全国コアCPI、1月は+2.0% 早期のマイナス金利解除予想続く
Takahiko Wada
[東京 27日 ロイター] - 総務省が27日に発表した1月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は106.4と、前年同月比2.0%上昇した。伸び率は3カ月連続で縮小したが、日銀の物価目標2%を割り込むと見込んでいた市場予想を上回った。外国パック旅行費のデータ収集再開で指数が押し上げられた。
また、約3年ぶりに財価格の上昇率をサービス価格の上昇率が上回った。外国パック旅行費など特殊要因があるものの、日銀が想定する賃金の物価への転嫁が緩やかに進んでいることが示された。エコノミストからは引き続き、日銀が4月にマイナス金利を解除するとの見方が出ている。
<外国パック旅行費、データ収集を再開>
コアCPIはロイターがまとめた民間予測1.8%上昇を上回った。
宿泊料は26.9%上昇で、前月の59.0%上昇の半分以下の伸び率になった。23年1月に全国旅行支援の割引率縮小で宿泊料が高めに出ていた反動が出た。生鮮食品を除く食料は5.9%上昇で、前月の伸び率6.2%を下回った。
エネルギー価格は12.1%下落し、前月の11.6%下落から下落率が拡大した。前年に高かった反動や政府のエネルギ価格抑制策による押し下げ効果が見られた。電気代は21.0%下落、都市ガス代は22.8%下落でともに前月より下落率が大きくなった。
一方、外国パック旅行費は20年1月対比で62.9%上昇となり、総合指数を0.15%ポイント押し上げた。新型コロナウイルスの感染拡大で、各社が外国パック旅行の催行を取りやめる中、総務省は21年1月以降、データの収集を取りやめ、20年の値を代入していた。旅行運賃も押し上げ要因になった。
コアCPIの対象品目522のうち、上昇は434、下落は54、変わらずは34だった。
生鮮食品およびエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は3.5%上昇と、前月の3.7%上昇を下回り、23年2月以来の低い伸び率。総合指数は2.2%上昇でこちらも前月を下回った。
<財・サービス価格の伸び率逆転>
日銀は、輸入物価高の転嫁から人件費上昇分の転嫁へ物価の上昇要因がバトンタッチしていく姿を想定してきたが、1月のCPIでは日銀のシナリオ通りに進んでいることが示された。
財・サービス別では、財価格とサービス価格の伸び率が21年3月以来の逆転となった。財価格が2.1%上昇と、伸び率が前月の2.8%上昇から大きく縮小する一方、サービス価格は2.2%上昇で前月の2.3%上昇から小幅の鈍化にとどまった。
サービス価格については、全国旅行支援の反動が出ている宿泊料やデータ収集を再開した外国パック旅行費の影響が出ているものの、人件費の転嫁も進んできている。総務省の担当者は運送料(10.0%上昇)やテーマパーク入場料(30.3%上昇)を挙げ「産業別の個別事情が含まれていることに留意が必要だが、人件費の影響は確認している」と述べた。
1月分にかけ、コアCPIの前年比伸び率は3カ月連続で縮小した。しかし、市場では2月には反転し、伸び率が拡大するとみられている。
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・主席エコノミストは2月のコアCPIを2%台後半と予想している。総務省は、2月は政府のエネルギー価格抑制策の影響が一巡し、総合指数を1%ポイント押し上げると説明している。
<マイナス金利解除後、追加利上げは困難との見方>
日銀の植田和男総裁は22日の衆院予算委員会で、先行きの消費者物価について「去年までと同じような右上がりの動きが続くと一応、予想している」と指摘。「デフレではなくインフレの状態にある」と踏み込んだ。
酒井氏は、賃金・物価の上昇モメンタムが確認できれば、日銀が4月にマイナス金利解除に踏み切る可能性があるとみている。
ただ「年内は追加利上げができない可能性が高い」と話す。個人消費を中心に実体経済が弱く、23年10―12月期に続き24年1―3月期もマイナス成長になることが否定できないと予想。消費の弱さからサービス価格への人件費の転嫁が進みにくく、「賃金から物価への波及は十分に進展しないのではないか」とみている。
鈴木俊一財務相は同日午前の閣議後会見で、CPIを受けて「前回に比べれば縮小してきた。ひとつは国際的なエネルギー価格がやや落ち着いてきたということと、政府が行っているエネルギーの激変緩和措置が一定程度効果を及ぼしていると理解している」と述べた。
そのうえで「こうした動きはじっくりみていかなければいけない。こうした動きが日銀の動きとか、そういうものにどう影響するかは日銀の独立性もあるので我々としてしっかりみていきたいと思っている」と語った。
(和田崇彦)