注目トピックス 日本株
アジア投資 Research Memo(4):ファンドビジネス強化によりAUM拡大と安定収益の積み上げを目指す
配信日時:2024/12/12 15:33
配信元:FISCO
*15:33JST アジア投資 Research Memo(4):ファンドビジネス強化によりAUM拡大と安定収益の積み上げを目指す
■新中期経営計画の方向性
日本アジア投資<8518>は新体制の下、新たに3ヶ年の中期経営計画を公表した。事業領域を「投資開発事業(実物資産投資)」「投資運用事業(有価証券投資)」「ファンド・プラットフォーム事業(ファンド事務受託)」の3つに再定義し、新たな事業方針に基づいて事業を拡大する考えだ。また、外部環境及び収益機会を整理したうえで、補完・代替可能な事業ポートフォリオを構築し、様々な経済環境に対応できる投資資産及び金融商品の開発・運用を行う考えだ。これまでとの大きな違いは、ファンドの組成や融資の調達により外部資金を活用した投資を徹底するところにある。今まではファンドの設立ができなかったことから自己資金による投資(プロジェクト投資や戦略投資先へのPE投資)を行い、融資資金の活用も十分ではなかった。今後は国内外の投資家への魅力ある投資機会や投資サービスを提供するファンドビジネスとしての方向性をより強く打ち出す考えだ。自己資金による投資を抑制・圧縮する一方で、投資開発事業・投資運用事業のAUMを増加させ、AMフィーによる安定収益を積み上げるとともに、財務の健全化をさらに進める。
1. 事業方針
(1) 投資開発事業
エネルギー価格の高騰や労働力不足によるインフレ圧力、さらには金利上昇などをめぐり先行き不透明な経済情勢が続くなか、インフレヘッジ特性及びディフェンシブ特性を持ち合わせているプライベート・リアルアセットは投資家にとって有力な分散投資先となるだけでなく、責任投資目標※の達成にも貢献するものである。同社では、融資調達やファンド組成によるエクイティ調達を基本とし、インフレヘッジ特性(再生可能エネルギー等)及びディフェンシブ特性(ヘルスケア及びインフラ等)を持ったプライベートな実物資産を積み上げ、ファンドビジネスへと拡張する方針である。AMフィーによる安定収益を獲得しながら、資産売却時の一時的なキャピタルゲイン(同社持分)によるアップサイドをねらう収益モデルである。KPIとなるAUMについては、年間50億円の積み上げ(グロス)により最終年度までに累計150億円の積み上げを目指す。
※ 機関投資家の投資の意思決定や株主行動において、環境(Environment)や社会(Social)、ガバナンス(Governance)といったESG要素を考慮することが求められている。例えば、今回の障がい者グループホームを裏付とするソーシャルプロジェクトボンドへの投資などが含まれる。
(2) 投資運用事業
国内外の機関投資家やファミリーオフィス・富裕層向けに伝統的及び非伝統的な両資産クラスにおいて、同社の強みを生かした手法により資産運用サービス・金融商品を提供する方針である。伝統的資産(上場株式・社債等)については、企業側の需要も高まっているバイアウト(TOB、MBO、MEBO)やPIPEs(上場会社に対する私募増資)に係るファンドを組成し、国内投資家だけでなく、日本市場へのアクセスが困難な海外投資家(事業会社)に金融商品に留まらない独占的な投資サービスを提供する考えだ。一方、非伝統的資産(PEファンド、ベンチャーバイアウト等)については、ベンチャーファンドを組成・運営してきたノウハウやアジア・中国を中心とした海外進出支援、M&A仲介業務など、同社が提供してきたソリューションを生かして、ベンチャーバイアウト※1、M&Aファンド※2、RBO※3等に取り組む方針である。本事業もAMフィーによる安定収益を獲得しながら、成功報酬及び資産売却時の一時的なキャピタルゲイン(同社持分)によるアップサイドをねらう収益モデルである。KPIとなるAUMについては、年間100億円の積み上げ(グロス)により最終年度までに累計300億円の積み上げを目指す。
※1 ベンチャー企業の株式を一定以上買い取ることで経営に関与し、ハンズオン支援によるバリューアップを行う。
※2 国内中堅企業やベンチャー企業のM&Aによる成長を支援するため、その成長戦略に沿って同社が投資先のソーシングから外部資金の調達、エグゼキューションまで行うファンドを組成する。
※3 Regional Buy Outの略。不安定な株主構成や脆弱な財務体力、少子高齢化に伴う商圏(市場)縮小などに直面する地方の企業に対してエグジット先を地元の大企業や経営陣・従業員・創業ファミリーなどに特定し、事業の継続と経営の一貫性を守りながら非上場化を円滑に行う。
(3) ファンド・プラットフォーム事業
ファンド・アドミニストレーターとして長年の実績を有するジャイク事務サービス(株)(以下、JBS)にて、ファンド運営のミドル・バック業務のソリューションを提供する。ファンドの事務受託を専業として行う事業会社は数少なく会計事務所が主な競合先となっているが、CVCを含むVCファンドの組成が増加基調にあるなかで、ミドル・バック業務のアウトソースに関するニーズは大きく、経理に特化した会計事務所と差別化されている。事務受託料を安定収益源とする収益モデルであるため、事務受託本数やAUA(受託資産規模)がKPIとなる。最終年度の事務受託本数80本、AUA残高4,000億円を目指す。
2. 事業ポートフォリオの方向性
上記の事業方針に基づき、経済環境の変化に応じて収益を確保できる事業ポートフォリオを構築する方針である。具体的には、経済環境を「高インフレ・高成長」「低成長・高インフレ」「低成長・低インフレ」「高成長・低インフレ」の4つの事象に分けた。そのうえで、「高インフレ・高成長」では伝統的資産(上場株式・社債等)、「低成長・高インフレ」ではインフレヘッジ特性を持つエネルギー分野(蓄電池・再エネ等)、「低成長・低インフレ」ではディフェンシブ特性を持つインフラ分野(物流施設等)及びヘルスケア分野(障がい者グループホーム等)、「高成長・低インフレ」では非伝統的資産(PEファンド、ベンチャーバイアウト等)を主な投資対象とし、様々な経済環境(景気循環)に対応したバランスのとれた投資を行う考えだ。
3. 数値計画
安定収益の拡大と投資収益の改善により業績を回復し、最終年度の営業収益2,800百万円、営業総利益2,200百万円、営業利益1,250百万円、経常利益1,250百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を目指している(従来連結基準。以下同様)。なお、2年目(2026年3月期)の業績が一旦踊り場となるのは、プロジェクト売却のタイミングによるものである。ただ、AUMの拡大により安定収益は着実に積み上がる想定であり、最終年度の営業総利益(22億円)のうち8億円は安定収益(AMフィー+事務受託料)で占める見通しだ。財政状態についても、総資産を膨らませることなく自己資本の拡大と負債の圧縮を進める方針であり、最終年度の総資産113億円(2024年3月末比9億円増)、純資産88億円(同32億円増)、借入金18億円(同25億円減)、本体現預金47億円(同36億円増)を目指しており、ネット借入金ゼロを実現する考えである。資本効率を示すROEについても12.7%に改善する想定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NH>
日本アジア投資<8518>は新体制の下、新たに3ヶ年の中期経営計画を公表した。事業領域を「投資開発事業(実物資産投資)」「投資運用事業(有価証券投資)」「ファンド・プラットフォーム事業(ファンド事務受託)」の3つに再定義し、新たな事業方針に基づいて事業を拡大する考えだ。また、外部環境及び収益機会を整理したうえで、補完・代替可能な事業ポートフォリオを構築し、様々な経済環境に対応できる投資資産及び金融商品の開発・運用を行う考えだ。これまでとの大きな違いは、ファンドの組成や融資の調達により外部資金を活用した投資を徹底するところにある。今まではファンドの設立ができなかったことから自己資金による投資(プロジェクト投資や戦略投資先へのPE投資)を行い、融資資金の活用も十分ではなかった。今後は国内外の投資家への魅力ある投資機会や投資サービスを提供するファンドビジネスとしての方向性をより強く打ち出す考えだ。自己資金による投資を抑制・圧縮する一方で、投資開発事業・投資運用事業のAUMを増加させ、AMフィーによる安定収益を積み上げるとともに、財務の健全化をさらに進める。
1. 事業方針
(1) 投資開発事業
エネルギー価格の高騰や労働力不足によるインフレ圧力、さらには金利上昇などをめぐり先行き不透明な経済情勢が続くなか、インフレヘッジ特性及びディフェンシブ特性を持ち合わせているプライベート・リアルアセットは投資家にとって有力な分散投資先となるだけでなく、責任投資目標※の達成にも貢献するものである。同社では、融資調達やファンド組成によるエクイティ調達を基本とし、インフレヘッジ特性(再生可能エネルギー等)及びディフェンシブ特性(ヘルスケア及びインフラ等)を持ったプライベートな実物資産を積み上げ、ファンドビジネスへと拡張する方針である。AMフィーによる安定収益を獲得しながら、資産売却時の一時的なキャピタルゲイン(同社持分)によるアップサイドをねらう収益モデルである。KPIとなるAUMについては、年間50億円の積み上げ(グロス)により最終年度までに累計150億円の積み上げを目指す。
※ 機関投資家の投資の意思決定や株主行動において、環境(Environment)や社会(Social)、ガバナンス(Governance)といったESG要素を考慮することが求められている。例えば、今回の障がい者グループホームを裏付とするソーシャルプロジェクトボンドへの投資などが含まれる。
(2) 投資運用事業
国内外の機関投資家やファミリーオフィス・富裕層向けに伝統的及び非伝統的な両資産クラスにおいて、同社の強みを生かした手法により資産運用サービス・金融商品を提供する方針である。伝統的資産(上場株式・社債等)については、企業側の需要も高まっているバイアウト(TOB、MBO、MEBO)やPIPEs(上場会社に対する私募増資)に係るファンドを組成し、国内投資家だけでなく、日本市場へのアクセスが困難な海外投資家(事業会社)に金融商品に留まらない独占的な投資サービスを提供する考えだ。一方、非伝統的資産(PEファンド、ベンチャーバイアウト等)については、ベンチャーファンドを組成・運営してきたノウハウやアジア・中国を中心とした海外進出支援、M&A仲介業務など、同社が提供してきたソリューションを生かして、ベンチャーバイアウト※1、M&Aファンド※2、RBO※3等に取り組む方針である。本事業もAMフィーによる安定収益を獲得しながら、成功報酬及び資産売却時の一時的なキャピタルゲイン(同社持分)によるアップサイドをねらう収益モデルである。KPIとなるAUMについては、年間100億円の積み上げ(グロス)により最終年度までに累計300億円の積み上げを目指す。
※1 ベンチャー企業の株式を一定以上買い取ることで経営に関与し、ハンズオン支援によるバリューアップを行う。
※2 国内中堅企業やベンチャー企業のM&Aによる成長を支援するため、その成長戦略に沿って同社が投資先のソーシングから外部資金の調達、エグゼキューションまで行うファンドを組成する。
※3 Regional Buy Outの略。不安定な株主構成や脆弱な財務体力、少子高齢化に伴う商圏(市場)縮小などに直面する地方の企業に対してエグジット先を地元の大企業や経営陣・従業員・創業ファミリーなどに特定し、事業の継続と経営の一貫性を守りながら非上場化を円滑に行う。
(3) ファンド・プラットフォーム事業
ファンド・アドミニストレーターとして長年の実績を有するジャイク事務サービス(株)(以下、JBS)にて、ファンド運営のミドル・バック業務のソリューションを提供する。ファンドの事務受託を専業として行う事業会社は数少なく会計事務所が主な競合先となっているが、CVCを含むVCファンドの組成が増加基調にあるなかで、ミドル・バック業務のアウトソースに関するニーズは大きく、経理に特化した会計事務所と差別化されている。事務受託料を安定収益源とする収益モデルであるため、事務受託本数やAUA(受託資産規模)がKPIとなる。最終年度の事務受託本数80本、AUA残高4,000億円を目指す。
2. 事業ポートフォリオの方向性
上記の事業方針に基づき、経済環境の変化に応じて収益を確保できる事業ポートフォリオを構築する方針である。具体的には、経済環境を「高インフレ・高成長」「低成長・高インフレ」「低成長・低インフレ」「高成長・低インフレ」の4つの事象に分けた。そのうえで、「高インフレ・高成長」では伝統的資産(上場株式・社債等)、「低成長・高インフレ」ではインフレヘッジ特性を持つエネルギー分野(蓄電池・再エネ等)、「低成長・低インフレ」ではディフェンシブ特性を持つインフラ分野(物流施設等)及びヘルスケア分野(障がい者グループホーム等)、「高成長・低インフレ」では非伝統的資産(PEファンド、ベンチャーバイアウト等)を主な投資対象とし、様々な経済環境(景気循環)に対応したバランスのとれた投資を行う考えだ。
3. 数値計画
安定収益の拡大と投資収益の改善により業績を回復し、最終年度の営業収益2,800百万円、営業総利益2,200百万円、営業利益1,250百万円、経常利益1,250百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,000百万円を目指している(従来連結基準。以下同様)。なお、2年目(2026年3月期)の業績が一旦踊り場となるのは、プロジェクト売却のタイミングによるものである。ただ、AUMの拡大により安定収益は着実に積み上がる想定であり、最終年度の営業総利益(22億円)のうち8億円は安定収益(AMフィー+事務受託料)で占める見通しだ。財政状態についても、総資産を膨らませることなく自己資本の拡大と負債の圧縮を進める方針であり、最終年度の総資産113億円(2024年3月末比9億円増)、純資産88億円(同32億円増)、借入金18億円(同25億円減)、本体現預金47億円(同36億円増)を目指しており、ネット借入金ゼロを実現する考えである。資本効率を示すROEについても12.7%に改善する想定である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NH>
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