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富士ソフト Research Memo(5):顧客の価値向上に資する多彩なICTサービス・プロダクトを提供(2)
配信日時:2022/04/04 15:15
配信元:FISCO
■事業内容
3. 富士ソフト<9749>らしさが際立ってきた狭義のプロダクト・サービス
SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスが全社に占める構成比は売上高が32.6%(2021年12月期)、営業利益が28.3%(同)であった。2021年12月期の売上高は前期比5.1%増、営業利益は同6.9%減となった。増収下で減益になった主因は、増収の牽引役が低採算のPC販売案件であったのに対し、高採算の自社製品の販売が減少したためである。また、2021年12月期における受注高は、大型受注の反動や一部商材の特需一巡による減速等を受けて前期比6.4%減となり、同期末の受注残高は同18.8%減となっている。
狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」、SIMフリー向けモバイルルータ「FS030W、FS040W」、テレワークにおけるコニュニケーションロスなどのデメリットを軽減するツールである仮想オフィス空間「FAMoffice(ファムオフィス)」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)から成る。2021年12月期の前期比増収率は、自社プロダクトが3%減(2020年12月期38%増)、ライセンスビジネスが4%減(同46%増)、物販等が20%増(同14%減)であった。
自社プロダクトの減速は、コロナ禍を受けたリモートワーク需要の高まりが追い風となった「SIMフリー向けモバイルルータ」に対する特需一巡によるところが大きく、物販等の増加はGIGAスクールに関連するPC販売案件等の売上計上によるものである。
ライセンスビジネスについては、Windows7のサポート終了(2020年1月14日)特需のピークアウト後も販売拡大が継続している。加えて、Microsoft365(旧Office)や各種クラウドサービスといったICTプロダクトのサブスクリプションモデル化(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)の進展により、従来以上に事業の安定性が高まっている可能性がある。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上は自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。
こうしたなかで、同社はPCのライフサイクル管理に関するすべての作業(PCの選定・レンタル、キッティング、管理・サポート、更新プログラム適用等)をワンストップで対応する「デスクトップフルサービス」の提供を2021年8月からスタートした。この自社サービスではMicrosoft365の導入/利活用を推奨しており、狭義のプロダクト・サービス全般をグロースし収益性を高める力を持つ。また、マイクロソフトがサブスクリプションモデルであるWindows365(企業向け仮想デスクトップ=クラウドPC)のサービス提供を2021年8月から、次期OSであるWindows11の提供も同年10月から開始していることは、過去に見られたような特需的な動きが起こるかはさておき、同社の「デスクトップフルサービス」の立ち上げにとって追い風と言えよう。
独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、リモート教育関連製品やコミュニケーションロボット、モバイルルータ等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。
一例を挙げると、リモートワーク用社内ツールであった仮想オフィス空間「FAMoffice」の外販(2021年6月開始)は、典型的なドッグフーディング事例としてだけでなく、メタバース市場への取り組み事例としても大いに注目できよう。「FAMoffice」はバーチャル空間上に再現されたオフィスであり、実際のオフィスに近い臨場感や一体感、利便性を提供する製品である。「FAMoffice」にアバター(バーチャル空間上の自分を表すキャラクター)として出社することで、全体の俯瞰や特定メンバーの状況把握が容易になるだけでなく、他のメンバーとの資料・情報共有やチャット・ビデオ通話を素早く行える等の仕組みによりメンバー同士のコミュニケーション(会議、相談、雑談)が簡単に行えるため、リモートワークのメリット(BCP対策、経費削減、業務効率化、働き方改革等)を高め、デメリット(セキュリティ問題、コミュニケーションロス問題等)を軽減することが可能となる。
2021年11月、同社は「FAMoffice」技術をベースにした新たな展開として、学研ホールディングス<9470>のグループ会社である(株)学研塾ホールディングス及び(株)学研メソッドと共同実証を行うことを発表した。具体的には、同社のICT分野における技術力・開発力と学研グループの教育分野におけるノウハウを融合させることで、生徒の学習意欲と競争心を高める新しいオンライン学習の在り方を見出し、その結果を基にオンライン学習環境に適した新たなサービス「FAMschool(ファムスクール)(仮称)」の開発を目指すものである。未来の社会を担う子供達に最適な学習環境の提供を目指す今回の協業は、「社会貢献に直結する事業」かつ「自社のDXを顧客の競争力向上に貢献させる事業」という点で極めて同社らしい取り組みと言える。
同社のコアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きと言え、会社側は「投資局面後の収益性については高い水準を求めている」としている。この点、これまで全社水準を下回って推移してきた狭義のプロダクト・サービスのセグメント利益率が、2018年12月期の2.9%から2020年12月期には6.4%と3.5ポイントもの大幅改善を示していた。2021年12月期はプロダクトミックス要因による採算性悪化で5.7%へと低下したものの、依然として2019年12月期の4.5%を上回った水準に踏みとどまっていることは評価に値しよう。狭義のプロダクト・サービス事業は、採算性に幅がある商材のスポット的な売上計上に左右されるため、セグメント利益率の短期的な変動に一喜一憂する必要はないものの、今後の推移については期待を持って見守りたい。
4. 底入れ模索が続くアウトソーシング
アウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は5.3%(2021年12月期)、営業利益構成比は5.5%(同)、セグメント利益率は6.7%(同)である。2021年12月期の売上高は前期比2.3%減、営業利益は同5.9%減、セグメント利益率は同0.3ポイント低下、受注高は同0.3%増、期末の受注残高は前期末比11.1%減となっている。
事業構造改革等により利益率は2018年12月期から連続して全社平均を上回るものの、近年の減収傾向は流通・サービス向け継続案件の減少によるところが大きく、他社クラウドサービスとの競争が厳しいデータセンター事業については、引き続き底入れ模索局面にあると考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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3. 富士ソフト<9749>らしさが際立ってきた狭義のプロダクト・サービス
SI事業のプロダクト・サービスは、狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに区分される。狭義のプロダクト・サービスが全社に占める構成比は売上高が32.6%(2021年12月期)、営業利益が28.3%(同)であった。2021年12月期の売上高は前期比5.1%増、営業利益は同6.9%減となった。増収下で減益になった主因は、増収の牽引役が低採算のPC販売案件であったのに対し、高採算の自社製品の販売が減少したためである。また、2021年12月期における受注高は、大型受注の反動や一部商材の特需一巡による減速等を受けて前期比6.4%減となり、同期末の受注残高は同18.8%減となっている。
狭義のプロダクト・サービスは、1)自社プロダクト(ペーパーレスシステムの「moreNOTE」、情報化社会における総合教育ソリューションの「みらいスクールステーション」、個人所有のスマートフォンなどを会社の業務で活用するツールである「smartBYOD」、コミュニケーションロボットの「PALRO」、SIMフリー向けモバイルルータ「FS030W、FS040W」、テレワークにおけるコニュニケーションロスなどのデメリットを軽減するツールである仮想オフィス空間「FAMoffice(ファムオフィス)」等)、2)ライセンスビジネス(マイクロソフト製品、AWS、VMware等)、3)物販等(PC、サーバー等)から成る。2021年12月期の前期比増収率は、自社プロダクトが3%減(2020年12月期38%増)、ライセンスビジネスが4%減(同46%増)、物販等が20%増(同14%減)であった。
自社プロダクトの減速は、コロナ禍を受けたリモートワーク需要の高まりが追い風となった「SIMフリー向けモバイルルータ」に対する特需一巡によるところが大きく、物販等の増加はGIGAスクールに関連するPC販売案件等の売上計上によるものである。
ライセンスビジネスについては、Windows7のサポート終了(2020年1月14日)特需のピークアウト後も販売拡大が継続している。加えて、Microsoft365(旧Office)や各種クラウドサービスといったICTプロダクトのサブスクリプションモデル化(売り切り商売ではなく、利用期間に応じて料金を徴収するビジネスモデル)の進展により、従来以上に事業の安定性が高まっている可能性がある。なお、同社の場合、ライセンス製品の導入サポートに関わる売上は自社プロダクトに計上され、厚い利幅を確保しているもようである。
こうしたなかで、同社はPCのライフサイクル管理に関するすべての作業(PCの選定・レンタル、キッティング、管理・サポート、更新プログラム適用等)をワンストップで対応する「デスクトップフルサービス」の提供を2021年8月からスタートした。この自社サービスではMicrosoft365の導入/利活用を推奨しており、狭義のプロダクト・サービス全般をグロースし収益性を高める力を持つ。また、マイクロソフトがサブスクリプションモデルであるWindows365(企業向け仮想デスクトップ=クラウドPC)のサービス提供を2021年8月から、次期OSであるWindows11の提供も同年10月から開始していることは、過去に見られたような特需的な動きが起こるかはさておき、同社の「デスクトップフルサービス」の立ち上げにとって追い風と言えよう。
独立系SIerとして特定のハードウェアに縛られない柔軟なシステム構築力を強みの1つとする同社が、リモート教育関連製品やコミュニケーションロボット、モバイルルータ等のハードウェアを含む自社ブランド・プロダクトを投入していることは、ユニークな挑戦に見える。
一例を挙げると、リモートワーク用社内ツールであった仮想オフィス空間「FAMoffice」の外販(2021年6月開始)は、典型的なドッグフーディング事例としてだけでなく、メタバース市場への取り組み事例としても大いに注目できよう。「FAMoffice」はバーチャル空間上に再現されたオフィスであり、実際のオフィスに近い臨場感や一体感、利便性を提供する製品である。「FAMoffice」にアバター(バーチャル空間上の自分を表すキャラクター)として出社することで、全体の俯瞰や特定メンバーの状況把握が容易になるだけでなく、他のメンバーとの資料・情報共有やチャット・ビデオ通話を素早く行える等の仕組みによりメンバー同士のコミュニケーション(会議、相談、雑談)が簡単に行えるため、リモートワークのメリット(BCP対策、経費削減、業務効率化、働き方改革等)を高め、デメリット(セキュリティ問題、コミュニケーションロス問題等)を軽減することが可能となる。
2021年11月、同社は「FAMoffice」技術をベースにした新たな展開として、学研ホールディングス<9470>のグループ会社である(株)学研塾ホールディングス及び(株)学研メソッドと共同実証を行うことを発表した。具体的には、同社のICT分野における技術力・開発力と学研グループの教育分野におけるノウハウを融合させることで、生徒の学習意欲と競争心を高める新しいオンライン学習の在り方を見出し、その結果を基にオンライン学習環境に適した新たなサービス「FAMschool(ファムスクール)(仮称)」の開発を目指すものである。未来の社会を担う子供達に最適な学習環境の提供を目指す今回の協業は、「社会貢献に直結する事業」かつ「自社のDXを顧客の競争力向上に貢献させる事業」という点で極めて同社らしい取り組みと言える。
同社のコアコンピタンスである「技術力と提案力」を注ぎ込んだ自社プロダクトにより、新たな付加価値の創造に取り組む戦略は「挑戦と創造」という社是に沿った動きと言え、会社側は「投資局面後の収益性については高い水準を求めている」としている。この点、これまで全社水準を下回って推移してきた狭義のプロダクト・サービスのセグメント利益率が、2018年12月期の2.9%から2020年12月期には6.4%と3.5ポイントもの大幅改善を示していた。2021年12月期はプロダクトミックス要因による採算性悪化で5.7%へと低下したものの、依然として2019年12月期の4.5%を上回った水準に踏みとどまっていることは評価に値しよう。狭義のプロダクト・サービス事業は、採算性に幅がある商材のスポット的な売上計上に左右されるため、セグメント利益率の短期的な変動に一喜一憂する必要はないものの、今後の推移については期待を持って見守りたい。
4. 底入れ模索が続くアウトソーシング
アウトソーシングは、データセンターやシステム運用・保守等のサービスを提供しており、売上高構成比は5.3%(2021年12月期)、営業利益構成比は5.5%(同)、セグメント利益率は6.7%(同)である。2021年12月期の売上高は前期比2.3%減、営業利益は同5.9%減、セグメント利益率は同0.3ポイント低下、受注高は同0.3%増、期末の受注残高は前期末比11.1%減となっている。
事業構造改革等により利益率は2018年12月期から連続して全社平均を上回るものの、近年の減収傾向は流通・サービス向け継続案件の減少によるところが大きく、他社クラウドサービスとの競争が厳しいデータセンター事業については、引き続き底入れ模索局面にあると考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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