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アンジェス Research Memo(5):OMNIプラットフォームはゲノム編集技術のなかでも安全性の高さに強み
配信日時:2025/04/02 12:05
配信元:FISCO
*12:05JST アンジェス Research Memo(5):OMNIプラットフォームはゲノム編集技術のなかでも安全性の高さに強み
■アンジェス<4563>のEmendoBioの開発状況
1. ゲノム編集技術とOMNIプラットフォームの特徴
ゲノム編集とは、特定の塩基配列(ターゲット配列)のみを切断するDNA切断酵素(ヌクレアーゼ)を利用して、狙った遺伝子を改変する技術を指す。2012年に従来より短時間で簡単に標的とするDNA配列を切断できるCRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)と呼ばれる革新的な技術が登場したことで、製薬業界においてもゲノム編集技術を用いて新薬の開発を行う動きが活発化した。米国Vertex Pharmaceuticals Inc.とスイスのCRISPR Therapeuticsが同技術を用いて共同開発した遺伝性血液疾患「鎌状赤血球貧血症※」を適応症とした治療法が、2023年11月に英国、同年12月に米国で初めて承認された。患者から採取した造血幹細胞をゲノム編集技術で遺伝子改変し、それを注射投与で体内に戻すことで治療効果を得る治療法である。
※ 鎌状赤血球貧血症とは、赤血球に含まれるヘモグロビン(酸素の運搬に使われるタンパク質)が遺伝子異常によって変形することで赤血球が鎌状となって壊れやすくなり貧血の症状を起こす疾患。症状が悪化すると壊れた鎌状赤血球によって毛細血管が遮断され激痛が生じるほか、長期にわたる場合、酸素供給量が低下することで臓器にも悪影響を及ぼし、腎不全や心不全を惹き起こすケースもある。米国内の患者数は約10万人で黒人に多いと言われている。従来は、白血球の型である「HLA型」が一致するドナーから造血幹細胞の提供を受ける以外に治療の選択肢がなかった。今回承認されたのは、血管閉塞性危機が定期的に起きる12歳以上の患者を対象としている。
CRISPR/Cas9技術は狙った遺伝子とは異なる箇所(標的DNA配列と似た配列)を切断してしまう「オフターゲット効果」があり安全性が課題とされてきたが、今回初承認となったことでハードルを1つクリアした格好だ。これに対してEmendoが独自開発したOMNIプラットフォームは、標的のDNA配列を高精度に切り取る独自のヌクレアーゼ(OMNIヌクレアーゼ)を効率的に探索し最適化することで「オフターゲット効果」を回避する安全性の高い技術であることが特徴となっている。自社開発したヌクレアーゼのうち250超については特許を申請している。ゲノム編集技術による医薬品の開発を進める場合には、効率性だけでなく安全性も強く求められるため、OMNIプラットフォームは強みになると弊社では評価する。
また、もう1つの特徴としてアレル特異的遺伝子編集が可能な点が挙げられる。アレル特異的遺伝子編集とは、対をなすアレル(対立遺伝子)の一方を傷つけることなく、異常のある遺伝子のみをターゲットにして編集することを言う。ヒトは父型と母型の2つのアレルを一対で持っており、片方のアレルが異常配列になることで発症する遺伝病を優性遺伝(機能獲得型変異/ハプロ不全)、両方のアレルに必要な遺伝子が欠損することで発症する遺伝病を劣性遺伝(複合型ヘテロ接合体/ホモ接合体)、または伴性遺伝(性別によって発症の仕方が異なる遺伝病)と呼ぶ。遺伝性疾患のうち、アレル特異的遺伝子編集の対象は優性遺伝と劣性遺伝のうちの一部であり、遺伝性疾患の過半を占める。これはOMNIプラットフォームを活用したゲノム編集による治療法の開発領域が幅広いことを意味する。Emendoの調べによれば、遺伝性疾患の治療薬の市場規模は全体で約2兆円、このうち約1.1兆円がOMNIプラットフォームの対象領域になり得ると見ており、潜在的な成長ポテンシャルは大きい。ゲノム編集技術を用いた開発が活発化するなかで、OMNIプラットフォームに対する注目度も一段と高まることが期待される。
米スタンフォード大学とゲノム編集技術を用いた新規がん治療法の共同研究を開始
2. 事業戦略
Emendoは2023年まで独自のOMNIヌクレアーゼの開発にあたり、その探索と最適化を労働集約的に行ってきた。しかし、現在はこれまで蓄積した大量のデータベースとコンピューティング技術を活用した知識集約型の研究開発体制に移行しており、ピーク時に100人超まで増員したイスラエルの研究所の人員もスリム化した(一部はパレスチナ紛争で徴兵されたケースもある)。ゲノム編集技術に関する研究者とITエンジニアで現在は20数名程度の体制となっており、今後も同水準を維持する予定だ。事業戦略としては財務状況を鑑み、これまで開発してきた250を超えるOMNIヌクレアーゼやOMNIプラットフォームのライセンス活動に集中し、自社での治療薬の開発は一旦、凍結した。
ライセンス契約に関しては、2024年3月にがん免疫療法の一種である遺伝子改変T細胞療法※のなかでも固形がんに効果があるとされるTCR-T細胞療法の開発で業界をリードするスウェーデンのAnoccaと、OMNI-A4ヌクレアーゼの使用権についての非独占的ライセンス契約を締結した。AnoccaはOMNI-A4ヌクレアーゼを用いて、難治性固形がんにおけるKRASタンパク質の変異を標的とした開発を進める計画で、2025年内にも臨床試験入りする見込みである。Anoccaでは、ゲノム編集技術としてOMNIプラットフォームとCRISPR/Cas9の両方の技術を試した結果、OMNIプラットフォームを高く評価し、今回の契約に至っている。この契約締結によってEmendoは契約一時金(50万米ドル)と開発マイルストーンを合わせて総額で最大約100百万米ドルを受領する可能性があり、製品が販売された場合にはロイヤリティも受領する。
※ 遺伝子改変T細胞療法とは、患者自身から取り出したT細胞内にがん抗原特異的T細胞受容体(TCR)やキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子改変操作によって発現させ、同細胞を増殖させて体内に戻すことでがん細胞を攻撃する治療法。国内ではCAR-T細胞療法の「キムリア(R)」(ノバルティス ファーマ(株))が2019年に製造販売承認されている。CAR-Tは血液がん領域、TCR-Tは固形がん領域で副作用の少ない治療法として開発が進められている。
そのほかの企業との契約交渉についても、特定の開発プロジェクトでOMNI技術を利用したい企業や、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業など複数の企業と進めている。このうち1社は2025年内に契約締結する可能性が高くなっており、今後の動向が注目される。Emendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結し、幅広い企業や医療機関等で同技術を活用してもらい、遺伝性疾患の治療技術の進歩に貢献したい考えだ。その一環として、2025年1月には米国スタンフォード大学と、ゲノム編集技術を用いた新規がん治療法の開発に関する共同研究契約を締結した。遺伝性の難治性乳がん治療についてOMNIヌクレアーゼを用いた遺伝子治療の研究開発を進める。研究期間は約2年、研究費は約130万米ドルを予定する。スタンフォード大学が持つ細胞への薬剤送達技術とEmendoのゲノム編集技術を組み合わせることで、がん放射線療法やがん免疫療法の効率を大幅に高める治療法の開発が期待され、良好な研究成果を得ることができれば大手製薬企業とのライセンス契約に発展する可能性がある。なお、今まで自社開発を進めてきたパイプラインについても、ライセンスアウトに向けて候補先企業等の探索を進めている状況だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. ゲノム編集技術とOMNIプラットフォームの特徴
ゲノム編集とは、特定の塩基配列(ターゲット配列)のみを切断するDNA切断酵素(ヌクレアーゼ)を利用して、狙った遺伝子を改変する技術を指す。2012年に従来より短時間で簡単に標的とするDNA配列を切断できるCRISPR/Cas9(クリスパーキャスナイン)と呼ばれる革新的な技術が登場したことで、製薬業界においてもゲノム編集技術を用いて新薬の開発を行う動きが活発化した。米国Vertex Pharmaceuticals Inc.とスイスのCRISPR Therapeuticsが同技術を用いて共同開発した遺伝性血液疾患「鎌状赤血球貧血症※」を適応症とした治療法が、2023年11月に英国、同年12月に米国で初めて承認された。患者から採取した造血幹細胞をゲノム編集技術で遺伝子改変し、それを注射投与で体内に戻すことで治療効果を得る治療法である。
※ 鎌状赤血球貧血症とは、赤血球に含まれるヘモグロビン(酸素の運搬に使われるタンパク質)が遺伝子異常によって変形することで赤血球が鎌状となって壊れやすくなり貧血の症状を起こす疾患。症状が悪化すると壊れた鎌状赤血球によって毛細血管が遮断され激痛が生じるほか、長期にわたる場合、酸素供給量が低下することで臓器にも悪影響を及ぼし、腎不全や心不全を惹き起こすケースもある。米国内の患者数は約10万人で黒人に多いと言われている。従来は、白血球の型である「HLA型」が一致するドナーから造血幹細胞の提供を受ける以外に治療の選択肢がなかった。今回承認されたのは、血管閉塞性危機が定期的に起きる12歳以上の患者を対象としている。
CRISPR/Cas9技術は狙った遺伝子とは異なる箇所(標的DNA配列と似た配列)を切断してしまう「オフターゲット効果」があり安全性が課題とされてきたが、今回初承認となったことでハードルを1つクリアした格好だ。これに対してEmendoが独自開発したOMNIプラットフォームは、標的のDNA配列を高精度に切り取る独自のヌクレアーゼ(OMNIヌクレアーゼ)を効率的に探索し最適化することで「オフターゲット効果」を回避する安全性の高い技術であることが特徴となっている。自社開発したヌクレアーゼのうち250超については特許を申請している。ゲノム編集技術による医薬品の開発を進める場合には、効率性だけでなく安全性も強く求められるため、OMNIプラットフォームは強みになると弊社では評価する。
また、もう1つの特徴としてアレル特異的遺伝子編集が可能な点が挙げられる。アレル特異的遺伝子編集とは、対をなすアレル(対立遺伝子)の一方を傷つけることなく、異常のある遺伝子のみをターゲットにして編集することを言う。ヒトは父型と母型の2つのアレルを一対で持っており、片方のアレルが異常配列になることで発症する遺伝病を優性遺伝(機能獲得型変異/ハプロ不全)、両方のアレルに必要な遺伝子が欠損することで発症する遺伝病を劣性遺伝(複合型ヘテロ接合体/ホモ接合体)、または伴性遺伝(性別によって発症の仕方が異なる遺伝病)と呼ぶ。遺伝性疾患のうち、アレル特異的遺伝子編集の対象は優性遺伝と劣性遺伝のうちの一部であり、遺伝性疾患の過半を占める。これはOMNIプラットフォームを活用したゲノム編集による治療法の開発領域が幅広いことを意味する。Emendoの調べによれば、遺伝性疾患の治療薬の市場規模は全体で約2兆円、このうち約1.1兆円がOMNIプラットフォームの対象領域になり得ると見ており、潜在的な成長ポテンシャルは大きい。ゲノム編集技術を用いた開発が活発化するなかで、OMNIプラットフォームに対する注目度も一段と高まることが期待される。
米スタンフォード大学とゲノム編集技術を用いた新規がん治療法の共同研究を開始
2. 事業戦略
Emendoは2023年まで独自のOMNIヌクレアーゼの開発にあたり、その探索と最適化を労働集約的に行ってきた。しかし、現在はこれまで蓄積した大量のデータベースとコンピューティング技術を活用した知識集約型の研究開発体制に移行しており、ピーク時に100人超まで増員したイスラエルの研究所の人員もスリム化した(一部はパレスチナ紛争で徴兵されたケースもある)。ゲノム編集技術に関する研究者とITエンジニアで現在は20数名程度の体制となっており、今後も同水準を維持する予定だ。事業戦略としては財務状況を鑑み、これまで開発してきた250を超えるOMNIヌクレアーゼやOMNIプラットフォームのライセンス活動に集中し、自社での治療薬の開発は一旦、凍結した。
ライセンス契約に関しては、2024年3月にがん免疫療法の一種である遺伝子改変T細胞療法※のなかでも固形がんに効果があるとされるTCR-T細胞療法の開発で業界をリードするスウェーデンのAnoccaと、OMNI-A4ヌクレアーゼの使用権についての非独占的ライセンス契約を締結した。AnoccaはOMNI-A4ヌクレアーゼを用いて、難治性固形がんにおけるKRASタンパク質の変異を標的とした開発を進める計画で、2025年内にも臨床試験入りする見込みである。Anoccaでは、ゲノム編集技術としてOMNIプラットフォームとCRISPR/Cas9の両方の技術を試した結果、OMNIプラットフォームを高く評価し、今回の契約に至っている。この契約締結によってEmendoは契約一時金(50万米ドル)と開発マイルストーンを合わせて総額で最大約100百万米ドルを受領する可能性があり、製品が販売された場合にはロイヤリティも受領する。
※ 遺伝子改変T細胞療法とは、患者自身から取り出したT細胞内にがん抗原特異的T細胞受容体(TCR)やキメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子改変操作によって発現させ、同細胞を増殖させて体内に戻すことでがん細胞を攻撃する治療法。国内ではCAR-T細胞療法の「キムリア(R)」(ノバルティス ファーマ(株))が2019年に製造販売承認されている。CAR-Tは血液がん領域、TCR-Tは固形がん領域で副作用の少ない治療法として開発が進められている。
そのほかの企業との契約交渉についても、特定の開発プロジェクトでOMNI技術を利用したい企業や、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業など複数の企業と進めている。このうち1社は2025年内に契約締結する可能性が高くなっており、今後の動向が注目される。Emendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結し、幅広い企業や医療機関等で同技術を活用してもらい、遺伝性疾患の治療技術の進歩に貢献したい考えだ。その一環として、2025年1月には米国スタンフォード大学と、ゲノム編集技術を用いた新規がん治療法の開発に関する共同研究契約を締結した。遺伝性の難治性乳がん治療についてOMNIヌクレアーゼを用いた遺伝子治療の研究開発を進める。研究期間は約2年、研究費は約130万米ドルを予定する。スタンフォード大学が持つ細胞への薬剤送達技術とEmendoのゲノム編集技術を組み合わせることで、がん放射線療法やがん免疫療法の効率を大幅に高める治療法の開発が期待され、良好な研究成果を得ることができれば大手製薬企業とのライセンス契約に発展する可能性がある。なお、今まで自社開発を進めてきたパイプラインについても、ライセンスアウトに向けて候補先企業等の探索を進めている状況だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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