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筑波精工 Research Memo(1):新たにAI半導体向け需要が立ち上がる
配信日時:2025/06/12 14:01
配信元:FISCO
*14:01JST 筑波精工 Research Memo(1):新たにAI半導体向け需要が立ち上がる
■要約
筑波精工<6596>の主力事業は、電界による吸着保持技術を生かした静電吸着システム「静電チャック(E-Chuck)」(以下、静電チャック)である。国際特許を保有している高度な技術でありながら、過去においてはあまり多くの需要が期待されていなかったが、ここ数年で同社を取り巻く環境は変わりつつある。自動車の電気化(EV化)が急速に進む現在、航続距離をさらに長くすることが大きな課題となっているが、これを克服するために、搭載されるパワー半導体の薄型化が重要となってきたからだ。薄型半導体の製造プロセスで使用される同社の静電チャックに注目が集まっている。現在の売上高はまだ少額だが、自動車のEV化が一段と進むなかで、今後の動向が注目される。加えて2024年からはAI半導体向けにも需要が立ち上がりつつある。
1. 会社の沿革と主な事業内容
同社は、電気機械器具の製造販売並びに電気機械器具の検査、測定、治工具及び金型の販売を目的として、1985年に栃木県真岡市熊倉町で設立した。設立当初は三洋電機(株)の半導体の後工程関係の設備を設計・販売していたが、並行して社内で開発を進めてきた静電チャックの開発に目途が付いたことから、2002年からは静電チャックの研究開発と静電チャック関連製品の販売に絞って事業を展開し、2018年に東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場した。
2. 2025年3月期の業績(実績)
2025年3月期の業績は、売上高は237百万円(前期比27.2%減)、営業損失は44百万円(前期は6百万円の損失)、経常損失は45百万円(同7百万円の損失)、当期純損失69百万円(同30百万円の利益)※となった。2024年は自動車のEV化が予想より停滞したことから、主要顧客の設備投資が低迷し、同社の売上高も減少した。手元の現金及び預金は278百万円と売上規模に比べて豊富であり、財務上の不安はない。純資産も現時点では186百万円となっているが、このままの停滞が続くと債務超過の恐れもあり、今後の動向は注視する必要がありそうだ。
※ 前期は、デモ用機器の販売により特別利益59百万円を計上したことにより当期純利益を計上した。
3. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の業績は、売上高は351百万円(前期比47.8%増)、営業利益は4百万円(前期は44百万円の損失)、経常利益は3百万円(同45百万円の損失)、当期純利益は1百万円(同69百万円の損失)と予想している。前期はEV向け需要が停滞したが、底打ちの気配は出ており2025年4月には「Supporter(R)(以下、Supporter)」と「自動機」で約59百万円を受注済みだ。さらに新たにAI半導体向けの需要が立ち上り始めており、期中に海外大手ファウンドリ向けの受注が期待できそうだ。今後はEV向け需要に加えて、AI半導体向けを含めて、量産用の需要が一気に高まる可能性があり、同社の「Supporter」の動向は注視する必要がある。
4. 中長期の展望:EV車の長航続距離化は追い風、新たにAI半導体向けが立ち上がる
同社の今後の成長マップは、自動車のEV化のさらなる進展→長航続距離化が必須→IGBT※1等のパワー半導体の薄型シリコンウエハ(以下、ウエハ)での生産の必要性から「Supporter」の需要増となる。今までの需要は主に試験用であったことから、現在まで業績は低迷していた。しかし2024年3月期に初めて量産用の「自動機」を販売し、今後は自動車のEV化・長航続距離化に伴うパワー半導体のさらなる薄型化が見込まれるため、将来は明るいと言える。顧客側は12インチプロセスの増強を進めているが、今のところ12インチの静電チャックでは、同社製品に対する競合は見当たらないため、12インチウエハによるパワー半導体の薄型シリコンウエハの生産が本格化すれば、同社製品への需要がさらに増加する可能性がある。またEV自動車用の需要以外にも、携帯電話向けや自動車向けの高速バッテリーチャージャーの需要も増加しており、その必須部品であるMOSFET※2半導体の生産工程においても同社製品が使われる可能性が高い。さらに最近では、AI半導体の歩留まり向上のために同社の静電チャック方式が着目されており、新たな需要が期待できそうだ。
※1 IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)は、パワー半導体(より高い電圧、より大きな電流のコントロールを可能にする)の一種である。用途としては、“電気で動き、パワーの強弱を調整できるもの”で、電車や自動車(ハイブリッド車(HEV)やEV)、IHをはじめとする家庭調理機器やエアコン、冷蔵庫、洗濯機などがある。
※2 MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート電界効果トランジスタ)は、スイッチデバイスの一種。スイッチデバイスは電源を入れることで様々な機能を動かすための装置へ電力を供給する。その際に、入力電圧を各所出力電圧へ変換して電力供給する必要がある。例えば、パソコンであれば、液晶パネル、CPU、メモリやオーディオアンプ、USBコネクタなどを動かすために、MOSFETが入力電圧を変換し、電力を供給する。スイッチデバイスのなかでもMOSFETは、電力を高効率に流し、低消費電力に優れ、製品の小型軽量化を可能にするものである。
■Key Points
・電界を用いた吸着システム静電チャックが主力事業。自動車のEV化で要注目
・2025年3月期はEV市場の停滞で営業損失だったが、2026年3月期は回復見込み
・中長期では、EV車の長航続距離化の恩恵を受けるが、新たにAI半導体向けも立ち上がる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
<HN>
筑波精工<6596>の主力事業は、電界による吸着保持技術を生かした静電吸着システム「静電チャック(E-Chuck)」(以下、静電チャック)である。国際特許を保有している高度な技術でありながら、過去においてはあまり多くの需要が期待されていなかったが、ここ数年で同社を取り巻く環境は変わりつつある。自動車の電気化(EV化)が急速に進む現在、航続距離をさらに長くすることが大きな課題となっているが、これを克服するために、搭載されるパワー半導体の薄型化が重要となってきたからだ。薄型半導体の製造プロセスで使用される同社の静電チャックに注目が集まっている。現在の売上高はまだ少額だが、自動車のEV化が一段と進むなかで、今後の動向が注目される。加えて2024年からはAI半導体向けにも需要が立ち上がりつつある。
1. 会社の沿革と主な事業内容
同社は、電気機械器具の製造販売並びに電気機械器具の検査、測定、治工具及び金型の販売を目的として、1985年に栃木県真岡市熊倉町で設立した。設立当初は三洋電機(株)の半導体の後工程関係の設備を設計・販売していたが、並行して社内で開発を進めてきた静電チャックの開発に目途が付いたことから、2002年からは静電チャックの研究開発と静電チャック関連製品の販売に絞って事業を展開し、2018年に東京証券取引所TOKYO PRO Marketに上場した。
2. 2025年3月期の業績(実績)
2025年3月期の業績は、売上高は237百万円(前期比27.2%減)、営業損失は44百万円(前期は6百万円の損失)、経常損失は45百万円(同7百万円の損失)、当期純損失69百万円(同30百万円の利益)※となった。2024年は自動車のEV化が予想より停滞したことから、主要顧客の設備投資が低迷し、同社の売上高も減少した。手元の現金及び預金は278百万円と売上規模に比べて豊富であり、財務上の不安はない。純資産も現時点では186百万円となっているが、このままの停滞が続くと債務超過の恐れもあり、今後の動向は注視する必要がありそうだ。
※ 前期は、デモ用機器の販売により特別利益59百万円を計上したことにより当期純利益を計上した。
3. 2026年3月期の業績予想
2026年3月期の業績は、売上高は351百万円(前期比47.8%増)、営業利益は4百万円(前期は44百万円の損失)、経常利益は3百万円(同45百万円の損失)、当期純利益は1百万円(同69百万円の損失)と予想している。前期はEV向け需要が停滞したが、底打ちの気配は出ており2025年4月には「Supporter(R)(以下、Supporter)」と「自動機」で約59百万円を受注済みだ。さらに新たにAI半導体向けの需要が立ち上り始めており、期中に海外大手ファウンドリ向けの受注が期待できそうだ。今後はEV向け需要に加えて、AI半導体向けを含めて、量産用の需要が一気に高まる可能性があり、同社の「Supporter」の動向は注視する必要がある。
4. 中長期の展望:EV車の長航続距離化は追い風、新たにAI半導体向けが立ち上がる
同社の今後の成長マップは、自動車のEV化のさらなる進展→長航続距離化が必須→IGBT※1等のパワー半導体の薄型シリコンウエハ(以下、ウエハ)での生産の必要性から「Supporter」の需要増となる。今までの需要は主に試験用であったことから、現在まで業績は低迷していた。しかし2024年3月期に初めて量産用の「自動機」を販売し、今後は自動車のEV化・長航続距離化に伴うパワー半導体のさらなる薄型化が見込まれるため、将来は明るいと言える。顧客側は12インチプロセスの増強を進めているが、今のところ12インチの静電チャックでは、同社製品に対する競合は見当たらないため、12インチウエハによるパワー半導体の薄型シリコンウエハの生産が本格化すれば、同社製品への需要がさらに増加する可能性がある。またEV自動車用の需要以外にも、携帯電話向けや自動車向けの高速バッテリーチャージャーの需要も増加しており、その必須部品であるMOSFET※2半導体の生産工程においても同社製品が使われる可能性が高い。さらに最近では、AI半導体の歩留まり向上のために同社の静電チャック方式が着目されており、新たな需要が期待できそうだ。
※1 IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラートランジスタ)は、パワー半導体(より高い電圧、より大きな電流のコントロールを可能にする)の一種である。用途としては、“電気で動き、パワーの強弱を調整できるもの”で、電車や自動車(ハイブリッド車(HEV)やEV)、IHをはじめとする家庭調理機器やエアコン、冷蔵庫、洗濯機などがある。
※2 MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート電界効果トランジスタ)は、スイッチデバイスの一種。スイッチデバイスは電源を入れることで様々な機能を動かすための装置へ電力を供給する。その際に、入力電圧を各所出力電圧へ変換して電力供給する必要がある。例えば、パソコンであれば、液晶パネル、CPU、メモリやオーディオアンプ、USBコネクタなどを動かすために、MOSFETが入力電圧を変換し、電力を供給する。スイッチデバイスのなかでもMOSFETは、電力を高効率に流し、低消費電力に優れ、製品の小型軽量化を可能にするものである。
■Key Points
・電界を用いた吸着システム静電チャックが主力事業。自動車のEV化で要注目
・2025年3月期はEV市場の停滞で営業損失だったが、2026年3月期は回復見込み
・中長期では、EV車の長航続距離化の恩恵を受けるが、新たにAI半導体向けも立ち上がる
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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