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神戸物産 Research Memo(9):業務スーパー出店は当面1,200店舗、長期目標1,500店舗掲げる(1)
配信日時:2022/07/21 15:29
配信元:FISCO
■今後の見通し
3. 重点施策の取り組み状況について
(1) 店舗運営のDX化の取り組み状況
「店舗運営のDX化」の取り組みとして、神戸物産<3038>は2021年8月にAI技術を活用した次世代型スーパーの実験店舗「業務スーパー天下茶屋駅前店(大阪市西成区)」をオープンしており、主に3つのソリューションの実証実験に取り組んでいる。
第1に、顧客が選んだ商品をもとにおすすめ商品やレシピをショッピングカートに装備したタブレット上に表示する「タブレット付きカート」を導入している。商品のバーコードをカートに装備してあるスキャナーで読み取ることで、同社が保有する販売実績データ等をもとに、AIが導き出したおすすめ商品やレシピを表示する仕組みとなっている。AIによる提案が顧客の購買行動にどのように影響するか検証作業を進めている。また、購入する商品のバーコードをスキャナーで読み取ることで、購入商品一覧をタブレット上で確認できるため買い忘れの防止や、その時点での買い物合計金額を確認できる。また、店舗のセルフレジと連携することで自動精算も可能となるため、レジ待ち時間の短縮による顧客満足度の向上や店舗人件費の削減効果も期待できる。同システムについては効果を確認次第、FC店舗への導入提案を進めていく予定にしている。「業務スーパー」でも繁忙時には駐車場待ちになる店舗も多く、同システムの導入によるレジ待ち時間の短縮などで売上増効果が期待される。
第2に、AIカメラで陳列棚の映像を解析して品切れ商品を自動検知し、店舗スタッフに通知するソリューションとなる。同システムを導入することで、最適なタイミングで商品の補充が可能となり、販売機会ロスの削減と店舗スタッフの業務効率向上による人件費の抑制効果が期待される。現在、データを収集しながら実用化に向けたシステム改善を行っている段階にある。
第3に、店内に設置したカメラ映像をもとに、入店人数やレジの待機人数、精算に掛かる時間などをAIで分析し、レジの待機人数を予測して、曜日や時間帯ごとのレジの稼働台数並びにスタッフ配置の最適化を実現するシステムの開発に取り組んでいる。適正な台数のレジを稼働させることで、顧客の待ち時間削減とオペレーション効率の最適化が可能となる。こちらについてもデータを収集しながら、実用化に向けた開発に取り組んでいる段階であり、しばらく時間が掛かる見通しとなっている。
そのほか、自動発注システムの開発も進めている。従来は仕入担当者が日々、状況に応じて商品発注を行うなど属人的な業務で経験年数が必要とされていたが、自動発注システムの導入で発注業務が簡素化される。直営店舗で導入したところ、担当者の業務負担が大幅に軽減するなど具体的な効果も確認できており、今後、利用料金を確定したのちに、FC店舗へ導入を進めていく予定にしている。そのほかにも店内の顧客の動線分析やデジタルサイネージでの情報配信、利用者の属性分析など様々な取り組みを順次進めていく予定で、顧客満足度の向上とローコストオペレーションを両立した次世代型店舗の構築を目指していく。次世代型店舗の実用化が進めば、さらなる店舗収益力の強化と既存店舗の売上拡大が可能になると見られる。なお、これらの取り組みの一部はソフトバンク<9434>などが企画・開発したAIソリューションを活用しているものもあり、共同で検証作業を行っている。
(2) 販売チャネルの拡大による新たな販路確立
販売チャネルの拡大による新たな販路として、ECサイトの立ち上げを計画している。「業務スーパー」が近隣になく、商品を購入したくてもできない潜在顧客は全国に多い。こうした潜在顧客に対してECサイトを通じで商品を販売していくことにしている。
課題としては、FC加盟企業の店舗売上にマイナスの影響を与える可能性があること、物流コストが高くなることの2点が挙げられる。同社の物流システムはケース単位を基本とし、個配には対応していないため個配作業のコストもかかる。こうした課題に対して、同社はECの販売価格を店舗価格よりもやや高めに設定することや配送方法の工夫で解消したい考えだ。顧客ターゲットとしては「業務スーパー」が近隣にない顧客、または近隣にあっても利便性の点からECサイトで購入する顧客となる。既にECサイトの開発は終わっているようで、現在は配送費や値付けなどの最適化に向けたシミュレーションを社内で行っている段階にあり、これら作業が完了次第オープンするものと予想される。
(3) 店舗数拡大
業務スーパー事業の成長戦略の1つである店舗数の拡大については、従前、1,000店舗の早期達成を目標として掲げていたが、2022年10月期中にも達成する見込みとなっており、次の目標として1,200店舗、長期目標として1,500店舗を視野に入れ始めている。
域別の人口構成比と業務スーパー店舗数の構成比を比較した場合、地盤となる関西圏は人口構成比で16.3%となっているのに対して、店舗数は26.6%と高い。一方、ここ数年で出店を強化してきた関東圏については人口構成比で29.0%、店舗数で27.0%とほぼ拮抗してきたが、店舗数そのものは関西地域とほぼ変わらないことを考えれば、出店余地は依然大きいと見ることができる。また、九州や北海道のほか東海エリア(愛知県、岐阜県、三重県)についても人口比での店舗数が少なく、出店余地が大きいエリアとなる。
関西エリアについては人口78千人当たりに1店舗を出店している計算となり、仮にほかのエリアでも同様の比率で店舗展開できたとするならば、1,600店舗までは出店できる計算となる。商圏の違いや出店条件に適う不動産物件の有無などで実際の上限値は変わってくるが、関西エリアでもまだ店舗数が増加し続けていることを考えると、出店拡大による成長は続くものと予想される。既存のFCオーナーの出店意欲が旺盛なほか、最近では「業務スーパー」の集客力の高さを評価して、新規加盟を希望する企業も増えてきている。同社では既存FCオーナーとの関係構築もあるため審査基準は厳しくしているが、既に店舗を運営している企業であれば新規に出店候補地を探す手間が省けることもあり、FC化を進めていくことにしている。
また、既存店向け商品出荷額の拡大施策としては、顧客に選ばれる魅力的なPB商品を継続的に開発していくことが重要で、今後もグループ会社における商品開発を強化していくほか、M&Aも活用しながらPB商品の構成比率を引き上げていく方針となっている。こうした取り組みに加えて、店舗運営のDX化やTV、SNS等への露出によって集客力の維持向上を図っていく戦略となっている。
(4) ベンチャー投資ファンド組成
新たな取り組みとして2022年5月に米国のペガサス・テック・ベンチャーズと共同でベンチャー投資ファンドを組成することを発表した。ペガサスの優れたグローバルネットワークを活用して、同社グループの企業価値向上に貢献するパートナーとなりえるベンチャー企業への投資を行っていく予定だ。候補企業として世界各国から数百社を選定し、そのなかから数社を選定して企業調査や条件交渉などを行い、投資先を決定する。投資先のベンチャー企業とは業務提携を締結し、同社グループとのシナジー創出を図っていく。例えば、「業務スーパー」で取り扱いできる植物肉の開発企業や、店舗運営、物流、製造分野における効率化に資するITシステムを開発している企業などが候補となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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3. 重点施策の取り組み状況について
(1) 店舗運営のDX化の取り組み状況
「店舗運営のDX化」の取り組みとして、神戸物産<3038>は2021年8月にAI技術を活用した次世代型スーパーの実験店舗「業務スーパー天下茶屋駅前店(大阪市西成区)」をオープンしており、主に3つのソリューションの実証実験に取り組んでいる。
第1に、顧客が選んだ商品をもとにおすすめ商品やレシピをショッピングカートに装備したタブレット上に表示する「タブレット付きカート」を導入している。商品のバーコードをカートに装備してあるスキャナーで読み取ることで、同社が保有する販売実績データ等をもとに、AIが導き出したおすすめ商品やレシピを表示する仕組みとなっている。AIによる提案が顧客の購買行動にどのように影響するか検証作業を進めている。また、購入する商品のバーコードをスキャナーで読み取ることで、購入商品一覧をタブレット上で確認できるため買い忘れの防止や、その時点での買い物合計金額を確認できる。また、店舗のセルフレジと連携することで自動精算も可能となるため、レジ待ち時間の短縮による顧客満足度の向上や店舗人件費の削減効果も期待できる。同システムについては効果を確認次第、FC店舗への導入提案を進めていく予定にしている。「業務スーパー」でも繁忙時には駐車場待ちになる店舗も多く、同システムの導入によるレジ待ち時間の短縮などで売上増効果が期待される。
第2に、AIカメラで陳列棚の映像を解析して品切れ商品を自動検知し、店舗スタッフに通知するソリューションとなる。同システムを導入することで、最適なタイミングで商品の補充が可能となり、販売機会ロスの削減と店舗スタッフの業務効率向上による人件費の抑制効果が期待される。現在、データを収集しながら実用化に向けたシステム改善を行っている段階にある。
第3に、店内に設置したカメラ映像をもとに、入店人数やレジの待機人数、精算に掛かる時間などをAIで分析し、レジの待機人数を予測して、曜日や時間帯ごとのレジの稼働台数並びにスタッフ配置の最適化を実現するシステムの開発に取り組んでいる。適正な台数のレジを稼働させることで、顧客の待ち時間削減とオペレーション効率の最適化が可能となる。こちらについてもデータを収集しながら、実用化に向けた開発に取り組んでいる段階であり、しばらく時間が掛かる見通しとなっている。
そのほか、自動発注システムの開発も進めている。従来は仕入担当者が日々、状況に応じて商品発注を行うなど属人的な業務で経験年数が必要とされていたが、自動発注システムの導入で発注業務が簡素化される。直営店舗で導入したところ、担当者の業務負担が大幅に軽減するなど具体的な効果も確認できており、今後、利用料金を確定したのちに、FC店舗へ導入を進めていく予定にしている。そのほかにも店内の顧客の動線分析やデジタルサイネージでの情報配信、利用者の属性分析など様々な取り組みを順次進めていく予定で、顧客満足度の向上とローコストオペレーションを両立した次世代型店舗の構築を目指していく。次世代型店舗の実用化が進めば、さらなる店舗収益力の強化と既存店舗の売上拡大が可能になると見られる。なお、これらの取り組みの一部はソフトバンク<9434>などが企画・開発したAIソリューションを活用しているものもあり、共同で検証作業を行っている。
(2) 販売チャネルの拡大による新たな販路確立
販売チャネルの拡大による新たな販路として、ECサイトの立ち上げを計画している。「業務スーパー」が近隣になく、商品を購入したくてもできない潜在顧客は全国に多い。こうした潜在顧客に対してECサイトを通じで商品を販売していくことにしている。
課題としては、FC加盟企業の店舗売上にマイナスの影響を与える可能性があること、物流コストが高くなることの2点が挙げられる。同社の物流システムはケース単位を基本とし、個配には対応していないため個配作業のコストもかかる。こうした課題に対して、同社はECの販売価格を店舗価格よりもやや高めに設定することや配送方法の工夫で解消したい考えだ。顧客ターゲットとしては「業務スーパー」が近隣にない顧客、または近隣にあっても利便性の点からECサイトで購入する顧客となる。既にECサイトの開発は終わっているようで、現在は配送費や値付けなどの最適化に向けたシミュレーションを社内で行っている段階にあり、これら作業が完了次第オープンするものと予想される。
(3) 店舗数拡大
業務スーパー事業の成長戦略の1つである店舗数の拡大については、従前、1,000店舗の早期達成を目標として掲げていたが、2022年10月期中にも達成する見込みとなっており、次の目標として1,200店舗、長期目標として1,500店舗を視野に入れ始めている。
域別の人口構成比と業務スーパー店舗数の構成比を比較した場合、地盤となる関西圏は人口構成比で16.3%となっているのに対して、店舗数は26.6%と高い。一方、ここ数年で出店を強化してきた関東圏については人口構成比で29.0%、店舗数で27.0%とほぼ拮抗してきたが、店舗数そのものは関西地域とほぼ変わらないことを考えれば、出店余地は依然大きいと見ることができる。また、九州や北海道のほか東海エリア(愛知県、岐阜県、三重県)についても人口比での店舗数が少なく、出店余地が大きいエリアとなる。
関西エリアについては人口78千人当たりに1店舗を出店している計算となり、仮にほかのエリアでも同様の比率で店舗展開できたとするならば、1,600店舗までは出店できる計算となる。商圏の違いや出店条件に適う不動産物件の有無などで実際の上限値は変わってくるが、関西エリアでもまだ店舗数が増加し続けていることを考えると、出店拡大による成長は続くものと予想される。既存のFCオーナーの出店意欲が旺盛なほか、最近では「業務スーパー」の集客力の高さを評価して、新規加盟を希望する企業も増えてきている。同社では既存FCオーナーとの関係構築もあるため審査基準は厳しくしているが、既に店舗を運営している企業であれば新規に出店候補地を探す手間が省けることもあり、FC化を進めていくことにしている。
また、既存店向け商品出荷額の拡大施策としては、顧客に選ばれる魅力的なPB商品を継続的に開発していくことが重要で、今後もグループ会社における商品開発を強化していくほか、M&Aも活用しながらPB商品の構成比率を引き上げていく方針となっている。こうした取り組みに加えて、店舗運営のDX化やTV、SNS等への露出によって集客力の維持向上を図っていく戦略となっている。
(4) ベンチャー投資ファンド組成
新たな取り組みとして2022年5月に米国のペガサス・テック・ベンチャーズと共同でベンチャー投資ファンドを組成することを発表した。ペガサスの優れたグローバルネットワークを活用して、同社グループの企業価値向上に貢献するパートナーとなりえるベンチャー企業への投資を行っていく予定だ。候補企業として世界各国から数百社を選定し、そのなかから数社を選定して企業調査や条件交渉などを行い、投資先を決定する。投資先のベンチャー企業とは業務提携を締結し、同社グループとのシナジー創出を図っていく。例えば、「業務スーパー」で取り扱いできる植物肉の開発企業や、店舗運営、物流、製造分野における効率化に資するITシステムを開発している企業などが候補となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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