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ダイコク電 Research Memo(8):「スマート遊技機」の市場導入により、市場は活性化の兆し
配信日時:2025/01/10 17:28
配信元:FISCO
*17:28JST ダイコク電 Research Memo(8):「スマート遊技機」の市場導入により、市場は活性化の兆し
■ダイコク電機<6430>の業界環境
ここ数年の業界環境の状況を整理すると、パチンコホール業界は遊技人口の減少、低貸玉化への流れ、消費税増税の影響などを受けて厳しい環境が続いてきた。特に、2015年に業界における自主規制(高射幸性機種の制限等)がパチンコ及びパチスロ機の両方で実施されると、2016年には「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」の回収・撤去の問題が動き出し、業界全体が停滞感に覆われた。さらに2017年9月に「新規則」が公布されると、業界に対する悲観的な見方や先行き不透明感が広がり、しばらく混沌とした状況が続いた。2020年に入ってからはコロナ禍の影響(ホール休業や時短営業等)も重なり、厳しい環境に拍車をかけた。
ただ、2021年に2022年1月末を期限とする「新規則」機への段階的な入れ替えが進む一方、2022年3月に「技術上の規格解釈基準」の改正が施行され、日本遊技機工業組合の内規制定によって新たな遊技性(「遊タイム」など)を有する遊技機がリリースされた。さらに同年11月からは「スマート遊技機」の段階的な導入が開始され、遊技機市場やパチンコホール業界は新たな時代を迎えようとしている。
警察庁「風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況」によれば、パチンコホール数は年々減少傾向にあり、2013年から2023年の10年間で年平均5.1%減となっている。足元においては、「新規則」の影響等により新規出店の減少が顕著である。ただ、2023年12月末のパチンコホール数は7,083店舗(前年末比582店舗減)であるが、同社のホールコンピュータ顧客数のシェアは40.0%と、年々高まっている。同社の顧客層は地域1番の優良店が多く、店舗規模も市場平均よりも大きい※。したがって比較的景気変動に対する抵抗力が強く、投資余力にも優れた顧客基盤と言える。「スマート遊技機」による新たな時代を迎え、大型店舗を中心に投資意欲が戻ってくれば、同社にとっては事業拡大の好機になる可能性が高い。
※ 大型店舗(501台以上)におけるシェアは約60%。
遊技機の市場設置台数については減少傾向で推移しているものの、1店舗当たりの遊技機設置台数は増加しており、店舗の大型化が示されている。既述のとおり、スケールメリットが生かせる大型店舗は同社の得意とするところであり、機能性や付加価値による高い投資効果を訴求できる同社にとっては追い風と考えられる。
さらに直近の動きとして、店舗数が減少するなかでも市場全体の売上規模及び売上総利益の規模がプラスに転じたことがある。2023年の売上規模は15.7兆円(前年比7.5%増)、売上総利益の規模は2.54兆円(同6.7%増)となり前年比5%以上の上昇は11年ぶりである。これはスマートパチスロによる効果であり、斜陽産業化のイメージを払拭するとともに、「スマート遊技機」を中心に業界が転換期を迎えていることを示すデータと言える。
■過去の業績推移
「スマート遊技機」による業績回復・拡大を機に、持続的な成長基盤を確立
過去の業績を振り返ると、個人消費の冷え込みと東日本大震災の影響が重なった2011年3月期に業績の落ち込みがあったが、その後はパチンコホール業界が縮小傾向にあるなかでも、同社の業績は順調に回復した。特に高い市場シェアを持つ「情報システム事業」は、2015年3月期まで3期連続で過去最高の売上高を更新し、同社の業績を支えてきた。ただ、2016年3月期以降は、業界におけるマイナス材料(自主規制や「回収・撤去」の影響、「新規則」に伴う先行き不透明感など)に加え、2020年に入ってからのコロナ禍の影響等も重なり、売上高は低調に推移した。ところが、2023年3月期はコロナ禍からの回復に加え、2022年11月より市場導入されたスマートパチスロ機により市場環境は一変し、それに伴って同社の業績も「情報システム事業」を軸に回復・拡大している。2024年3月期の「情報システム事業」は過去最高売上高を達成した。
利益面では「情報システム事業」が同社の収益源となっており、高い利益率を維持してきた。2014年3月期から2016年3月期までは次世代製品群向けの研究開発費の増加等により利益率は低下した。2018年3月期から2022年3月期までの期間は、これらの研究開発費が一巡したものの、売上高の低迷等により利益率も過去の高い水準に戻ることはなかった。もっとも2023年3月期は売上高の回復や高付加価値製品の販売増により、「情報システム事業」の利益率は大きく改善した。また、MGサービスの伸長などストック型ビジネスモデルへの転換は着実に進んでおり、その点も収益の下支え要因となっている。
財務面では、財務基盤の安定性を示す自己資本比率は、内部留保の積み上げ等により上昇傾向で推移してきた。2023年3月期は売上高の急拡大により売掛金等の資産が増加し若干低下したものの、68.7%の高水準を確保した。また、短期の支払能力を示す流動比率についても、潤沢な現金及び預金を中心に水準を確保しており、盤石な財務基盤は今後の成長に向けた原動力としても強みと言える。一方、資本効率性を示すROEは2015年3月期以降、低調に推移してきた。いずれも最終損益の落ち込みによるものであり、2015年3月期は取引先メーカーの自己破産に伴う損失、2016年3月期は自主規制の影響に伴う専用部材(パチスロ機関連)の評価替えに伴う損失が原因である。ただ、利益の回復とともにROEも大きく改善し、2024年3月期は22.8%と高い水準となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<HN>
ここ数年の業界環境の状況を整理すると、パチンコホール業界は遊技人口の減少、低貸玉化への流れ、消費税増税の影響などを受けて厳しい環境が続いてきた。特に、2015年に業界における自主規制(高射幸性機種の制限等)がパチンコ及びパチスロ機の両方で実施されると、2016年には「検定機と性能が異なる可能性のあるぱちんこ遊技機」の回収・撤去の問題が動き出し、業界全体が停滞感に覆われた。さらに2017年9月に「新規則」が公布されると、業界に対する悲観的な見方や先行き不透明感が広がり、しばらく混沌とした状況が続いた。2020年に入ってからはコロナ禍の影響(ホール休業や時短営業等)も重なり、厳しい環境に拍車をかけた。
ただ、2021年に2022年1月末を期限とする「新規則」機への段階的な入れ替えが進む一方、2022年3月に「技術上の規格解釈基準」の改正が施行され、日本遊技機工業組合の内規制定によって新たな遊技性(「遊タイム」など)を有する遊技機がリリースされた。さらに同年11月からは「スマート遊技機」の段階的な導入が開始され、遊技機市場やパチンコホール業界は新たな時代を迎えようとしている。
警察庁「風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況」によれば、パチンコホール数は年々減少傾向にあり、2013年から2023年の10年間で年平均5.1%減となっている。足元においては、「新規則」の影響等により新規出店の減少が顕著である。ただ、2023年12月末のパチンコホール数は7,083店舗(前年末比582店舗減)であるが、同社のホールコンピュータ顧客数のシェアは40.0%と、年々高まっている。同社の顧客層は地域1番の優良店が多く、店舗規模も市場平均よりも大きい※。したがって比較的景気変動に対する抵抗力が強く、投資余力にも優れた顧客基盤と言える。「スマート遊技機」による新たな時代を迎え、大型店舗を中心に投資意欲が戻ってくれば、同社にとっては事業拡大の好機になる可能性が高い。
※ 大型店舗(501台以上)におけるシェアは約60%。
遊技機の市場設置台数については減少傾向で推移しているものの、1店舗当たりの遊技機設置台数は増加しており、店舗の大型化が示されている。既述のとおり、スケールメリットが生かせる大型店舗は同社の得意とするところであり、機能性や付加価値による高い投資効果を訴求できる同社にとっては追い風と考えられる。
さらに直近の動きとして、店舗数が減少するなかでも市場全体の売上規模及び売上総利益の規模がプラスに転じたことがある。2023年の売上規模は15.7兆円(前年比7.5%増)、売上総利益の規模は2.54兆円(同6.7%増)となり前年比5%以上の上昇は11年ぶりである。これはスマートパチスロによる効果であり、斜陽産業化のイメージを払拭するとともに、「スマート遊技機」を中心に業界が転換期を迎えていることを示すデータと言える。
■過去の業績推移
「スマート遊技機」による業績回復・拡大を機に、持続的な成長基盤を確立
過去の業績を振り返ると、個人消費の冷え込みと東日本大震災の影響が重なった2011年3月期に業績の落ち込みがあったが、その後はパチンコホール業界が縮小傾向にあるなかでも、同社の業績は順調に回復した。特に高い市場シェアを持つ「情報システム事業」は、2015年3月期まで3期連続で過去最高の売上高を更新し、同社の業績を支えてきた。ただ、2016年3月期以降は、業界におけるマイナス材料(自主規制や「回収・撤去」の影響、「新規則」に伴う先行き不透明感など)に加え、2020年に入ってからのコロナ禍の影響等も重なり、売上高は低調に推移した。ところが、2023年3月期はコロナ禍からの回復に加え、2022年11月より市場導入されたスマートパチスロ機により市場環境は一変し、それに伴って同社の業績も「情報システム事業」を軸に回復・拡大している。2024年3月期の「情報システム事業」は過去最高売上高を達成した。
利益面では「情報システム事業」が同社の収益源となっており、高い利益率を維持してきた。2014年3月期から2016年3月期までは次世代製品群向けの研究開発費の増加等により利益率は低下した。2018年3月期から2022年3月期までの期間は、これらの研究開発費が一巡したものの、売上高の低迷等により利益率も過去の高い水準に戻ることはなかった。もっとも2023年3月期は売上高の回復や高付加価値製品の販売増により、「情報システム事業」の利益率は大きく改善した。また、MGサービスの伸長などストック型ビジネスモデルへの転換は着実に進んでおり、その点も収益の下支え要因となっている。
財務面では、財務基盤の安定性を示す自己資本比率は、内部留保の積み上げ等により上昇傾向で推移してきた。2023年3月期は売上高の急拡大により売掛金等の資産が増加し若干低下したものの、68.7%の高水準を確保した。また、短期の支払能力を示す流動比率についても、潤沢な現金及び預金を中心に水準を確保しており、盤石な財務基盤は今後の成長に向けた原動力としても強みと言える。一方、資本効率性を示すROEは2015年3月期以降、低調に推移してきた。いずれも最終損益の落ち込みによるものであり、2015年3月期は取引先メーカーの自己破産に伴う損失、2016年3月期は自主規制の影響に伴う専用部材(パチスロ機関連)の評価替えに伴う損失が原因である。ただ、利益の回復とともにROEも大きく改善し、2024年3月期は22.8%と高い水準となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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