注目トピックス 日本株
日ピストン Research Memo(1):自動車エンジン事業の収益力強化と非自動車エンジン事業育成を両輪に成長目指す
配信日時:2022/07/07 15:11
配信元:FISCO
■要約
1. 会社概要
日本ピストンリング<6461>は、主に自動車エンジン部品として使用されるピストンリングやバルブシートなどの大手メーカーである。世界の主要自動車メーカーに幅広く製品を供給している。会社設立以来約90年の歴史で培ったコア技術(トライボロジ:摩擦・摩耗・潤滑に関する技術、表面処理技術、粉末冶金技術、精密加工技術)を応用し、産業機器分野や医療分野を中心に新製品事業として非自動車エンジン向けの売上拡大も推進している。
主要製品であるピストンリングやバルブシートは自動車エンジン性能に関わる重要機能部品であり、耐熱性や耐摩耗性の向上によってエンジン燃費効率向上に貢献している。高品質のピストンリングを供給できるメーカーは、世界でも同社を含む5社に実質的に限定されている。また、バルブシートは焼結合金の粉末配合のノウハウを強みとして、日系自動車メーカー向けトップシェアを誇る。
2. 業績概要
2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比12.2%増の50,783百万円、営業利益が2,627百万円(前期は165百万円の損失)、経常利益が同759.7%増の3,058百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が1,928百万円(同813百万円の損失)となった。自動車メーカーの生産調整による影響を断続的に受けたものの、グローバル市場の需要は回復基調にあり、前期比で大幅な増収増益で着地した。利益面では、増産の影響に加え、継続的に取り組んできた生産性の改善や経費の有効活用等の原価低減活動の進展により、大幅な増益となった。なお、原材料価格高騰については取引先との交渉を進めてきたものの、適用時期のずれ等もあり、部分的な価格転嫁に留まった。自動車エンジン事業と非自動車エンジン事業で区分した場合、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの需要回復に伴い、両セグメントともに前期比で増収増益となり、安定した収益基盤を確立した。特に非自動車エンジン事業は好調に推移し、舶用ピストンリングの収益力強化、産業機械向けのメタモールド製品の需要拡大等により黒字化した。
2023年3月期連結業績予想について同社は、売上高で前期比8.3%増の55,000百万円、営業利益で同2.8%増の2,700百万円、経常利益で同8.5%減の2,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同1.5%減の1,900百万円と見込んでいる。また、為替レートは実勢より円高を想定し、1ドル115円(前期は109.90円)、1ユーロ130円(同129.91円)に設定している。世界経済は半導体等の部品不足や資源価格の高騰、ウクライナ情勢等のリスクが加わり、例年以上に不確実性が高いものの、年度後半には自動車メーカーの挽回生産を見込み、継続的な原価低減や原材料価格高騰に対する価格転嫁も推進する。このほか、2022年1月に子会社化した(株)ノルメカエイシアの連結効果としては、売上高18億円程度、営業利益率10%程度を見込んでいる。
3. 成長戦略
同社は、自動車業界を取り巻く事業環境の大きな変化に対応するため、長期ビジョン「The Next NPR 2030」を策定し、目標値として2031年3月期に売上高1,000億円、営業利益率10%以上、非自動車エンジン売上高比率40%以上、CO2排出量46%削減(2014年3月期比)を掲げている。また、将来のありたい姿からのバックキャストにて、2021年5月に第八次中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)を策定した。長期ビジョンの達成に向けた基盤構築ステージとして、2024年3月期の売上高540億円以上、営業利益率8%以上、非自動車エンジン売上高比率15%以上、CO2排出量25%削減(2014年3月期比)を目指している。
長期ビジョン及び中期経営計画の目標達成に向けては、EV(Electric Vehicle:電気自動車)化が一気に進む可能性は低いと想定し、ガソリンエンジンのさらなる低燃費化や新たなクリーン燃料エンジンへの対応など自動車エンジンの進化に向けた技術開発を推進するとともに、徐々に進むEV化の流れも踏まえて、新製品事業で非自動車エンジン向け売上の拡大も推進する方針だ。具体的には、自動車業界の動向を踏まえ、(1) 既存事業(自動車エンジン事業)の収益力強化、(2) 新製品事業(非自動車エンジン事業)の育成・確立、(3) サステナビリティ経営の推進、の3つの重点分野にリソースを注力する。「(2) 新製品事業(非自動車エンジン事業)の育成・確立」では、医療分野や産業機械等といった新製品事業の着実な進展と、M&A・オープンイノベーションを活用した早期事業化を目指している。一例を挙げると、ニッケルフリー・非磁性で生体適合性の高い医療用新材料として、チタン・タンタル合金「NiFreeT(ニフリート)」(登録商標)の製品化・事業化を目指しているほか、世界最大手の医療機器メーカーであるMedtronicとの植込型医療機器協同開発プログラムで新製品開発を進めている。このほか2022年1月には、救急・災害用医療機器専門商社のノルメカエイシアを子会社化した。ノルメカエイシアが持つ幅広い顧客基盤並びにソリューション提供・開発力と、同社のコア技術やものづくり力、組織対応力・販売力を融合させることでグループシナジーを創出し、非自動車エンジン事業の売上拡大を目指す。
■Key Points
・自動車エンジン用部品のピストンリングやバルブシートの大手メーカー
・2022年3月期業績はコロナ禍からの需要回復に伴い、大幅な増収増益で着地
・2023年3月期は原材料価格の高騰等を増産や原価低減で吸収し、営業増益を確保する見通し
・自動車エンジン事業の収益力強化と非自動車エンジン事業の育成・確立を両輪に、成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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1. 会社概要
日本ピストンリング<6461>は、主に自動車エンジン部品として使用されるピストンリングやバルブシートなどの大手メーカーである。世界の主要自動車メーカーに幅広く製品を供給している。会社設立以来約90年の歴史で培ったコア技術(トライボロジ:摩擦・摩耗・潤滑に関する技術、表面処理技術、粉末冶金技術、精密加工技術)を応用し、産業機器分野や医療分野を中心に新製品事業として非自動車エンジン向けの売上拡大も推進している。
主要製品であるピストンリングやバルブシートは自動車エンジン性能に関わる重要機能部品であり、耐熱性や耐摩耗性の向上によってエンジン燃費効率向上に貢献している。高品質のピストンリングを供給できるメーカーは、世界でも同社を含む5社に実質的に限定されている。また、バルブシートは焼結合金の粉末配合のノウハウを強みとして、日系自動車メーカー向けトップシェアを誇る。
2. 業績概要
2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比12.2%増の50,783百万円、営業利益が2,627百万円(前期は165百万円の損失)、経常利益が同759.7%増の3,058百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が1,928百万円(同813百万円の損失)となった。自動車メーカーの生産調整による影響を断続的に受けたものの、グローバル市場の需要は回復基調にあり、前期比で大幅な増収増益で着地した。利益面では、増産の影響に加え、継続的に取り組んできた生産性の改善や経費の有効活用等の原価低減活動の進展により、大幅な増益となった。なお、原材料価格高騰については取引先との交渉を進めてきたものの、適用時期のずれ等もあり、部分的な価格転嫁に留まった。自動車エンジン事業と非自動車エンジン事業で区分した場合、新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)からの需要回復に伴い、両セグメントともに前期比で増収増益となり、安定した収益基盤を確立した。特に非自動車エンジン事業は好調に推移し、舶用ピストンリングの収益力強化、産業機械向けのメタモールド製品の需要拡大等により黒字化した。
2023年3月期連結業績予想について同社は、売上高で前期比8.3%増の55,000百万円、営業利益で同2.8%増の2,700百万円、経常利益で同8.5%減の2,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同1.5%減の1,900百万円と見込んでいる。また、為替レートは実勢より円高を想定し、1ドル115円(前期は109.90円)、1ユーロ130円(同129.91円)に設定している。世界経済は半導体等の部品不足や資源価格の高騰、ウクライナ情勢等のリスクが加わり、例年以上に不確実性が高いものの、年度後半には自動車メーカーの挽回生産を見込み、継続的な原価低減や原材料価格高騰に対する価格転嫁も推進する。このほか、2022年1月に子会社化した(株)ノルメカエイシアの連結効果としては、売上高18億円程度、営業利益率10%程度を見込んでいる。
3. 成長戦略
同社は、自動車業界を取り巻く事業環境の大きな変化に対応するため、長期ビジョン「The Next NPR 2030」を策定し、目標値として2031年3月期に売上高1,000億円、営業利益率10%以上、非自動車エンジン売上高比率40%以上、CO2排出量46%削減(2014年3月期比)を掲げている。また、将来のありたい姿からのバックキャストにて、2021年5月に第八次中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)を策定した。長期ビジョンの達成に向けた基盤構築ステージとして、2024年3月期の売上高540億円以上、営業利益率8%以上、非自動車エンジン売上高比率15%以上、CO2排出量25%削減(2014年3月期比)を目指している。
長期ビジョン及び中期経営計画の目標達成に向けては、EV(Electric Vehicle:電気自動車)化が一気に進む可能性は低いと想定し、ガソリンエンジンのさらなる低燃費化や新たなクリーン燃料エンジンへの対応など自動車エンジンの進化に向けた技術開発を推進するとともに、徐々に進むEV化の流れも踏まえて、新製品事業で非自動車エンジン向け売上の拡大も推進する方針だ。具体的には、自動車業界の動向を踏まえ、(1) 既存事業(自動車エンジン事業)の収益力強化、(2) 新製品事業(非自動車エンジン事業)の育成・確立、(3) サステナビリティ経営の推進、の3つの重点分野にリソースを注力する。「(2) 新製品事業(非自動車エンジン事業)の育成・確立」では、医療分野や産業機械等といった新製品事業の着実な進展と、M&A・オープンイノベーションを活用した早期事業化を目指している。一例を挙げると、ニッケルフリー・非磁性で生体適合性の高い医療用新材料として、チタン・タンタル合金「NiFreeT(ニフリート)」(登録商標)の製品化・事業化を目指しているほか、世界最大手の医療機器メーカーであるMedtronicとの植込型医療機器協同開発プログラムで新製品開発を進めている。このほか2022年1月には、救急・災害用医療機器専門商社のノルメカエイシアを子会社化した。ノルメカエイシアが持つ幅広い顧客基盤並びにソリューション提供・開発力と、同社のコア技術やものづくり力、組織対応力・販売力を融合させることでグループシナジーを創出し、非自動車エンジン事業の売上拡大を目指す。
■Key Points
・自動車エンジン用部品のピストンリングやバルブシートの大手メーカー
・2022年3月期業績はコロナ禍からの需要回復に伴い、大幅な増収増益で着地
・2023年3月期は原材料価格の高騰等を増産や原価低減で吸収し、営業増益を確保する見通し
・自動車エンジン事業の収益力強化と非自動車エンジン事業の育成・確立を両輪に、成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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