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筑波精工 Research Memo(6):2026年3月期は営業黒字目指す。EV向け回復に加えAI半導体向けに期待
配信日時:2025/06/12 14:06
配信元:FISCO
*14:06JST 筑波精工 Research Memo(6):2026年3月期は営業黒字目指す。EV向け回復に加えAI半導体向けに期待
■今後の見通し
筑波精工<6596>の2026年3月期の業績は、売上高は351百万円(前期比47.8増)、営業利益4百万円(前期は44百万円の損失)、経常利益3百万円(同45百万円の損失)、当期純利益1百万円(同69百万円の損失)と予想している。
製品別の売上高予想は開示されていないが、各製品とも増加を見込んでいる。1つ目の要因は、EV向けに回復が見られることで、既に2025年4月に「Supporter」と「自動機」で約59百万円を受注している。今後、生産が増加するに伴い「Supporter」売上が増加すると推測される。また既述のように2025年3月に特定プロセス向けに「ステージ」を受注済みで、こちらも採用が拡大する可能性が高い。
さらに2026年3月期はAI半導体向けの立ち上がりが期待できそうだ。同社によれば、既に2024年夏から海外の大手ファウンドリとテストを繰り返しており、期中に「流し込みライン」(テスト用ライン)向けに「自動機」と「Supporter」合わせて約90百万円の受注を期待できるとのことである。
■中長期の展望
EV車の課題は「航続距離」、AI半導体の歩留まり向上には「Supporter」が有効
1. EV車の今後の課題(航続距離)と解決策
過去数年間、中国と欧米を中心に自動車のEV化は加速度的に進んだが、足元ではその伸び率が鈍化している。ここで指摘されている課題の1つが「航続距離」、すなわち1回の充電で走行できる距離が短いことだ。特に冬場は、より多くの電気を暖房用に消費するため、充電ステーションに長蛇の列ができている。これが最近の「EV離れ」の要因の1つとなっている。
(1) 航続距離が短い主要因はインバータの発熱
一般的なEV車(大衆車)の航続距離が短い主要因は、インバータの発熱にある。EV車では、バッテリーのDC電力をACに変換しモーターを回すが、この役割を果たすのがインバータで、変換時の発熱が電力損失を生んでいる。今後EV車の航続距離を伸ばすためには、インバータでの電力損失を極力抑えることが必須条件となる。
(2) 2つの解決策:SiC基板か極薄Si基板
同社によれば、このインバータでの熱損失を抑える方法は、現時点においては主に2つあるとのこと。1つはSiC(シリコンカーバイド)基板を使うことだが、SiC基板は量的な供給が限られていることから非常に高額であり、限られた一部の高級車にのみ搭載できる。一般大衆車への搭載はコスト面から難しい。
一方でSi基板(通常のシリコンウエハ)は安価で大量供給が可能だが、熱損失を抑えるためには厚みを80μm厚(可能なら60μm厚)以下にする必要がある。しかし量産ラインにおいては80μm厚以下のウエハの取り扱いが非常に難しく、通常の「接着剤方式」が使えないため、同社の「静電チャック方式」が必要となる。
注:上記は取材に基づいた同社の説明による。
2. 潜在市場の推測
上記のような事業環境から、同社の先行きには楽しみもあるが、ウエハの薄型化が進むためには乗り越えるべき課題・壁も多い。当初、同社によるとEV向けにウエハの薄型化が進むのは2024年3月期以降としていたが、実際は2~3年ほど遅れる気配である。したがって、同社の業績が本格的に浮上するのも2027年3月期からと予想される。
今後、潜在的な市場はどの程度あるのか、同社の説明によると、従来、薄型IGBT生産の主力は6インチウエハであったが、2023年秋から8インチウエハで80μが本格的に稼働し、一部では12インチが立ち上がりつつあるようだ。12インチウエハ1枚からは自動車約3台分のIGBTが取れると言う。したがって今後のEV自動車生産予測から、同社では12インチウエハ用「Supporter」の需要については、遅くとも2027年3月期に7,000枚/年になると見ているようだ。
「Supporter」の価格は正式には開示されていないが、取材に対して同社は「12インチウエハ用で1枚数千米ドルのレベル」と述べている。仮にこの価格を3千米ドル、1米ドルを150円とすると、2027年3月期の「Supporter」の売上高は、7,000×3,000×150=3,150百万円※となる可能性がある。
※ これらの数字は弊社推測によるもので、同社から正式に発表された数字ではない。
同社によれば、既に12インチ月産15万枚を準備している顧客がいるとのことで、事実2024年3月期には12インチ量産用の「自動機」を販売した。同社では12インチの保持材について、今のところ「Supporter」に対して競合する製品はないと見ている。今後は8インチでの同社製品の採用増とともに、12インチへの展開も注視する必要がある。
3. もう1つの潜在市場(MOSFET用)とIGBTの広がり
同社製品(主に「Supporter」)に対して、もう1つ大きな市場として期待されるのがMOSFET用だ。現在、自動車用と携帯電話用バッテリーの大容量化が進んでおり、これらのバッテリーにおいては高速(短時間)での充電が求められている。そのためには、高電圧をかける必要があり、これに耐えられるMOSFET半導体が必須部品となる。MOSFET半導体の厚さは約100μであるが、デバイスメーカーとしては少しでも生産効率を上げるために8インチウエハでの生産を標準としている。その生産工程ではウエハの「反り」が大きな問題となるが、これに対応できるのが同社の「Supporter」である。
同社ではMOSFET用としての「Supporter」の需要も今後増えていくと見ており、IGBT用と並んで楽しみな市場である。MOSFET用(8インチ用)の価格は、IGBT用(12インチ用)よりは低いと予想されるが、将来の売上高は年間200〜300百万円に上る可能性があると弊社では見ている。
また最近では、薄型IGBT市場が広がってきている点も注目だ。現在、最も需要が期待されているのがEV自動車なのは言うまでもないが、近年では風力発電用、家電用にも需要が広がっている。
4. AI半導体向け
さらに今後期待できる市場がAI半導体向け、正確に言えば「超微細化の半導体向け」である。AI半導体などでは超微細化が進んでいるが、現状ではプロセス装置や検査装置内のウエハ吸着固定による極微細な接触傷が歩留まりを大きく低下させており、これを改善するために、同社の「Supporter」(Carrier)の採用が検討されている。
既に海外大手のファウンドリ向けにテストライン用の受注が見込めるようだが、量産ラインに採用されれば大きな受注が期待できる。EV向けに加えて、今後はAI半導体向けも注視する必要がある。
■株主還元策
まずは安定した業績確保が先決
同社はまだ発展途上の企業であり十分な利益を確保できていない。株主還元はまだ先の話であり、まずは足元の利益をしっかり確保することが先決だろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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筑波精工<6596>の2026年3月期の業績は、売上高は351百万円(前期比47.8増)、営業利益4百万円(前期は44百万円の損失)、経常利益3百万円(同45百万円の損失)、当期純利益1百万円(同69百万円の損失)と予想している。
製品別の売上高予想は開示されていないが、各製品とも増加を見込んでいる。1つ目の要因は、EV向けに回復が見られることで、既に2025年4月に「Supporter」と「自動機」で約59百万円を受注している。今後、生産が増加するに伴い「Supporter」売上が増加すると推測される。また既述のように2025年3月に特定プロセス向けに「ステージ」を受注済みで、こちらも採用が拡大する可能性が高い。
さらに2026年3月期はAI半導体向けの立ち上がりが期待できそうだ。同社によれば、既に2024年夏から海外の大手ファウンドリとテストを繰り返しており、期中に「流し込みライン」(テスト用ライン)向けに「自動機」と「Supporter」合わせて約90百万円の受注を期待できるとのことである。
■中長期の展望
EV車の課題は「航続距離」、AI半導体の歩留まり向上には「Supporter」が有効
1. EV車の今後の課題(航続距離)と解決策
過去数年間、中国と欧米を中心に自動車のEV化は加速度的に進んだが、足元ではその伸び率が鈍化している。ここで指摘されている課題の1つが「航続距離」、すなわち1回の充電で走行できる距離が短いことだ。特に冬場は、より多くの電気を暖房用に消費するため、充電ステーションに長蛇の列ができている。これが最近の「EV離れ」の要因の1つとなっている。
(1) 航続距離が短い主要因はインバータの発熱
一般的なEV車(大衆車)の航続距離が短い主要因は、インバータの発熱にある。EV車では、バッテリーのDC電力をACに変換しモーターを回すが、この役割を果たすのがインバータで、変換時の発熱が電力損失を生んでいる。今後EV車の航続距離を伸ばすためには、インバータでの電力損失を極力抑えることが必須条件となる。
(2) 2つの解決策:SiC基板か極薄Si基板
同社によれば、このインバータでの熱損失を抑える方法は、現時点においては主に2つあるとのこと。1つはSiC(シリコンカーバイド)基板を使うことだが、SiC基板は量的な供給が限られていることから非常に高額であり、限られた一部の高級車にのみ搭載できる。一般大衆車への搭載はコスト面から難しい。
一方でSi基板(通常のシリコンウエハ)は安価で大量供給が可能だが、熱損失を抑えるためには厚みを80μm厚(可能なら60μm厚)以下にする必要がある。しかし量産ラインにおいては80μm厚以下のウエハの取り扱いが非常に難しく、通常の「接着剤方式」が使えないため、同社の「静電チャック方式」が必要となる。
注:上記は取材に基づいた同社の説明による。
2. 潜在市場の推測
上記のような事業環境から、同社の先行きには楽しみもあるが、ウエハの薄型化が進むためには乗り越えるべき課題・壁も多い。当初、同社によるとEV向けにウエハの薄型化が進むのは2024年3月期以降としていたが、実際は2~3年ほど遅れる気配である。したがって、同社の業績が本格的に浮上するのも2027年3月期からと予想される。
今後、潜在的な市場はどの程度あるのか、同社の説明によると、従来、薄型IGBT生産の主力は6インチウエハであったが、2023年秋から8インチウエハで80μが本格的に稼働し、一部では12インチが立ち上がりつつあるようだ。12インチウエハ1枚からは自動車約3台分のIGBTが取れると言う。したがって今後のEV自動車生産予測から、同社では12インチウエハ用「Supporter」の需要については、遅くとも2027年3月期に7,000枚/年になると見ているようだ。
「Supporter」の価格は正式には開示されていないが、取材に対して同社は「12インチウエハ用で1枚数千米ドルのレベル」と述べている。仮にこの価格を3千米ドル、1米ドルを150円とすると、2027年3月期の「Supporter」の売上高は、7,000×3,000×150=3,150百万円※となる可能性がある。
※ これらの数字は弊社推測によるもので、同社から正式に発表された数字ではない。
同社によれば、既に12インチ月産15万枚を準備している顧客がいるとのことで、事実2024年3月期には12インチ量産用の「自動機」を販売した。同社では12インチの保持材について、今のところ「Supporter」に対して競合する製品はないと見ている。今後は8インチでの同社製品の採用増とともに、12インチへの展開も注視する必要がある。
3. もう1つの潜在市場(MOSFET用)とIGBTの広がり
同社製品(主に「Supporter」)に対して、もう1つ大きな市場として期待されるのがMOSFET用だ。現在、自動車用と携帯電話用バッテリーの大容量化が進んでおり、これらのバッテリーにおいては高速(短時間)での充電が求められている。そのためには、高電圧をかける必要があり、これに耐えられるMOSFET半導体が必須部品となる。MOSFET半導体の厚さは約100μであるが、デバイスメーカーとしては少しでも生産効率を上げるために8インチウエハでの生産を標準としている。その生産工程ではウエハの「反り」が大きな問題となるが、これに対応できるのが同社の「Supporter」である。
同社ではMOSFET用としての「Supporter」の需要も今後増えていくと見ており、IGBT用と並んで楽しみな市場である。MOSFET用(8インチ用)の価格は、IGBT用(12インチ用)よりは低いと予想されるが、将来の売上高は年間200〜300百万円に上る可能性があると弊社では見ている。
また最近では、薄型IGBT市場が広がってきている点も注目だ。現在、最も需要が期待されているのがEV自動車なのは言うまでもないが、近年では風力発電用、家電用にも需要が広がっている。
4. AI半導体向け
さらに今後期待できる市場がAI半導体向け、正確に言えば「超微細化の半導体向け」である。AI半導体などでは超微細化が進んでいるが、現状ではプロセス装置や検査装置内のウエハ吸着固定による極微細な接触傷が歩留まりを大きく低下させており、これを改善するために、同社の「Supporter」(Carrier)の採用が検討されている。
既に海外大手のファウンドリ向けにテストライン用の受注が見込めるようだが、量産ラインに採用されれば大きな受注が期待できる。EV向けに加えて、今後はAI半導体向けも注視する必要がある。
■株主還元策
まずは安定した業績確保が先決
同社はまだ発展途上の企業であり十分な利益を確保できていない。株主還元はまだ先の話であり、まずは足元の利益をしっかり確保することが先決だろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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