使用しており、再生アルミのCO2排出量はアルミ新塊の約1/8と元々環境優位性を有しているが、そのほかにCO2排出量削減に向けた新たな取り組みを進めている。溶解炉のエネルギーを重油から単位熱量当たりのCO2排出量を約29%削減できるLNGへの切替えを進めているほか、アルミニウムをインゴットではなく直接溶湯で購入し溶解エネルギーを50%削減している。また、天然ガス炉に比べてCO2排出量を65%削減するとともに、エネルギーコストも40%低減する電気溶解炉を米国で導入し、2024年10月から稼働している。さらに、高い延性を必要とするためアルミ新塊を使用する車体系部品について、延性の低いリサイクル材を活用した高延性アルミ合金の製造技術を開発し、車両の軽量化、CO2の排出量削減で地球環境に貢献している。太陽光発電も国内拠点に順次導入し、2024年度末までに設置可能な拠点にはすべて導入予定だ。
(c) 電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの着実なシフト
電動車搭載部品の売上高は順調に増加しており、2023年度上期に活動した2026年度受注分の売上高比率は36%まで上昇している。世界の自動車生産台数は堅調に増加していくことが見込まれており、長期的には自動車パワートレインの電動化が進んでいくと同社では考えている。なお、直近では充電インフラの未整備、バッテリーコストの上昇、HEVの技術的な進歩などからBEVの普及スピードが鈍化し、HEV、PHEVが注目されるようになってきている。同社においては、電動車搭載部品を中心とした受注を継続する方針であり、電動車が増加する米国市場及び同市場に対する「ニアショアリング」の投資先として優位性の高いメキシコ市場において、E-Axle関連部品を重点受注部品として営業している。その結果、米国工場では欧米Tier1※向けE-Axleケースを2025年1月から量産予定であり、メキシコ工場では米国Tier1向け大型ピックアップトラック用トランスファーケースを2024年11月より量産している。また、インドは世界第3位の自動車市場であり、今後も電動車を中心に市場が成長すると同社では判断している。現時点ではICEが中心であり、地域のPTミックス(パワートレイン(動力系統)の構成比率)に応じた既存部品ビジネスを強化していく。すでにインド工場において日系Tier1向けE-Axleケースを2025年より量産予定であり、バッテリーケースも2024年9月より量産している。中国においてもBEVが鈍化し、PHEVが増加している。従来価格面において取引が難しかった中国資本系OEM/Tier1とのビジネスにおいても、同社の高い品質が評価され信頼を得られており、広州工場において、複数の顧客からPHEV用ブロックの受注が拡大しているなど、PHEVのマーケットは期待できる。他地域で受注実績が出始めているE-Axle部品領域と併せて、製品難易度から品質が武器になる領域で行き過ぎた価格競争を回避する方針だ。
※ 自動車メーカー(OEM)に直接部品やシステムを供給するサプライヤー
(d) 需要創出技術・生産性向上技術開発での売上高貢献
電動化に伴い重量化する車両の軽量化ニーズに応える技術として、SWAD※、ジーテクト<5970>と共同開発したマルチマテリアルボディなど車体系部品へのダイカスト採用を提案している。ダイカストには鋼板を直接スポット溶接できず、特殊な設備(SPR)でリベット接合しなければならないため新たな設備投資が必要であり、車体にダイカストの導入が進まない一因となっていた。同社では、これを既存のスポット溶接設備を利用して、中継鋼板を介してスポット溶接できる技術を開発した(特許登録番号7270056)。
※ スワッド:Spot Weld Able Diecastの略でスポット溶接が可能なダイカスト
また、超大型のダイカストマシン(一般的には6,000トン以上の型締力を持つ大型ダイカストマシン)を使用したアンダーボディの一体成形であるギガキャストは、生産場所の制約やアルミ使用によるコスト増などのデメリットもあり、同社では鉄プレスとダイカスト部品が混在するマルチマテリアルボディのコンセプトモデルを開発・提案している。プレス36部品を2部品へと大幅な部品削減を実現し、ギガキャスト・鉄プレスよりも軽量・低コストで環境性能も優れ、すでに2028年以降の量産を見据えたOEMとの先行開発フェーズに入っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
<HN>
(2) 2224中期経営計画の進捗状況
(a) 低コストで生産性の高いものづくりの確立
低コストで生産性の高いものづくりの確立に向けては、デジタル技術を活用した開発リードタイムの短縮、リーンな生産体制の拡大を進めている。開発工程においては、ロボット動作プログラムを事前にシュミレーションすることによる試作現場での準備作業時間の85%削減、設計時の解析結果と実際の鋳造結果のCAE解析による精度向上による試作回数・評価工数の削減、グローバルで保有する設備の使用状況の見える化による仕様決定に関わる工数削減などを進めリードタイムの短縮を実現している。工場においては、従来は生産工程内での自動化・省力化が中心であったが、現在は、生産工程間の自動化・省力化に着目して、AGV(Automated Guided Vehicle:自動搬送車と呼ばれる無人搬送システム)/AGF(Automated Guided Forklift:自動フォークリフト)の利用、ビッグデータやAIを活用した自動外観検査装置の導入などリーンな生産体制整備を進めている。また、業務・技術の標準化により同一品質・同一生産性を確実なものにし、「ワンプリントマルチロケーション」の強みをさらに強化しているほか、グローバルで地域の受注変動に対応するために製品、生産設備の補完を進めている。日本、中国、メキシコから、労務費が高騰し慢性的な人手不足に陥っている米国への製品補完拡大、日系自動車の需要の低下により生産余力の生まれた中国からインドへの生産設備の移管、米国からメキシコへの金型移管などを進めている。
(b) CO2削減活動の推進
同社の製品の97%はアルミスクラップからリサイクルされたアルミニウム二次合金を使用しており、再生アルミのCO2排出量はアルミ新塊の約1/8と元々環境優位性を有しているが、そのほかにCO2排出量削減に向けた新たな取り組みを進めている。溶解炉のエネルギーを重油から単位熱量当たりのCO2排出量を約29%削減できるLNGへの切替えを進めているほか、アルミニウムをインゴットではなく直接溶湯で購入し溶解エネルギーを50%削減している。また、天然ガス炉に比べてCO2排出量を65%削減するとともに、エネルギーコストも40%低減する電気溶解炉を米国で導入し、2024年10月から稼働している。さらに、高い延性を必要とするためアルミ新塊を使用する車体系部品について、延性の低いリサイクル材を活用した高延性アルミ合金の製造技術を開発し、車両の軽量化、CO2の排出量削減で地球環境に貢献している。太陽光発電も国内拠点に順次導入し、2024年度末までに設置可能な拠点にはすべて導入予定だ。
(c) 電動車向け部品中心の事業ポートフォリオへの着実なシフト
電動車搭載部品の売上高は順調に増加しており、2023年度上期に活動した2026年度受注分の売上高比率は36%まで上昇している。世界の自動車生産台数は堅調に増加していくことが見込まれており、長期的には自動車パワートレインの電動化が進んでいくと同社では考えている。なお、直近では充電インフラの未整備、バッテリーコストの上昇、HEVの技術的な進歩などからBEVの普及スピードが鈍化し、HEV、PHEVが注目されるようになってきている。同社においては、電動車搭載部品を中心とした受注を継続する方針であり、電動車が増加する米国市場及び同市場に対する「ニアショアリング」の投資先として優位性の高いメキシコ市場において、E-Axle関連部品を重点受注部品として営業している。その結果、米国工場では欧米Tier1※向けE-Axleケースを2025年1月から量産予定であり、メキシコ工場では米国Tier1向け大型ピックアップトラック用トランスファーケースを2024年11月より量産している。また、インドは世界第3位の自動車市場であり、今後も電動車を中心に市場が成長すると同社では判断している。現時点ではICEが中心であり、地域のPTミックス(パワートレイン(動力系統)の構成比率)に応じた既存部品ビジネスを強化していく。すでにインド工場において日系Tier1向けE-Axleケースを2025年より量産予定であり、バッテリーケースも2024年9月より量産している。中国においてもBEVが鈍化し、PHEVが増加している。従来価格面において取引が難しかった中国資本系OEM/Tier1とのビジネスにおいても、同社の高い品質が評価され信頼を得られており、広州工場において、複数の顧客からPHEV用ブロックの受注が拡大しているなど、PHEVのマーケットは期待できる。他地域で受注実績が出始めているE-Axle部品領域と併せて、製品難易度から品質が武器になる領域で行き過ぎた価格競争を回避する方針だ。
※ 自動車メーカー(OEM)に直接部品やシステムを供給するサプライヤー
(d) 需要創出技術・生産性向上技術開発での売上高貢献
電動化に伴い重量化する車両の軽量化ニーズに応える技術として、SWAD※、ジーテクト<5970>と共同開発したマルチマテリアルボディなど車体系部品へのダイカスト採用を提案している。ダイカストには鋼板を直接スポット溶接できず、特殊な設備(SPR)でリベット接合しなければならないため新たな設備投資が必要であり、車体にダイカストの導入が進まない一因となっていた。同社では、これを既存のスポット溶接設備を利用して、中継鋼板を介してスポット溶接できる技術を開発した(特許登録番号7270056)。
※ スワッド:Spot Weld Able Diecastの略でスポット溶接が可能なダイカスト
また、超大型のダイカストマシン(一般的には6,000トン以上の型締力を持つ大型ダイカストマシン)を使用したアンダーボディの一体成形であるギガキャストは、生産場所の制約やアルミ使用によるコスト増などのデメリットもあり、同社では鉄プレスとダイカスト部品が混在するマルチマテリアルボディのコンセプトモデルを開発・提案している。プレス36部品を2部品へと大幅な部品削減を実現し、ギガキャスト・鉄プレスよりも軽量・低コストで環境性能も優れ、すでに2028年以降の量産を見据えたOEMとの先行開発フェーズに入っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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