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ハウスコム Research Memo(6):『4つの施策』の下で安定した収益基盤の確立・競争力の強化を実行
配信日時:2024/07/02 13:06
配信元:FISCO
*13:06JST ハウスコム Research Memo(6):『4つの施策』の下で安定した収益基盤の確立・競争力の強化を実行
■中長期の成長戦略
ハウスコム<3275>は中長期的な経営戦略として掲げた『4つの施策』である「事業領域拡大による収益構造の転換」「既存事業分野の競争力強化等」「店舗数増加による規模の拡大」「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」を着実に推し進め、安定した収益基盤の確立・競争力の強化を実行するとともに、DX推進でビジネスモデルを変革し、アフターデジタルでの優位性を確立する。
1. 外部環境に左右されない収益構造を構築
コロナ禍によって、同社の収益構造が外部環境の影響を受けやすいこと、事業の成長性が店舗数の増加ペースに比例していることが課題として浮き彫りになったことから、DXを推進することで収益基盤の安定化に注力してきた。
従来、同社の主な収入源は各種手数料であったため、会計上の売上総利益率はほぼ100%で、限界利益率が非常に高いビジネスモデル(売り切り収入モデル)だった。そのため、事業環境が好転・悪化を繰り返すような局面では、業績が不安定になる傾向にあった。今後は、顧客との各接点において継続的にサービスを提供する「リテンション収入モデル」へ移行し、安定的な収益確保を図っていく。今後は、売上高に占めるストック収入の割合が高まり、外部環境の動向に左右されない収益構造になることが予想される。また、ストック収入の割合が増えることで利益率も高まっていくと弊社では見ている。
「リテンション収入モデル」の具体例として、2021年12月にリリースした「スマートシステムPLUS」という継続収入型サービスがある。
スマートシステムPLUSは自主管理家主※向けの継続収入型サービスであり、2020年にリリースされた「スマートシステム」への反響が大きかったことを受けて利便性をさらに高めたサービスである。家主は、1部屋1,650円の料金でスマート内見による空室募集から滞納保証・入居者サポート、退去立会まで各ステップにわたって充実したサポートを受けることができるほか、共用部の清掃や法定点検といったビル管理業務など適宜必要なサービスをシステムから簡単に発注できるサービスだ。同社にとっては加入部屋数に応じた定期収益、サービス利用状況に応じた追加収益を安定して得ることができるサービスである。
※不動産管理会社に委託せずに自ら所有物件を管理する家主のこと。
同社の強みの1つとして自主管理家主との太いパイプを挙げることができる。直近3年で自主管理家主物件を仲介した家主数が3.4万名であることからもそのことが窺える。自主管理家主の開拓余地はまだまだ大きく、スマートシステムPLUSの伸び代も大きいと言えるだろう。新規に自主管理家主を獲得することにより、同社の売上に占めるストック収入の割合が高まっていくと弊社では考えている。
2. DX推進によるビジネスモデルの変革とアフターデジタルに向けたノウハウの蓄積
今後、DX化は賃貸業界においても進んでいき「業界の壁が崩壊」し、「体験が軸になる」と言われている。そのような業界環境変遷のなかで同社は「データを制する者が未来を制す」という考えのもと、DXを活用したビジネスモデルの変革を積極的に推進している。同社のこのような未来に向けたDX戦略の取り組みが評価され、2022年3月には「DX認定事業者」の認定を取得した。
同社はDXによるビジネスモデルの変革として、データと統計手法を駆使した顧客への物件情報の提供に向けた準備を着実に進めている。具体的には、データを活用した顧客ニーズによりマッチした情報の提供や、顧客自身も気付いていなかった潜在的なニーズを顕在化し、顧客納得度の高い情報の提供を目指している。これらの取り組みによって顧客は従来よりも購買意欲(賃貸契約を結ぶことに対する意欲)の高い状態で来店することが想定され、成約率の向上が期待できる。
また、社内の活動に対しても積極的にITを活用しており、コスト効率や生産性の向上を実現している。例えば、各ポータルサイト(SUUMOなどの物件情報を一覧できるサイトのこと)のデータと同社来店以降のデータを組み合わせることで、顧客ニーズの高いエリアを選定したうえで、成約率が高いことが見込まれるエリアに効率的に物件情報を掲載し、広告宣伝費の効率化を実現している。さらに、事務処理のRPA・ペーパーレス化、オンライン内見、IT重説(重要事項説明をオンライン上で行うこと)などの各種施策によって従業員1人当たりの生産性も向上している状況だ。
さらに、同社ではコア事業の業務効率向上のため、2025年3月期はさらなるDX化を進める計画である。具体的には、顧客からの問い合わせなど一部の接客対応にAIを活用したり、不動産賃貸契約書をこれまでの紙から電子媒体へ移行する。これらにより『4つの施策』で掲げる「事業領域の拡大及び競争力の強化等による成長の加速」を図っていく。特に、書面媒体をできる限り省略して電子化を進めることで相当な業務の効率化につながるため、同社では電子契約を進めていく考えだ。
3. 店舗数増加による規模の拡大と売買仲介への参入
2023年3月期において、売買事業への参入に向けた基盤整備は順調に進んだ。店舗数に関しては2024年3月末時点で240店舗(ハウスコム直営店197店舗、ハウスコムFC1店舗、クラスモFC42店舗)であり、ハウスコム直営店は2022年3月末の206店舗をピークに2023年3月末は203店舗、2024年3月末は197店舗へと減少しているが、シーアールエヌの子会社化によりグループ全体の店舗数は拡大している。同社では従来、店舗数増加による規模の拡大を重要課題の1つとしていたが、2023年3月期からその方針を軌道修正しており、1店舗当たりの収益性の向上と、従業員1人当たり売上高の拡大など、より収益性に重点を置く戦略に転換した。DX化の進展などによる効率化に伴い、1店舗当たりの従業員数が減少しても収益性を確保している。また、同社では収益成長オプションの1つとして、不動産管理事業にも進出している。2024年3月期時点での収益貢献は限定的なものの、同社では2024年3月期に1,400室から2025年3月期には3,000室へと管理対象室数の増加を計画している。このように、これまで不動産賃貸仲介において培ってきた家主や管理会社とのリレーションを生かし、不動産売買、不動産管理、フランチャイズ経営の強化など、多面的に周辺事業を強化することで事業規模の拡大を進める考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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ハウスコム<3275>は中長期的な経営戦略として掲げた『4つの施策』である「事業領域拡大による収益構造の転換」「既存事業分野の競争力強化等」「店舗数増加による規模の拡大」「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」を着実に推し進め、安定した収益基盤の確立・競争力の強化を実行するとともに、DX推進でビジネスモデルを変革し、アフターデジタルでの優位性を確立する。
1. 外部環境に左右されない収益構造を構築
コロナ禍によって、同社の収益構造が外部環境の影響を受けやすいこと、事業の成長性が店舗数の増加ペースに比例していることが課題として浮き彫りになったことから、DXを推進することで収益基盤の安定化に注力してきた。
従来、同社の主な収入源は各種手数料であったため、会計上の売上総利益率はほぼ100%で、限界利益率が非常に高いビジネスモデル(売り切り収入モデル)だった。そのため、事業環境が好転・悪化を繰り返すような局面では、業績が不安定になる傾向にあった。今後は、顧客との各接点において継続的にサービスを提供する「リテンション収入モデル」へ移行し、安定的な収益確保を図っていく。今後は、売上高に占めるストック収入の割合が高まり、外部環境の動向に左右されない収益構造になることが予想される。また、ストック収入の割合が増えることで利益率も高まっていくと弊社では見ている。
「リテンション収入モデル」の具体例として、2021年12月にリリースした「スマートシステムPLUS」という継続収入型サービスがある。
スマートシステムPLUSは自主管理家主※向けの継続収入型サービスであり、2020年にリリースされた「スマートシステム」への反響が大きかったことを受けて利便性をさらに高めたサービスである。家主は、1部屋1,650円の料金でスマート内見による空室募集から滞納保証・入居者サポート、退去立会まで各ステップにわたって充実したサポートを受けることができるほか、共用部の清掃や法定点検といったビル管理業務など適宜必要なサービスをシステムから簡単に発注できるサービスだ。同社にとっては加入部屋数に応じた定期収益、サービス利用状況に応じた追加収益を安定して得ることができるサービスである。
※不動産管理会社に委託せずに自ら所有物件を管理する家主のこと。
同社の強みの1つとして自主管理家主との太いパイプを挙げることができる。直近3年で自主管理家主物件を仲介した家主数が3.4万名であることからもそのことが窺える。自主管理家主の開拓余地はまだまだ大きく、スマートシステムPLUSの伸び代も大きいと言えるだろう。新規に自主管理家主を獲得することにより、同社の売上に占めるストック収入の割合が高まっていくと弊社では考えている。
2. DX推進によるビジネスモデルの変革とアフターデジタルに向けたノウハウの蓄積
今後、DX化は賃貸業界においても進んでいき「業界の壁が崩壊」し、「体験が軸になる」と言われている。そのような業界環境変遷のなかで同社は「データを制する者が未来を制す」という考えのもと、DXを活用したビジネスモデルの変革を積極的に推進している。同社のこのような未来に向けたDX戦略の取り組みが評価され、2022年3月には「DX認定事業者」の認定を取得した。
同社はDXによるビジネスモデルの変革として、データと統計手法を駆使した顧客への物件情報の提供に向けた準備を着実に進めている。具体的には、データを活用した顧客ニーズによりマッチした情報の提供や、顧客自身も気付いていなかった潜在的なニーズを顕在化し、顧客納得度の高い情報の提供を目指している。これらの取り組みによって顧客は従来よりも購買意欲(賃貸契約を結ぶことに対する意欲)の高い状態で来店することが想定され、成約率の向上が期待できる。
また、社内の活動に対しても積極的にITを活用しており、コスト効率や生産性の向上を実現している。例えば、各ポータルサイト(SUUMOなどの物件情報を一覧できるサイトのこと)のデータと同社来店以降のデータを組み合わせることで、顧客ニーズの高いエリアを選定したうえで、成約率が高いことが見込まれるエリアに効率的に物件情報を掲載し、広告宣伝費の効率化を実現している。さらに、事務処理のRPA・ペーパーレス化、オンライン内見、IT重説(重要事項説明をオンライン上で行うこと)などの各種施策によって従業員1人当たりの生産性も向上している状況だ。
さらに、同社ではコア事業の業務効率向上のため、2025年3月期はさらなるDX化を進める計画である。具体的には、顧客からの問い合わせなど一部の接客対応にAIを活用したり、不動産賃貸契約書をこれまでの紙から電子媒体へ移行する。これらにより『4つの施策』で掲げる「事業領域の拡大及び競争力の強化等による成長の加速」を図っていく。特に、書面媒体をできる限り省略して電子化を進めることで相当な業務の効率化につながるため、同社では電子契約を進めていく考えだ。
3. 店舗数増加による規模の拡大と売買仲介への参入
2023年3月期において、売買事業への参入に向けた基盤整備は順調に進んだ。店舗数に関しては2024年3月末時点で240店舗(ハウスコム直営店197店舗、ハウスコムFC1店舗、クラスモFC42店舗)であり、ハウスコム直営店は2022年3月末の206店舗をピークに2023年3月末は203店舗、2024年3月末は197店舗へと減少しているが、シーアールエヌの子会社化によりグループ全体の店舗数は拡大している。同社では従来、店舗数増加による規模の拡大を重要課題の1つとしていたが、2023年3月期からその方針を軌道修正しており、1店舗当たりの収益性の向上と、従業員1人当たり売上高の拡大など、より収益性に重点を置く戦略に転換した。DX化の進展などによる効率化に伴い、1店舗当たりの従業員数が減少しても収益性を確保している。また、同社では収益成長オプションの1つとして、不動産管理事業にも進出している。2024年3月期時点での収益貢献は限定的なものの、同社では2024年3月期に1,400室から2025年3月期には3,000室へと管理対象室数の増加を計画している。このように、これまで不動産賃貸仲介において培ってきた家主や管理会社とのリレーションを生かし、不動産売買、不動産管理、フランチャイズ経営の強化など、多面的に周辺事業を強化することで事業規模の拡大を進める考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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