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明日の株式相場に向けて=トヨタ決算が示す東京市場の迷宮化

配信日時:2025/05/08 17:30 配信元:MINKABU
 きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比148円高の3万6928円と反発。前日は8日ぶりに小休止をみせたものの、きょうは再び上値を指向する展開となった。日本時間きょう未明に発表されたFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見は概ね事前の想定通りであった。今回は政策金利が据え置かれたが、パウエル氏は記者会見で利下げを急がない方針を示し、データ重視としながらもどちらかと言えばタカ派寄りのスタンスに見えなくもなかった。ただ、このビッグイベントを通過して米国株市場では取引終盤に上げ足を強める形となっている。  国内企業の決算発表は一概に好調とも不調ともいえないが、トランプ関税の影響が読み切れないなか、今期の業績予想数値やガイダンスについては計画通りに進まなくても免責となるムードが漂う。また、自社株買いや増配など株主還元の動きが活発化していることは、少なくとも下値に対する緩衝材として十分に機能している。  最近の株価の上昇ピッチの速さは売り方としては悶絶するレベルだが、他方、買い方が歓喜するようなダイナミズムには遠い相場環境にある。4月下旬以降のV字リバウンド相場に乗れている投資家は思った以上に少ないというのが現状のようだ。いわば先物主導のショートカバーによる戻り相場で、実需の追随買いが肯定されないような雰囲気があった。いいようにトランプ砲に振り回され、ニュースフローに反応して機械的な売買を行うAIアルゴリズムを除けば、個人投資家にすればなかなか勝利のおぼつかない相場に変質してしまっている。「相場の商いが膨らんでも以前のようにデイトレーダーの体温がほとんど感じられなくなった」という声も市場関係者から聞かれる。  また、「現在の上昇トレンドは既に8合目あたりに来ている」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘もある。無機質なエレベーター相場も下りに変わるタイミングが近そうだが、とはいえ今すぐという感じでもない。なぜかと言えば、トランプ米政権による減税や規制緩和絡みの話、あるいは関税問題の緩和に向けたポジティブな話が出やすい時間帯に入っているからだ。きょうは、トランプ大統領から英国との貿易協定の締結を匂わせるSNS投稿があったほか、トランプ氏がバイデン米政権の時に策定したAI半導体の輸出規制を撤廃するとの報道がなされ、半導体製造装置関連などの株価を刺激した。  忘れがちだがあすはオプションSQ算出日となる。攻防ラインとして意識された3万6500円のコールについては既に突破完了で、もはや消化試合のような状況だ。あとは、決算絡みで個別株の動向に耳目が集まるところ。きょうは後場取引時間中に発表されたトヨタ自動車<7203.T>の決算に対する関心が高かった。26年3月期の業績予想をどう示してくるかに視線が集まったが、最終利益が前期比35%減の3兆1000億円で、事前予想を大きく下回った。もっともトランプ関税の逆風はその風速が不明であり、それをどこまで織り込むべきか何ともいえない部分もある。想定為替が1ドル=145円に設定したことが甘いという意見もあり、一段の下方修正含みであることは否定できない。業績は厳しい見通しを示した一方、配当を前期実績から5円増配となる95円としたことについては評価できる材料といってよい。だが今回、自社株買いへの期待については応えられておらず課題として残る。PBR1倍割れでは拾えるが、実需買いはそこまでにとどまる可能性がある。  決算プレーに絡まない企業、つまり決算発表通過組で好実態が評価できる銘柄としては、旭情報サービス<9799.T>に目を向けて見たい。独立系情報サービス会社でネットワークサービスを主力展開する。業績は今3月期予想を含め16期連続の増収増益を見込む。1000円トビ台の株価は魅力的だ。また、同じ情報サービス会社ではアイネス<9742.T>も割安で株価に出遅れ感がある。一方、不動産関連の側面を持つ倉庫業界のゼロワン銘柄、三菱倉庫<9301.T>も要マーク。1000円近辺に位置するが、75日移動平均線ブレークを果たし、ここからの一段高に期待。このほか、関電工<1942.T>や九電工<1959.T>など電気工事会社も意外なほど業績がしっかりしておりチェックしておきたい。  あすのスケジュールでは、3月の毎月勤労統計、3月の家計調査、4月上中旬の貿易統計がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。後場取引時間中には3月の景気動向指数(速報値)など。海外では4月の中国貿易統計が発表される。また、この日は米国でFRB高官の発言機会が相次ぐ。ウィリアムズNY連銀総裁の講演を皮切りに、バーFRB理事、クグラーFRB理事、ウォラーFRB理事、クックFRB理事らが講演もしくは討論会への参加を予定している。なお、翌10日土曜日には4月の中国消費者物価指数(CPI)、4月の中国卸売物価指数(PPI)の発表を控えており、この内容も注目される。(銀) 出所:MINKABU PRESS

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