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飯野海運 Research Memo(7):2030年に向けた中期経営計画
配信日時:2022/06/17 15:37
配信元:FISCO
■飯野海運<9119>の成長戦略
1. 中期経営計画「Be Unique and Innovative.:The Next Stage −2030年に向けて−」
長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、中期経営計画「Be Unique and Innovative.:The Next Stage −2030年に向けて−」(2021年3月期~2023年3月期)を策定し、最終年度2023年3月期の目標値には売上高900~1,100億円、営業利益75~85億円(市況変動を考慮して海運業が25~35億円のレンジ計画、不動産業が50億円)、経常利益70~80億円、親会社株主帰属当期純利益70~80億円、EBITDA195~205億円、ROE8~9%、D/Eレシオ最大2.0倍を掲げている。3ヶ年累計の営業キャッシュ・フローは550億円、事業投資は450億円としている。成長、安定、環境の3分野にバランス良く投資する方針だ。
重視する指標として、収益性では事業投資損益やキャッシュ・フローも意識して経常利益およびEBITDA、効率性では資本コストを意識してROE、健全性では財務基盤の規律を維持するためD/Eレシオを設定した。3項目をバランス良く管理し、持続可能な成長を目指す方針だ。
2. 重点強化策
独自のビジネスモデル「IINO MODEL」の形成、高品質なサービス「IINO QUALITY」の提供を追求して、自社の経済的価値を高めると同時に、サステナビリティ(持続可能性)への積極的な取り組みによって、環境保全を含めた社会的ニーズに対応することで社会的価値を創造し、共通価値の創造(CSV=Creating Shared Value)を目指すとしている。
共通価値を創造するための重点強化策には、安定収益基盤の更なる盤石化、グローバル事業の更なる推進、サステナビリティへの取り組みを掲げている。そして企業の基盤・土台の盤石化に向けた基盤整備項目は、船舶・ビル管理の品質向上と安全の徹底、コスト競争力の強化、人的資本の育成・強化、海外拠点の更なる活用、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)の推進加速、ESG(環境・社会・ガバナンス)・SDGs(持続可能な開発目標)への対応強化としている。
安定収益基盤の更なる盤石化では、不動産事業強化への取り組みとして長期的な視野での安定収益源となる都心基幹物件の獲得、海外・地方物件への進出など、海運業のエネルギー輸送の更なる強化として安定的な船隊整備の推進、既存契約荷主への高品質サービスの継続、安定的かつ高品質なエネルギー輸送の供給継続などを推進する。
グローバル事業の更なる推進では、グローバル体制を推進する競争力の強化としてケミカルタンカーの既存中東航路以外の航路進出に向けた取り組み強化、ガス船およびドライバルク船の新規貨物・新規航路への取り組み強化、グローバル体制を支える組織力の強化として海外事務所の人材増員・機能強化などを推進する。
サステナビリティへの取り組みでは、環境負荷低減に資する資産への投資推進として大型で燃費効率の良いエンジンを採用した船舶への投資強化(CO2排出率削減と経済効率性向上)、所有ビルにおけるエネルギーミックス推進(再生可能エネルギーへの転換やLED等の設備導入)に注力する。また、次世代燃料船への取り組み強化(LNG・LPG・メタノール等を燃料とする船舶への投資)や、二元燃料船の運航・管理ノウハウの高度化を推進する。サステナブルな貨物(環境負荷が少ない貨物、飢餓・貧困の撲滅に資する貨物)への取り組み強化として、LNG・穀物・肥料等の運航ノウハウの蓄積や荷主との関係強化を目指す。
さらに、2030年に向けて新たな価値を創造すべくDXの推進を加速している。デジタル化基盤を整備し、安全運航の質向上(船陸のリアルタイム通信、最適航路モニタリング、故障予兆技術の活用など)、ESG推進サポート(CO2削減、燃費向上、多様な働き方の実現など)、業務改革(付加価値の高い業務に集中できる環境の整備、ノウハウが伝承される組織体制の強化など)といった新たな価値の創出を目指す。基幹システムの刷新に関しては順次、段階的に取り組む見込みだ。
3. 組織・体制強化
こうした重点強化策の推進を強化・加速するため、組織・体制の強化も進めている。2020年8月からは「IINO環境タスクフォース」および「IINO DXタスクフォース」を設置し、組織の横断的な対応を推進している。また2021年6月には、海外拠点の活動を統括する海外戦略担当と新規事業の企画調査立案を行う事業開発推進部を統合して事業戦略部を新設した。そして2022年6月には、船舶の環境負荷低減のための取り組みを強化するため技術部を新設するとともに、IINO環境タスクフォースとともにグループ内の安全・環境・品質に関わる対策を推進してきた業務管理部およびビル事業部の担当組織を分割統合して「サステナビリティ推進部」を新設する。
なお外部とのアライアンスやコラボレーションも活用・強化する方針だ。2022年5月には、米国シリコンバレーに本拠地を置く世界最大のアクセラレーターであるPlug and Play社を起用して、様々な分野で先端技術を持つスタートアップとのコラボレーションを強化する方針を打ち出した。
4. 中期経営計画最終年度の目標をおおむね達成の見込み
中期経営計画の進捗状況を見ると、策定時点の前提に対して、燃料油価格が大幅に上昇しているものの、海運市況も大幅に上昇し、さらに為替が円安・ドル高となっていることも寄与して、2021年3月期、2022年3月期とも計画を大幅に超過達成した。そして2023年3月期も計画をおおむね達成する見込みとなっている。
なお、2022年3月期の営業利益の中期経営計画策定時点との差異分析については、海運業(中期経営計画比5億円増)は、大型原油タンカーで修繕費等の船費増加により7億円減、ケミカルタンカーで冬場以降の市況は上昇したものの、通期ベースでは市況が想定よりも低水準だったことにより2億円減、大型ガス船でLPG船の市況下落およびLNG船の入渠による費用増加により5億円減、ドライバルク船で市況上昇のため、想定よりも高水準に推移したことにより18億円増、不動産業(同5億円減)は、オフィスビルで営繕費の増加により4億円減、イイノホールおよびフォトスタジオ等でコロナ禍の影響で稼働が低迷したことにより1億円減としている。
また、2023年3月期の営業利益予想の中期経営計画策定時点との差異分析については、海運業(中期経営計画比3億円増)は、大型原油タンカーで船員費等の船費増加により3億円減、ケミカルタンカーで入渠費用や船員費等の船費が増加したことにより12億円減、大型ガス船で運航船売却による稼働減少を市況回復でカバーする見込みにより0億円減、ドライバルク船で市況が引き続き堅調に推移する見込みであることにより18億円増、不動産業(同12億円減)は、オフィスビルで堅調な稼働を維持するが、一部ビルにおける営繕費の増加により6億円減、イイノホールおよびフォトスタジオ等でコロナ禍の影響で稼働が低迷していることにより6億円減としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
<SI>
1. 中期経営計画「Be Unique and Innovative.:The Next Stage −2030年に向けて−」
長期ビジョン「IINO VISION for 2030」の実現に向けて、中期経営計画「Be Unique and Innovative.:The Next Stage −2030年に向けて−」(2021年3月期~2023年3月期)を策定し、最終年度2023年3月期の目標値には売上高900~1,100億円、営業利益75~85億円(市況変動を考慮して海運業が25~35億円のレンジ計画、不動産業が50億円)、経常利益70~80億円、親会社株主帰属当期純利益70~80億円、EBITDA195~205億円、ROE8~9%、D/Eレシオ最大2.0倍を掲げている。3ヶ年累計の営業キャッシュ・フローは550億円、事業投資は450億円としている。成長、安定、環境の3分野にバランス良く投資する方針だ。
重視する指標として、収益性では事業投資損益やキャッシュ・フローも意識して経常利益およびEBITDA、効率性では資本コストを意識してROE、健全性では財務基盤の規律を維持するためD/Eレシオを設定した。3項目をバランス良く管理し、持続可能な成長を目指す方針だ。
2. 重点強化策
独自のビジネスモデル「IINO MODEL」の形成、高品質なサービス「IINO QUALITY」の提供を追求して、自社の経済的価値を高めると同時に、サステナビリティ(持続可能性)への積極的な取り組みによって、環境保全を含めた社会的ニーズに対応することで社会的価値を創造し、共通価値の創造(CSV=Creating Shared Value)を目指すとしている。
共通価値を創造するための重点強化策には、安定収益基盤の更なる盤石化、グローバル事業の更なる推進、サステナビリティへの取り組みを掲げている。そして企業の基盤・土台の盤石化に向けた基盤整備項目は、船舶・ビル管理の品質向上と安全の徹底、コスト競争力の強化、人的資本の育成・強化、海外拠点の更なる活用、DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)の推進加速、ESG(環境・社会・ガバナンス)・SDGs(持続可能な開発目標)への対応強化としている。
安定収益基盤の更なる盤石化では、不動産事業強化への取り組みとして長期的な視野での安定収益源となる都心基幹物件の獲得、海外・地方物件への進出など、海運業のエネルギー輸送の更なる強化として安定的な船隊整備の推進、既存契約荷主への高品質サービスの継続、安定的かつ高品質なエネルギー輸送の供給継続などを推進する。
グローバル事業の更なる推進では、グローバル体制を推進する競争力の強化としてケミカルタンカーの既存中東航路以外の航路進出に向けた取り組み強化、ガス船およびドライバルク船の新規貨物・新規航路への取り組み強化、グローバル体制を支える組織力の強化として海外事務所の人材増員・機能強化などを推進する。
サステナビリティへの取り組みでは、環境負荷低減に資する資産への投資推進として大型で燃費効率の良いエンジンを採用した船舶への投資強化(CO2排出率削減と経済効率性向上)、所有ビルにおけるエネルギーミックス推進(再生可能エネルギーへの転換やLED等の設備導入)に注力する。また、次世代燃料船への取り組み強化(LNG・LPG・メタノール等を燃料とする船舶への投資)や、二元燃料船の運航・管理ノウハウの高度化を推進する。サステナブルな貨物(環境負荷が少ない貨物、飢餓・貧困の撲滅に資する貨物)への取り組み強化として、LNG・穀物・肥料等の運航ノウハウの蓄積や荷主との関係強化を目指す。
さらに、2030年に向けて新たな価値を創造すべくDXの推進を加速している。デジタル化基盤を整備し、安全運航の質向上(船陸のリアルタイム通信、最適航路モニタリング、故障予兆技術の活用など)、ESG推進サポート(CO2削減、燃費向上、多様な働き方の実現など)、業務改革(付加価値の高い業務に集中できる環境の整備、ノウハウが伝承される組織体制の強化など)といった新たな価値の創出を目指す。基幹システムの刷新に関しては順次、段階的に取り組む見込みだ。
3. 組織・体制強化
こうした重点強化策の推進を強化・加速するため、組織・体制の強化も進めている。2020年8月からは「IINO環境タスクフォース」および「IINO DXタスクフォース」を設置し、組織の横断的な対応を推進している。また2021年6月には、海外拠点の活動を統括する海外戦略担当と新規事業の企画調査立案を行う事業開発推進部を統合して事業戦略部を新設した。そして2022年6月には、船舶の環境負荷低減のための取り組みを強化するため技術部を新設するとともに、IINO環境タスクフォースとともにグループ内の安全・環境・品質に関わる対策を推進してきた業務管理部およびビル事業部の担当組織を分割統合して「サステナビリティ推進部」を新設する。
なお外部とのアライアンスやコラボレーションも活用・強化する方針だ。2022年5月には、米国シリコンバレーに本拠地を置く世界最大のアクセラレーターであるPlug and Play社を起用して、様々な分野で先端技術を持つスタートアップとのコラボレーションを強化する方針を打ち出した。
4. 中期経営計画最終年度の目標をおおむね達成の見込み
中期経営計画の進捗状況を見ると、策定時点の前提に対して、燃料油価格が大幅に上昇しているものの、海運市況も大幅に上昇し、さらに為替が円安・ドル高となっていることも寄与して、2021年3月期、2022年3月期とも計画を大幅に超過達成した。そして2023年3月期も計画をおおむね達成する見込みとなっている。
なお、2022年3月期の営業利益の中期経営計画策定時点との差異分析については、海運業(中期経営計画比5億円増)は、大型原油タンカーで修繕費等の船費増加により7億円減、ケミカルタンカーで冬場以降の市況は上昇したものの、通期ベースでは市況が想定よりも低水準だったことにより2億円減、大型ガス船でLPG船の市況下落およびLNG船の入渠による費用増加により5億円減、ドライバルク船で市況上昇のため、想定よりも高水準に推移したことにより18億円増、不動産業(同5億円減)は、オフィスビルで営繕費の増加により4億円減、イイノホールおよびフォトスタジオ等でコロナ禍の影響で稼働が低迷したことにより1億円減としている。
また、2023年3月期の営業利益予想の中期経営計画策定時点との差異分析については、海運業(中期経営計画比3億円増)は、大型原油タンカーで船員費等の船費増加により3億円減、ケミカルタンカーで入渠費用や船員費等の船費が増加したことにより12億円減、大型ガス船で運航船売却による稼働減少を市況回復でカバーする見込みにより0億円減、ドライバルク船で市況が引き続き堅調に推移する見込みであることにより18億円増、不動産業(同12億円減)は、オフィスビルで堅調な稼働を維持するが、一部ビルにおける営繕費の増加により6億円減、イイノホールおよびフォトスタジオ等でコロナ禍の影響で稼働が低迷していることにより6億円減としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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