注目トピックス 経済総合
バランスが肝心:東南アジアにおける中国、日本、台湾のインフラ戦略(3)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2023/11/07 10:52
配信元:FISCO
*10:52JST バランスが肝心:東南アジアにおける中国、日本、台湾のインフラ戦略(3)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「バランスが肝心:東南アジアにおける中国、日本、台湾のインフラ戦略(2)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
日本のFOIP戦略:ASEANへの競争的関与
「インフラ建設から質の高いイニシアチブへ - 批判的検証」の項では、中国の「一帯一路構想(BRI)2.0」において進化を続けるアプローチについて掘り下げ、世界規模のインフラ開発戦略から、より繊細な地域重視へと大きく方向転換する様子を明らかにした。中国は一帯一路構想を、質の高い持続可能なプロジェクトを優先するよう調整を加えているが、ここでの主な受益者は東南アジア諸国であるようだ。この再調整は、本項「日本のFOIP戦略:ASEANへの競争的関与」で考察する、より広範な動きと方向性を同じくするものだ。同地域において、日本は存在感の強化を積極的に推し進めている。競争の風向きを変えるのは、中国の戦略の変化だけとは限らない。日本の
「自由で開かれたインド太平洋」(Free and Open Indo-Pacific、FOIP)戦略はまさに、この変化のなかで戦おうとするものであり、経済的利益と地域にとっての価値観との微妙なバランスをいかに取るかが戦いの肝となる。
日本のFOIP戦略は、インド太平洋地域における日本の外交政策の重要な要素である。
日本は東南アジア地域のダイナミクスを積極的に形成しようとしており、中国や台湾など同地域に参戦する他のプレイヤーとの競争状態に身を置くことは避けられない。
地域的影響力をめぐる競争:
・競争の増加:日本のFOIP戦略は、ルールに基づく国際秩序、航行の自由、民主的価値観といった原則を推進するものだ。同戦略は東南アジアにおける日本のプレゼンスを強化するためのものであるが、他の地域イニシアチブ、特に中国の「一帯一路構想
(BRI)2.0」や台湾の「新南向政策(New Southbound Policy、NSP)」との競争を不用意に激化させるものでもある。複数の選択肢を提示されたASEAN諸国は、日本のFOIPと連携することの利点を、他の地域のプレイヤーとの連携と比較検討する必要に迫られる。
・経済的競争:一帯一路構想、FOIP、NSPはいずれも、東南アジアにおける経済発展とインフラ投資の促進を目指すものである。日本が質の高いインフラとガバナンスを重視する点は、同国のFOIP戦略とも合致している。一方、中国の一帯一路構想と台湾のNSPは独自のインフラプロジェクトに取り組もうとしている。東南アジア諸国にとって、これら3国が提示する経済的インセンティブやプロジェクトのどれもが魅力的に映った場合、経済的なライバル関係が生まれることになる。
価値観と利益のバランス:
・質と量のバランス:FOIPは質の高いインフラ、ガバナンス、持続可能性に重点を置いており、他の地域イニシアチブとは一線を画している。FOIPのプレイヤーである日本は、透明性、環境の持続可能性、経済的実行可能性といった厳しい基準を遵守したインフラプロジェクトを推進する。東南アジア諸国は、質を重視する日本のアプローチを取るか、それとも中国の一帯一路構想が提供する、大規模で広範囲にわたるプロジェクトを取るか、決断しなくてはならない。
・価値観との整合性:日本のFOIPの特徴は、民主主義、人権、法の支配といった共通の価値観を重視している点である。こうした価値観はFOIP戦略の基本であり、多くのASEAN諸国が高い関心を寄せているグッドガバナンスの原則にも適っている。地域パートナーが協力パートナーを選ぶ際は、これら価値観とプロジェクトの整合性を考慮する可能性が高い。
地域ダイナミクスへの影響:日本のFOIPがASEANに競争的に関与することで、より広範な地域ダイナミクスが形成される。各国が日本、中国、台湾と連携することの是非を吟味するなかで、東南アジアの政治的・経済的バランスに影響が及ぶことも考えられる。同地域の貿易形態、インフラ開発、政治的同盟にも影響をもたらす可能性がある。
変化するダイナミクスへの適応:台湾や中国と同様、日本もまた、ダイナミックかつ競争の激しい東南アジアに相応しいプレイヤーであり続けるため、戦略の適応を余儀なくされる。日本が目下抱えている課題は、同地域で他のプレイヤーが提供する魅力的な経済的インセンティブと競いながら、質の高いプロジェクト、グッドガバナンス、民主的価値観がもたらす利点を強調し続けることである。
つまり、日本のFOIP戦略はASEANへの競争的関与の1つである以上、中国のBRIや台湾のNSPなど、影響力を持つ他のアクターと競合することになる。同地域にこれら戦略が併存することで、各国は各々の価値観、利益、発展の必要性に基づいて戦略的選択を行うことになる。競争のダイナミクスは今後も変化し続け、東南アジアの政治、経済、インフラ情勢に大きな影響を与えることだろう。
「バランスが肝心:東南アジアにおける中国、日本、台湾のインフラ戦略(4)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: 中国「一帯一路」メディア協力フォーラム
(※1)https://grici.or.jp/
<CS>
日本のFOIP戦略:ASEANへの競争的関与
「インフラ建設から質の高いイニシアチブへ - 批判的検証」の項では、中国の「一帯一路構想(BRI)2.0」において進化を続けるアプローチについて掘り下げ、世界規模のインフラ開発戦略から、より繊細な地域重視へと大きく方向転換する様子を明らかにした。中国は一帯一路構想を、質の高い持続可能なプロジェクトを優先するよう調整を加えているが、ここでの主な受益者は東南アジア諸国であるようだ。この再調整は、本項「日本のFOIP戦略:ASEANへの競争的関与」で考察する、より広範な動きと方向性を同じくするものだ。同地域において、日本は存在感の強化を積極的に推し進めている。競争の風向きを変えるのは、中国の戦略の変化だけとは限らない。日本の
「自由で開かれたインド太平洋」(Free and Open Indo-Pacific、FOIP)戦略はまさに、この変化のなかで戦おうとするものであり、経済的利益と地域にとっての価値観との微妙なバランスをいかに取るかが戦いの肝となる。
日本のFOIP戦略は、インド太平洋地域における日本の外交政策の重要な要素である。
日本は東南アジア地域のダイナミクスを積極的に形成しようとしており、中国や台湾など同地域に参戦する他のプレイヤーとの競争状態に身を置くことは避けられない。
地域的影響力をめぐる競争:
・競争の増加:日本のFOIP戦略は、ルールに基づく国際秩序、航行の自由、民主的価値観といった原則を推進するものだ。同戦略は東南アジアにおける日本のプレゼンスを強化するためのものであるが、他の地域イニシアチブ、特に中国の「一帯一路構想
(BRI)2.0」や台湾の「新南向政策(New Southbound Policy、NSP)」との競争を不用意に激化させるものでもある。複数の選択肢を提示されたASEAN諸国は、日本のFOIPと連携することの利点を、他の地域のプレイヤーとの連携と比較検討する必要に迫られる。
・経済的競争:一帯一路構想、FOIP、NSPはいずれも、東南アジアにおける経済発展とインフラ投資の促進を目指すものである。日本が質の高いインフラとガバナンスを重視する点は、同国のFOIP戦略とも合致している。一方、中国の一帯一路構想と台湾のNSPは独自のインフラプロジェクトに取り組もうとしている。東南アジア諸国にとって、これら3国が提示する経済的インセンティブやプロジェクトのどれもが魅力的に映った場合、経済的なライバル関係が生まれることになる。
価値観と利益のバランス:
・質と量のバランス:FOIPは質の高いインフラ、ガバナンス、持続可能性に重点を置いており、他の地域イニシアチブとは一線を画している。FOIPのプレイヤーである日本は、透明性、環境の持続可能性、経済的実行可能性といった厳しい基準を遵守したインフラプロジェクトを推進する。東南アジア諸国は、質を重視する日本のアプローチを取るか、それとも中国の一帯一路構想が提供する、大規模で広範囲にわたるプロジェクトを取るか、決断しなくてはならない。
・価値観との整合性:日本のFOIPの特徴は、民主主義、人権、法の支配といった共通の価値観を重視している点である。こうした価値観はFOIP戦略の基本であり、多くのASEAN諸国が高い関心を寄せているグッドガバナンスの原則にも適っている。地域パートナーが協力パートナーを選ぶ際は、これら価値観とプロジェクトの整合性を考慮する可能性が高い。
地域ダイナミクスへの影響:日本のFOIPがASEANに競争的に関与することで、より広範な地域ダイナミクスが形成される。各国が日本、中国、台湾と連携することの是非を吟味するなかで、東南アジアの政治的・経済的バランスに影響が及ぶことも考えられる。同地域の貿易形態、インフラ開発、政治的同盟にも影響をもたらす可能性がある。
変化するダイナミクスへの適応:台湾や中国と同様、日本もまた、ダイナミックかつ競争の激しい東南アジアに相応しいプレイヤーであり続けるため、戦略の適応を余儀なくされる。日本が目下抱えている課題は、同地域で他のプレイヤーが提供する魅力的な経済的インセンティブと競いながら、質の高いプロジェクト、グッドガバナンス、民主的価値観がもたらす利点を強調し続けることである。
つまり、日本のFOIP戦略はASEANへの競争的関与の1つである以上、中国のBRIや台湾のNSPなど、影響力を持つ他のアクターと競合することになる。同地域にこれら戦略が併存することで、各国は各々の価値観、利益、発展の必要性に基づいて戦略的選択を行うことになる。競争のダイナミクスは今後も変化し続け、東南アジアの政治、経済、インフラ情勢に大きな影響を与えることだろう。
「バランスが肝心:東南アジアにおける中国、日本、台湾のインフラ戦略(4)【中国問題グローバル研究所】」に続く。
写真: 中国「一帯一路」メディア協力フォーラム
(※1)https://grici.or.jp/
<CS>
Copyright(c) FISCO Ltd. All rights reserved.
ニュースカテゴリ
注目トピックス 市況・概況
NY市場・クローズ
海外市場動向
注目トピックス 日本株
注目トピックス 経済総合
強弱材料
コラム【EMW】
オープニングコメント
日経225・本日の想定レンジ
寄り付き概況
新興市場スナップショット
注目トピックス 外国株
個別銘柄テクニカルショット
ランチタイムコメント
後場の投資戦略
後場の寄り付き概況
相場概況
本日の注目個別銘柄
JASDAQ市況
マザーズ市況
Miniトピック
来週の買い需要
日経QUICKニュース
みんかぶニュース 投資家動向
みんかぶニュース 為替・FX
みんかぶニュース 市況・概況
みんかぶニュース 個別・材料
みんかぶニュース コラム
みんかぶニュース その他
ビットコインニュース
アルトコインニュース
GRICI
暗号資産速報
Reuters Japan Online Report Business News
金融ウォッチ その他
FISCO その他
グロース市況