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テリロジー Research Memo(10):2023年3月期業績予想は必達目標
配信日時:2022/06/28 15:30
配信元:FISCO
■今後の見通し
1. 2023年3月期業績予想における営業利益率の前提は保守的に見える
テリロジー<3356>は、2023年3月期の連結業績予想について、売上高を前期比18.7%増の6,200百万円、営業利益を同16.2%減の370百万円、経常利益を同15.8%減の370百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同8.6%減の250百万円とする期初計画を公表した。この数値は、2021年5月に公表された新中計における2ヵ年目の数値目標と一致している。同社はドル建て価格で仕入れ、円建て価格で販売する輸入商材を多く取り扱っているため、円安局面では粗利率低下影響が先行するわけだが、ロシアによるウクライナ侵攻により国際情勢が緊迫化するなかにあっても新中計で掲げた数値目標は最低限達成するとの同社の思いが読み取れよう。
期初計画における増収率18.7%増は過去の増収率(2019年3月期13.6%増→2020年3月期10.7%増→2021年3月期16.1%増→2022年3月期11.1%増)に比べて高めに見える。しかしながら、1)2023年3月期は収益認識会計基準等の適用による名目上のマイナス影響(2022年3月期は516百万円減)がなくなる、2)売上高予想に際し、各事業会社は想定すべき不透明要因をすべて織り込んでいる、3)2022年3月期は減収となったネットワーク部門で増収確度が高いプロダクトが存在する、4)円安を受けた輸入商材の価格改定(値上げ)が増収要因として働く可能性がある、といった点から同社による売上高予想には相当程度の妥当性があると判断している。
ネットワーク部門で増収確度が高いプロダクトは、1) IPアドレス管理サーバー「Infoblox」製品と「Radware」製品である。前者は、国内で500台程度納入済みの現行モデルからセキュリティ機能を備え付加価値が高められた新モデルへの更新需要が国内大手製造業中心に継続中(受注ベースで見た案件数は2021年3月期:69件/221台→2022年3月期:68件/89台)であり、2023年3月期においても更新需要の取り込みと付加価値向上によるアップセル効果が十分に期待できる。
後者の「Radware」製品については、2021年3月期から販売を開始した前代理店からの顧客巻き取りが堅調に推移している。同社が取り扱う「Radware」の主力プロダクトは、1)「サービス停止攻撃」とも呼ばれるDoS/DDoS攻撃を自律的に防御するDDoS対策機器・サービス、2)日本市場で多くの実績を誇るロードバランサー(サーバーへの負荷を分散し安定的に稼働させる製品)、3)回線負荷分散のデファクトスタンダードとされるマルチホーミング機器、4)業界最高のWebアプリケーションセキュリティを実現するクラウドWAFサービス、5)自動化された脅威(Bot)からWebアプリケーション、モバイルアプリケーション、APIといったすべてのチャネルを保護するBotマネージャー、6)クラウド資産を包括的に保護するCloud Workload Protectionサービスであり、2)と3)がネットワーク関連、残りがセキュリティ関連となる。
同社は2020年3月のディストリビューター契約締結で日本における「Radware」製品の1次代理店となったわけだが、従前そのポジションにあった企業からは円満な形でバトンタッチされたもようであり、順調な顧客巻き取りによって保守契約込みで年間6億円程度の売上を同社が近年中に獲得できる蓋然性は高い。加えて、前代理店ではネットワーク関連の取り扱いが中心であったため、セキュリティ関連において既存プロダクトとの棲み分けが可能である同社においてはクロスセルやアップセルを通じて一回り大きな事業規模への発展が期待される。実際、2022年3月期における「Radware」関連の受注額は166百万円(2021年3月期は217百万円)、保守売上については278百万円(同55百万円)と順調に推移している。保守売上がストック型ビジネスであることを勘案すれば、2023年3月期においても増収に貢献する蓋然性は高いと判断する。
一方、期初計画における2023年3月期の営業利益率は6.0%と2022年3月期実績の8.5%から2.5ポイント低下することを見込んでいるが、以下の点から弊社では保守的な前提であると判断している。
2023年3月期に想定される利益率低下要因としては、1)IGLOOOとクレシードによる先行投資、2)持株会社体制移行に伴うコスト増、3)ロシアによるウクライナ侵攻を契機に急速に進んだ円安影響(輸入商材の仕入価格上昇)等が考えられるわけだが、1)については両社とも利益率が改善する可能性があり、2)の影響は大きくないように思われる。3)について同社は10円/米ドルの変動で1億円の影響があるとしており、受注済・提案済の案件については一定の影響は免れない。しかしながら、4月末時点での価格表は130円/米ドル前提に改定されており、円安影響のマイナス面のみが顕在化する可能性は限定的に見える。
なお、2023年3月期の期末配当は1株当たり5円配当(普通配当のみ)を予定しており、配当性向は32.4%となる。
2. 持株会社体制への移行で期待される「グループ全体最適化力の強化」と「強みの磨き上げ」
2022年4月、同社は取締役会において持株会社体制へ移行することを決議した。この決疑は、同社グループの事業展開の加速化及びガバナンスの強化を通した企業価値向上の実現を目的としている。6月の定時株主総会での承認及び関係当局による認可等を経て、2022年11月1日に設立登記されるテリロジーホールディングスに同社株式を移転し、同日にテリロジーホールディングスが東証スタンダード市場に新規上場(テクニカル上場、実質的に同社株式が上場維持されるかたち)する予定である。
現体制では、親会社である同社(単体)がトータルセキュリティソリューションサービス事業を営みつつ、子会社の管理を行っているが、新体制では、持株会社がグループ経営機能、投資機能及び新規事業開発機能に特化する一方で、各事業会社は担当事業領域において独自に成長戦略を描き環境変化に応じて迅速かつ柔軟に意思決定・事業推進を行っていくことになる。つまり、同社の強みである「目利き力と市場対応力」のうち、一段高い視座に立った「目利き力」を持株会社が、より顧客に寄り添った「市場対応力」を各事業会社が権限と責任をもって磨き上げ、発揮することを目指した体制への移行と言える。また、M&A戦略等により多角化や事業領域拡大を目指すなかでグループ全体の最適化はこれまで以上に重要性が増すことになり、今回の持株会社体制への移行は中長期的な企業価値向上に資するものと評価したい。
3. 売上高100億円実現に向けての道筋を示す新中期経営計画
2021年5月に公表された同社の新中計(2022年3月期を初年度とする3ヵ年計画)には「オーガニック成長の数値目標」「目標達成に向けての基本戦略・重点施策」「M&A・事業アライアンス戦略実行に関する基本的な考え方」が掲げられている。
まず、最終年度(2024年3月期)の数値目標(売上高74億円、営業利益5.6億円)からは、オーガニックベースで「売上高成長率20%と営業利益率8%の実現」を目指していることが読み取れる。加えて、M&A戦略では約10~20億円規模の投資枠をイメージしつつ、1案件の投資予算規模(3~5億円)と獲得年商規模(5~10億円)が明確に示されており、新中計の内容は売上高100億円実現に向けての道筋を示す意欲的なものと評価して良い。
また、「目標達成に向けての基本戦略・重点施策」におけるキーメッセージは、1)ストック型事業モデルの強化、2)ダイナミックなグループ事業の拡大、3)グローバルな事業展開である。いずれの項目も、M&Aを含むアライアンス戦略が鍵を握るだけに、持株会社に投資及び新規事業開発機能を集中することはポジティブに受け止められる。また、各事業会社が責任と権限を持って迅速かつ柔軟に意思決定・事業推進を行っていく体制への移行は、新中計で示されている「グループ会社ごとの目標達成に向けたアクションプラン」を後押しすることになると言えるだろう。今後は、各社のプラン遂行状況にも注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
<SI>
1. 2023年3月期業績予想における営業利益率の前提は保守的に見える
テリロジー<3356>は、2023年3月期の連結業績予想について、売上高を前期比18.7%増の6,200百万円、営業利益を同16.2%減の370百万円、経常利益を同15.8%減の370百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を同8.6%減の250百万円とする期初計画を公表した。この数値は、2021年5月に公表された新中計における2ヵ年目の数値目標と一致している。同社はドル建て価格で仕入れ、円建て価格で販売する輸入商材を多く取り扱っているため、円安局面では粗利率低下影響が先行するわけだが、ロシアによるウクライナ侵攻により国際情勢が緊迫化するなかにあっても新中計で掲げた数値目標は最低限達成するとの同社の思いが読み取れよう。
期初計画における増収率18.7%増は過去の増収率(2019年3月期13.6%増→2020年3月期10.7%増→2021年3月期16.1%増→2022年3月期11.1%増)に比べて高めに見える。しかしながら、1)2023年3月期は収益認識会計基準等の適用による名目上のマイナス影響(2022年3月期は516百万円減)がなくなる、2)売上高予想に際し、各事業会社は想定すべき不透明要因をすべて織り込んでいる、3)2022年3月期は減収となったネットワーク部門で増収確度が高いプロダクトが存在する、4)円安を受けた輸入商材の価格改定(値上げ)が増収要因として働く可能性がある、といった点から同社による売上高予想には相当程度の妥当性があると判断している。
ネットワーク部門で増収確度が高いプロダクトは、1) IPアドレス管理サーバー「Infoblox」製品と「Radware」製品である。前者は、国内で500台程度納入済みの現行モデルからセキュリティ機能を備え付加価値が高められた新モデルへの更新需要が国内大手製造業中心に継続中(受注ベースで見た案件数は2021年3月期:69件/221台→2022年3月期:68件/89台)であり、2023年3月期においても更新需要の取り込みと付加価値向上によるアップセル効果が十分に期待できる。
後者の「Radware」製品については、2021年3月期から販売を開始した前代理店からの顧客巻き取りが堅調に推移している。同社が取り扱う「Radware」の主力プロダクトは、1)「サービス停止攻撃」とも呼ばれるDoS/DDoS攻撃を自律的に防御するDDoS対策機器・サービス、2)日本市場で多くの実績を誇るロードバランサー(サーバーへの負荷を分散し安定的に稼働させる製品)、3)回線負荷分散のデファクトスタンダードとされるマルチホーミング機器、4)業界最高のWebアプリケーションセキュリティを実現するクラウドWAFサービス、5)自動化された脅威(Bot)からWebアプリケーション、モバイルアプリケーション、APIといったすべてのチャネルを保護するBotマネージャー、6)クラウド資産を包括的に保護するCloud Workload Protectionサービスであり、2)と3)がネットワーク関連、残りがセキュリティ関連となる。
同社は2020年3月のディストリビューター契約締結で日本における「Radware」製品の1次代理店となったわけだが、従前そのポジションにあった企業からは円満な形でバトンタッチされたもようであり、順調な顧客巻き取りによって保守契約込みで年間6億円程度の売上を同社が近年中に獲得できる蓋然性は高い。加えて、前代理店ではネットワーク関連の取り扱いが中心であったため、セキュリティ関連において既存プロダクトとの棲み分けが可能である同社においてはクロスセルやアップセルを通じて一回り大きな事業規模への発展が期待される。実際、2022年3月期における「Radware」関連の受注額は166百万円(2021年3月期は217百万円)、保守売上については278百万円(同55百万円)と順調に推移している。保守売上がストック型ビジネスであることを勘案すれば、2023年3月期においても増収に貢献する蓋然性は高いと判断する。
一方、期初計画における2023年3月期の営業利益率は6.0%と2022年3月期実績の8.5%から2.5ポイント低下することを見込んでいるが、以下の点から弊社では保守的な前提であると判断している。
2023年3月期に想定される利益率低下要因としては、1)IGLOOOとクレシードによる先行投資、2)持株会社体制移行に伴うコスト増、3)ロシアによるウクライナ侵攻を契機に急速に進んだ円安影響(輸入商材の仕入価格上昇)等が考えられるわけだが、1)については両社とも利益率が改善する可能性があり、2)の影響は大きくないように思われる。3)について同社は10円/米ドルの変動で1億円の影響があるとしており、受注済・提案済の案件については一定の影響は免れない。しかしながら、4月末時点での価格表は130円/米ドル前提に改定されており、円安影響のマイナス面のみが顕在化する可能性は限定的に見える。
なお、2023年3月期の期末配当は1株当たり5円配当(普通配当のみ)を予定しており、配当性向は32.4%となる。
2. 持株会社体制への移行で期待される「グループ全体最適化力の強化」と「強みの磨き上げ」
2022年4月、同社は取締役会において持株会社体制へ移行することを決議した。この決疑は、同社グループの事業展開の加速化及びガバナンスの強化を通した企業価値向上の実現を目的としている。6月の定時株主総会での承認及び関係当局による認可等を経て、2022年11月1日に設立登記されるテリロジーホールディングスに同社株式を移転し、同日にテリロジーホールディングスが東証スタンダード市場に新規上場(テクニカル上場、実質的に同社株式が上場維持されるかたち)する予定である。
現体制では、親会社である同社(単体)がトータルセキュリティソリューションサービス事業を営みつつ、子会社の管理を行っているが、新体制では、持株会社がグループ経営機能、投資機能及び新規事業開発機能に特化する一方で、各事業会社は担当事業領域において独自に成長戦略を描き環境変化に応じて迅速かつ柔軟に意思決定・事業推進を行っていくことになる。つまり、同社の強みである「目利き力と市場対応力」のうち、一段高い視座に立った「目利き力」を持株会社が、より顧客に寄り添った「市場対応力」を各事業会社が権限と責任をもって磨き上げ、発揮することを目指した体制への移行と言える。また、M&A戦略等により多角化や事業領域拡大を目指すなかでグループ全体の最適化はこれまで以上に重要性が増すことになり、今回の持株会社体制への移行は中長期的な企業価値向上に資するものと評価したい。
3. 売上高100億円実現に向けての道筋を示す新中期経営計画
2021年5月に公表された同社の新中計(2022年3月期を初年度とする3ヵ年計画)には「オーガニック成長の数値目標」「目標達成に向けての基本戦略・重点施策」「M&A・事業アライアンス戦略実行に関する基本的な考え方」が掲げられている。
まず、最終年度(2024年3月期)の数値目標(売上高74億円、営業利益5.6億円)からは、オーガニックベースで「売上高成長率20%と営業利益率8%の実現」を目指していることが読み取れる。加えて、M&A戦略では約10~20億円規模の投資枠をイメージしつつ、1案件の投資予算規模(3~5億円)と獲得年商規模(5~10億円)が明確に示されており、新中計の内容は売上高100億円実現に向けての道筋を示す意欲的なものと評価して良い。
また、「目標達成に向けての基本戦略・重点施策」におけるキーメッセージは、1)ストック型事業モデルの強化、2)ダイナミックなグループ事業の拡大、3)グローバルな事業展開である。いずれの項目も、M&Aを含むアライアンス戦略が鍵を握るだけに、持株会社に投資及び新規事業開発機能を集中することはポジティブに受け止められる。また、各事業会社が責任と権限を持って迅速かつ柔軟に意思決定・事業推進を行っていく体制への移行は、新中計で示されている「グループ会社ごとの目標達成に向けたアクションプラン」を後押しすることになると言えるだろう。今後は、各社のプラン遂行状況にも注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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