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『国家九条』― 厳しい規制とリスク防止をめざす、中国資本市場のための新たなガイドライン(2)【中国問題グローバル研究所】
配信日時:2024/05/07 10:35
配信元:FISCO
*10:35JST 『国家九条』― 厳しい規制とリスク防止をめざす、中国資本市場のための新たなガイドライン(2)【中国問題グローバル研究所】
◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。
配当金をめぐって
投資家の投資リターンを強化するため、『国家九条』では優良な配当企業にインセンティブを与え、配当利回り向上を促すための明確な規定を定めている。長期にわたる無配が続く企業や配当率の低い企業に対しては、大株主による持ち株比率の引き下げを制限し、リスク警告を実施することが明記されている。これらの措置は、企業による配当支払い優先を奨励し、投資家のため配当の安定性、持続性、予測可能性を高めることをめざすものである。
さらに『国家九条』では、上場企業が1年間で複数回の配当を積極的に推進するよう提唱している。これに向けて、上場会社に対しては配当頻度を決定する際に、未配当利益や現在の業績などの要素を総合的に評価するよう求めている。状況が許すならば、投資家の配当期待を安定させるため、企業が配当頻度を増やすことも奨励される。さらに、財務諸表の監査要件に関する誤解を払拭するため、中期的な配当利益基準の明確化にも焦点が当てられている。配当政策にまつわる事柄に明確性と透明性を持たせることで、投資家の信頼を醸成し、持続可能な配当を実現するための環境促進に向けた措置となっている。
『国家九条』は、企業による配当支払い優先を奨励するための環境を創生し、投資家へのリターンを高め、資本市場全体の安定性と持続可能性に貢献することをめざしている。
上場廃止の監視
『国家九条』では上場廃止の監視について明確な方向性を提示しており、市場の健全性を維持し、投資家の利益を守るため4つの重要な側面に焦点を当てている。
上場廃止基準の厳格な実施: 金融詐欺の取り締まりを優先し、詐欺行為を行った企業はただちに上場廃止となる。「不正金額+不正の度合い」に基づく上場廃止基準をさらに引き下げ、不正行為を効果的に取り締まる。
上場廃止チャネルの多様化: 内部統制の不備、支配株主による非営業資金の占有、支配権の無秩序な変更という、3つの新しいタイプの上場廃止シナリオが追加されている。こうした追加措置は、投資家や市場の健全性にとってリスクとなる、ガバナンスや業務上のさまざまな欠陥への対処を目的としたものである。
上場廃止指標の厳格化: 赤字企業の上場廃止となる収益指標引き上げ措置を実施し、メインボードでも収益指標を3億元に引き上げる。さらに、財務報告に対する内部統制監査意見を提示するための仕組みを導入し、透明性と説明責任性を強化する。
市場価値基準の改善: メインボードA株の上場廃止となる市場価値指標を5億元まで引き上げる。こうした調整は資本市場の健全性を強化し、業績不振または財務的に不安定な企業に関連するリスクを軽減することを目的としたものである。
『国家九条』は資本市場の信頼性向上、投資家からの信頼強化、中国金融状況の長期的な安定性と持続可能性の確保を目標としている。
資本市場の監督と安定性
『国家九条』は、資本市場の本質的な安定性を高めるという政府活動報告の指示に沿って実施される。ここで挙げられている重要な戦略を紹介しよう。
円滑な市場運営の促進: 包括的リスク評価の強化、戦略的準備金ならびに安定メカニズムの構築強化、リスクおよび脆弱性の特定への注力がこれに該当する。潜在的弱点に対処してレジリエンスを強化するためのこうした措置により、資本市場を円滑に機能させることを目指す。
取引に対する監督強化: 不正取引や相場操作に対する規制基準を改善するほか、高頻度のクオンツ取引に対する監督も強化する。非公開株式ファンドの運用ルール策定も優先項目となる。中国証券監督管理委員会(証監会、CSRC)が「株式市場におけるプログラム取引に関する管理規制(試行版)」に対する意見を募集したことからも、プログラム取引における厳格な監督とリスク管理に対する本気度が見えてくる。
期待管理メカニズムの確立: 『国家九条』では、主要な経済政策ないしは非経済政策が資本市場に及ぼす影響の評価が、マクロ政策の整合性評価の枠組みに明確に組み込まれている。政策情報公表のための調整メカニズムの確立もこれに含まれ、政策協調の強化と協調努力の維持をめざす。マクロ政策の整合性評価に非経済政策を組み込むことにより、政策協調の強化と、潜在的な市場の混乱を緩和するという効果をねらっている。
以上のような取り組みを通じて『国家九条』は、資本市場の安定性、レジリエンス、完全性を高め、持続可能な成長や投資家の信頼につながる環境を醸成することを目指している。
考察および示唆
過去2度の『国家九条』発表後(2004年、2014年)、A株市場は大幅に上昇し、政策指示が市場の動きに潜在的な影響を与えたことを示唆している。2004年には、『国家九条』の発表後に上海総合指数が初取引日で2.08%、深セン成分指数が初取引日で1.56%上昇した。このように迅速に好反応が出たことが、その後の改革イニシアチブによる持続的な成長の舞台を用意した。
2004年の発表後、上場企業の株式分割改革を目的とした一連の改革文書が発表された。これらの改革は相次いで実施され、A株市場の大幅な株価上昇につながった。2007年10月までに上海総合指数は6092.06ポイントの高値をつけ、深セン成分指数は19358.44ポイントまで上昇した。注目すべきは、非鉄金属、銀行、不動産といったセクターの優良株がこの時期の市場上昇を牽引した点である。
同様に、『国家九条』の発表から1年後の2014年にも、A株市場は再び強気相場に入っている。上海総合指数は3,000ポイント近く急上昇して最高値の5166.35ポイント、深セン成分指数は18098.27ポイントに達した。この時期はコンピュータ、メディア、通信などの業種が特に好調で、市場全体の成長に貢献している。
一方、2024年の新『国家九条』発表は、中国経済が課題に直面する中で行われた。それぞれの政策ならではの背景や目的に鑑みれば、過去の成功パターンをそのまま踏襲することは本質的に問題をはらんでいる。市場環境や状況も時間とともに変化している可能性もあるゆえ、現在の経済状況に合わせた具体的な政策措置が必要だ。
こうした課題を抱えているとはいえ、新『国家九条』はやはり重要な政策発表であり、資本市場の安定と発展にとって極めて重要な方向性を示している。市場監督の強化、コーポレートガバナンスの改善、投資家保護の強化といった措置を強調することで、新たな指令は資本市場への新たな活力注入と、より成熟した強固な軌道への方向転換を目指したものとなっている。
写真: 中国 証券取引所と中国金融先物取引所
(※1)https://grici.or.jp/
<CS>
配当金をめぐって
投資家の投資リターンを強化するため、『国家九条』では優良な配当企業にインセンティブを与え、配当利回り向上を促すための明確な規定を定めている。長期にわたる無配が続く企業や配当率の低い企業に対しては、大株主による持ち株比率の引き下げを制限し、リスク警告を実施することが明記されている。これらの措置は、企業による配当支払い優先を奨励し、投資家のため配当の安定性、持続性、予測可能性を高めることをめざすものである。
さらに『国家九条』では、上場企業が1年間で複数回の配当を積極的に推進するよう提唱している。これに向けて、上場会社に対しては配当頻度を決定する際に、未配当利益や現在の業績などの要素を総合的に評価するよう求めている。状況が許すならば、投資家の配当期待を安定させるため、企業が配当頻度を増やすことも奨励される。さらに、財務諸表の監査要件に関する誤解を払拭するため、中期的な配当利益基準の明確化にも焦点が当てられている。配当政策にまつわる事柄に明確性と透明性を持たせることで、投資家の信頼を醸成し、持続可能な配当を実現するための環境促進に向けた措置となっている。
『国家九条』は、企業による配当支払い優先を奨励するための環境を創生し、投資家へのリターンを高め、資本市場全体の安定性と持続可能性に貢献することをめざしている。
上場廃止の監視
『国家九条』では上場廃止の監視について明確な方向性を提示しており、市場の健全性を維持し、投資家の利益を守るため4つの重要な側面に焦点を当てている。
上場廃止基準の厳格な実施: 金融詐欺の取り締まりを優先し、詐欺行為を行った企業はただちに上場廃止となる。「不正金額+不正の度合い」に基づく上場廃止基準をさらに引き下げ、不正行為を効果的に取り締まる。
上場廃止チャネルの多様化: 内部統制の不備、支配株主による非営業資金の占有、支配権の無秩序な変更という、3つの新しいタイプの上場廃止シナリオが追加されている。こうした追加措置は、投資家や市場の健全性にとってリスクとなる、ガバナンスや業務上のさまざまな欠陥への対処を目的としたものである。
上場廃止指標の厳格化: 赤字企業の上場廃止となる収益指標引き上げ措置を実施し、メインボードでも収益指標を3億元に引き上げる。さらに、財務報告に対する内部統制監査意見を提示するための仕組みを導入し、透明性と説明責任性を強化する。
市場価値基準の改善: メインボードA株の上場廃止となる市場価値指標を5億元まで引き上げる。こうした調整は資本市場の健全性を強化し、業績不振または財務的に不安定な企業に関連するリスクを軽減することを目的としたものである。
『国家九条』は資本市場の信頼性向上、投資家からの信頼強化、中国金融状況の長期的な安定性と持続可能性の確保を目標としている。
資本市場の監督と安定性
『国家九条』は、資本市場の本質的な安定性を高めるという政府活動報告の指示に沿って実施される。ここで挙げられている重要な戦略を紹介しよう。
円滑な市場運営の促進: 包括的リスク評価の強化、戦略的準備金ならびに安定メカニズムの構築強化、リスクおよび脆弱性の特定への注力がこれに該当する。潜在的弱点に対処してレジリエンスを強化するためのこうした措置により、資本市場を円滑に機能させることを目指す。
取引に対する監督強化: 不正取引や相場操作に対する規制基準を改善するほか、高頻度のクオンツ取引に対する監督も強化する。非公開株式ファンドの運用ルール策定も優先項目となる。中国証券監督管理委員会(証監会、CSRC)が「株式市場におけるプログラム取引に関する管理規制(試行版)」に対する意見を募集したことからも、プログラム取引における厳格な監督とリスク管理に対する本気度が見えてくる。
期待管理メカニズムの確立: 『国家九条』では、主要な経済政策ないしは非経済政策が資本市場に及ぼす影響の評価が、マクロ政策の整合性評価の枠組みに明確に組み込まれている。政策情報公表のための調整メカニズムの確立もこれに含まれ、政策協調の強化と協調努力の維持をめざす。マクロ政策の整合性評価に非経済政策を組み込むことにより、政策協調の強化と、潜在的な市場の混乱を緩和するという効果をねらっている。
以上のような取り組みを通じて『国家九条』は、資本市場の安定性、レジリエンス、完全性を高め、持続可能な成長や投資家の信頼につながる環境を醸成することを目指している。
考察および示唆
過去2度の『国家九条』発表後(2004年、2014年)、A株市場は大幅に上昇し、政策指示が市場の動きに潜在的な影響を与えたことを示唆している。2004年には、『国家九条』の発表後に上海総合指数が初取引日で2.08%、深セン成分指数が初取引日で1.56%上昇した。このように迅速に好反応が出たことが、その後の改革イニシアチブによる持続的な成長の舞台を用意した。
2004年の発表後、上場企業の株式分割改革を目的とした一連の改革文書が発表された。これらの改革は相次いで実施され、A株市場の大幅な株価上昇につながった。2007年10月までに上海総合指数は6092.06ポイントの高値をつけ、深セン成分指数は19358.44ポイントまで上昇した。注目すべきは、非鉄金属、銀行、不動産といったセクターの優良株がこの時期の市場上昇を牽引した点である。
同様に、『国家九条』の発表から1年後の2014年にも、A株市場は再び強気相場に入っている。上海総合指数は3,000ポイント近く急上昇して最高値の5166.35ポイント、深セン成分指数は18098.27ポイントに達した。この時期はコンピュータ、メディア、通信などの業種が特に好調で、市場全体の成長に貢献している。
一方、2024年の新『国家九条』発表は、中国経済が課題に直面する中で行われた。それぞれの政策ならではの背景や目的に鑑みれば、過去の成功パターンをそのまま踏襲することは本質的に問題をはらんでいる。市場環境や状況も時間とともに変化している可能性もあるゆえ、現在の経済状況に合わせた具体的な政策措置が必要だ。
こうした課題を抱えているとはいえ、新『国家九条』はやはり重要な政策発表であり、資本市場の安定と発展にとって極めて重要な方向性を示している。市場監督の強化、コーポレートガバナンスの改善、投資家保護の強化といった措置を強調することで、新たな指令は資本市場への新たな活力注入と、より成熟した強固な軌道への方向転換を目指したものとなっている。
写真: 中国 証券取引所と中国金融先物取引所
(※1)https://grici.or.jp/
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