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ケイファーマ Research Memo(3):ALS治療薬は2028~2029年頃の上市を見込み、難聴治療薬にも注目
配信日時:2025/03/26 12:03
配信元:FISCO
*12:03JST ケイファーマ Research Memo(3):ALS治療薬は2028~2029年頃の上市を見込み、難聴治療薬にも注目
■ケイファーマ<4896>の開発パイプラインの動向
1. iPS創薬事業
iPS創薬事業では6本の開発パイプラインがあり、このうち最も先行しているのがALS治療薬(KP2011)だ。国内ではライセンス先のアルフレッサ ファーマが第3相臨床試験の準備を進めており、海外市場では国内外の製薬企業とライセンス交渉を進めている段階にある。また、FTD治療薬(KP2021)は国内で、HD治療薬(KP2032)は海外で第1/2相臨床試験の準備を進めており、2025年内の開始を目指している。そのほか、脳・神経領域の難病を対象とした新たなパイプラインも、2025年内に1~2件追加する予定である。
(1) ALS治療薬(KP2011)
ALS治療薬は慶應義塾大学がiPS創薬手法によって見出したパーキンソン病治療薬のロピニロール(製造元:英グラクソ・スミスクライン)をドラッグリポジショニングによってALS治療薬として開発を進めているものである。
ALSは神経変性疾患の一種で、運動ニューロン(運動神経細胞)が何らかの原因により障害されることにより発症する。徐々に全身の筋肉が麻痺し、最終的には自発呼吸もできなくなり、死に至る。発症からの平均生存期間は3~5年、発症1年後の生存率は約90%、10年後で10~20%と言われている。根治療法は存在せず、症状の進行を遅らせる複数の治療薬が承認されているものの、依然として多くの機関で開発が進められているアンメットメディカルニーズの高い疾患である。患者数は世界で約33万人、国内で約1万人であり、国内ではオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)申請中※となっている。現在、同社で用途特許を取得している日本、欧州、カナダ、インド及び特許申請中の米国、中国における対象患者数は合計13.8万人、治療薬の年間規模は1.3兆円を超える規模であり、既存薬を上回る薬効が確認されれば、承認される可能性が高くなる。
※ オーファンドラッグに指定されると、開発経費に使える助成金の交付を得られるほか、PMDAから優先的に承認審査を受けられる。
慶應義塾大学が2018年から2021年にかけて実施した医師主導の第1/2a相臨床試験(ALS患者20例:実薬13例、プラセボ7例、投与期間24週)の結果では、安全性と忍容性が確認されたほか、有効性についても、実薬群はプラセボ群と比較して総合機能評価や日常活動量の低下を抑制し、統計的に一定の有効性が示唆された。さらに、生存期間の中央値は実薬群が50.3週、プラセボ群が22.4週となり、試験期間1年の間にロピニロールがプラセボ群に対して病気の進行を約7ヶ月遅らせる可能性が示された。加えて、最初の6ヶ月間において、筋力低下や活動量の低下がプラセボ群と比較して有意に抑制されたことも明らかとなった。さらに、既存治療薬との比較において4種類の表現型を用いた解析の結果、ロピニロールは既存治療薬に対して有意な改善を示したと報告されている。
こうした良好な結果を受けて、2023年にアルフレッサ ファーマと日本におけるライセンス契約を締結し、第3相臨床試験はアルフレッサ ファーマが主導して進めることとなり、現在はPMDAと適宜協議が進められている。被験者の組み入れが順調に進めば、製造販売承認申請が行われた際には、2028〜2029年頃の上市が見込まれる。また、海外では複数の製薬企業とライセンス交渉を行うとともに、FDAへのIND申請に向けた事前相談の準備も進めている。
(2) FTD治療薬(KP2021)
FTD(前頭側頭型認知症)は、脳の前頭葉と側頭葉が委縮することによって引き起こされる認知症で、米国では認知症患者の10~20%程度がFTDであるとされている。発症年齢は40歳以上で、初期段階では自発性の低下や言語障害が見られ、中期には常同行動や反復行動が現れ、後期には精神機能が低下する。発症から平均6〜8年で寝たきり状態になることが多い。現在、根治療法はなく、症状に応じた対症療法が行われており、日本では指定難病に認定されている。日本における患者数は約1.2万人で、治療薬の市場規模は300億円と推定される。
2024年10月に米国で開催された国際学会で候補化合物を複数発表し、そのなかから最有力の化合物の選定が完了している。現在は2025年内に国内で第1/2相臨床試験を開始すべく、PMDAやFTDの専門医師、CRO(開発業務受託機関)などと協議を進めている。なお、用途特許については国内で申請済みとなっている。また、国際学会以降、海外製薬企業からの問い合わせも増えており、ライセンス交渉も進行中だ。
(3) HD治療薬(KP2032)
HDは遺伝性の神経変性疾患の一種で、特定の遺伝子が変異することで大脳基底核や大脳皮質が変性・委縮し、不随意運動や行動異常、認知障害などの症状を引き起こす疾患である。発症年齢は30代が多いが、小児期から高齢まで幅広い。根治療法がなく、症状に合わせた対処療法が行われており、日本では指定難病として認定されている。日本の患者数は1,000人弱と極めて少ないが、北米では患者数が3.3万人、市場規模で3,150億円と推計されている。このため、臨床試験は北米で進める可能性がある。
2024年10月に米国で開催された国際学会にて候補化合物を発表し、その後、最有力候補を選定して第1/2相臨床試験の開始に向けた準備を進めている。2026年内の臨床試験開始を目指している。
(4) 難聴(KP2061)
難聴の患者数は国内で約1,200万人にのぼり、様々な原因によって発症する。加齢性難聴や騒音性難聴など、改善が困難な難聴については、補聴器や人工内耳などの人工聴覚機器を装着することで改善が図られるのが一般的だが、最近では遺伝子治療や再生医療分野での研究も進展している。
同社は2023年に(学)北里研究所と難聴治療薬の企業治験に向けた共同研究契約を締結するとともに、候補化合物を既に同定している。現在、治験に向けた前臨床のデータを収集して良好な結果が得られれば、作用機序の解析を進めるとともに企業治験に進む準備を開始する予定だ。
聴力障害を改善するためには、内耳細胞を改善する薬が必要だが、開発が難しく、医薬品開発のなかではブルーオーシャンとなっている。同社はiPS細胞を用いて疾患特異的細胞を作製することで、研究開発の効率を高められるうえ、そのほかにも候補化合物を発見しており、今後研究開発を進めてパイプラインに追加する予定だ。難聴など聴力の疾患は対象患者数が多いだけに今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. iPS創薬事業
iPS創薬事業では6本の開発パイプラインがあり、このうち最も先行しているのがALS治療薬(KP2011)だ。国内ではライセンス先のアルフレッサ ファーマが第3相臨床試験の準備を進めており、海外市場では国内外の製薬企業とライセンス交渉を進めている段階にある。また、FTD治療薬(KP2021)は国内で、HD治療薬(KP2032)は海外で第1/2相臨床試験の準備を進めており、2025年内の開始を目指している。そのほか、脳・神経領域の難病を対象とした新たなパイプラインも、2025年内に1~2件追加する予定である。
(1) ALS治療薬(KP2011)
ALS治療薬は慶應義塾大学がiPS創薬手法によって見出したパーキンソン病治療薬のロピニロール(製造元:英グラクソ・スミスクライン)をドラッグリポジショニングによってALS治療薬として開発を進めているものである。
ALSは神経変性疾患の一種で、運動ニューロン(運動神経細胞)が何らかの原因により障害されることにより発症する。徐々に全身の筋肉が麻痺し、最終的には自発呼吸もできなくなり、死に至る。発症からの平均生存期間は3~5年、発症1年後の生存率は約90%、10年後で10~20%と言われている。根治療法は存在せず、症状の進行を遅らせる複数の治療薬が承認されているものの、依然として多くの機関で開発が進められているアンメットメディカルニーズの高い疾患である。患者数は世界で約33万人、国内で約1万人であり、国内ではオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)申請中※となっている。現在、同社で用途特許を取得している日本、欧州、カナダ、インド及び特許申請中の米国、中国における対象患者数は合計13.8万人、治療薬の年間規模は1.3兆円を超える規模であり、既存薬を上回る薬効が確認されれば、承認される可能性が高くなる。
※ オーファンドラッグに指定されると、開発経費に使える助成金の交付を得られるほか、PMDAから優先的に承認審査を受けられる。
慶應義塾大学が2018年から2021年にかけて実施した医師主導の第1/2a相臨床試験(ALS患者20例:実薬13例、プラセボ7例、投与期間24週)の結果では、安全性と忍容性が確認されたほか、有効性についても、実薬群はプラセボ群と比較して総合機能評価や日常活動量の低下を抑制し、統計的に一定の有効性が示唆された。さらに、生存期間の中央値は実薬群が50.3週、プラセボ群が22.4週となり、試験期間1年の間にロピニロールがプラセボ群に対して病気の進行を約7ヶ月遅らせる可能性が示された。加えて、最初の6ヶ月間において、筋力低下や活動量の低下がプラセボ群と比較して有意に抑制されたことも明らかとなった。さらに、既存治療薬との比較において4種類の表現型を用いた解析の結果、ロピニロールは既存治療薬に対して有意な改善を示したと報告されている。
こうした良好な結果を受けて、2023年にアルフレッサ ファーマと日本におけるライセンス契約を締結し、第3相臨床試験はアルフレッサ ファーマが主導して進めることとなり、現在はPMDAと適宜協議が進められている。被験者の組み入れが順調に進めば、製造販売承認申請が行われた際には、2028〜2029年頃の上市が見込まれる。また、海外では複数の製薬企業とライセンス交渉を行うとともに、FDAへのIND申請に向けた事前相談の準備も進めている。
(2) FTD治療薬(KP2021)
FTD(前頭側頭型認知症)は、脳の前頭葉と側頭葉が委縮することによって引き起こされる認知症で、米国では認知症患者の10~20%程度がFTDであるとされている。発症年齢は40歳以上で、初期段階では自発性の低下や言語障害が見られ、中期には常同行動や反復行動が現れ、後期には精神機能が低下する。発症から平均6〜8年で寝たきり状態になることが多い。現在、根治療法はなく、症状に応じた対症療法が行われており、日本では指定難病に認定されている。日本における患者数は約1.2万人で、治療薬の市場規模は300億円と推定される。
2024年10月に米国で開催された国際学会で候補化合物を複数発表し、そのなかから最有力の化合物の選定が完了している。現在は2025年内に国内で第1/2相臨床試験を開始すべく、PMDAやFTDの専門医師、CRO(開発業務受託機関)などと協議を進めている。なお、用途特許については国内で申請済みとなっている。また、国際学会以降、海外製薬企業からの問い合わせも増えており、ライセンス交渉も進行中だ。
(3) HD治療薬(KP2032)
HDは遺伝性の神経変性疾患の一種で、特定の遺伝子が変異することで大脳基底核や大脳皮質が変性・委縮し、不随意運動や行動異常、認知障害などの症状を引き起こす疾患である。発症年齢は30代が多いが、小児期から高齢まで幅広い。根治療法がなく、症状に合わせた対処療法が行われており、日本では指定難病として認定されている。日本の患者数は1,000人弱と極めて少ないが、北米では患者数が3.3万人、市場規模で3,150億円と推計されている。このため、臨床試験は北米で進める可能性がある。
2024年10月に米国で開催された国際学会にて候補化合物を発表し、その後、最有力候補を選定して第1/2相臨床試験の開始に向けた準備を進めている。2026年内の臨床試験開始を目指している。
(4) 難聴(KP2061)
難聴の患者数は国内で約1,200万人にのぼり、様々な原因によって発症する。加齢性難聴や騒音性難聴など、改善が困難な難聴については、補聴器や人工内耳などの人工聴覚機器を装着することで改善が図られるのが一般的だが、最近では遺伝子治療や再生医療分野での研究も進展している。
同社は2023年に(学)北里研究所と難聴治療薬の企業治験に向けた共同研究契約を締結するとともに、候補化合物を既に同定している。現在、治験に向けた前臨床のデータを収集して良好な結果が得られれば、作用機序の解析を進めるとともに企業治験に進む準備を開始する予定だ。
聴力障害を改善するためには、内耳細胞を改善する薬が必要だが、開発が難しく、医薬品開発のなかではブルーオーシャンとなっている。同社はiPS細胞を用いて疾患特異的細胞を作製することで、研究開発の効率を高められるうえ、そのほかにも候補化合物を発見しており、今後研究開発を進めてパイプラインに追加する予定だ。難聴など聴力の疾患は対象患者数が多いだけに今後の動向が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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