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アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療用製品は米国で2026年前半の販売承認申請目指す
配信日時:2025/08/04 12:03
配信元:FISCO
*12:03JST アンジェス Research Memo(3):HGF遺伝子治療用製品は米国で2026年前半の販売承認申請目指す
■アンジェス<4563>の主要開発パイプラインの動向
同社の主要開発パイプラインには、HGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNAや、提携先のVasomuneと共同開発中のTie2受容体アゴニストがある。
1. HGF遺伝子治療用製品
HGF遺伝子治療用製品は血管新生作用の効果を活用して、閉塞性動脈硬化症のなかでも症状が進行した慢性動脈閉塞症向け治療薬として開発が進められてきた。慢性動脈閉塞症とは、血管が閉塞することによって血流が止まり、組織が潰瘍・壊疽を起こして最終的に下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患である。現在の治療法としては、カテーテル治療や血管バイパス手術などが行われているが、手術ができないケースも多く、新たな治療法の開発が望まれている。
HGF遺伝子治療用製品は、血管が詰まっている部位周辺に複数回注射投与することによって新たな血管を作り出し、血流を回復させることで潰瘍の改善を図るものである。国内では2019年3月に「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能、効果または性能として、条件及び期限付き承認を取得し、同年9月より「コラテジェン(R)筋注用4mg」※として提携先の田辺三菱製薬を通じて販売を開始した。製造販売後承認条件評価を実施して2023年5月に本承認の申請を行ったが、国内第3相臨床試験の成績を再現できなかったことや、米国の後期第2相臨床試験の結果が良好であったことを踏まえて、戦略的観点から2024年6月に申請を一旦取り下げ、国内での販売を終了した。
※ 用法は、虚血部位に対して筋肉内投与を4週間間隔で2回行い(4mg/回)、症状が残存する場合には4週間後に3回目の投与もできる(薬価は約61万円/1瓶(4mg))。
国内の臨床試験では重度の患者を対象としていたのに対して、米国では2019年6月に改定された包括的高度慢性下肢虚血に関するグローバル治療指針※や治験担当医師の提案を踏まえて、下肢切断リスクの低いステージ1または2の患者を対象に臨床試験を実施した。治験担当医師の、重症下肢虚血の患者はがんと同様に早期に治療を開始することが重要である、との仮説による試験デザインとした。
※ グローバル治療指針(Global Vascular Guideline:GVG):包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic limb-threatening ischemia)の初期段階から適切な治療マネジメントを提供することで患者のQOLの向上を図ることを推奨している。当ガイドラインでは臨床ステージを4段階(clinical stage1~4)に分け、それぞれのステージにおける治療方針が示されており、米国での後期第2相臨床試験は下肢切断リスクの低いclinical stage1と2を対象とした。このステージの患者には、まず潰瘍の治療を考慮することがガイドラインで推奨されている。
米国の後期第2相臨床試験では、主要評価項目として「治癒までの期間」と「投与後6ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合」を設定し、HGF遺伝子治療用製品またはプラセボを4週間の間隔を置いて4回投与する二重盲検比較試験を実施した。被験者を4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分け12ヶ月の観察期間を設けてデータ収集を行った(被験者数は途中脱落者も想定して全75例を組み入れ)。2024年11月に開催された米国心臓病学会にて治験担当医師からトップラインデータが発表されており、「治癒までの期間」がプラセボ群に対して、本剤は大幅に短縮できることが確認された。また、「投与後6ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合」のほか、「同12ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合」及び「同12ヶ月時点の潰瘍再発率」においてもプラセボ群に対する本剤の有効性が確認された。これらの結果は、HGF遺伝子治療用製品が慢性下肢虚血の早期ステージにおいて有効な治療法であることを示唆しており、治験担当医師も今回の結果を受けて、「HGF遺伝子治療用製品が既存治療法の有望な代替手段となる可能性がある」と結論付けている。
なお、治験結果の詳細な内容については、学術誌に論文として掲載する準備を進めており、同社も掲載と併せて同内容を発表する予定にしている。論文掲載前に詳細な内容を公表すると当該学術誌の投稿規程に抵触し、掲載されなくなるためだ。現状、2025年8月ころの掲載に向けて発行元と調整を進めており、発表されれば販売ライセンス契約の交渉も前進するものと思われる。日本の臨床試験結果よりも良好な結果が得られた理由として、被験者の症状(軽度から中等度を対象)や投与回数(日本は2〜3回、米国は4回)の違いに加えて、経過観察期間中の患者の管理体制の違いが影響したのではないかと同社では推察している。米国ではブーツを履くことで患部を保護していたほか、週1度の診察を受けるなどフォローアップ体制も万全だった。
米国における今後の開発方針はFDAとの協議のうえ決定するが、後期第2相臨床試験の結果が想定を上回る好結果であったこと、それにより2024年9月にFDAよりブレイクスルーセラピーに指定されたことなどから、第3相臨床試験を行わずに、製造販売承認申請を行う可能性が高まっている。現在、承認申請に向けて重要となるHGF遺伝子治療用製品の安定供給体制の確保について製造委託先と交渉を進めている段階にあり、並行して販売ライセンス契約の締結に向けたコンタクトも複数の候補企業と開始している。製造及び販売体制を構築したうえで承認申請を行うことになるため、順調に進めば2026年前半の承認申請を行い、同年末ころか2027年前半にも承認を取得する可能性があると弊社では見ている。
なお、日本における開発方針については、国内の第3相臨床試験結果と米国における後期第2相臨床試験の結果を中心に新たな申請データパッケージを構築し、改めて製造販売承認の申請に向けた準備を進めるが、まずは米国での開発を最優先に取り組む方針だ。また、大手製薬企業との販売契約が締結されれば欧州市場にも展開していくことが予想される。
HGF遺伝子治療用製品の市場規模については、米国だけで少なくとも1千億円を超える規模になると弊社では試算している。米国での対象患者数は同社の直近の調べで約50万人と見られる(日本では5千人~2万人)。このうち実際の患者数は数万人規模と見られ、これに国内の薬価(約61万円/1瓶(4mg))×4回を掛け合わせた。ただし、血管再建術による治療コストと同程度になると仮定すれば、さらに4倍以上の規模になるとの見方もあるようだ。米国で上市されれば日本や欧州にも展開し、世界規模ではさらに大きなポテンシャルを持つことになるだけに、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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同社の主要開発パイプラインには、HGF遺伝子治療用製品、NF-κBデコイオリゴDNAや、提携先のVasomuneと共同開発中のTie2受容体アゴニストがある。
1. HGF遺伝子治療用製品
HGF遺伝子治療用製品は血管新生作用の効果を活用して、閉塞性動脈硬化症のなかでも症状が進行した慢性動脈閉塞症向け治療薬として開発が進められてきた。慢性動脈閉塞症とは、血管が閉塞することによって血流が止まり、組織が潰瘍・壊疽を起こして最終的に下肢切断を余儀なくされることもある重篤な疾患である。現在の治療法としては、カテーテル治療や血管バイパス手術などが行われているが、手術ができないケースも多く、新たな治療法の開発が望まれている。
HGF遺伝子治療用製品は、血管が詰まっている部位周辺に複数回注射投与することによって新たな血管を作り出し、血流を回復させることで潰瘍の改善を図るものである。国内では2019年3月に「標準的な薬物治療の効果が不十分で血行再建術の施行が困難な慢性動脈閉塞症における潰瘍の改善」を効能、効果または性能として、条件及び期限付き承認を取得し、同年9月より「コラテジェン(R)筋注用4mg」※として提携先の田辺三菱製薬を通じて販売を開始した。製造販売後承認条件評価を実施して2023年5月に本承認の申請を行ったが、国内第3相臨床試験の成績を再現できなかったことや、米国の後期第2相臨床試験の結果が良好であったことを踏まえて、戦略的観点から2024年6月に申請を一旦取り下げ、国内での販売を終了した。
※ 用法は、虚血部位に対して筋肉内投与を4週間間隔で2回行い(4mg/回)、症状が残存する場合には4週間後に3回目の投与もできる(薬価は約61万円/1瓶(4mg))。
国内の臨床試験では重度の患者を対象としていたのに対して、米国では2019年6月に改定された包括的高度慢性下肢虚血に関するグローバル治療指針※や治験担当医師の提案を踏まえて、下肢切断リスクの低いステージ1または2の患者を対象に臨床試験を実施した。治験担当医師の、重症下肢虚血の患者はがんと同様に早期に治療を開始することが重要である、との仮説による試験デザインとした。
※ グローバル治療指針(Global Vascular Guideline:GVG):包括的高度慢性下肢虚血(CLTI:Chronic limb-threatening ischemia)の初期段階から適切な治療マネジメントを提供することで患者のQOLの向上を図ることを推奨している。当ガイドラインでは臨床ステージを4段階(clinical stage1~4)に分け、それぞれのステージにおける治療方針が示されており、米国での後期第2相臨床試験は下肢切断リスクの低いclinical stage1と2を対象とした。このステージの患者には、まず潰瘍の治療を考慮することがガイドラインで推奨されている。
米国の後期第2相臨床試験では、主要評価項目として「治癒までの期間」と「投与後6ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合」を設定し、HGF遺伝子治療用製品またはプラセボを4週間の間隔を置いて4回投与する二重盲検比較試験を実施した。被験者を4mg/回、8mg/回、プラセボの3群に分け12ヶ月の観察期間を設けてデータ収集を行った(被験者数は途中脱落者も想定して全75例を組み入れ)。2024年11月に開催された米国心臓病学会にて治験担当医師からトップラインデータが発表されており、「治癒までの期間」がプラセボ群に対して、本剤は大幅に短縮できることが確認された。また、「投与後6ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合」のほか、「同12ヶ月時点で治癒した潰瘍の割合」及び「同12ヶ月時点の潰瘍再発率」においてもプラセボ群に対する本剤の有効性が確認された。これらの結果は、HGF遺伝子治療用製品が慢性下肢虚血の早期ステージにおいて有効な治療法であることを示唆しており、治験担当医師も今回の結果を受けて、「HGF遺伝子治療用製品が既存治療法の有望な代替手段となる可能性がある」と結論付けている。
なお、治験結果の詳細な内容については、学術誌に論文として掲載する準備を進めており、同社も掲載と併せて同内容を発表する予定にしている。論文掲載前に詳細な内容を公表すると当該学術誌の投稿規程に抵触し、掲載されなくなるためだ。現状、2025年8月ころの掲載に向けて発行元と調整を進めており、発表されれば販売ライセンス契約の交渉も前進するものと思われる。日本の臨床試験結果よりも良好な結果が得られた理由として、被験者の症状(軽度から中等度を対象)や投与回数(日本は2〜3回、米国は4回)の違いに加えて、経過観察期間中の患者の管理体制の違いが影響したのではないかと同社では推察している。米国ではブーツを履くことで患部を保護していたほか、週1度の診察を受けるなどフォローアップ体制も万全だった。
米国における今後の開発方針はFDAとの協議のうえ決定するが、後期第2相臨床試験の結果が想定を上回る好結果であったこと、それにより2024年9月にFDAよりブレイクスルーセラピーに指定されたことなどから、第3相臨床試験を行わずに、製造販売承認申請を行う可能性が高まっている。現在、承認申請に向けて重要となるHGF遺伝子治療用製品の安定供給体制の確保について製造委託先と交渉を進めている段階にあり、並行して販売ライセンス契約の締結に向けたコンタクトも複数の候補企業と開始している。製造及び販売体制を構築したうえで承認申請を行うことになるため、順調に進めば2026年前半の承認申請を行い、同年末ころか2027年前半にも承認を取得する可能性があると弊社では見ている。
なお、日本における開発方針については、国内の第3相臨床試験結果と米国における後期第2相臨床試験の結果を中心に新たな申請データパッケージを構築し、改めて製造販売承認の申請に向けた準備を進めるが、まずは米国での開発を最優先に取り組む方針だ。また、大手製薬企業との販売契約が締結されれば欧州市場にも展開していくことが予想される。
HGF遺伝子治療用製品の市場規模については、米国だけで少なくとも1千億円を超える規模になると弊社では試算している。米国での対象患者数は同社の直近の調べで約50万人と見られる(日本では5千人~2万人)。このうち実際の患者数は数万人規模と見られ、これに国内の薬価(約61万円/1瓶(4mg))×4回を掛け合わせた。ただし、血管再建術による治療コストと同程度になると仮定すれば、さらに4倍以上の規模になるとの見方もあるようだ。米国で上市されれば日本や欧州にも展開し、世界規模ではさらに大きなポテンシャルを持つことになるだけに、今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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