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プロパスト Research Memo(6):2022年5月期は大幅増益で、期初計画を大きく上回る好決算
配信日時:2022/08/03 15:06
配信元:FISCO
■プロパスト<3236>の業績動向
1. 2022年5月期の業績
2022年5月期のわが国経済は持ち直しの動きが見られたものの、ウクライナ情勢の長期化等の影響による原材料価格の上昇や供給面での制約に加えて、金融市場の変動に伴う下振れリスクには警戒する必要があった。個人消費については持ち直しの動きが見られ、総務省「家計調査報告」(2022年4月)では、実質消費支出が前月比1.0%増となり、2ヶ月連続で前月水準を上回った。また、「商業動態統計月報」でも小売業販売額(2022年4月)が前年同月比1.0%増となり、2ヶ月連続で前月水準を上回った。コロナ禍の感染防止策が緩和されたことに伴い、人出が回復するなかでサービス業を中心に消費活動が回復してきており、消費者マインドを示す「消費者態度指数」(2022年5月。内閣府)は、前月比1.1ポイント上昇し、2ヶ月連続で前月水準を上回る推移となった。設備投資についても持ち直しの動きが見られ、「法人企業統計季報」(含むソフトウェア。財務省 財務総合制作研究所)では2022年1~3月期において前期比0.3%増加し、2四半期連続の増加となった。一方、輸出については概ね横ばいで、米国及びEU向けの輸出は持ち直しの動きが見られたものの、その他の地域向けの輸出は弱含みだった。
不動産業界においては、国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、先行指標となる新設住宅着工戸数は、2022年4月が季節調整済年率換算値で885千戸となり前月比4.6%減であったものの、3月までは2ヶ月連続で前月を上回る水準が続くなど、底堅い動きを見せた。
このような状況のなか、同社は分譲開発事業や賃貸開発事業及びバリューアップ事業における新規物件の取得や保有物件の売却、分譲開発事業における分譲販売を進めた。この結果、2022年5月期の売上高は17,689百万円(前期比6.3%減)、営業利益2,127百万円(同24.1%増)、経常利益1,691百万円(同30.2%増)、当期純利益1,135百万円(同23.4%増)と減収増益となった。コンセプト重視やエリアを絞った企画により、売却・仕入ともに順調であった。売上高は期初計画比13.1%下回ったが、これは2022年3月に一括売却を予定していた7件のプロジェクトの売却時期が延期となったことによる。利益面では営業利益は期初計画比46.0%増、経常利益は同72.6%増、当期純利益は同63.1%増と、計画を大きく上回る好決算となった。特に同社が経営上重視する当期純利益は、10期連続の増益を達成した。賃貸開発事業及びバリューアップ事業において想定以上の利益率を確保できたことが、大幅増益の主因であった。実際、収益性を表す各段階の利益率は軒並み改善している。環境に応じて3事業のバランスを柔軟に変えるという同社の事業戦略の成果が現れた好決算と評価できるだろう。
セグメント別では、分譲開発事業は、自社物件としてプルームヌーベル武蔵野(東京都武蔵野市)の販売を実施し、完売した。ただ、2022年5月期は販売物件が当プロジェクトのみで、残りの販売戸数が少なくなっていたことから、売上高は427百万円(前期比53.6%減)、営業利益(全社費用控除前、以下同様)は17百万円(同58.1%減)にとどまり、同社全体に占める売上高・営業利益のウェイトは低下している。
賃貸開発事業では、西池袋2プロジェクト、白金3プロジェクト及び神田佐久間町プロジェクト等、15プロジェクトを売却した。しかし、前期に複数の大型物件を販売した反動に加えて、物件売却が順調に進んだことにより保有する竣工済物件数も限られたことを受けて売却物件数が減少した結果、2022年5月期の売上高は11,533百万円(同16.2%減)、営業利益は2,461百万円(同9.2%増)となった。売却物件のエリアが都心部中心という地域優位性や商品企画が評価されたことなどにより、利益率は前期の16.4%から21.3%に上昇しており、引き続き同社の業績をけん引する原動力となった。個人の相続税対策として、都心の優良物件に対するニーズが強いことを示すものである。
バリューアップ事業では、高円寺南2プロジェクト、北千束3プロジェクト及び白金5プロジェクト等、11棟の収益ビルを売却した。収益性の高い好立地のエリアでの物件売却が進められた結果、2022年5月期の売上高は5,720百万円(同35.9%増)、営業利益は699百万円(同48.4%増)となった。利益率も前期は11.2%、2022年5月期も12.2%と安定して推移した。
このように、2022年5月期はバリューアップ事業が大幅な増収増益となり、売上高が大きい賃貸開発事業も減収ながら増益を確保して、分譲開発事業の減収減益をカバーした。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2022年5月期末の資産合計は、前期末比4,624百万円増の28,714百万円となった。これは主に、保有物件の売却を積極的に進めた一方で、業績の原資となる仕入を推進したことから、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて2,927百万円増加したことによる。また、物件売却を推進したことにより、現金及び預金が666百万円増加したことも寄与した。このように、売却も仕入もともに順調で、物件が入れ替わりながら資産が拡大していく状況となったと言える。
負債合計については、前期末比3,577百万円増の21,421百万円となった。これは主に、新規物件の取得に伴って借入金が3,474百万円増加したことによる。また、純資産合計については、前期末比1,047百万円増の7,292百万円となった。当期純利益の計上によりその他利益剰余金が1,064百万円増加したことによる。
利益の積み上げと、2020年11月に実施したシノケングループ向けの第三者割当増資の結果、自己資本比率は25.1%と、2013年5月期末の9.5%から大幅に上昇し、同社が中期的な目標とする30%台に近付いた。同期間に、D/Eレシオ(負債資本倍率)は8.28倍から2.78倍に低下し、流動比率も161.3%から214.3%に上昇しており、短期的な資金繰りに困らない十分な支払い能力を確保している。こうしたことから、不測の事態への備えは十分に整ったと評価できる。
こうした強固な財務内容は、不動産の仕入など事業面でも有利に働くと考えられる。筆頭株主のシノケングループとの関係強化によって、シノケングループが運用する私募REITへの賃貸不動産を供給するなど新たな協業もスタートし、今後も同社にとって有力な売却先として期待される。このように、グループ会社間でのシナジーを発揮することで収益力も一層強化されると考えられる。
現金及び現金同等物の2022年5月期末残高は、前期末より767百万円増加し、4,432百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により支出した資金は2,718百万円となった。これは、主に税引前当期純利益を1,692百万円計上したものの、たな卸資産が2,929百万円増加したのに加え、前渡金が741百万円増加したことによる。投資活動により獲得した資金は93百万円となった。これは、主に定期預金の預入により837百万円の支出があったものの、定期預金の払戻により934百万円を獲得したことによる。財務活動により獲得した資金は3,376百万円となった。これは、主に物件の売却に伴い、長期借入金及び短期借入金を返済したことで13,835百万円の支出が発生したものの、物件の取得に伴い、長期借入金及び短期借入金として新たに融資契約を締結したことで17,311百万円を獲得したことによるものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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1. 2022年5月期の業績
2022年5月期のわが国経済は持ち直しの動きが見られたものの、ウクライナ情勢の長期化等の影響による原材料価格の上昇や供給面での制約に加えて、金融市場の変動に伴う下振れリスクには警戒する必要があった。個人消費については持ち直しの動きが見られ、総務省「家計調査報告」(2022年4月)では、実質消費支出が前月比1.0%増となり、2ヶ月連続で前月水準を上回った。また、「商業動態統計月報」でも小売業販売額(2022年4月)が前年同月比1.0%増となり、2ヶ月連続で前月水準を上回った。コロナ禍の感染防止策が緩和されたことに伴い、人出が回復するなかでサービス業を中心に消費活動が回復してきており、消費者マインドを示す「消費者態度指数」(2022年5月。内閣府)は、前月比1.1ポイント上昇し、2ヶ月連続で前月水準を上回る推移となった。設備投資についても持ち直しの動きが見られ、「法人企業統計季報」(含むソフトウェア。財務省 財務総合制作研究所)では2022年1~3月期において前期比0.3%増加し、2四半期連続の増加となった。一方、輸出については概ね横ばいで、米国及びEU向けの輸出は持ち直しの動きが見られたものの、その他の地域向けの輸出は弱含みだった。
不動産業界においては、国土交通省「建築着工統計調査報告」によると、先行指標となる新設住宅着工戸数は、2022年4月が季節調整済年率換算値で885千戸となり前月比4.6%減であったものの、3月までは2ヶ月連続で前月を上回る水準が続くなど、底堅い動きを見せた。
このような状況のなか、同社は分譲開発事業や賃貸開発事業及びバリューアップ事業における新規物件の取得や保有物件の売却、分譲開発事業における分譲販売を進めた。この結果、2022年5月期の売上高は17,689百万円(前期比6.3%減)、営業利益2,127百万円(同24.1%増)、経常利益1,691百万円(同30.2%増)、当期純利益1,135百万円(同23.4%増)と減収増益となった。コンセプト重視やエリアを絞った企画により、売却・仕入ともに順調であった。売上高は期初計画比13.1%下回ったが、これは2022年3月に一括売却を予定していた7件のプロジェクトの売却時期が延期となったことによる。利益面では営業利益は期初計画比46.0%増、経常利益は同72.6%増、当期純利益は同63.1%増と、計画を大きく上回る好決算となった。特に同社が経営上重視する当期純利益は、10期連続の増益を達成した。賃貸開発事業及びバリューアップ事業において想定以上の利益率を確保できたことが、大幅増益の主因であった。実際、収益性を表す各段階の利益率は軒並み改善している。環境に応じて3事業のバランスを柔軟に変えるという同社の事業戦略の成果が現れた好決算と評価できるだろう。
セグメント別では、分譲開発事業は、自社物件としてプルームヌーベル武蔵野(東京都武蔵野市)の販売を実施し、完売した。ただ、2022年5月期は販売物件が当プロジェクトのみで、残りの販売戸数が少なくなっていたことから、売上高は427百万円(前期比53.6%減)、営業利益(全社費用控除前、以下同様)は17百万円(同58.1%減)にとどまり、同社全体に占める売上高・営業利益のウェイトは低下している。
賃貸開発事業では、西池袋2プロジェクト、白金3プロジェクト及び神田佐久間町プロジェクト等、15プロジェクトを売却した。しかし、前期に複数の大型物件を販売した反動に加えて、物件売却が順調に進んだことにより保有する竣工済物件数も限られたことを受けて売却物件数が減少した結果、2022年5月期の売上高は11,533百万円(同16.2%減)、営業利益は2,461百万円(同9.2%増)となった。売却物件のエリアが都心部中心という地域優位性や商品企画が評価されたことなどにより、利益率は前期の16.4%から21.3%に上昇しており、引き続き同社の業績をけん引する原動力となった。個人の相続税対策として、都心の優良物件に対するニーズが強いことを示すものである。
バリューアップ事業では、高円寺南2プロジェクト、北千束3プロジェクト及び白金5プロジェクト等、11棟の収益ビルを売却した。収益性の高い好立地のエリアでの物件売却が進められた結果、2022年5月期の売上高は5,720百万円(同35.9%増)、営業利益は699百万円(同48.4%増)となった。利益率も前期は11.2%、2022年5月期も12.2%と安定して推移した。
このように、2022年5月期はバリューアップ事業が大幅な増収増益となり、売上高が大きい賃貸開発事業も減収ながら増益を確保して、分譲開発事業の減収減益をカバーした。
2. 財務状態及びキャッシュ・フローの状況
2022年5月期末の資産合計は、前期末比4,624百万円増の28,714百万円となった。これは主に、保有物件の売却を積極的に進めた一方で、業績の原資となる仕入を推進したことから、販売用不動産と仕掛販売用不動産が合わせて2,927百万円増加したことによる。また、物件売却を推進したことにより、現金及び預金が666百万円増加したことも寄与した。このように、売却も仕入もともに順調で、物件が入れ替わりながら資産が拡大していく状況となったと言える。
負債合計については、前期末比3,577百万円増の21,421百万円となった。これは主に、新規物件の取得に伴って借入金が3,474百万円増加したことによる。また、純資産合計については、前期末比1,047百万円増の7,292百万円となった。当期純利益の計上によりその他利益剰余金が1,064百万円増加したことによる。
利益の積み上げと、2020年11月に実施したシノケングループ向けの第三者割当増資の結果、自己資本比率は25.1%と、2013年5月期末の9.5%から大幅に上昇し、同社が中期的な目標とする30%台に近付いた。同期間に、D/Eレシオ(負債資本倍率)は8.28倍から2.78倍に低下し、流動比率も161.3%から214.3%に上昇しており、短期的な資金繰りに困らない十分な支払い能力を確保している。こうしたことから、不測の事態への備えは十分に整ったと評価できる。
こうした強固な財務内容は、不動産の仕入など事業面でも有利に働くと考えられる。筆頭株主のシノケングループとの関係強化によって、シノケングループが運用する私募REITへの賃貸不動産を供給するなど新たな協業もスタートし、今後も同社にとって有力な売却先として期待される。このように、グループ会社間でのシナジーを発揮することで収益力も一層強化されると考えられる。
現金及び現金同等物の2022年5月期末残高は、前期末より767百万円増加し、4,432百万円となった。各キャッシュ・フローの状況について見ると、営業活動により支出した資金は2,718百万円となった。これは、主に税引前当期純利益を1,692百万円計上したものの、たな卸資産が2,929百万円増加したのに加え、前渡金が741百万円増加したことによる。投資活動により獲得した資金は93百万円となった。これは、主に定期預金の預入により837百万円の支出があったものの、定期預金の払戻により934百万円を獲得したことによる。財務活動により獲得した資金は3,376百万円となった。これは、主に物件の売却に伴い、長期借入金及び短期借入金を返済したことで13,835百万円の支出が発生したものの、物件の取得に伴い、長期借入金及び短期借入金として新たに融資契約を締結したことで17,311百万円を獲得したことによるものである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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